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暮らしの安全・安心を支える防災・セキュリティソリューション

エリアセキュリティソリューションと高機能消防指令システム

ハイライト

監視カメラなど各種センサーの情報を統合し,統合されたデータを高度分析することで,セキュリティ強化と同時に作業効率向上などにも貢献する「エリアセキュリティソリューション」。

指令台の高機能化に加え,防災情報や現場との情報共有の実現により,迅速な消防活動を支える「高機能消防指令システム」。

地域の安全・安心の実現に貢献する日立の,二つの取り組みについて紹介する。

目次

執筆者紹介

増田 亮太Masuda Ryota

  • 日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット サービスプラットフォーム事業本部 セキュリティ事業統括本部 セキュリティ戦略本部 セキュリティ企画部 所属
  • 現在,社会インフラ向けのセキュリティソリューションの事業開拓に従事

平澤 茂樹Hirasawa Shigeki

  • 日立製作所 アーバンソリューションビジネスユニット 街づくりソリューション本部 スマートモビリティ推進センタ 所属
  • 現在,都市・交通分野における顧客協創,事業開発活動に従事

高津 善彦Takatsu Yoshihiko

  • 日立製作所 アーバンソリューションビジネスユニット ビル街区ソリューション本部 グローバルビジネス開発部 所属
  • 現在,日本および東南アジアの大規模開発案件などを対象とした事業開発に従事

三坂 智也Misaka Tomoya

  • 日立製作所 産業・流通ビジネスユニット 産業ソリューション事業部 産業製造ソリューション本部 セキュリティエンジニアリング部 所属
  • 現在,セキュリティソリューションビジネスに従事

高木 厚伸Takagi Atsunobu

  • 日立製作所 公共ビジネスユニット 公共システム事業部 社会基盤ソリューション本部 防災安全システム第三部 所属
  • 現在,消防関連システムの開発に従事

1. はじめに

人々が行き交う市街地には,海外で頻発しているテロや突発的な傷害事件などの犯罪,ゲリラ豪雨・地震などの予期せぬ自然災害,交通事故や火災などさまざまなリスクが潜んでいる。特に2019年,2020年に国際的な大規模イベントを控えた日本においては,多様化し複雑化するこれらのリスクへの対応が急務となっている。

日立はこうしたリスクに対応するソリューションとして,セキュリティ強化と利便性向上に加え,業務最適化などの経営課題解決にも貢献できるエリアセキュリティソリューションを展開中である。監視カメラや侵入検知センサーなどの各種情報を集約し,そのデータを画像解析やAI(Artificial Intelligence)などによる高度な分析にかけることで,セキュリティ強化とともに経営課題解決にも役立てることができる。

エリアセキュリティソリューションの適用対象としては,交通機関と商業施設,住宅などの複数の施設から成る駅周辺エリアや空港などの広域エリア,特定の事業者が管理する発電所や大型プラントなどの大規模施設などが考えられる。

また,エリアセキュリティソリューションとは別に,地域の安全・安心に貢献するソリューションとして,救急・消防の緊急通報を受け付けて各署所・車両への指令などを行う消防指令システムを展開している。

本稿では,日立が展開中のエリアセキュリティソリューションの適用事例と高機能消防指令システムの概要について紹介する。

2. 広域エリアにおける防災セキュリティ

2.1 駅周辺エリアにおけるエリアセキュリティ

日立のセキュリティソリューションは,駅周辺エリアにおいて,テロ攻撃の脅威などから街区全体を守り,かつ多様化する利用者へのサービス向上にも貢献する。

駅周辺エリアには,テロ攻撃,事故,侵入者,自然災害など,さまざまな脅威が潜んでいる。また,訪日外国人,高齢者,迷子,車椅子利用者,視覚障がい者など,多くの利用者が駅周辺エリアでの行動支援を必要としている。

これらの脅威や要支援者は,エリアの運営を行う駅務・警備・清掃・案内・設備管理などの業務従事者が発見・一次対処することが多く,状況に応じて二次対処や自治体・警察・消防などとの連携を行っている。だが脅威の増加や要支援者の多様化,業務従事者の高齢化により,対処遅れが発生したり,本来業務に対する負担となっていることが想定される。

日立のセキュリティソリューションは,最新の入退室管理システムや監視カメラシステムでの不審者の侵入防止などのセキュリティ強化を行うだけでなく,監視カメラ映像の画像解析やIoT(Internet of Things)センサーのデータを活用して,脅威や要支援者を自動検知することが可能である。エリアの警備・防災・設備管理などの統合監視システムやエリアを運営する各ステークホルダーとの情報連携基盤(プラットフォーム)を構築・活用することで,脅威や要支援者への迅速かつ効率的な対処を実現する(図1参照)。

以上のように,日立のセキュリティソリューションは,安全・安心で快適な街づくりとエリア運営の効率化に貢献するとともに,継続的に最新技術の活用や連携を行うことで,変化し続ける脅威や要支援者に対応していく。

図1|駅周辺エリアにおけるエリアセキュリティのイメージ監視カメラ映像の画像解析やIoT(Internet of Things)センサーのデータを活用することで,不審者の自動検知などのセキュリティ強化に加え,高齢者などの要支援者への迅速な対応を可能にする。

2.2 空港におけるセキュリティ

近年,爆発物や銃器を使用したテロ事件が,欧米や東南アジアの空港を中心に発生している。また,国内の主要空港に対しては,ここ数年,サイバー攻撃も相次いでいる。このように世界的に空港の安全リスクが高まる中で,日本においてはさらに国際的大規模イベントの開催を控えており,フィジカル,サイバー両面でのテロ攻撃への対策強化は急務となっている。

空港では以前から,金属探知機,X線検査装置,爆発物検知装置,空港職員向けの入退室管理システムや監視カメラ,侵入検知センサーによる監視システムにより,セキュリティを高めてきた。これに加え近年では,バイオメトリックス技術や画像解析の活用によるセキュリティ強化が進められつつある。

日立は,高速かつ高セキュリティな指静脈認証システムにより,空港職員の入場管理の安全性確保と利便性の向上を提供している。また,監視カメラで取得した映像をリアルタイムに解析することにより,不審な荷物の置き去り検知といった安全性の強化と,混雑具合の分析などによる空港運営効率化の両面で,空港業務をサポートする取り組みを進めている1)。さらに,サイバー攻撃に対しても,セキュリティアセスメントといった上流コンサルティングのほか,不正通信検知など入口対策から出口対策までを多層でカバーするソリューション群を提供し,サイバー攻撃に対するセキュリティ強化にも貢献している。

3. 発電所における防災セキュリティ

社会インフラの重要施設である発電所には,近年のテロ攻撃や不審者・不審物のリスクの増加,さらには防ぐことが難しい地震や津波といった自然災害など,さまざまな脅威が潜んでいる。また,海外から発電資源を輸入する際にはSOLAS(The International Convention for the Safety of Life at Sea)条約といった国際条約などへの対応も必要となってきており,これに伴ってフィジカルセキュリティの見直しやさらなる強化が求められている。

一方で,最近の人手不足・労働時間問題などは発電所においても同様であり,少子化による若手の減少に伴い,従業員一人ひとりの作業効率に対する意識もこれまで以上に高まってきている。「働き方改革元年」を掲げる電力会社が増えつつある中,点検作業や現場巡視業務における作業効率の向上や,設備状態の自動監視による発電所全体の安定した電力供給といったニーズが生まれている。

日立は,入退室管理システムや監視カメラシステムを含むセキュリティソリューションの応用・導入によって,不審者や不審物から従業員の安全・安心を確保し,さらには監視映像データを利用した従業員の作業効率化に貢献することができる。

従業員の安全・安心の確保については,最先端技術である入退室管理システムや監視カメラ映像の画像解析を適用することで,生体認証やタグを用いた侵入防止,カメラ映像を活用した不審物などの置き去り検知を可能とした。これによって,不審者・不審物などへの対応にあたる敷地内の従業員や警備員の過剰な負担を軽減することができる。

また上記システムと,夜間のカラー映像検出などの高機能カメラやセンサーを用いた技術を組み合わせることで,SOLAS条約の対応強化も実現できる。

作業効率の向上については,監視カメラ映像の画像解析を通じて,発電所の巡視員が対応している設備監視作業を一部自動化することにより,点検・巡視の効率向上が実現できる。さらに,ビーコンを併用することで巡視員の動線解析が可能となり,最適な巡視計画の立案によって巡視時間も短縮できる。また,広大なエリアや高所設備点検に対しては,ドローンを活用したソリューションも提供できる。導入する各システムはフィジカルセキュリティ統合プラットフォーム2)上にプラグインすることにより,OT[Operational Technology(運転監視情報,外周監視など)]×IT[Information Technology(画像解析・位置検知など)]を容易に同一画面上に統合可能であり,情報の一元管理,利活用ができる。これにより,各システムで管理者が欲しい情報のみを選定して効率よく管理することができる(図2参照)。

以上により,日立のセキュリティソリューションは発電所の安全・安心を支援するとともに,作業者の働き方一つひとつの改善サポートを継続的に実施していくことで,安定した電力供給に貢献していくものである。

図2|発電所における防災セキュリティの全体像フィジカルセキュリティ統合プラットフォームに監視映像データ,ビーコンデータ,ドローンデータなどさまざまなセンサー情報を統合することで,セキュリティ強化と同時に作業効率化や設備稼働率の向上に貢献する。

4. 市民の安全を守る日立の消防指令システム

防災への関心が高まる一方,災害発生時の対応を担う消防の役割は複雑化している。緊急消防援助隊を含む広域消防や,高齢化社会で年々増加する救急出動への対応など社会的な背景を受けて,消防指令システムにおける情報共有や業務効率化の必要性がますます高まってきている。また,119回線のIP(Internet Protocol)化や,消防現場活動におけるスマートデバイスの活用など,消防を取り巻く技術動向にも対応が求められている。

日立は,これまでに東京消防庁をはじめとする複数の消防指令システムの構築実績を有しており,多様な業務領域を生かした次世代の消防指令センターの実現に向けて取り組んでいる。以下に近年の日立の高機能消防指令システムとその導入事例,次世代指令センター実現に向けた取り組みについて紹介する。

4.1 高機能消防指令システムとその導入事例

有事の際の消防業務で最も重要となる情報システムが,緊急通報の受付から出動隊の編成,各署所・車両への指令,事案終結までの管理を一貫して担う高機能消防指令システムである。最新の高機能消防指令システムでは,情報共有や消防指令業務の効率化を実現する次のような特徴機能を備えている。

(1)指令時間および現場到着時間の短縮支援のための機能
各指令台のモニタ数を4画面構成とすることで表示する情報量を増やすとともに,大規模災害の際には1台の指令台を2分割して2画面構成に切り替えることで,同時受付数を拡張できる構成となっている。また,緊急車両の位置情報をGPS(Global Positioning System)によりリアルタイムに把握することで,消防隊または,救急隊が不足している地域に配置転換を促す機能を備えている。
(2)大規模災害時の情報共有機能
大規模災害が発生した場合には,職員が携帯端末から入力した自宅などの被害情報をGIS(Geographic Information System)上にプロット・表示する災害情報収集機能を通じ,全体の被害傾向を俯瞰(ふかん)的に可視化・把握することにより,適正な部隊配置・意思決定・指令発令が可能となっている3)図3参照)。
(3)現場出動隊と指令センター間の情報共有機能
従来,消防指令センターと現場出動隊間では,主に無線で情報共有を図っていたが,現場にPC端末などを導入することで,文字や映像による情報共有が可能となった。
また,救急隊のタブレット端末では医療情報(救急病院の収容可能状況など)をリアルタイムに確認することができ,より迅速な搬送先病院の決定に役立てることができる。

図3|京都市消防局における日立の高機能消防指令システム導入事例指令台の高機能化に加え,防災情報の早期把握や現場との情報共有実現が,より迅速な消防活動につながっている。

4.2 次世代指令センター実現に向けた日立の取り組み

一刻を争う消防の現場においては,さまざまな情報をいかに早く把握し,状況判断を行い,迅速かつ安全に活動を行えるかが重要となる。今後は,スマートデバイスやSNS(Social Networking Service),各種センサーなどのIoTデバイスの普及に伴い,旧来の電話に限らない緊急通報の可能性や,センサー情報などから能動的に災害を検知する仕組みなど,社会の変化に伴う新しい指令センターの在り方が期待される。

日立は,これらの次なる要求に応えるためのコンセプトとして,次世代指令センターを提言している(図4参照)。例えば,近年普及しているスマートフォンから,映像と音声による緊急通報を可能とする通報受付機能や,過去の事案情報や患者情報などを日立のIoTプラットフォームLumadaを用いて蓄積・分析することで,要救護者のトリアージ※)や病名の予測診断による救急搬送先の自動検索機能の実現など,予測・シミュレーションや現場活動の最適化に役立てることをめざしている。また,防災という観点で見た場合,日本の多くの地方自治体においては消防と防災は別組織で形成されており,設備面と情報面の両面において効果的に共有できていないケースが多い。次世代指令センターでは,このような地方防災情報を,国から提供される防災情報や各種重要施設の情報と統合・連携することで,これまで実現できなかった消防と防災の設備面・情報面での共有が可能となり,より災害に強く柔軟性のある消防防災体制が実現できると考えている。

※)
患者の重症度に基づいて,治療の優先度を決定して選別を行うこと。

図4|次世代指令を実現する各種サービス群消防分野においても,日立のIoTプラットフォームLumadaの応用が期待される。

5. おわりに

本稿では,地域の安全・安心の実現に貢献する日立のエリアセキュリティソリューションの適用事例と,高機能消防指令システムについて紹介した。

日立は今後もAIや画像解析などの先端技術の開発に注力し,その成果をソリューションの高度化に生かしていく。より高機能で使いやすいソリューションを継続して開発・提供することにより,引き続き地域の安全・安心の実現に貢献していく。

謝辞

本稿の第4章で適用事例として紹介した「京都市消防局」向け高機能消防指令システムでは,京都市消防局関係各位より多大なるご協力を頂いた。改めて深く感謝の意を表する次第である。

参考文献など

1)
小野郁宏,外:都市丸ごと安全・安心ソリューション,日立評論,96,3,168〜172(2014.3)
2)
佐川,外:フィジカルセキュリティ 多様化する顧客ニーズに応えるフィジカルセキュリティ統合プラットフォームの構想,日立評論,98,6,432〜436(2016.6)
3)
京都市消防局,【広報資料】平成28年の救急車の現場到着時間が大幅に短縮しました(2017.2)
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