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新たなワークスタイルに向けた日立の取り組み

日立グループの働き方改革

ハイライト

少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少,働く者のニーズの多様化などを受け,働き方改革が国全体の課題となっている。2016年12月,日立は多様な人財が生き生きと働き,成果を発揮できる働き方をめざし,働き方改革の全社運動「日立ワーク・ライフ・イノベーション」を開始した。数々の施策に取り組み,社員の意識面の変化,残業時間の削減など,一定の成果が出始めている。2018年度は仕事そのものに踏み込む施策に注力し,めざす働き方に向けて一層の取り組みを進めていく。

目次

執筆者紹介

近藤 恭子Kondo Kyoko

  • 日立製作所 人財統括本部 人事勤労本部 トータルリワード部 所属
  • 現在,働き方改革関連業務に従事

1. はじめに

2016年12月,日立は働き方改革の全社運動「日立ワーク・ライフ・イノベーション」を開始した。

日立グループは顧客や社会の課題を解決し,人々のQoL(Quality of Life)向上に貢献する社会イノベーション事業をグローバルに拡大しようとしている。多様化や複雑化が進む顧客や社会の課題を解決するためには,多様な価値観を有する人財が生き生きと働き,持てる能力を最大限に発揮することが必要であり,これまでにも,仕事のプロセスの見直しや就業環境の整備に取り組んできた。

日立製作所では,2017年春季労使交渉の結論を受け,「意識改革」,「柔軟な働き方の推進」,「業務改革」などを柱とする施策に取り組んでいくことを決定し,労使一体となって推進することとした。

日本は,少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少,働く者のニーズの多様化などの状況に直面している。生産性向上や多様な人財が意欲・能力を存分に発揮できる環境づくりなど,長時間労働の是正を含めた働き方改革は国全体の課題となっている。

日立も長時間労働の削減に向けた取り組みを進めているが,それにとどまらず,日立としてめざす姿に向け,働き方改革の運動を推進しているところである。

2. 日立製作所の施策

日立製作所における働き方改革の施策を表1に示す。

「業務そのもの・プロセス見直し」,「職場マネジメントの強化」,「タイム&ロケーションフリーワーク推進」の面から,これまでさまざまな施策を行ってきたが,中でも特長的な取り組みを以下に紹介する。

表1|日立製作所の働き方改革に関する施策2016年12月の「日立ワーク・ライフ・イノベーション」発足以来,日立は働き方改革に関する数多くの施策に取り組んできた。

2.1 本社管理業務改革

各ビジネスユニット・部門からの要望事項などを踏まえ,全社に影響を与える本社管理業務の内容やプロセスの見直しを検討するものである。

「予算改革分科会」,「内部監査改革分科会」,「会議・調査改革分科会」の3分科会に分かれて活動を推進している。例えば「会議・調査改革分科会」においては,ビジネスユニットを召集する定例会議・全体会議数の約60%に相当する会議の時間を削減し,「会議コスト見える化ツール※1)」の社内運用に向けた検討を推進するなど,いくつか成果も出始めている。

「会議コスト見える化ツール」は,「コスト意識を持ち,会議目的などを共有することで,会議の参加人数・開催時間の最適化を行い,会議効率向上を図る」ことを目的とし,2018年5月に会議効率化支援ツールとして運用を開始した。

主な特長は以下のとおりである。

  1. 会議参加者数・時間数に応じた会議コスト(概算値)を計算し,事前に提示する。
  2. 会議に関係する項目(目的,アジェンダ,役割など)を事前に提示する。
  3. 会議終了後の評価・フィードバックを支援する。
※1)
日立グループ内のビジネスプランコンテスト「Make a Difference!」2016年度入選案件。

2.2 メール発信ルールの明確化

平日深夜(22時〜翌5時)および休日のメール発信を原則禁止するものである。事前の予想に反して,導入後,大きな混乱は見られなかった。社員からは「休日のメールによる業務指示がなくなり,落ち着いて休みがとれるようになった」など,前向きな反応が多い。「休日明けに大量のメールが一斉に発信されて困る」といった意見もなく,このルールにより,不要不急のメールを削減する効果もあったと考えられる。

2.3 全社IT環境の整備,在宅勤務制度の拡充

日立製作所における在宅勤務およびサテライトオフィス勤務に関する歴史は,1999年制度導入と比較的古い。対象者は,管理職層,裁量労働勤務適用者,仕事と育児・介護を両立する総合職など,全社員の約70%に相当する。勤務にあたって,1日だけでなく半日や数時間の使用も可能であり,利用回数の制限がなく,事前に上司の許可を得られれば利用可能であるなど,制約は少ない。

どこでも働くことができる環境づくりの施策の一つとして,会議のオンライン化・ペーパーレス化も推進している。社内の無線LAN(Local Area Network)拠点を拡大し,ヘッドセットや液晶ディスプレイなど,ITツールも必要な人数・会議室分を配布している。

2018年春季労使交渉においても,タイム&ロケーションフリーワークを推進する取り組みの実施を決定し,社員がそれぞれのワーク・ライフ・バランスに合わせて成果を出し続けることができるような制度・環境づくりを進めている。

2.4 サテライトオフィスの整備

2016年以降,首都圏の複数の事業所にサテライトオフィス「Biz Terrace(ビズテラス)」を開設した。日立のオフィスと同等のセキュリティ環境を備えた,利用登録したビジネスユニット・部門,グループ会社が使用可能な会員制のサテライトオフィスであり,2018年3月時点で8拠点,1日当たりの利用者は延べ2,000人を超えている。

2017年10月,日立グループ全体の働き方改革を推進するサテライトオフィスのフラグシップとして,東京・八重洲に「@Terrace(アットテラス)」を開設した(図1参照)。サテライトオフィスとして初めて事業所外に開設され,日立グループ全従業員が利用可能※2)とすることで,グループ内協創を支援するワークスペースとしての活用をねらいとしている。また,働き方改革に資する製品・ソリューションを紹介・提案するショールームとしての活用計画もあり,一例として,天井やテーブル下に設置したIoT(Internet of Things)センサーによるヒトの動きの把握も始めている※3)

2018年1月には,日立グループ外のサテライトオフィス運営会社とも契約し,利用可能なサテライトオフィスは合計で40拠点に上っている。

なお,サテライトオフィスの企画・運営はいずれも株式会社日立アーバンインベストメントが実施している。

※2)
サテライトオフィス勤務に関する規則を有する会社の制度利用対象者が利用対象である。
※3)
株式会社日立ソリューションズが提供する,米国Enlighted社のIoTソリューションを利用(本号p.106参照)。

図1|サテライトオフィス「@Terrace」の内観東京・八重洲に新設されたサテライトオフィス「@Terrace」は,日立グループの全従業員が利用できる。

2.5 社内コンサルタントによる「業務見える化」〜Exアプローチ〜

日立の価値協創手法「Exアプローチ」を適用し,業務の見える化による課題発見と対策の策定を通じて,業務改善を実施するものである(図2参照)。

Exアプローチとは,顧客の業務を深く理解し,課題や問題を解決しながら,顧客と共に喜び合える経験価値(Experience)を創り出していく,業務課題の改革を目的とした「超上流工程」へのアプローチ手法である。

2017年度に,長時間労働傾向にある約80チームにExアプローチを実施したところ,残業時間の削減に加え,メンバー間の連携,上司から部下への業務指示などにも改善が見られ,一定の効果が出始めている。

図2|Exアプローチの基本の流れExアプローチでは,チームでの業務の見える化と共有の習慣化を行う。

2.6 全社運動浸透策

図3|「日立ワーク・ライフ・イノベーション」ポスター(左)と特設サイト(右)「日立ワーク・ライフ・イノベーション」のコンセプト浸透策として,ポスターの掲示やイントラネットサイトの開設を行った

「日立ワーク・ライフ・イノベーション」のコンセプト浸透策として,ポスターの掲示,イントラネットの特設サイト(以下,「WLIサイト」と記す。)開設を実施した(図3参照)。

WLIサイトでは,チームや個人の取り組みなど,日立グループ全体から好事例を集め,情報共有に力を入れている。

2017年12月から行っている「新しいことを始めよう」では,日立が成長するためには一人ひとりが変わることが大事であることを踏まえ,変わるためにまず新しいことを始めてみよう,との呼び掛けを実施している。時間外×社外×成長をキーワードに役立つサイトを社員から募集し,掲載することにより,自己啓発を促している。

3. 2017年度総括

サテライトオフィスなど,環境面の整備により働きやすくなったという社員の反応,残業時間や深夜労働の大幅な減少など,一定の成果が出始めている。

日立グループ全体を対象に実施している従業員サーベイ(Hitachi Insights)では,働き方改革関連の設問で,回答結果に改善の傾向が見られた(図4参照)。

今後さらに,日立がめざす働き方の実現に向け,「業務そのもの・プロセス見直し」,「職場マネジメントの強化」に一層取り組む必要がある。

図4|働き方改革に関する質問の肯定的回答者の割合の変化従業員サーベイ(Hitachi Insights)における働き方改革関連の設問における回答の変化を示す。

4. おわりに

「日立ワーク・ライフ・イノベーション」発足から2年目の2018年度は,「業務そのもの・プロセス見直し」,「職場マネジメントの強化」への取り組みの一例として,Exアプローチに関する好事例の全社展開を行ったうえで,長時間労働の傾向にあるなど,業務改善が必要な職場管理者向けに研修を実施することを検討中である。

また,柔軟な働き方を支援するための就業環境・勤務制度の拡充も実行していく。

多様な人財が多様な価値観を持って生き生きと働き,大きな成果を挙げることができるよう今後も取り組みを進め,「日立ワーク・ライフ・イノベーション」という全社運動を終えた後も,社員一人ひとり,あるいはそれぞれの職場が,自発的に絶えず改革を行えるようになることが,理想的なゴールである。

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