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新たなワークスタイルを実現する日立のソリューション

革新的なワークスタイルの実現を支援するオフィス構築サービス

ハイライト

働き方改革や生産性向上を実現するための人財活用施策およびICT活用施策は,オフィスワーカーの業務動作にさまざまな変化をもたらす。それに伴い,オフィス空間には,その変化にふさわしい機能面での対応が必要になるとともに,オフィスワーカーに快適性・満足感を与え,QoLの向上につなげることも求められる。本稿では,快適なオフィス空間を実現するオフィス構築サービスについて紹介する。

目次

執筆者紹介

和田 譲治Wada Jouji

  • 株式会社日立ドキュメントソリューションズ オフィス&コミュニケーション事業統括本部 オフィスサービス事業本部 事業計画部 所属
  • 現在,オフィスサービス事業の商品開発に従事

山岸 未帆 Yamagishi Miho

  • 株式会社日立ドキュメントソリューションズ オフィス&コミュニケーション事業統括本部 オフィスサービス事業本部 オフィスサービス部 所属
  • 現在,オフィスサービス事業の上流サービス業務に従事

松本 亨Matsumoto Tohru

  • 株式会社日立ドキュメントソリューションズ オフィス&コミュニケーション事業統括本部 オフィスサービス事業本部 オフィス開発営業部 所属
  • 現在,オフィスサービス事業の営業業務に従事

1. はじめに

柔軟な働き方の推進,多様な人財の活躍,組織の生産性向上,コスト削減など,各企業では働き方改革を推進していくうえでさまざまな目標を設定している1)。目標達成に向けた主だった取り組みには,会社制度の見直しやICT(Information and Communication Technology)ツール導入などの施策があるが,オフィス構築の検討も忘れてはならない重要なテーマである。オフィス構築にあたっては,各施策によって生じる変化に対し,適切かつ柔軟に機能する空間を設計すること,また,そこで働くオフィスワーカーに対し,快適で満足感の得られる空間を提供することが求められる。つまり,間接的に各施策の目標達成を後押ししつつ,オフィスワーカーのQoL(Quality of Life)向上へとつなげていくことが,オフィス構築に期待される役割とも言える。

株式会社日立ドキュメントソリューションズでは,これまでもオフィス全般にまつわる顧客の課題に対し各種サービスを提供してきた。しかし,働き方改革の取り組みが加速している昨今,顧客の要望も多種多様になりつつある。本稿では,オフィス構築における変化に対応するための日立ドキュメントソリューションズの取り組みについて述べる。

2. オフィス構築における新たな取り組み

これまで日立ドキュメントソリューションズでは,ドキュメント管理や複写シェアードサービスなどの各種サービスとともにオフィス構築サービスを提供し,移転のプロジェクトマネジメント支援などを中心に実績を積み重ねてきた。しかし,働き方改革が注目を集め始めて以降,オフィス構築における以下の3つの課題が顕著となってきた。

  1. テレワークやフリーアドレス導入など,施策自体が先行してしまい,本来の目的が曖昧になる。
  2. 機能性やデザイン性を重視した結果,働き方の実態とオフィス空間に乖(かい)離が発生する。
  3. 業務の多様化に伴い,オフィス構築に向けての各部門からの意見の吸い上げ,集約がより困難になる。

これらの課題に対応していくため,従来の提案領域よりもさらに上流工程からの支援を強化していく必要があると考えた。そこで,新たに取り入れたのが,日立が推進している「Exアプローチ」の考え方である。

Exアプローチとは,製品やサービスを使って得られるうれしさ,感動,喜びなど「ユーザーの経験価値」を起点に,新たな事業やサービスの創出を顧客とともに「協創」するための活動2)であり,いわゆるデザイン思考がベースとなっている。

日立ドキュメントソリューションズは,コミュニケーション事業のクリエイティブ部門を中心に,日立製作所のExアプローチ推進部とパートナーシップを結んでおり,Exアプローチに関する知識の習得,スキルの向上を図ってきた。

オフィス事業においても,実際にExアプローチを学び,実践してきたメンバーと連携しながら,各種の価値協創手法やノウハウを適用することで,上流工程での取り組みを拡大しようとしている。

移転の案件を例に挙げると,これまではおおむね顧客側で計画が固まった後,基本設計以降の工程においてプロジェクトマネジメント支援を行うことが多かったが,現在は,顧客と共にオフィス構築の構想策定の段階から検討していくことに力を入れ始めている(図1参照)。

具体的には,構想策定フェーズでは,顧客とのディスカッションを通じて現状を整理し,移転を行う目的やオフィス構築の位置づけを明確にする。次に,アセスメント調査・分析(プログラミング)フェーズでは,オフィスの実態を把握するために,定量・定性両面での調査を行い,現場の意見も吸い上げながら基本設計へと落とし込んでいく。さまざまな立場のオフィスワーカーが納得できるオフィス空間のコンセプトを策定することで,その後の実作業もスムーズに推進しやすくなる。

このような考え方をベースにした取り組みを,自社の本社移転・集約において試行した。次章では,その詳細を紹介する。

図1|オフィス構築の基本フロー(イメージ)「企画・調査」・「設計」・「実施」・「運用」の4段階に分け,6つ(+1)のプロセスを踏んで推進している。

3. 取り組み事例

3.1 本社移転・集約プロジェクトの発足

図2|本社移転プロジェクト体制図プロジェクトチームの指示に従い,3つのWGに分かれて推進した。

図3|イノベーション創出を促進するオフィス構築複数部門を1つのフロアに集め,部門の垣根を越えた交流を図るフリーアドレススタイル(上)を導入した。また少人数でのコミュニケーションを活性化するスモールミーティングスペース(下)を設置した。

図4|ペーパーストックレスの実践とスペースの有効活用フロア内に点在する複合機やダストボックスをオフィスの中央にまとめることで交流を促進するマグネットスペース(上)を設置した。また紙文書を削減し,収納スペースはパーソナルロッカーに集約している(下)。

日立ドキュメントソリューションズでは,異なる拠点間のシナジー効果創出を目的として,3拠点に分かれていた本社地区(約550名)の事業所を1か所に集約する本社移転を実施することとした。

短期間かつスムーズな移転を実現するため,まずは経営幹部および従業員の意見・要望をくみ上げてのオフィス構築を実施した(図2参照)。

3.2 コンセプトの策定

従業員アンケートの結果,拠点が離れていることのデメリットとして「他の部門が何をしているか分からない」,「情報がタイムリーに伝わらない」という意見が多く挙げられた。そこで,現状の課題を「縦割り意識の強さ」,「情報伝達の遅さ」であると分析した。そして,移転WG(Working Group)のコンセプトを「オフィス環境改善による従業員のコミュニケーション活性化」,「生産性が向上する働きやすいワークスペースの提供」,これらを実現するための「文書削減によるワークスペースの確保」と設定した。

3.3 オフィス構築実施内容

まず取り組んだのは,文書の削減によるワークスペースの確保である。執務室への保管を極力減らすため,70%の紙文書削減を目標として取り組んだ。

必要な書類と不要な書類を分別し,不要な書類は廃棄,必要な書類でも使用頻度が少ないものは自社のサービスである「文書の保管サービス」を利用し外部倉庫に保管することとした。利用頻度の高い文書でかつ情報共有するために必要な文書は,電子化して文書管理システムに登録することで,社内での情報共有を可能にした。これにより目標の70%の削減率を達成した。

オフィスから文書を保管するキャビネットが減ったことで,オフィスの有効空間が広がり,企画部門,営業部門,SE(System Engineer)部門を同一フロアに集約することが可能となった。さらに,多様性を育む自由度の高いオフィス構築の実現に向け,以下の要素を取り入れた(図3参照)。

  1. 複数部門を1つのスペースに集め,社員のコミュニケーションを活性化させるフリーアドレス制の導入
  2. ホワイトボードの壁面で周囲を囲み,大型モニターを配備することで,集中的な議論が可能なプロジェクト用ブースの設置
  3. 少人数がタイムリーに打ち合わせを行うミーティングコーナー/ミーティングテーブルの設置
  4. 独立したスペースで1人で仕事ができる集中ブースの設置
  5. 個人参加用Skype※)(Skype for Business)ブースの設置
  6. 多様な業務に対応できる可動式デスクの設置
  7. オフィスワーカーに対し,各種連絡事項を周知徹底するためのオフィスサイネージの設置
  8. 複合機,事務用品,ダストボックスなどをフロアの中心に置くことで,自然に人が集まりコミュニケーションを活性化するマグネットスペースの設置
  9. ペーパーレス会議を定着させる可動式ディスプレイ,ネットワーク接続型ホワイトボードの配備
※)
Skypeは,米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標である。

3.4 効果

移転・集約後のオフィスでは,前項の施策の結果「コミュニケーションの活性化」,「働きやすさの向上」,「紙文書削減による有効スペースの確保」を達成することができ,当初の目的であるシナジー効果を創出するためのオフィス環境を構築することができた(図4参照)。

従業員を対象としたアンケートの結果,「他部門とのコミュニケーションが取りやすくなった」という回答が88%,「上長への報告・連絡・相談がしやすくなった」が80%,「紙を利用した会議の回数が減った」が70%,「新しいオフィスになり生産性が向上した」が75%に上った。また,文書削減によるワークスペースの確保の点では,6段のキャビネット200本分(幅5 cmファイルにして1万3,300冊)の文書を削減することに成功した。

さらに,2〜3人が打ち合わせ可能なミーティングテーブルの設置に加え,ミーティングコーナーに可動式ディスプレイを常設したことで,前もって紙の資料を用意しなくてもその場でディスプレイに資料を映して打ち合わせを行えるようになり,仕事のスピードアップにつながっている。

4. 働き方改革を支援するサービス

日立グループでは働き方改革を推進するための施策の一つとして,Skype for Businessなどを利用したテレワークの活用が進められている。いつでもどこでも仕事ができるようにするためには,ICT環境の構築とともに図面や契約書など文書の電子化が重要である。

4.1 紙文書の電子化

多様な働き方が増える中,自宅やサテライトオフィスでのテレワーク業務の機会が増えている。そうしたテレワーク環境から契約書や設計書など倉庫やオフィスに保管・管理されている書類を見るためには,文書の電子化が必須である。電子化した書類は「文書管理システム」に格納し,いつでもどこからでも手軽に参照できる仕組みを構築する必要がある。

4.2 複合機,プリンタの整備

複合機やプリンタはオフィスの限りあるスペースを占有する。オフィスの人員,在席率,出力枚数を調査・分析し,設置台数を最適化することにより,オフィスの有効面積がさらに広がる。

またIC(Integrated Circuit)カードや生体認証つきセキュリティプリントシステムの導入により,むだな印刷物の抑制を図り,ペーパーレス化につなげることができる。

5. オフィス構築サービス

日立ドキュメントソリューションズは,顧客の働き方にふさわしいオフィス環境を実現するため,これまでに培ってきたさまざまなオフィス構築の経験と,上流工程からの支援を組み合わせることで,オフィスワーカーのQoLの向上をめざすオフィス構築サービスを提供してきた。

オフィス構築サービスの概要を図5に示す。またこのサービスを通じて,顧客に対し価値を提供することで,創造性や生産性の向上につながる環境づくりの支援を行っていく(表1参照)。

図5|オフィス構築サービスの概要コンセプトづくりなどの上流工程から,調査・設計・施工・運用まで一貫したサービスを提供する。

表1|顧客に対する提供価値オフィス構築サービスを通じて,顧客に対し価値を提供する。

6. おわりに

オフィスワーカーの働き方とオフィス空間の作り方は,働き方の多様化やICTの進化により変化を続け,今後もさらなる革新が図られることが予想される。日立ドキュメントソリューションズは,今後も構想策定の段階から顧客との協創を重視したオフィス構築サービスの展開を図り,顧客に適したオフィス空間の実現に貢献していく。

関連情報

参考文献など

1)
はいたっく,特集 働き方改革, 604号(2017.9)
2)
日立製作所:Exアプローチ
3)
協創で広がる未来のまちづくり,日立評論,Vol.100,No.2(2018.3)
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