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電力

電力・エネルギー

1. 台湾電力彰化洋上風力発電プロジェクト 5.2 MW風力発電システム

台湾では,「風力発電推進四カ年計画」において,2025年に風力発電の累計設備容量を5.5 GWに引き上げる目標が設定されている。台湾で唯一の電力会社である台湾電力股份有限公司は,再生可能エネルギーの拡大に向けて,洋上風力発電の設備容量の目標値を2025年で1 GW,2030年で1.8 GWに引き上げ,台湾の彰化外海での洋上風力発電所の建設計画を開始した。

日立は,台湾電力股份有限公司から台湾中西部,彰化県の芳苑郷沖に建設予定の彰化洋上風力発電プロジェクト向け5.2 MW風力発電システム21基(109.2 MW)の機器製造から据付,5年間のO&M(Operation and Maintenance)などを一括で受注した。本プロジェクトの発注総額250億ニュー台湾ドル(約940億円)のうち約3分の1が日立の担当範囲となる。

彰化洋上風力発電プロジェクト向け風力発電システムHTW5.2-127は,1基当たりの定格出力が5,200 kWで127 m径の翼を持つ大型機でありながら,台風などの強風,地震や津波にも耐えられる設計となっている。2019年から2020年初頭にかけて風力発電システムを製造し,2020年の夏頃から試運転を行い,12月末の完成を予定している。

1.彰化洋上風力発電プロジェクト向け5.2 MW風車の外観とナセル内機器構成 彰化洋上風力発電プロジェクト向け5.2 MW風車の外観とナセル内機器構成

2. 扇島パワーステーションAGPによる出力・効率向上化工事1台目工事完了

2.扇島パワーステーションAGP化改造工事 扇島パワーステーションAGP化改造工事

日立は,東京ガス株式会社と昭和シェル石油株式会社が共同出資する扇島パワーステーション(天然ガス,122万kW)の性能を向上させるAGP(Advanced Gas Path)※)工事契約を締結した。

ガスタービン3基に対し,高性能な高温部品を組み込むことで熱効率を向上させる。また低NOx燃焼器採用により窒素酸化物(NOx)排出量を低減し,燃焼範囲も広げることが可能となる。

発電所として熱効率が向上することで,出力・効率を向上させ,燃料消費量を抑制でき,経済性が向上する。さらに当該高温部品を組み込むことで,点検周期も大幅に延長できる利点がある。

本工事は点検作業中に実施する工事であるが,設計,試運転など現地スタッフが一丸となり,1〜3号機のうち,2号機を2018年6月に工程通り無事故・無災害で工事を完了した(次号機工事については2019年実施予定)。

次号機においても無事故・無災害で工事を実施すべく,計画を進めていく。

※)
米国ゼネラル・エレクトリック(GE)社のガスタービンに最新技術を適用したサービス名称

3. インドネシア パイトン火力発電所Unit 3 1,008MVA変圧器の短納期対応の完遂

3.運用開始後の変圧器 運用開始後の変圧器

パイトン火力発電所はインドネシアのジャワ島東部に位置する石炭火力発電所であり,今回のUnit 3は同国最大の発電容量を有するジャワ島電力系統の要の一つである。そのため本変圧器には品質の高さだけでなく,発電開始を一日でも早めるため大幅な納期短縮が求められていた。日立の大形変圧器は,設計・部品調達・製造・出荷まで通常12か月,据付には1か月以上を要するが,本案件では顧客要求に応えるべく,出荷まで5.5か月,据付28日間という過去に例のない超短納期で契約した。

この超短納期対応のため,営業・事業部・生産本部を横断するプロジェクトマネジメント体制を立ち上げて顧客とのコミュニケーション円滑化と全体最適のための案件マネジメントを強力に推進するとともに,納期を優先した先手の調達交渉や安全・品質を考慮したうえでの工場内2シフト・休日対応・部門間人財融通,さらに据付工程短縮のための施策をインドネシアのグループ会社PT HITACHI ASIA INDONESIA社と協創するなど「One Hitachi」の総力結集により,出荷は1週間,据付は6日間の短縮を達成し,顧客との約束を完遂することができた。

この経験を今後の案件へ生かし,高品質で信頼ある製品を引き続き提供していく。

(運用開始時期:2018年9月8日)

4. ガス遮断器熱ガス流解析の高精度化

4.熱ガス流解析によるガス遮断器内の蒸発ガス分布の解析結果 熱ガス流解析によるガス遮断器内の蒸発ガス分布の解析結果

ガス遮断器は,落雷などで発生した異常電流から送電網を保護する重要な電力機器である。異常を検知すると機器内部で電極を機械的に高速で引き離し,電極間に発生するアークプラズマに消弧ガスを吹き付けて冷却することで電流を遮断する。したがって,遮断性能や機器信頼性の向上にはアークプラズマを含む機器内部のガス挙動の把握が重要となる。

今回,電極間に発生するアークプラズマの発熱や光の輻射,絶縁ノズル材の蒸発,圧縮性熱流体などの現象モデルの高度化を進めた熱ガス流解析技術を開発した。これにより,現象間の相互作用やアークプラズマにより加熱された高温ガスの温度と圧力の空間分布および時間変化を,従来より精度よく評価することが可能となっている。本技術は,ガス遮断器の小形化,低操作エネルギー化,高信頼性化に向けた開発に活用しており,開発した製品を通じて,安定した電力供給に貢献していく。

5. 位相調整器付き送電線回線への投入抵抗付き遮断器の適用

複数ルートで送電される電力系統では,各送電線潮流のアンバランスにより,系統全体の送電可能量が制限されてしまうケースがある。これに対して,位相調整器を設置し,各送電線の潮流バランスを制御することで,系統全体の設備利用率向上が図られ,より効率的な系統運用が可能となる。しかし,位相調整器は大きなインピーダンスを持っており,これが送電線に付加されることにより,(1)地絡事故時における電流ゼロミス現象による遮断不能,(2)位相調整器充電時の励磁突入電流による母線電圧降下が発生する懸念がある。

東北電力株式会社において,位相調整器を導入するにあたり,上述の(1),(2)の対策として,遮断器「閉路」時に直列抵抗を介して投入する投入抵抗付き遮断器を適用することにより,再閉路後の直流減衰電流および位相調整器充電時の励磁突入電流を抑制し,これらの問題を回避できることを解析により示した。また,この解析により得た結果から,効果的な抵抗値,先行投入時間の遮断器を製作,納入し,据付工事を完了した。

5.位相調整器および投入抵抗付き遮断器 位相調整器および投入抵抗付き遮断器

6. マルチレベル自励式変換器「ZC-MMC」の製作・納入

6.ZC-MMCの回路構成 ZC-MMCの回路構成

顧客事業所内の50 Hz系統と60 Hz系統の間の電力融通のための周波数変換装置のリプレースにあたって,マルチレベル自励式変換器「ZC-MMC」による20 MW級の高効率な周波数変換装置を製作,納入した。

主回路はチョッパセルを21直列(1直列冗長)にした構成で,ZC-MMC方式を適用した世界初の製品である。制御装置は個別セル制御方式かつ待機二重化冗長方式を採用して,高信頼性を実現した。この更新により以下の運用メリットの改善が図られた。

  1. 運用範囲の拡大により,潮流反転下でも制約なく連続した運転を可能とした。
  2. 発生高調波の軽減(自励マルチレベルの採用)により,高調波フィルタレス化を実現した。
  3. 電圧変動の抑制(自励変換器による無効電力制御)により,自家系統の電圧変動・連系系統の力率を制御可能とした。

(運転開始時期:2016年12月)

7. エネルギー&ファシリティマネジメントサービス

環境経営重視や労働人口減少などの社会背景の中,製造業,非製造業を問わず,企業にとって省エネルギー/CO2削減のための対策や,設備維持管理に関わる人員不足およびバブル期に多く設置された設備の老朽化などが顕在的な課題となっている。

しかしながら,企業の「コア業務」と違いこれら「コアサポート領域」に対する投資の優先順位は高くなく,限られたリソースで運営している企業が多い。

特に多拠点に事業所を保有する企業では,管理面でのリソース不足と運営のガバナンスが大きな課題となっており,各拠点ではエネルギー対策コストや計画外ロスコストが発生している状況にある。

日立は,これまで顧客がおのおの直接実施していたリニューアル,予算稟議,予算執行,運用,保守点検,設備管理といった複雑多岐にわたる業務を一元的にサービス提供し,プラットフォームによるデータマネジメントにより業務の効率化を図り,エネルギーの使い方や設備の予防保全など最適運用も支援する「エネルギー&ファシリティマネジメントサービス」のサードパーティとして課題を抱える企業の経営支援を行っていく。

7.エネルギー&ファシリティマネジメントサービス概要 エネルギー&ファシリティマネジメントサービス概要

8. 受変電設備におけるセンシング技術およびIoTを活用した予兆診断技術の動向

8.センシング技術,IoT(Internet of Things)を活用した予兆診断システム センシング技術,IoT(Internet of Things)を活用した予兆診断システム

近年,技術者の高齢化に伴う技術承継や技術者不足が大きな問題となっている。また,設備投資抑制により,受変電設備の耐用年数を超過して使用するユーザーが増えており,設備の経年劣化による事故,不具合のリスクが高まっている。一方で,計画外のダウンタイムを避ける,もしくは極力短くしたいというニーズがある。このような背景から,機器の不具合や故障の予兆を捉えて火災や絶縁破壊などの重大事象を防ぐとともに,適切な保守時期やリプレース時期を見極めてユーザーの設備投資効率の向上,限られた技術員の最適配置を支援する予兆診断技術が求められている。

そこで,機器に取り付けたセンサーからの信号を監視診断装置に取り込み,機械学習技術を用いて分析・評価することで不具合や故障を予兆診断する技術を開発している。特に火災未然防止の観点から,センシング技術として規定値以上の温度を高感度に検出する匂いセンサーシステムや,高感度で絶縁抵抗を測定するシステムの開発を進めている。また,保守点検時期の適正化に向けて,グリース劣化を予測するアルゴリズムや,開閉器操作器の機構系の状態を推定するアルゴリズムの構築を図り,保守の適正化,部品交換による延命化など,ユーザーが望む提案が可能になっていくと考えられる。

9. ナレッジベース保守支援ソリューション「サイトリミックス」

株式会社日立パワーソリューションズでは,顧客設備を最適に制御・運用する技術(OT:Operational Technology)で蓄積した現場ノウハウと設備情報,管理情報をつなぎ,構造化情報一元管理技術(SIMT:Structured Identifier Management Technology)を活用し,データ管理が別々になっている情報に識別子を付与し構造化を図ることでナレッジベースを構築する。保守作業に必要な情報を必要な時に必要な人へ提供することで,迅速な意思決定に貢献するナレッジベース保守支援ソリューション「サイトリミックス」を提供している。

サイトリミックスは,見える化,予兆・予測診断,保守作業支援,遠隔監視などの各種サービスを提供する。

保守作業においては,予兆検知時に原因追究,過去事例などから次に何をすべきかといった情報を提供することが可能となり,また管理者と現場で情報共有を実現することで現場保守業務の高度化に貢献する。

(株式会社日立パワーソリューションズ)

9.ナレッジベース保守支援ソリューション「サイトリミックス」の全体構成 ナレッジベース保守支援ソリューション「サイトリミックス」の全体構成

10. 太陽光発電協調制御型風力発電システム

近年,国内では再生可能エネルギー発電設備の大量導入により,多くの地域で送電線や変電所の連系可能容量が不足し,新たに再生可能エネルギー発電設備を連系できない問題が発生している。

その中で最も多く導入された太陽光発電は,夜間は発電せず,雨天や曇天時に発電出力が低下するため,連系容量が空いている時間が多く,送電線や変電所を有効に活用できていないという問題があった。そこで太陽光発電設備が持つ連系容量を有効活用し,新たに風力発電設備を追設する太陽光発電協調型風力発電システムを開発した。

本システムの特徴は,以下のとおりである。

  1. 既設太陽光発電設備の連系変圧器二次側に新たな風力発電設備を追設することによる連系設備の共有
  2. 既設太陽光発電設備の出力を監視し,太陽光発電出力と風力発電出力の合成発電出力が連系容量を超過しないように風力発電出力を抑制

このシステムにより,送電線や変電所の連系可能容量不足の状況下でも,風力発電設備の連系可能量を新たに創出できる可能性を切り開いていく。

(株式会社日立パワーソリューションズ)

10.太陽光発電協調制御型風力発電システムの概要 太陽光発電協調制御型風力発電システムの概要

11. 国内外系統安定化ソリューションの実証

11.オンライン最適化の有用性 オンライン最適化の有用性

再生可能エネルギー導入の円滑化や頻発する自然災害への対応,あるいは社会コスト低減に資する市場原理の導入など,電力システムを柔軟かつ強靭(じん)化するソリューションへの期待が高まっている。さらに高齢化による労働人口の減少により,電力システムの計画・運用・保守の多面的な管理システムの高機能化が要求されている。

多様な要求に応える端緒として,基盤技術であるオンライン最適化の有用性を分析した。特に,最適電圧プロファイル実現による送電損失低減などのベネフィットを獲得するシステムの提案は,合弁子会社のTHEパワーグリッドソリューション株式会社が中心となりNEDO(New Energy and Technology Development Organization:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)事業(P11013)によるフィージビリティスタディを進めている。

さらには,最適化などの高機能演算技術をシステムとして活用するために,配電システムの高機能化や蓄電池マネジメントシステムの実証など,直面する諸課題に複眼的な視点でチャレンジし,さらなる有用なソリューションの提供をめざしている。

12. スロベニアにおける配電会社向けクラウド型統合配電管理システム(DMS)の実証

スロベニア共和国では,温室効果ガスの排出削減を盛り込んだEU(European Union)指令に基づき,2020年までに全エネルギーの25%を再生可能エネルギーにし,エネルギー効率を20%改善する目標を掲げる一方,配電会社の設備は老朽化が進みつつあり,今後配電系統に関わるインフラへの設備投資の増加と,再生可能エネルギーの大量導入による系統への影響が想定され,配電系統の高度な管理技術が必要となる。

日立は,これを解決するために,NEDOと共同で,高度な配電管理技術とICT(Information and Communication Technology)を活用し,再生可能エネルギーの導入対策などに効果のある,配電系統の監視や電圧調整を最小限の設備投資で実現できるクラウド型統合DMS(Distribution Management System)をスロベニアに導入し,2018年10月に運用を開始した。今後,有用性の検証をしていく。

12.クラウド型統合DMSの導入事例 クラウド型統合DMSの導入事例

13. 伊豆大島におけるハイブリッド大規模蓄電システムの実証

13.伊豆大島に設置されたLL-G型鉛蓄電池設備 伊豆大島に設置されたLL-G型鉛蓄電池設備

再生可能エネルギーの導入を促進し,島嶼(しょ)部の課題の一つである発電燃料費の削減に貢献するために,日立は問題解決につながるソリューションの実現に向けて,安全かつ低コストな蓄電システムとして,鉛蓄電池とリチウムイオンキャパシタを組み合わせたハイブリッド型の蓄電システムの開発・実用化に取り組んでいる。

NEDOの支援により始まった伊豆大島での実証は,2015年より東京電力パワーグリッド株式会社との共同研究というフェーズに入っている。リチウムイオンキャパシタで再生可能エネルギーの短時間変動を抑制し,朝昼夜の長時間の変動を鉛蓄電池で緩和,自然変動電源による需給バランスの乱れを蓄電システムによって吸収する制御技術を検証し,運用ノウハウを蓄積してきた。

今後も島嶼部のマイクログリッドの電力安定化に貢献するため,実用化に向けて取り組んでいく。

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