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顧客協創

研究開発

1. Society 5.0をリードするビジョンデザイン

日立は,生活者視点の課題提起と,それらを解決する技術とサービスの例示によって,ステークホルダーと共にSociety 5.0の具体的な姿を探索するビジョンデザイン※1)研究を進めている。これまでデジタル社会における新しい信頼の形を示した「Future Trust」や,地域のつながりを強くする街づくりを描いたビジョン「Fare Fund」などを,Webやイベントで社会に発信した。

ビジョン起点の社会イノベーション実現には,課題解決に向けたエコシステム構築が重要である。そのため,新たに日立東大ラボなど産学官であるべき社会を議論する場づくりと,地域のステークホルダーと社会実装を進めるフューチャーリビングラボ※2)に取り組み始めた。

今後はビジョン策定・発信と社会実装による事業構想を進めるだけでなく,国際機関への提言を通してSociety 5.0の実現に貢献していく。

※1)
ビジョンデザイン
※2)
実際に人々が生活する街の中で社会実験を重ねる,ユーザーや市民参加型の協創活動であるリビングラボを未来志向で行うこと。

1.ビジョンデザインのプロセスビジョンデザインのプロセス

2. AI・デジタル活用によるNEXPERIENCEの進化

2.AI・デジタル活用によるNEXPERIENCEの進化AI・デジタル活用によるNEXPERIENCEの進化

日立は,顧客協創方法論NEXPERIENCEを開発し,顧客との新サービス・新事業の協創に取り組んできた。NEXPERIENCEは,課題分析からアイデア創出,価値評価に至る一連のプロセスを支援する手法・ツールから成り,700件を超える適用実績がある。

近年,社会の多様化やデジタル革命の進展に伴い,社会や企業の課題は複雑になるとともに,イノベーティブなアイデアの創生が重要になっている。そのため,AI(Artificial Intelligence)・デジタル技術を活用し,以下の手法強化を進めている。

  1. 複雑な現場課題の把握のために,専門家による遠隔調査を促進するリモートエスノグラフィツール
  2. AIによりワークショップの議論を音声解析し,日立の幅広い業種の課題解決事例をレコメンドするアイデア発想支援ツール
  3. デジタルデータを用いて都市の状況を共有し,解決策の価値をクイックに検証する社会シミュレータ

今後もNEXPERIENCEを進化させ,社会や顧客の課題解決に向けたイノベーション創生に貢献していく。

3. 遠隔資産のライフサイクル管理

3.遠隔資産管理のマイクロアプリケーション遠隔資産管理のマイクロアプリケーション

石油・ガス,エネルギー,輸送などの資産集約型産業では,資産を自社で所有する資産中心のビジネス戦略から,レンタル契約や完全請負契約を取り入れたサービス契約型のビジネスモデルに変わりつつある。それには資産管理ソリューション戦略を変えるとともに,機器中心のポイントソリューションから,オペレーション管理やサービス/ポートフォリオ管理にまで及ぶ統合型の資産ライフサイクル管理ソリューションに移行する必要がある。そして,この統合型資産ライフサイクル管理ソリューションは,以下の3つの主要課題へ対応することが求められる。

  1. 異種資産の混在と大規模な情報サイロに起因するオペレーション効率の低さ
  2. 広大な遠隔地一帯に設置された資産の経年劣化による保守費用の増加
  3. 安全性,セキュリティ,持続可能性に関する規制の圧力

これに対し日立の提供するソリューションは,信頼性の高いシステムを中心とした新しい計測手法とアナリティクスを提供し,当該産業がプロダクト中心のビジネスモデルからサービスを含んだビジネスモデルへと移行する動きに対応するものである。

これまで天然ガスの圧縮業務を請け負う大手サービス企業に対し,統合型資産ライフサイクル管理のコンセプト実証システムを開発し,複数のリモートコンプレッサスキッドにおいて主な圧縮オペレーションのモニタリングと分析を実施した。

現在,機器・プロセス・技術者間のインタラクションを取り込んだ,新しいクラスの主要パフォーマンス指標(KPI:Key Performance Indicator)の定義と開発を中心に研究を進めている。

4. 製造業のスマート化を顧客協創で実現する広州Open Automation Lab.

4.広州OAL広州OAL

日立(中国)研究開発有限公司が立ち上げた広州OAL(Open Automation Lab.)は,日立電梯(中国)有限公司科学城内にあり,事業部敷地内に初めて設置したR&D(Research and Development)部門の協創空間である。2017年12月2日に開所し,2018年9月末時点で社内外から300名以上が来所している。

広州OALは,(1)デジタルコンテンツを活用して協創を促進するディスカッションエリア,(2)デモ製造ラインを用いてOT(Operational Technology)技術を見える化する実機デモエリア,(3)両エリアのデータを集約しOT×IT技術を分かりやすく伝えるコントロールエリアで構成されている。

中国市場では,顧客に対して「日立に何ができるか」を,デモなどの「具体的な形」で提示し,素早くプロトタイプを作り,顧客と協創しながらブラッシュアップするアプローチが望まれる。そのため,ディスカッションエリアのテレビ会議システムとデモコンテンツ,実機ラインデモにより日立の技術や商材を見える化できる環境を備えた。

現在Lumadaソリューションの広州OALへの導入を進めており,世界各拠点のOALや協創空間と連携しながらスピード感を持って中国市場でイノベーションを起こしていく。

5. ビルエネルギー最適化ソリューション

5.エキスパートレコメンデーションエンジンの概要エキスパートレコメンデーションエンジンの概要

東南アジアの国々ではその高温多湿な熱帯性気候のために,ビルのエネルギー消費が非常に大きく,ビル内の人々の快適性を保つための空調のエネルギー消費の割合が特に大きい。快適性を維持しつつビルのエネルギー消費を削減することが,この地域における持続可能な都市開発と生活の質の維持のための社会的課題となっている。

シンガポール建築建設庁(BCA:Building and Construction Authority, Singapore)は,2030年までにシンガポール内のビルの8割を低エネルギー消費のビルにするという目標を設定し,この目標に向けて日立と共に国全体のビルエネルギー消費分析基盤を開発することを決定した。このBCAとの顧客協創を通じて,日立はビッグデータ解析と人工知能を活用したエキスパートレコメンデーションソリューションを開発している。このソリューションは,経験の共有,ベストプラクティス,そしてビル更改計画や省エネルギー予測,省エネルギー技術適用時のコスト予測などのレコメンデーションを提供する。

この特徴的な基盤を活用して,BCAとのコラボレーションにより省エネルギー技術の適用を加速する先進的サービスを創出していく。

6. 欧州におけるフリート管理の顧客協創

6.AIキャプテンの概要AIキャプテンの概要

日立は,AIやML(Machine Learning)などの先進的な解析手法を用い,欧州の顧客と共に「経費削減のためのフリート/アセット管理」の協創プロジェクトを進めている。その代表的な取り組みとして,日立とStena Line社(海運会社)による「AIキャプテン」の協創プロジェクトが挙げられる。

日立が開発したAIベースのソリューションは,複雑でダイナミックな環境条件(潮流,水深など)を考慮に入れつつ,燃料効率が最も高くなるように船舶運航の指標(速度,推力など)を推奨する。本ソリューションはすでに2隻の船舶で船員の運行支援を開始している。その結果,AIキャプテンにより2〜4%の燃料を削減可能であるとの見込みが得られており,さらに2019年1月にStena Line社の38隻の船舶で検証する計画になっている。

これと並行して,日立は複数の顧客と共に,革新的なAI/ML技術を適用し,フリートや機械部品などのRUL(Remaining Useful Life)の予知や,燃料需要や発電計画の予測,運用効率化によるコスト削減などに関連した協創プロジェクトを推進している。

7. デザイン思考による保険×デジタルのイノベーション創生

7.保険×日立のデジタル技術によるイノベーション創生保険×日立のデジタル技術によるイノベーション創生

IoT(Internet of Things)時代の到来によって,保険業界ではイノベーションの機会が拡大している。そこでは,従来の「統計量」 に基づくリスク算出に加えて,センサーで取得した「リアルタイムの個別データ」の活用が可能となり,革新的な新サービスが次々と生まれつつある。

日立は,イノベーションを創生する顧客協創方法論NEXPERIENCEで,保険会社との協創を推進している。この方法論により,デザイン思考に基づく探索型のアプローチで,保険と日立のデジタル技術を掛け合わせた「新結合」の創生に挑戦している。具体的には,保険と日立のリスク予測技術を組み合わせて,事故や疾病などの予兆を把握して予防サービスを提供する「Proactive型保険」のコンセプトを創出し,次世代の医療保険や損害保険の協創を進めている。

今後は,保険会社と健康増進産業などをつなぐ「リスク予防デジタルプラットフォーム」を構築してエコシステムを広げるとともに,医療費抑制などの社会課題の解決に挑戦する。

8. ブロックチェーンを活用したサプライチェーンファイナンス

サプライチェーンの構造は,最終製品メーカーを頂点とした従来のピラミッド型から,市場のニーズによって柔軟に組み換わる水平型への転換が進行している。このような中,オープンかつセキュアな取引を実現するブロックチェーン技術を活用することにより,トレーサビリティの確保や中小企業の取引活性化といったサプライチェーン領域における社会課題を解決することが期待されている。

日立は,サプライチェーンにおける商流・金流の情報をブロックチェーン上でセキュアに共有することにより,調達・経理業務の抜本的な効率化や,生産・販売計画の意思決定迅速化を実現するプロトタイプを開発し,自社サプライチェーンでの実証を進めている。また,これらの情報をリアルタイムなモニタリング情報として活用することにより,中小企業の資金需要に適切かつ迅速に対応する新たなファイナンスサービスの開発を,銀行との協創を通じて進めている。

今後は,これらのサービスの社会実装を推進し,産業分野における社会課題の解決に寄与するプラットフォームサービスの実現をめざす。

8.サプライチェーンファイナンスサプライチェーンファイナンス

9. ブロックチェーンベースの金融公証サービス

9.ブロックチェーンベースの金融公証サービスブロックチェーンベースの金融公証サービス

公証サービスは,数百年にわたりデータ,特定の事実,あるいは法律関係の独立した立証を行ってきたが,公証はしばしば,契約署名や記録物の公な証明として用いられ,私的個人や企業,政府が真実を互いに共有できるよう保証している。デジタル時代に突入した現代において,この公証という概念そのものは形骸化してしまったようにも思える。とはいえ,金融機関や民間企業にとって,制度や法令などの順守がこれほど重要で複雑化したことは未だかつてなかったことも事実である。

日立はブロックチェーン技術にその解決の糸口を見い出し,デジタル公証サービスの構築と新しいビジネスの創出をめざしている。

Hyperledgerなどのブロックチェーン技術は,データセットとそのデータのハッシュの両者間を結びつけ,時を経てもデータ変更がなされていないことを証明するために役立つ。あるデータがそのオリジナルデータと暗号学的ハッシュを別個に備えているとすれば,いつでも,データとそのデータのハッシュ処理の出力を比較し,データが変更されていないことを数学的に示すことができる。将来のデータのハッシュを計算することは,自動的に過去のデータのハッシュ値を取り入れ,データを長期に渡ってリンクすることとなる。

ブロックチェーンシステムのもう一つの特徴は,分散管理が可能なことである。データの保全を確実にするために,データの証明となるハッシュは複数のノードやシステムのインスタンスに即座にコピーされる。これらのノードそれぞれを異なる企業が管理できる。こういったシステムを備えるネットワークでは,さまざまな企業のデータを保管することができ,このネットワークはすべての証明を確実に保全することに役立つ。これらのハッシュはデータの証明のみを行うものであるため,デジタル公証サービスは機密であるオリジナルデータを実際に所持せずともこういった「証明」のコピーを保管することができる。

金融イノベーションラボでは,こういったシステムの開発と,独立した監査役や調整役としてこれらの公証のようなサービスを運営することの両方に,ビジネスの機会があると考えている。従来の公証サービスとは異なり,取引の詳細を現実に目にする必要なく,その取引を証明することが可能となるので,このシステムの利用者は,高度な機密性と安全性をもってデータを保持することができる。

(日立アメリカ社)

10. 置き去り荷物対策ソリューション

10.人物の外見的特徴に着目した検索・追跡画面人物の外見的特徴に着目した検索・追跡画面

近年,空港・鉄道などでは爆発物などによるテロの懸念から,施設内に置き去られた荷物への対処が問題となっている。場合によっては施設閉鎖,避難が必要なため,置き去り荷物の即時検知,置き去った人物の確保が求められている。従来,これらの運用は保安職員が人手で行っていたため,監視不行き届きやコスト増大が課題となっていた。

日立は2017年から欧州の空港と共に,AIによる映像解析技術を活用したパブリックセキュリティの実現をめざして実証実験(PoC:Proof of Concept)を進めてきた。この中で空港の監視カメラ映像を使った置き去り物の自動検知,および人物の外見的特徴に着目した検索・追跡技術とを統合し,空港のセキュリティ運用のデジタライゼーションを提案してきた。

実際の空港でインシデントを再現した実験では,80%を超える自動検知・人物追跡成功率を達成し,顧客より高い評価を得た。顔認証などの個人識別に拠らない本ソリューションは,天井設置型カメラのような顔を正面から写すことが困難な環境や,プライバシーの侵害リスクを伴う公共エリアに特に適している。また,監視カメラなどの既存の設備を活用して,空港全域の監視および対象人物の追跡を低コストかつ迅速に実現できる。本ソリューションは,乗り遅れ乗客,迷子,紛失物の捜索などにも応用が期待される。

11. 健康寿命延伸に貢献する中国健康養老ソリューション

11.中国高齢者向けソリューション全体像中国高齢者向けソリューション全体像

急速な高齢化が進む中国では,養老介護体制の整備が急務となっている。特に「失能(寝たきり)・失智(認知症)」への対応は大きな課題となっている。日立は「高齢者の自立支援を促し,健康寿命を延ばす」というコンセプトのもと,専門介護人材不足に悩む中国養老介護サービス事業者に向けたソリューションの提供をめざしている。

日立グループが日本国内で有する高齢者向け医療・介護サービスの提供経験やノウハウを基に,さらに,光トポグラフィ技術,磁気センサー型指タッピング装置,ステレオカメラなどの先端計測技術やデータ分析技術などの各種IoT技術を活用することで,事業者のサービス品質と効率を向上させ,高齢者の失能・失智予防,悪化防止に寄与するDCM(Digital Care Management)ソリューションの開発を進めている。これまでに,高齢者施設での実証実験や展示会出展などを通じて,中国市場での期待の高さを確認できた。

今後は早期事業化に向けた取り組みを進め,中国における高齢者の生活品質向上と社会保障費低減に貢献していく。

12. インドにおける教育QoLの向上「Digital India」

12.NEXPERIENCEワークショップによるアイデア創生NEXPERIENCEワークショップによるアイデア創生

「Digital India」政策により,行政サービスを電子化する「e-Governance」や教育関連サービスを電子化する「e-Education」など,インドでは急速なデジタル化が進んでいる。

日立インド社と日立コンサルティング社は,顧客協創方法論「NEXPERIENCE」を適用したワークショップを通じて,「Digital India」政策に貢献するソリューションの創生に取り組んできた。同ワークショップでは先進国と比較した場合の教育QoL(Quality of Life)という社会課題に着目し,保護者フィードバックと連動した教師の評価サービスや,安全な登下校を実現する生徒見守り型送迎サービスなどのソリューションアイデアを創生した。

今後は,ソリューションアイデアのプロトタイピング,現地顧客とのPoC活動を進め,社会実装を進める予定である。

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