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1. Society 5.0を支える電力システムの実現に向けて

Society 5.0における将来のエネルギーシステムについて提言を進めている。2016年6月には,産学協創の新たなスキームとして東京大学と「日立東大ラボ」を設置した。このラボを通じて,再エネ(再生可能エネルギー)の導入拡大,分散化,デジタル化,電化・電動化などを取り込んだ新しいシステムへの移行が不可避的に進んでいく状況において,技術的課題や政策・制度的課題を抽出し,関係者と問題意識の共有を図りながら,提言として公開している※)

経済・社会・産業の構造が急速に変化する中で,さまざまなインフラと互いに連携・協調し,地域社会に適したエネルギーシステムの構築が求められている。一方,再エネ導入による地域的偏在や時間的変動のため,一つの地域社会でエネルギー需給や価値のやり取りが閉じることは難しい。基幹システムが複数の地域社会をつなぎ,システム全体を調整する役割を果たす。地域社会のエネルギーシステムと基幹システムとの役割は画一的でなくなり,共存を前提として再構築していく。

※)
日立東大ラボ「 Society5.0を支える電力システムの実現に向けて」,(2018年4月18日)

1.Society 5.0を支えるエネルギーシステム全体像Society 5.0を支えるエネルギーシステム全体像

2. 地域社会と基幹システムのエネルギーシステム評価プラットフォーム

地域社会と基幹システムの役割を具現化するために,電力を中心に社会全体のエネルギーシステムを分析・評価できるプラットフォームの整備を進めている。

これまでに,再エネ導入拡大に向けた各種施策を技術・便益の観点で評価することを目的とし,広域安定度シミュレータを開発した。これにより再エネの大量導入時の需給バランス確保に加え,系統各地の故障を想定した過渡安定性を考慮して,再エネ導入限界や出力抑制必要量の検討を可能とした。

今後,さらに配電や需要家に加え,モビリティシステムとの連携など,エネルギー産業以外とのクロスインダストリーへと進化し,CPS(Cyber-physical System)として評価環境を構築・共有していく。

このようにSociety 5.0の世界を支えるエネルギーシステムを評価できる環境を構築し,多くのステークホルダーと新たな世界像を議論してソリューションを作り出すプラットフォームとしていく。

2.エネルギーシステム評価プラットフォームの進化エネルギーシステム評価プラットフォームの進化

3. 次世代の原子力発電システム

豊富な実績を有するBWR(Boiling Water Reactor:沸騰水型軽水炉)をベースとして,使用済み燃料の環境負荷低減と経済性向上の社会ニーズに応える炉の開発を進めている。

RBWR(Resource-renewable BWR:資源再利用型BWR)は資源有効利用と使用済み燃料の環境負荷低減を図る炉である。燃料棒を密に配置するとともに,原子炉内で冷却水が沸騰するBWRの特長を活用し,中性子の冷却水との衝突による減速を抑制してエネルギーを従来BWRよりも高める。これにより,使用済み燃料に含まれ,放射能が長期間減衰しない要因となっているプルトニウムやマイナーアクチニドなどの超ウラン元素を燃料として再利用することを可能とする。

BWRX-300は,米国GE日立ニュークリア・エナジー社と日立GEニュークリア・エナジー株式会社が共同で開発を進める出力30万kWの小型モジュール炉である。これまでBWRはABWR(Advanced BWR:改良型BWR)を例とするように,スケールメリットを追求し大型化してきたが,近年,系統制約や初期投資リスク低減のため小型炉のニーズが高まっている。BWRX-300は蒸気を直接タービン発電機に送るBWRの特長を生かし,原子炉設計の単純化と発電所建設や運転・保守のコスト低減により,小型化と出力当たりの発電コスト低減の両立をめざしている。

日立は主に,過去の小型炉開発の経験を生かして,モジュール工法最適化およびシステム解析技術によるプラント小型化で建設費低減に寄与している。

3.社会ニーズに応じた沸騰水型軽水炉の発展社会ニーズに応じた沸騰水型軽水炉の発展

4. 後流影響を考慮した風車制御によるウィンドファームの発電電力向上制御

4.発電電力向上制御のシミュレーション結果と実測結果の一例発電電力向上制御のシミュレーション結果と実測結果の一例

風力発電の導入拡大に伴う適地の減少や,固定買取価格の見直しなどを受け,WF(Wind Farm)の発電電力の向上が求められている。

WFの発電電力を低下させる要因の一つとして,隣接する風車の風下側において,後流(ウェイク)により風速が低下する事象がある。日立では,WFの各風車を協調させて発電電力を制御することでウェイクの影響を低減し,WF全体で合計した発電電力を増加させる発電電力向上制御を提案している。

2018年4月より中部電力株式会社のWFにてダウンウィンド型の2 MW風車3機を用いた提案制御の実証を開始した。4月から7月に定格発電出力,ロータ回転速度制限による制御効果を検証した結果,ウェイク影響のある条件で,過去データに対して4.1%の発電電力量の向上効果が得られた。これは年間発電電力量に換算すると約1%の向上効果に相当する。

今後,実測を継続し,出力制限パラメータと発電電力向上効果の関係を検証する。

5. HAF/EDCにより電力値を高速に計算/更新するスマートメーター運用管理システム

電力業界において,スマートメーターやセンサーのデータをリアルタイムに収集/分析し,需要予測や保守サービスなどに活用する動きが加速している。こうした背景のもと,日立はイベント駆動型の分散処理実行可能なプラットフォームHAF/EDC( Hitachi Application Framework/Event Driven Computing)※)を用い,スマートメーターの電力値を高速に収集/計算/格納する運用管理システムを開発した。

本件では,ヘッドエンドシステム経由でスマートメーター群から30分ごとに到着する数千万レコードの電力値データを,短時間で過去データと突き合わせて差分計算する必要があり,データレイクの参照/格納処理がボトルネックになりうる。加えて,ヘッドエンドシステムへの迅速応答やデータロスト回避が求められる。

そこで日立は,HAF/EDC上で参照/格納処理を分散実行しつつ,電力値受信から応答まで同期実行が必須な処理と非同期で構わない処理に振り分け,これらの処理を柔軟につなぐ同期/非同期処理多段化技術を開発した。この技術により,汎用物理サーバ5台で要求性能を満たしつつ,迅速応答とデータロスト回避の両立も実現した。

今後もHAF/EDCをベースに,大量のIoT(Internet of Things)データを高速・高可用に処理する技術を磨き,さまざまな業界のデータ活用・価値化の取り組みに貢献していく。

※)
イベント駆動型システム開発基盤・アプリケーション実行基盤

5.スマートメーター電力値の更新/計算における構成スマートメーター電力値の更新/計算における構成

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