食品,医薬品,消費財,工業製品の輸送はすべて,車両,航空機,貨物船などのフリートアセットによる効率的な輸送に依存しており,フリートアセットの管理状態が輸送に対して大きな影響を与える。
日立は,長年にわたりさまざまな顧客および関係するステークホルダーと協力してきた経験から,フリートアセットを良好な状態に維持して安全性を高め,ダウンタイムをなくすことが運送業における最も重要な課題であると学んだ。これには,潜在的な欠陥を特定し,効果的なメンテナンスプロセスによってアセットの状態悪化の影響を低減することがダウンタイムの低減には不可欠である。欠陥を効率的に発見し,メンテナンスプロセスを合理化するカギとなるのがアセットの検査であるが,検査プロセスには適切なデータ収集が必要であり,データに基づく状態評価の質がメンテナンス計画の効率化,修理時間,コストの低減に大きく影響する。現在の運送業では検査のほとんどがマニュアルプロセスであり,作業者が目視検査でアセットの欠陥を特定している。しかし,熟練労働者不足や,主観的な検査,手順に一貫性がないといった課題を現在のプロセスは抱えている。
このような課題に対して,日立アメリカ社研究開発部門は,AI,機械学習,およびコンピュータビジョンを活用した運送分野における外観検査システムを開発している。このシステムの中核となる技術は以下のとおりである。
- 検査計画作成サービス
検査の種類,アセットの種類,検出された欠陥に応じて作業者をガイドする検査計画を自動で作成する。
- 検査ライブラリ
検査の種類やアセットの種類に応じて,一貫性があり自動的かつスケーラブルな検査を可能にするための計画ライブラリである。
- 自動検査
検査計画作成サービスによって生成された計画に基づいて,ロボットやドローンが検査プロセスを実行する。
- 欠陥分析
マルチレベルで欠陥検出を行うAIベースの分析システムが分析精度を高め,誤検出を削減する。
- 車両欠陥ライブラリ
対象アセットおよびその欠陥に関連する画像を含むライブラリに基づき,AI技術で欠陥とその場所を特定する。
日立はこれらの技術をエンドツーエンドの外観検査システムに統合し,高い精度と一貫性のある,繰り返し利用可能なプロセスを備えた欠陥検出を実現している。このシステムは,ロボット,作業者,フリートに搭載した固定カメラ,ドローンから体系的にデータを収集する新しい技術を取り入れ,AIを使用して欠陥を分析・特定し,デザイン思考に基づいて,システムの検査結果を意思決定者に伝える。
日立は,AIベースの修理提案エンジン,部品在庫,ERP(Enterprise Resource Planning)システムなど,フリートのメンテナンスと修理に関係するその他のソリューションにこのシステムを統合し,エンドツーエンドの検査および修理サービスシステムを開発すべく取り組んでいる。
(日立アメリカ社)