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1. Society 5.0を支える電力システムの評価プラットフォーム

Society 5.0の実現に向けて,日立東大ラボでは将来の電力システムについて提言を発信している。2018年4月に提言書第1版を公開して以降,脱炭素化に向けて各所で次世代エネルギーシステムに関する議論が活性化する中,日立東大ラボでは,以下の二つのテーマについて継続して検討し,提言書第2版として公開した※)

  1. 社会全体のエネルギーシステムを評価するプラットフォームおよびデータの概念設計
  2. 次世代エネルギーシステムのシナリオ検討

2050年以降を見据えたエネルギーシステムの中長期ビジョンを策定し,その実現に向けて制度・政策について複数の将来シナリオを検討している。技術開発は不確実性が高く,多様な技術的選択肢を準備する必要があるため,さまざまなステークホルダーが活用できる定量的・客観的な共通の評価プラットフォームが必要となる。産学官が協力して,多様なユースケースを想定・抽出し,解析ツールと標準データの要求仕様を具体化するとともに,情報・データ共有の公開・開示範囲を議論している。

※)
日立東大ラボ「Society5.0を支える電力システムの実現に向けて」第2版(2019年4月17日)

[1]Society 5.0を支えるエネルギーシステム全体像[1]Society 5.0を支えるエネルギーシステム全体像

2. 原子力O&Mソリューション

原子力プラントの安全性向上を目的に,プラントの健全性の常時監視を強化するための健全性可視化システムを開発している。

健全性を可視化する従来の技術として,プラント稼働データの相関性変化から機器の状態を検知する予兆検知技術が提案されているが,状態変化が発生した機器やその原因を推定する機能までは有していなかった。そこで,日立が原子力プラントメーカーとして培った知見やノウハウ,基礎研究の成果を基に,稼働データの変化が機器の事象に及ぼす因果関係をまとめた物理モデルを開発した。従来の予兆検知技術に本モデルを組み込むことにより,予兆検知から対象機器,要因の推定まで一気通貫に分析できる。これにより,機器が正常に運転していることが可視化され,いつもと違う事象が発生した場合でも,次の対応を判断する情報を示す新たなO&M(Operation and Maintenance)ソリューションを提供できる。

現在は本技術の有効性の検証を進めているが,今後も継続して物理モデルを活用した健全性診断技術の高度化に取り組むことで,原子力プラントの一層の安全性向上に貢献するとともに,プラントの発電効率向上や保全の効率向上にも展開していく。

[2]原子力プラントの安全性向上のための健全性可視化システム[2]原子力プラントの安全性向上のための健全性可視化システム

3. 原子炉直下の溶融燃料を調査する遠隔計測技術

福島第一原子力発電所の廃止措置に向けた取り組みの一つとして,日立製作所と日立GEニュークリア・エナジー株式会社は共同で,原子炉直下の溶融燃料を調査する遠隔計測技術の開発を進めている。

原子炉直下で溶融燃料を調査するには,高放射線・狭隘(あい)環境下でも長時間安定して遠隔で動作できる放射線検出器が必要である。そこで,原子炉格納容器内調査ロボットPMORPH※1)に搭載可能であり,放射線照射で発光する結晶と光ファイバを備えた小型放射線検出器を開発した。センサーユニットに搭載した直径2 mmのガーネット結晶の発光を検知することで,従来のシリコン半導体方式と比べて,1万倍の放射線耐性を実現した。

2017年3月にこの遠隔計測技術を福島第一原子力発電所1号機の原子炉格納容器内調査に適用し,放射線量率と映像の取得に成功した※2)。今後も溶融燃料調査へ適用し,福島復興に貢献する。

※1)
PCV(原子炉格納容器)とMetamorphose(形態変化)から作った造語。
※2)
資源エネルギー庁の廃炉・汚染水対策事業費補助金にて国際廃炉研究開発機構の業務として開発。

[3]PMORPHに搭載した小型放射線検出器[3]PMORPHに搭載した小型放射線検出器

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