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1. 欧州鉄道車両における車両デザインと解析主導設計

欧州鉄道市場向けの車両開発において,エクステリアデザインは,欧州向け標準車両(ATシリーズ)に共通した造形コンセプトを適用することで日立の車両アイデンティティを表現しつつ,鉄道事業者のブランディングに合わせて,エクステリアのグラフィック展開を容易とするデザインとしている。車体形状をデザインするうえでは,流体シミュレーションによって空力性能(低走行抵抗,低空力騒音)の向上を図っている。さらに,欧州で適用される衝突安全性の規格に適合するために開発した衝撃吸収構造を,先頭形状の滑らかなフォルムとよく親和させるように,性能を維持したまま小型化した。

インテリアは,鉄道事業者の要望に合わせて,レイアウト,シート,天井照明や荷棚などのデザインを容易に変更でき,乗客視点での評価が可能なコンフィグレータ/VR(Virtual Reality)システムを開発している。また,乗客の快適な客室空間を提供するため,熱流体シミュレーションを用いた解析主導設計により,空調やヒーターを最適化している。

英国向け高速鉄道車両Class800に関する意匠(意匠登録第1486294号)は,令和元年度(2019年度)全国発明表彰において,意匠では史上初となる「恩賜発明賞」を受賞した。

[1]欧州向け標準車両のエクステリアデザイン[1]欧州向け標準車両のエクステリアデザイン

2. 旅客にシームレスな移動を提供するデジタルチケッティングソリューション

鉄道やバスなど複数の交通機関にまたがる移動において,旅客にシームレスな移動を提供するMaaS(Mobility as a Service)が注目されている。日立は,無線通信を活用して旅客の移動経路を自動的に検出し,キャッシュレスで運賃を徴収するソリューションを開発した。

本ソリューションでは,旅客の移動経路を正確に推定することが重要である。日立は,車両や駅などに設置される安価な通信装置から発信される信号情報を旅客の持つスマートフォンで受信し,受信データをリアルタイムに解析することで,旅客の位置を正確に推定する技術を開発した。この技術では,列車や駅構内の構造などに起因する複雑な通信環境下においても安定して旅客の位置を認識することができる。なお,本技術の実証実験をイタリア北部の都市トレントにおいて推進中である。

今回開発したソリューションを適用することで,旅客はチケットの事前購入や出改札手続きをすることなく移動することができる。今後は,本ソリューションをグローバルに展開し,公共交通機関のさらなる利便性向上に貢献していく。

[2]デジタルチケッティングソリューションの概念[2]デジタルチケッティングソリューションの概念

3. 鉄道インバータ向け高温対応SiCモジュール

SiC適用インバータに対応した,高温動作を可能にする焼結銅接合技術を開発している。この技術により,175℃以上の高温動作を可能にし,パワーモジュールの出力密度を向上することでインバータの小型化を実現する。

焼結銅接合技術は,銅微粒子を半導体チップの接合材料として用いる。銅微粒子は互いに焼結することにより焼結銅接合層を形成する。銅は,従来のはんだや銀に比べ,破壊しにくさの指標である0.2%耐力が高く,175℃以上の高温使用においても破壊寿命が長くなる。また,焼結銅は銅やニッケルなどの非貴金属に対する接合性が高く,接合相手電極に金や銀のめっき膜を必要としないため,コストを抑えることができる。

焼結銅接合技術を適用したフルSiCパワーモジュール(3.3 kV,1,000 A)の出力密度は,従来技術より25%向上し,世界最高クラスの47 kVA/cm2※)となる。今後は,本技術を自動車向けなどの中耐圧にも展開していく。

※)
2019年5月8日現在,日立製作所調べ。

[3]焼結銅接合技術による寿命向上(左)(中),3.3 kV/1,000 AフルSiCパワーモジュール(右)[3]焼結銅接合技術による寿命向上(左)(中),3.3 kV/1,000 AフルSiCパワーモジュール(右)

4. リニューアルエレベーター向けモータ小型化技術

設置後20年以上が経過したエレベーターのリニューアル需要が高まる中,エレベーターの安全性・快適性・メンテナンス品質の向上を実現するリニューアルメンテナンスメニューを継続して拡充している。 工事期間短縮のニーズが高い顧客向けに,既存のエレベーターのまま制御盤や巻上機などの主要機器を入れ替えるリニューアルメニューがあるが,重量や寸法の制約により新しい巻上機を機械室に納められないケースがあった。

このような背景から,今回,軽量かつ小型のギアレス巻上機を開発した。巻上機向けモータの小型化では,単位体積当たりの発熱量が増大するために,冷却性能向上が課題である。そこで,冷却性能に密接に関係する巻上機周辺の空気の流れと,構造での熱の伝達や放熱を考慮する,モータ内部温度を高精度に予測可能な熱解析技術を開発した。また,本技術と電磁気解析を連携して構造の適正化を図り,小型で軽量な巻上機を製品化した。

[4]リニューアル用巻上機の小型化技術[4]リニューアル用巻上機の小型化技術

5. 中国アーバンエリアにおけるビルサービス快適化ソリューション

急激な都市開発が進む中国は高齢化の問題に直面しており,労働力不足と人件費の増加は都市サービスにとって大きな課題となっている。そのため,ビルの管理者にとって,安全性,利便性,高品質サービスを利用者に提供することがますます難しくなってきている。

2017年以降,日立(中国)研究開発有限公司はパートナーと共に,オフィスビル,ショッピングモール,住居用ビル,駐車場ビルの顧客を訪問し,新しい建物向けのスマート設備とサービスシナリオの迅速な開発を中心としたビルサービスのコンセプトGRACE(Gateway of Robots and Connected Environment)を検討してきた。

中国には,ビルサービス分野への参入をめざすビルサービスロボットのスタートアップは数多くあるが,エレベーター,セキュリティゲート,空調などのビル設備と十分に連携できないケースや,ビルサービスのビジネスに精通していないケースも多い。

GRACEの目標は,タスク割り当て,経路計画,設備管理,ビデオ分析,人と機械の協調,およびその他の技術を通じて,顧客のビル設備全体のマネジメントをサポートし,日立の新たなビルビジネスを創造するための導入事例を拡大することである。

2019年から,HELC[Hitachi Elevator (China) Co., Ltd.:(中国) 有限公司],HSCN[Hitachi Solutions (China) Co., Ltd.:日立解決方案(中国)有限公司],およびロボットのスタートアップとの合同研究を通じて,GRACEのプロトタイプを開発している。HELCショールームのGRACEのデモでは,新しいビルサービスを創造するための幅広い実験的環境を提供している。

[5]日立が推奨するソリューション[5]日立が推奨するソリューション

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