1. 粒子線治療向け新型可変エネルギー加速器
がんの放射線治療の一種である粒子線治療では,患部の形状と体表からの深さに合わせ,加速器がイオンビームを適切なエネルギーまで加速して照射する。日立では,高精度・高線量率の照射が可能であり,病院に容易に設置できる小型・低コストを実現する新型加速器VEMICを開発中である。
従来型加速器では,加速器としてビームのエネルギーとON/OFF制御が容易なシンクロトロン,または超伝導電磁石の採用により小型化が容易なサイクロトロンが採用されている。
従来型加速器の長所を兼備するVEMICでは,超伝導電磁石が励起する磁場内を,偏心軌道に沿ってビームが加速される。各エネルギーのビームが共通して通過する軌道集約領域の外に取り出しチャネルを設けることで,任意エネルギーのビームを高周波キッカーにより取り出し可能としている。
現在,理想的な電磁場条件において加速原理が確認されており,今後はハードウェアの試作試験を実施したうえで製品適用をめざす。