1. 放射性セシウム,ストロンチウム同時吸着材の開発と実用化
東京電力福島第一原子力発電所の事故により発生した汚染水には,高濃度の放射性セシウム(Cs)と放射性ストロンチウム(Sr)が含まれており,周辺の放射線量状況,万一の漏洩,飛散のリスク低減のため早期の除去処理が望まれた。事故当初,放射性Csの除去装置のみ設置され放射性Srを含む汚染水はタンクに貯蔵されていたが,既存設備を活用して放射性Srも除去することをめざしてCsとSrの同時吸着材を開発した。
従来はCs用吸着材として知られていたケイチタン酸塩化合物にイオン交換性能を向上する化学処理を施すことで,Srの同時吸着を可能とした。本吸着材は,従来の高性能Cs吸着材や高性能Sr吸着材と同等の吸着性能を有し,放射性のCsとSrを選択的に同時除去できる。さらに,吸着材で処理する汚染水の性状(pH)を制御し,CsとSrの吸着性能を長期に維持する技術を開発した。
本吸着材は現在,福島第一原子力発電所において汚染水の処理設備や,発電所建屋周辺の地下水を処理する設備で採用されており,リスクの低減や新たな汚染水の発生抑制に貢献している。
本技術は,第52回(令和元年度)市村賞において,市村産業賞貢献賞を受賞した。