1. 充電時間を短縮し,ドライバーのQoLを向上するインバータ技術
脱炭素社会に向けて,多様化するエネルギー消費形態に応じた最適なシステムやキーデバイスを提供し,消費が増大する電気エネルギーの高効率な利活用が求められている。特に人やモノの移動におけるCO2排出量を削減するには,EV(Electric Vehicle)の普及に欠かせない航続距離の拡大,充電時間の短縮や小型高効率化を牽引する駆動システムや充電インフラが必要である。短時間充電と小型高出力化の両立には,同一時間でエネルギー移動量を増やすべく,EVのシステム電圧を従来の約400 Vから800 Vへ高めることが課題となっている。
これに対して,世界に先駆けて充電時間を50%に低減しながらも高出力パワー密度(94.3 kVA/L)を実現する800 V対応EV向けインバータを開発した。
薄膜化した絶縁層を多層化し,中間導体を絶縁層間に設けることで,各絶縁層に2分の1の電圧が安定的に印加され,電界集中していたエリアに加わる電圧も半減されることから,絶縁信頼性を向上しながらも薄い絶縁層による放熱性の向上が可能となり,従来比2倍の絶縁耐性と低熱抵抗化の両立を実現した。
開発した技術は2019年から世界各国の自動車メーカーへ提供されており,今後はさらなる脱炭素社会の拡大に向けて,モビリティやライフなどの分野に開発技術を展開していく。