日立評論

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1. 微細パターンの3D形状観察を実現するチルトSEM技術

情報化社会の進展に伴い,IoT(Internet of Things)や車載デバイスには高品質で信頼性の高いデバイス性能が必要になり,その製造現場では性能を左右する微細な三次元構造をインラインで検査・計測が可能な SEM(Scanning Electron Microscope:走査電子顕微鏡)が求められている。

三次元構造の可視化にはさまざまな角度で試料を観察することが有効であるが,インラインのウェーハを高分解能で傾斜観察するには,焦点距離の短縮とウェーハとの衝突回避を両立する対物レンズ構造が必要となる。さらに,傾斜時に視野が移動してしまうと,観察パターンの再探索が必要となる。

これらの課題に対して,最大55°までのウェーハ傾斜に対応し,傾斜時の視野移動を抑制する補正電極を搭載したコニカル型の短焦点対物レンズを開発した。この対物レンズを搭載したチルトSEM「CT1000」は,レジストパターンの側壁に形成された10 nm以下の微細な定在波振幅を観察でき,傾斜時の視野移動を1 μm以下(光学系起因)に低減することで観察パターンの見失い防止を実現した。

今後は,チルトSEMを用いた各種デバイスの三次元形状管理手法を確立し,デバイス性能の向上や開発期間の短縮,製品歩留まり向上に貢献する。

[1]開発した対物レンズ構造とレジストパターン観察例 [1]開発した対物レンズ構造とレジストパターン観察例

2. 生産プロセスの原価低減と環境負荷低減に貢献する高濃度浸炭処理の開発

一般に,建設機械や設備機械などでは歯車が駆動機構の要であり,その耐久性向上を目的にガス浸炭処理が施されている。現行の浸炭処理では,大型歯車の処理に数日を要するだけでなく,後処理が必須であり,生産性の向上が課題となっていた。そこで真空高濃度浸炭処理技術を開発した。

開発技術では,歯車表面からの炭素導入と内部での炭素拡散の促進で,浸炭処理時間を従来比で35%短縮する。さらに,歯車表面に硬質な炭化物を微細析出させることで耐久性を従来比で5倍向上させ,後処理工程のレス化が可能である。

また,従来の浸炭処理は一酸化炭素を利用するため生産時のCO2排出削減は困難であったが,開発技術では,反応時にCO2を発生しない方式を採用したことで生産時のCO2排出削減を実現し,環境負荷低減にも寄与する。

建設機械に加え,自動車,産業機器など日立グループにおけるプロダクト事業のモノづくり現場への活用が期待される。

[2]歯車の強化組織 [2]歯車の強化組織

3. サブミクロンオーダーの微粒子の粒度分布を高分解能で計測する光学計測技術

熟練者の経験に頼らず,生産性を最大化するモノづくりへの変革が求められている。日立は,セラミックスや医薬品などの粉体材料を用いた製造プロセスを対象に,IoTやAI(Artificial Intelligence)などを活用し,計測データに基づいたプロセス自動制御の実現をめざしている。そこで,製品品質を左右する材料の粒度分布の管理・制御に必要な,サブミクロンオーダーの微粒子に対応した高分解能計測技術を開発した。

1 μm以下の微粒子のサイズを粒子ごとに測定できる小角散乱光解析法を開発し,ミクロンオーダーの粒子のサイズを測定できる形状解析法と組み合わせて,材料中の一つひとつの粒子を認識できる高分解能な粒度分布の計測を可能とした。本技術を用いて,モード径が0.2 μm,0.4 μm,1.5 μmのアルミナ微粒子の混合材料を計測した結果,各モード径に対応してピーク分解された粒度分布を確認した。

今後は,本技術を活用して計測データに基づいたプロセス自動制御の実現をめざす。

[3]開発した高分解能計測技術の概要とアルミナ微粒子の混合材料の計測結果 [3]開発した高分解能計測技術の概要とアルミナ微粒子の混合材料の計測結果

4. ウエーハ全面検査を実現する深層学習ベース半導体検査技術

[4]深層学習を適用した画像処理手法 [4]深層学習を適用した画像処理手法

近年のIT機器高度化とデータ処理量の増大を背景として,半導体集積密度の向上が求められている。これに伴い,半導体プロセスの微細化が進展しているが,従来の光学式検査装置では検知できない極小欠陥がランダムに発生する事象が顕在化したため,SEMによるウエーハの全面検査が求められている。全面検査の実現には検査精度を維持し,かつ高速化することが課題であった。本課題を解消するため,画像処理に深層学習を適用し,検査対象領域を高速撮影することにより,広視野・低解像度の画像を用いて高い検査精度が得られる手法を開発した。

従来は,検査画像から抽出した回路パターンと設計図の形状差を比較する手法を用いていたため,高速化のために検査画像を低解像度化すると,回路パターンの抽出が困難となり欠陥の誤検出が多発していた。これに対して,検査画像と設計図から深層学習を用いて推定した解像度に応じた輝度値分布を比較する手法を開発した。本手法により低解像度でも誤検出を抑制することが可能となり,従来と同等の精度を従来の16倍の広視野画像で実現でき,検査時間を16分の1に大幅に短縮した。

5. 射出成形スクリュー用高耐食高耐摩耗合金の開発

[5]開発合金の性能 [5]開発合金の性能

プラスチック製品の射出成形に使用されるスクリューは,プラスチック溶融時に発生する腐食性ガスへの暴露,ガラス繊維や無機フィラーに起因する摩耗など,過酷環境に対応した高い耐食性・耐摩耗性が求められる。

そこで日立グループは,日立金属株式会社が保有する高耐食合金MAT21をベースに,高耐食高耐摩耗合金(炭化物分散型Ni-Cr-Mo-Ta合金)を開発した。MAT21に炭素のみ添加した場合では,耐摩耗性は向上するものの,耐食性に寄与するMoの炭化物への局在化に伴い,元素バランスが崩れ耐食性が低下する。開発合金では,炭素に加えて,Ti, V, Nb, Taなど,Moよりも炭化物形成能の高い元素を適正量添加することで,これら元素を主体とした炭化物を優先的に晶出させる。その結果,Moの局在化が抑制され,MAT21の高い耐食性を維持したまま硬さ・耐摩耗性を高めることに成功した。

今後,本合金の製造性および有効性を実証実験にて評価し,実用化をめざす。

(日立製作所,日立金属株式会社)

6. 複雑な形状の部品を高品質・高精度に製造可能な金属3D造形プロセス技術

[6]開発技術を用いた金属3D造形の例 [6]開発技術を用いた金属3D造形の例

近年活用が加速している金属3D造形においては,製造部品の高品質化を実現する3Dプリンタ機構や,設計者の負担を軽減しながら部品の高精度化を実現するデジタル技術を用いた造形プロセス設計技術が求められている。そこで,複雑な形状の部品を高品質・高精度に製造可能な金属3D造形プロセス技術を開発した。

製造部品の高品質化に向け,不純物混入や製造部品の割れを抑制する真空・予熱機構を備えた金属3Dプリンタを開発した。本装置を用いることにより,従来装置と比較して酸化物量を約30%低減したNi基合金部品や,割れが発生しない工具鋼系部品を造形することが可能となった。また,仮想造形を繰り返すことで最適な造形設計案を提供する3D造形設計システム(ADVAMP)を開発した。ADVAMPを活用して変形評価用の試験片を設計および造形した場合に,従来の手動設計と比較して,部品寸法精度を2倍に向上するとともに,サポート体積を4割低減することが可能となった。

今後,さまざまなパートナーと連携して開発技術の実用検証を推進し,金属3D造形による革新的なモノづくりの実現に貢献する。

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