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発見を通じて社会を豊かに

日立ケンブリッジラボ

Charles G. Smith
日立ケンブリッジラボ 所長

日立ケンブリッジラボが拠点を構える ケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所 日立ケンブリッジラボが拠点を構える
ケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所

私は常に,新しい発見というものに魅せられてきました。発見は,さまざまな物理法則の組み合わせによって発生しうる,無限に近い現象への理解を深めてくれます。

しかし,観測と理解は発見の一部に過ぎません。発見した物事を人々の生活をよりよくするために活用することができるかどうかを確かめることもまた,非常に重要なことなのです。日立ケンブリッジラボに所長として加わる以前,私は英国ケンブリッジ大学のキャベンディッシュ研究所の教授として,電子機器における量子現象に関する研究を行っていました。高度なリソグラフィを用いて電子機器を小型化し,量子特性が支配的な極低温で測定した場合に何が起こるのかを調査するチームの一員でもありました。当時の研究対象であった量子ドットの作製,電子の単一トラップ,およびドット間の移動の測定といった技術は,今日では量子コンピュータの構築に日常的に利用されており,中でも日立はVLSI(Very Large-scale Integration)技術を用いてシリコン量子ドットからシリコンベースの量子コンピュータを構築する取り組みの最前線に立っています。日立ヨーロッパ社傘下の日立ケンブリッジラボは小さな研究所ですが,ダイナミックで才能にあふれるチームに加わることは,私にとってとても魅力的なことでした。

私は以前,研究の一環として複数の技術を特許化し,大学からのスピンアウト企業を2社設立しました。その一つがCMOS(Complementary Metal-oxide Semiconductor)互換メモリ技術を開発したCavendish Kinetics, Inc.です。当初は低電圧の不揮発性メモリ技術にフォーカスしていましたが,携帯電話のスイッチや周波数変換といった市場のニーズに応えるべく,MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ベース可変コンデンサの開発にも力を注ぎ,製品開発に取り組みました。そして数年の月日を経て完成した電子チップは何百万もの携帯電話に採用され,信号品質の改善を通じて電話のエネルギー使用量削減に貢献しました。 そして2019年,同社はQorvo社に3億ドル超で買収され,優秀な技術者の方々の仕事を確保したとともに,大企業ならではの迅速な成長と専門的な技術知識の提供が可能になりました。

日立ケンブリッジラボも同様に,社会が直面する重要な課題の解決に向け,物理学と生物学の研究に取り組んでいます。私も所長として,自然界の新たな現象を探るとともに,世界の人々の暮らしを向上させるという日立の目標に向けてそうした発見を活用すべく,研究に取り組みたいと思います。