日立評論

米国におけるモビリティの未来

公平かつ持続可能なモビリティインフラシステムをめざして

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米国におけるモビリティの未来

公平かつ持続可能なモビリティインフラシステムをめざして

ハイライト

日立グループは,将来の持続可能な地球社会を見据えて,社会イノベーション事業を通じて貢献していくために,モビリティシステムをその注力分野と定め,自動車関連技術を手掛ける新会社「日立Astemo」の設立をはじめ,世界各地での取り組みを強化している。

長期化する新型コロナウイルス感染症のパンデミック,差し迫る気候変動の脅威,そして人種間不平等に対する抗議運動などに直面する米国におけるモビリティの将来像はどうあるべきか。国内交通インフラの総点検とモビリティセクターの刷新を求める世論の高まりを受けて,いかに公平かつ持続可能なモビリティインフラシステムを構築できるのか。2020年9月に実施された日立製作所ワシントンDCコーポレート事務所主催のオンラインインタビューで,全米製造業者協会(NAM)インフラ・イノベーション・人事担当Vice PresidentであるRobyn Boerstling氏が,日立グループのキーパーソンとその展望を語り合った。

目次

新型コロナウイルス感染症

Robyn Boerstling Robyn Boerstling
全米製造業者協会(NAM)
Vice President(インフラ・イノベーション・人事担当)
2008年より全米製造業者協会(NAM)。NAM入会前は,米国運輸省(DOT)長官府で運輸政策担当次官補の顧問を務めた。2001年10月に「Schedule C」大統領被任命者としてDOTに入省後,要職を歴任。キャリア前半は議会選挙運動に携わり,コネチカット州議会に勤務した。
コルビー大学(メイン州ウォータービル)卒業。トリニティ・カレッジ(コネチカット州ハートフォード)にて英語修士号取得。コネチカット生まれ。

Allan Immel Allan Immel
日立レールSTS社 北米ターンキービジネス開発 リード
日立レールSTS社でターンキーシステムと北米運輸市場執行戦略の開発を牽引する。同社での20年を超える管理職経験に基づき,プロジェクトマネジメントオフィスを設立して統括し,最近では米国入札グループを指揮した。日立グループは総合鉄道ソリューションプロバイダーとして,車両から,信号&ターンキー,デジタルソリューション,オペレーション&メンテナンスに至るまで,広範囲にわたるモビリティテクノロジーを提供している。

Harsha Badarinarayan, Ph.D. Harsha Badarinarayan
日立アメリカ社
Vice President(研究開発担当)
デトロイトリサーチセンター長を兼務。17年以上にわたり日立グループに勤務し,現職ではコネクテッドカーおよび自動運転車(CAV)とスマート製造に関する米国での事業拡大に向けた戦略的プランニングに従事している。自律型モビリティ(AD/ADAS),スマートインフラ,IoTを中心とした草分け的技術の開発・実装を牽引。15件の米国特許を保有し,著者・共著者として30以上の技術関連出版物を発表している。

Robyn新型コロナウイルス感染症の大流行により公共交通機関は厳しい状況に追い込まれています。中でも旅客鉄道は,乗客ができるだけソーシャルディスタンスを確保できる手段を選ぼうとすることから,特に深刻な影響を受けています。新型コロナウイルス感染症による旅客鉄道への長期的影響と,それによって鉄道インフラプロジェクトの進行にどのような影響があるのかについて,まずAllanさんにお聞きします。

Allanソーシャルディスタンスの義務付けと地域ごとのパンデミック対応計画を受け,短期的に見ると全国的に公共交通機関の利用者数は減少しています。しかし,パンデミックの利用者数への長期的な影響を推し測るのはそう簡単ではありません。明らかなのは,どの交通機関においても長期計画の策定には時間とリソースが必要であり,それと同時に従来どおりエッセンシャルワーカーや市民にサービスを提供するための当面の運転資金も必要だということです。運行を維持するために欠かせない短期の資金調達ができない場合,最大で50%に上る厳しいサービス削減を実施せざるを得ないだろうと警告する米国の運輸機関もあります。実際にこうした戦略を取れば,長期的にも影響が及ぶものと思われます。長期的な資本計画は事業計画と関連付けられている場合が多いからです。例えば,列車の制御システム,路線,車両などのアップグレード全体に影響する可能性があります。

Robyn医療の最前線で働く人たちは病院に,消防士や警官などのファーストレスポンダーは消防署や警察署に,今もなお足を運ぶ必要があります。エッセンシャルワーカーはどのような状況下でも職場に出向かなければなりません。

Allanそうですね。ニューヨーク市が良い例です。近郊の通勤路線と地下鉄があり,そのほかにも市内にはさまざまな交通機関があります。これらがなければ,この大都市圏に欠かせないエッセンシャルワーカーは直ちに影響を受けます。公共交通機関を利用するエッセンシャルワーカーは仕事に行くことができず,代わりに車での移動が増えて一般道や高速道路が混雑すれば,環境面でも社会への影響は避けられません。これはニューヨーク市内に限ったことではなく,米国内のどの大都市圏にも言えることです。つまり,消防,緊急事態管理,医療をはじめ,警察,食料品店,飲食業などさまざまな業種を含む日常生活に必要不可欠なサービスにさらなる影響を及ぼすのです。先ほどお話しした運転資金やインフラ支援といったものがなければ,交通機関は深刻なサービス削減に踏み切らざるを得ず,しかもその影響を最も大きく受けるのは,おそらく社会に最も必要とされるエッセンシャルワーカーなのです。

Robynでは,続いてHarshaさんにお伺いします。AV(Autonomous Vehicle:自動運転車)業界の状況は少し異なるかもしれませんが,パンデミックによってAVの開発と導入にはどのような影響がありましたか。この期間に,自律型モビリティシステムの能力を示す機会もあったのではないでしょうか。パンデミックによる自動運転システム開発への影響についてお聞かせください。

Harshaパンデミックによって,自律型モビリティテクノロジーの開発・試験・導入のニーズに急速に拍車が掛かりました。最初に成果が現れるのは,ロジスティクスとデリバリーの領域だと考えています。ここ3〜4か月のうちに,食料品や薬品などの生活必需品配達用のAV導入が急速に進んでいます。ですから,自律方式で人を搬送できるようにするにはまず,人通りや交通量の多い環境の中でどうすれば安全に車を運行できるのかということが,第一の鍵になると思います。

都市・郊外エリアで車両試験を行っている複数の企業の状況は,このテクノロジーの導入に何が必要なのかを知る手がかりになります。それらの試験によると,取り組むべき重要なテクノロジーは二つあります。一つはローカライゼーションと呼ばれる,任意の時点での車両位置を特定する技術で,もう一つはパスプランニングです。例えば,人が右に曲がる状況を想像してみてください。私たちは危険がないと判断すれば,徐々に右に曲がりますね。しかし,コンピュータの場合,カーブの半径,軌道,速度などを計算する必要があり,これは小さな問題ではありません。今回のパンデミックによって,こうした重要技術の開発が促進されたのは確かです。今後は,物事が少しずつ以前の状態に戻る中で,これらの技術を一歩ずつ段階的に人の移動に活用できるようになると考えています。

Robynでは,Johnさんにお聞きします。2021年はもともと従来型の自動車業界にとって厳しい年になることが予想されていましたが,パンデミックによってこれまでにない新たな課題ももたらされました。明るい話題や回復傾向もいくらか見込まれてはいますが,自動車分野の状況についてご意見を伺えますか。

Johnそうですね。パンデミックの発生当初から,明らかに状況は自動車業界にとって非常に厳しいものでした。しかし,ご指摘のように,いくらか回復の兆しもあります。今後に目を向けた場合に問題になるのは,ホームオフィスとリモートワークがこの先どうなっていくのかという点です。企業の営業部門やエンジニアなどすべての従業員が再び毎日オフィスに通勤するようになる日は来るのかという問いについて,多くの企業が,今後半年あるいはその先も状況が元通りになることはないと回答しています。このままの状況が続けば,自動車の走行距離は減ることになるでしょう。家族の何人かが週の何日かでも在宅勤務するような状況で,2台目や3台目の車が必要になるとは思えませんよね。

在宅勤務の観点から,自動車販売台数が全般的に減少するのかというと,現在起きている都市からの人口流出と併せて考える必要があります。郊外へ移住する人たちが増えているので,パンデミック以前の状態に戻ることがあれば,通勤距離が伸びる可能性があります。そのため,自動車の走行距離に関するデータを注視してみると面白いことが見えてきます。この数字が自動車購入台数を左右するわけです。私が重要だと考えているのはこの点です。

Robynこれまで自家用車は不要だと考えていた人たちが,飛行機の利用を避け,安全に家族に会う手段として自動車を購入したいと考えるようになっています。

また,先ほどのお話にもあったように,都市部から移住した後で自動車の必要性に気付く人たちもいるでしょう。パンデミックが引き金となって郊外への移住が広がっています。こうした郊外化の動きが既存のモビリティモデルとモビリティインフラに与える影響はどのようなものになるのでしょうか。

Allan最終的にどうなるかは誰にも分かりません。ここで推定して分析することはできますが,まだ全体像は明らかになっていません。郊外に住んで在宅勤務する人たちがいる一方で,郊外よりも公共交通網が発達した都会の生活を好む人たちも大勢います。リモートワークという選択肢がないのであれば,住宅の所有や賃貸,そのほか生活や就労に関わるあらゆる費用,要素において,都市の方が郊外に比べてリーズナブルな場合もあります。確かに通勤形態は変わり始めるでしょう。公共交通機関に依存するエッセンシャルワーカーなどを除けば,おそらく郊外から都市に向かう平日ピーク時の混雑は緩和されると思います。

Johnさんが言及された,自動運転によるカーシェアリングに関してもう一つ興味深いことがあります。住環境,通勤の必要性,移動手段などの組み合わせにより,手頃な選択肢を得られることで,自動車を所有する必要が完全になくなる人も出てくるということです。新型コロナウイルス感染症の最終的な影響はまだ明らかになっていませんが,一部の人々の通勤スタイルは変化するでしょうし,地下鉄システムもこれまでとは違うニーズを満たすことになるものと思われます。

Harshaデトロイトでは,郊外での住宅建設が増加しています。今は金利が非常に低い状態にあるので,多くの人々が住宅の購入を検討しているのです。人々の大規模な移住は,インフラを構築する必要があるという点で,環境に変化をもたらします。デトロイトでは,新しいインフラ開発を進める政府の複数の構想が進んでいます。その一つに,デトロイトからアナーバーまでの40マイル(約64 km)のルートを自動運転車専用レーンでつなぐというものがあります。今後は,このような大規模な変化に合わせてインフラ整備を維持する必要があると思います。そうでないと無秩序な状態が引き起こされることになりますから。

Johnこうしたインフラの話が興味深いのは,過去何年にもわたり,私たちが都市の外,つまり郊外とその周辺地域に大規模な交通システムを構築してきたからでしょう。近頃は都市化がさらに進展し,都市部における交通手段を拡充しようとしていましたが,パンデミックの発生によって開発の方向が元に戻ってしまいました。郊外には高速道路が多数あり,このまま再び郊外化が進むのであれば,これらの整備と拡張が確実に必要になります。

気候変動

John Nunneley John Nunneley
日立オートモティブシステムズアメリカズ社※) Senior Vice President(エンジニアリングおよびIT)兼General Manager
ミシガン工科大学でBSEEを取得。エンジニアリング分野で30年以上の経験を持つ。1995年から日立グループに所属。現在は,日立オートモティブシステムズアメリカズ社の製品ポートフォリオ全体(エンジンマネジメント,電動パワートレイン,駆動制御,車両安全・情報システムを含む)を管理している。
※)近日中に日立Astemoアメリカズ社に社名変更予定。

Robynパンデミックに加えて,気候変動もバイデン政権の優先課題になっています。

日立オートモティブシステムズアメリカズ社は,EV(Electric Vehicle:電気自動車)とEVシステムに必要なコンポーネント開発の先駆けとして,自動車テクノロジーのグリーン化を推進していますが,市場の動向は急速に変化してきました。バッテリー製造コストの低下によってEVの訴求力が高まっています。米国のEVインフラの現状はどのようになっていますか。重量車向けを含む,堅牢性の高いモビリティインフラシステムの開発でめざすべきものは何でしょうか。

JohnEVの普及速度は緩やかで,予想よりもずっと遅れています。私たちは常に5年先を見据えてEVの台数を予測していますが,実際にはこの予測に追い付いていません。問題点の一つはコストにあると思いますが,ご指摘のようにコストは改善されて適正範囲に近づいています。しかし,1回の充電でEVが走行できる距離を見ると,最近のEVで200〜300マイル(約320 km〜約480 km)であり,これはガソリン車を満タンにした場合とほぼ同じです。ガソリン車のインフラとEVのインフラを比べると,どこにいても給油できるガソリン車とは異なり,EVの充電量が不足しているときに充電できる場所を見つけるのは容易ではありません。

そのため,本当に整備が必要なのはインフラだと思います。大半の人々が安心してEVに移行できるようになるには,標準の充電インタフェースを整備する必要があります。現在の環境への影響を踏まえてこれが正しい方向性であるという合意が得られるのであれば,国民に優先的にEVを購入するよう推進していくのが政府にとって得策でしょう。そのためには,インフラが必要です。アジアや欧州の現状と比べて,EVの所有に関して米国は遅れを取っています。これは,ほかの政府が米国よりもずっと迅速にEVを推進しているからです。

Harshaインフラと乗用車関連のコスト・動機付けという話が出ましたが,メリットが極めて大きいのは長距離トラック業界だと思います。例えば,水素燃料トラックの場合,燃料だけでなくインフラと充電のことまで考える必要があります。その場合,必要なインフラをどう構築するのか,また,インフラを構築したとしても,再充電や補充のタイミングはどうするのかを考える必要があります。目標は,通常のディーゼルエンジンに匹敵するレベルです。テクノロジー面に問題はありませんが,インフラ面で遅れを取っています。規制面や政府による取り組み,あるいは普及に向けた奨励金に基づく仕組みがない限り,大規模な普及にはまだ時間が掛かるものと思われます。

RobynコネクテッドカーやEVを導入すれば燃料効率と交通の流れが改善されるので,CO2排出レベルの削減につながることが考えられる一方,AVの普及は自動車の利用を増やし,公共交通機関の利用を減らす可能性もあります。AVが環境とインフラニーズに与える影響についてはどのようにお考えですか。

Harsha今後数年間に導入されるAVの大半は,乗用車と貨物車のどちらもEVになると見られ,私たちもEV向けの開発に注力しています。その点では,環境への影響,特にCO2排出量は同等の内燃エンジン車と比べてかなり抑えられるでしょう。そうは言ってもインフラの改善が必要になります。特に充電ステーション(スーパーチャージャー)をガソリンスタンドと同じくらい整備すると,走行距離に関する不安がなくなるので,都市部だけでなく長距離移動にもEVが使用されるようになるでしょう。このような充電ステーションを,都市部だけでなく州をまたぐ主要高速道路にも配備するための官民パートナーシップがすでに立ち上がっています。

公平なモビリティ

Robyn2020年夏の人種間不平等に対する全国的な抗議運動を受けて,「公平なモビリティ」という点がモビリティインフラに関する議論の中心となりました。サービスが十分に行き届いていないコミュニティをつなぐうえで,旅客鉄道が果たせる役割について,Allanさんにお聞きしたいと思います。また,このようなコミュニティのサービスエリアを拡大するためにどのようなインフラ要件に取り組む必要があるのでしょう。

Allanここで言う公平さとは,都市間だけでなく地域間や国中を移動できる能力を指します。インフラがあれば,どこにでも自由に移動でき,それにより大学や高等教育,仕事やさまざまな機会を利用できるようになるので,雇用などを通じて暮らしを豊かにすることができます。旅客鉄道に関する経済的な公平さとは,人々の移動を可能にして,機会を活用したり見つけたりできるようにする点にあります。ですから,その役割は極めて重要です。また,CO2排出量や道路渋滞,鉄道の電化について考えるならば,このようなインフラと,交通網をより効率的で持続可能な方法で電化する仕組みへの投資を検討すべきでしょう。蓄電システムにより電気も利用するハイブリッド車両なら,空路からトラック,トラックから鉄道といった組み合わせだけでなく,さらに持続可能な方法での貨物輸送が可能になります。鉄道は,貨物用と旅客用のいずれについても,非常に効率的かつグリーンな輸送手段であることが証明されています。

RobynではJohnさんにもお聞きします。ライドシェアは,所得の低い個人やコミュニティのための交通の利便性を高めましたが,現在はパンデミックによる健康上の不安から単独の自動車所有モデルが盛り返していますね。これらのモデルは今後数年間でどう発展していくと考えられますか。また,その発展に伴うインフラ設計への影響についてもお聞かせください。

John現在,ライドシェアは明らかに低迷しています。このパンデミック下では,誰も相乗りしたいとは思いませんからね。共同所有やライドシェアはすべて,パンデミックによって大きな打撃を受けました。これにより,先ほど話題になった公平さも損なわれています。自動車を所有する余裕がない人々に影響が及び,ライドシェアや公共交通機関なしでは通勤が困難になっているのです。しかし,人々には移動の手段が必要ですから,このパンデミックを乗り越えれば,ライドシェアの需要は回復するはずです。ライドシェアは自動運転車開発を促進する意味でも重要で,先ほどHarshaさんの話にもありましたが,初期の自動運転テクノロジー試験では都市部でのライドシェア車両が,ライドシェア型のロボタクシーとして使用されました。これらすべてが元に戻り,ライドシェアが復活することを期待しています。

Harsha一部のOEM(Original Equipment Manufacturing)や自動車メーカーのビジネスモデルは変わりつつあります。自動車を販売・所有するモデルから,必要なときに利用するモデルへと変化しているのです。公平さの点から考えると,これをもっと多くの人々が利用できるようになれば,コストが下がり,大幅に手が届きやすくなるでしょう。ライドシェアに関して言えば,現在,すでにその仕組みはありますが,将来的には大量輸送やモビリティをサービスと見なし,利用者の集団を何らかの定期便で短距離輸送できるようにする必要があります。利用率が上がれば,コストは下がるでしょう。職場まで自家用車を運転して駐車する現在のモデルでは,95%の時間は駐車されたままになっています。ですから,この利用率を引き上げることができれば,間違いなく手が届きやすくなるはずです。

RobynAVやAVテクノロジーについての一般的な認識では,テスラなどの高級車がイメージされがちですが,AVテクノロジーのメリットは資産家だけにもたらされるものではありません。どうすれば,AVテクノロジーによって公平な方法で交通アクセスを拡充できるとお考えですか。

Harsha自動車販売事業は急速に変化しており,「従量課金制」モデルへのシフトが進んでいます。AVの大規模導入による主なメリットの一つは,所有コストを個人で負担することなく,多くの人々が「オンデマンド」で使用できるようになることです。これはすでに国内の一部のエリアで実現しており,自動走行型の「ポッド」を使用した配達により,最終消費者へのコストを最小限またはゼロに抑えています。今後何年かかけて,ライドシェアサービスで徐々にAVが採用されるようになれば,個人個人が自家用車を運転するよりも車両利用率が大幅に上がるので,都市部での混雑解消にも役立つものと期待しています。

将来の見通し

Robyn最後に,皆さんが日立のお客さまのために取り組まれているモビリティソリューションやインフラソリューションで,最も魅力的だと考えるものは何か教えていただけますか。

John自動車に関して言えば,自動運転のコネクテッドカー(EV)が将来的に最も期待できる開発です。効率化,安全性の強化,利便性の向上,これらすべてが利用者と社会の両方に高い利益をもたらします。完全自動運転の電気コネクテッドカーの実現に向けた取り組みが自動車産業の将来を決めると考えています。

Harsha研究者の観点から最も期待しているのは,自動運転コネクテッドカーに5Gやマルチアクセスエッジコンピューティング(MEC)などの関連技術を組み込むことで,レイテンシを短縮し,ニアリアルタイムの車両制御を提供することです。これは現在取り組んでいる非常に興味深い課題であり,早期に実証できるようになることを望んでいます。

Allanさまざまな出来事が重なって,鉄道の復活に向かう流れが米国内で形成されつつあり,特に高速鉄道・無人運転システムの構築に向けた動きが起きています。インフラ支出はパンデミック後の景気回復支援として超党派の合意を得られる見込みです。これらの交通手段は,環境面で持続可能なモビリティソリューションを求める国民の期待の高まりに応えるという点で見込みがあります。国外,例えば欧州やアジアの便利で快適な高速鉄道を一度体験してみれば,それが短距離航空便に代わる優れた交通手段だとお分かりいただけるでしょう。

実際に,フロリダ,テキサス,カリフォルニアで高速鉄道プロジェクトが開始されています。そこでも日立は高速鉄道の世界的エキスパートとして重要な役割を果たしています。新幹線に始まった日立の歴史的開発実績は現在世界中に広がり,最もポピュラーな高速鉄道路線の多くで採用されています。同じくAVについても,コペンハーゲンやリヤドからリマ,ホノルルまで世界各地に事例があります。いずれのケースでも,鉄道インフラは雇用や経済,持続可能な輸送といった世界的な関心事に寄与するものとして,お客さまや行政,地域のリーダーから注目されています。