日立評論

OT×ITの技術を結集した保守サービス基盤による制御システム安定稼働サービス

システムライフサイクルのトータルサポートを実現

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日立評論

[]次世代先進工場(Lighthouse)

OT×ITの技術を結集した保守サービス基盤による制御システム安定稼働サービス

システムライフサイクルのトータルサポートを実現

ハイライト

制御システム安定稼働サービスは,日立グループが長年培ってきた運用・保守に関する技術・ナレッジを融合し,体系化したサービスである。本サービスの主な特長である「24時間365日ワンストップのサポート体制」と「日立グループが持つOTとITに関する技術・ナレッジを結集した独自のサポートプラットフォーム」,および「制御システムに適切なメニュー体系」により,顧客の運用・保守業務の効率化やコスト適正化を支援する。

本稿では,長期稼働を前提とした制御システムの適正な運用・保守業務を支援する本サービスの概要と,ウィズコロナ・アフターコロナ時代への対応として,運用・保守業務の高度化を実現するデジタル技術を活用した新たなサービスについて紹介する。

目次

執筆者紹介

加賀屋 俊一Kagaya Shunichi

  • 日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット 制御プラットフォーム統括本部 サービス・制御プラットフォームシステム本部 制御プラットフォーム設計部 所属
  • 現在,情報制御コンポーネント製品・サービスの拡販,マーケティングに従事

和島 直哉Wajima Naoya

  • 日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット 制御プラットフォーム統括本部 サービス・制御プラットフォームシステム本部 サポートサービスセンタ 所属
  • 現在,保守サービスの事業戦略,制御システム安定稼働サービスの拡販に従事

濱中 純Hamanaka Jun

  • 日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット 制御プラットフォーム統括本部 サービス・制御プラットフォームシステム本部 サポートサービスセンタ 所属
  • 現在,保守サービス基盤(サポートプラットフォーム)の開発に従事

1. はじめに

制御システムは,産業機器や鉄道,発電プラントといった産業・社会インフラ分野の設備の安定的な稼働を支える重要な基盤である。近年,制御システムの稼働現場では,設備保全者の高齢化により運用・保守に関するノウハウ伝承が急務となっているほか,電子部品のライフサイクル短命化で,システムを長期に維持・保守するためのコスト増が社会的な重点課題となっている。また,IoT(Internet of Things)の進展に伴い制御システムの高度化・複雑化も予想されており,障害発生時の対応には従来以上に専門的な技術と知見が必要となる。

これまでは,顧客に納入した制御システムの保守を個々のシステムごとに実施し,トラブルが発生するたび,対応チームを編成して対処してきた。しかし,高度化・複雑化するシステムに対しては,より幅広い技術や知見に基づく対応が必要であり,また,前述のような近年の社会的な重点課題に対応するためにも,より迅速で効率的な運用・保守体制が求められている。

こうした状況の中,日立は,制御システムの運用・保守を24時間365日ワンストップでサポートする体制を新たに構築した。さらに,さまざまな制御システムの開発・運用・保守に携わってきた日立製作所大みか事業所を中心に,日立グループが持つOT(Operational Technology)とITに関する技術・ナレッジを結集した独自のサポートプラットフォームを構築した。これを活用し,専門技術者が顧客の制御システムの問題解決に対応する。そして,これらを「制御システム安定稼働サービス」として提供している。本サービスにより,障害発生時に迅速な対応が求められる制御システムにおいて,顧客にとって大きな負担となっていた運用・保守業務を効率化するとともに,障害復旧に関わるコスト削減とシステム安定稼働に貢献していく。

2. 顧客視点で価値を創出する運用・保守サービス

制御システム安定稼働サービスは,日立が長年培ってきた運用・保守に関する技術・ナレッジを融合し,体系化したサービスである。本サービスの特長は,24時間365日ワンストップのサポート体制,運用・保守に関わるさまざまな技術情報を蓄積・活用することで迅速かつ多面的に顧客システムを支え,日立の技術・ナレッジを集約したサポートプラットフォーム,およびサービス契約により顧客の保守コストの平準化に貢献する制御システムに適切なメニュー体系である。これらの特長により,顧客の運用・保守業務をより効率化することができる。

2.1 24時間365日ワンストップのサポート体制

図1|サービス提供体制図1|サービス提供体制 24時間365日安心のサポート体制を構築し,運用・保守のナレッジを蓄積,共有できるサポートプラットフォームを活用して,顧客システムの安定稼働,運用・保守業務の効率化に貢献する。

制御システムを構成するハードウェア・ソフトウェアに関する各種トラブルや問い合わせを,ワンストップの統合窓口である日立制御システムサービスセンタ(HCSSC:Hitachi Control System Service Center)で24時間365日受け付けている。制御システムで問題が発生した場合,各分野に精通する日立の専門チームがトラブルの状況や問い合わせ内容を踏まえて問題を的確に切り分け,障害箇所の特定から復旧,原因調査といった障害時の対応,定期点検といった運用・予防保守などの支援をスピーディに行う(図1参照)。

HCSSCは2018年4月よりサービス品質向上や障害時の対応力強化をめざして開設され,2020年10月には,新たなサービスへの対応やセキュリティ強化の目的でリニューアルした。今後,運用・保守に関するノウハウやナレッジの活用を推進し,対応範囲を拡大していくなど顧客システムの安定稼働を支える拠点として継続的な発展をめざす。

2.2 日立の技術・ナレッジを結集したサポートプラットフォーム

サポートプラットフォームは,制御システムの運用・保守に関わるさまざまな技術情報や対応履歴を蓄積・共有できる環境である。運用・保守作業の対応履歴や作業マニュアル,システム構成図面,顧客専用部品などをデータベースとして格納・蓄積し,顧客専用Webサイト(以下,「ユーザーポータル」と記す。)を通じて顧客がいつでも閲覧・活用できる。これにより,運用・保守に関するノウハウやナレッジの伝承を支援する。また,システムを構成する各種部品の交換時期も把握することができ,保守用部品の確保,在庫管理の適正化や顧客に対する適切なタイミングでの部品交換の提案ができるようになり,顧客の運用・保守業務の効率化を支援する。

2.3 制御システムに適切なメニュー体系

制御システム安定稼働サービスのメニューは,オンサイト保守や引き取り修理,要因調査報告書作成など,安定稼働を支えるための「問題解決の支援」と,定期点検,ユーザーポータルによる情報提供(問い合わせ履歴・ドキュメント・装置部品などのアセット情報など)で効率的な運用・保守を支える「運用の支援」で構成されている。

顧客システムに適切なメニューを選択できるため,顧客の運用・保守コストを適正化できる。例えば,制御システムの構成部品は,年々整備・修理費が増加するため,経年後の突発的な修理費負担が経営に大きな影響を与えてしまう。そういった場合に,このようなメニューで体系化された安定稼働サービス契約により,毎年の保守コストを平準化し,顧客の運用・保守業務を計画的に実行できるように支援する。

3. ウィズコロナ・アフターコロナに対応した高付加価値サービスの提供

制御システム安定稼働サービスは,顧客の運用・保守業務の効率化,コスト適正化へ貢献するサービスとして開始した。一方で,昨今の新型コロナウイルス感染拡大に伴い,ウィズコロナ・アフターコロナ時代への対応として,本サービスはさらに注目が高まってきた。そこで,「リモート」,「オンライン」,「省人化」という観点で新たなサービスを開発している。その中の主なサービスを本章で紹介する。

3.1 遠隔監視サービス

図2|遠隔監視サービス図2|遠隔監視サービス 顧客設備より遠隔で障害などのアラートを受信し,HCSSCで能動的に要因切り分け・解決方法を提案する。顧客と相談のうえ,日立技術者の派遣によるオンサイト保守などを実施し,迅速な障害解決に寄与する。

遠隔監視サービスは,保守の総合窓口であるHCSSCのセキュアな環境にて,顧客システムの稼働状況をリモートで監視し,障害発生を検知した場合は,能動的に障害部位の切り分け,オンサイト保守の可否の検討など,復旧までの一連の対応を迅速に実施する。これにより,システム障害に伴うリスクを低減する(図2参照)。

3.2 遠隔作業支援サービス

図3|遠隔作業支援サービス図3|遠隔作業支援サービス 顧客からの問い合わせ対応は電話による音声対応であったが,本サービスにより,映像やドキュメントを共有することができる。これにより,現場状況の把握を容易にし,日立技術者の派遣待ちによる時間のロスを少なくし,遠隔で迅速な問い合わせ解決に寄与する。

通常,顧客とHCSSCの間では,電話応対で障害状況などが伝えられる。これに対し,遠隔作業支援サービスでは,音声だけでなくリモートで映像,各種情報(ドキュメントや写真)を共有し,インタラクティブなコミュニケーションを図る。これによって,相互理解のずれをなくし,かつ現場へ技術者を派遣することなく,迅速な障害解決に寄与する。

例えば,万一顧客システムに障害が発生した場合に,ランプの点灯パターンを映像で共有し,顧客担当者または日立の保守員がHCSSCを通して専門チーム(有識者)の指示を受けながら作業することで,問題の早期解決を図ることも可能である。また,顧客側の担当者と管理者の間で画像や映像を共有することで,スムーズなエスカレーションを行うことができる。現場での通常作業の場合も含め,このように顧客内での情報共有も支援することで,運用・保守業務を効率化する(図3参照)。

3.3 オンライントレーニングサービス

図4|オンライントレーニングサービス図4|オンライントレーニングサービス 従来,日立の専門技術者が講師として顧客受講生に対面形式でトレーニングを実施してきたが,それをオンラインで実施することで,接触・移動の機会を低減することができる。

従来,制御システムの使用方法や異常時の対処方法について,日立の専門技術者が対面形式での教育を行ってきた。オンライントレーニングサービスでは,リモートおよびオンラインでのクラスルームトレーニングを提供する。オンライン化することにより,人との接触機会を低減するだけでなく,受講者が教材を繰り返し閲覧することで,本サービスを利用する顧客の学習効率向上も期待でき,制御システムに関する技術・ノウハウの伝承を支援する(図4参照)。

3.4 安定稼働モニタリングサービス

図5|安定稼働モニタリングサービス図5|安定稼働モニタリングサービス 制御システムを構成する機器の動作履歴や障害履歴などの稼働情報を定期的に収集し,稼働状況の変化を見える化・分析することにより,システム稼働状況の健全性を確認する。

安定稼働モニタリングサービスは,顧客システムを遠隔から点検することで,システムの安定稼働に貢献する。制御システムを構成する機器の動作履歴や障害履歴などの稼働情報を定期的に収集し,稼働状況の変化を見える化・分析することにより,システム稼働状況の健全性を確認する。結果はレポートとして定期的に報告し,通常と異なる動作部位や障害要因につながる履歴情報を抽出した場合は,対処方法などを提案し,システム安定稼働の継続を支援する(図5参照)。

4. おわりに

本稿では,制御システム安定稼働サービスを構成するワンストップ窓口であるHCSSCや運用保守のノウハウなどの情報を一元管理するサポートプラットフォーム,および各種サービスメニューについて紹介した。

今後は,サポート体制の強化,サポートプラットフォームの進化やサービスメニューの拡充のみにとどまらず,多くの産業・社会インフラ分野の顧客の課題を起点に,デジタル技術やAI(Artificial Intelligence)などの最新技術も取り入れ,OT×ITによる制御システムの運用・保守の高度化を実現して,制御システム安定稼働サービスの品質向上を図っていく。その一例として,ウィズコロナ・アフターコロナにおけるリモート機能の構想を紹介した。

また,従来は,顧客システムにおいてトラブルが発生する度に保全を行う事後保全の対応であったが,装置部品のアセット情報に加え,状態監視や劣化兆候把握など変調を捉える技術を追加することにより,劣化状況に合わせてその都度保守を実施する状態基準保全(CBM:Condition Based Maintenance)の対応や保全計画立案の実現をめざす。CBMの対応により,顧客システムにおいては,システムダウンのリスク低減や機器の交換費用を低減することが期待でき,顧客の経営資源最適化に貢献していく。さらに,将来的には制御システムだけでなく,その周辺機器を含めた顧客システム全体のライフサイクルをコンサルティングや業務分析の面からもトータルに支援し,新たなシステム構築や事業継続性の向上,経営コストの最適化にも貢献していく。

参考文献など

1)
J. Moubray: Reliability-Centered Maintenance 2nd Edition, Butterworth-Heinemann (1999.4)
2)
籾山泰良,外:状態基準保全の導入効果評価に基づくメンテナンス計画手法,一般社団法人 日本機械学会,生産システム部門講演会講演論文集,pp. 53〜54(2011.3)
3)
日立制御システム安定稼働サービス
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