日立評論

社会課題の解決に向けたGlobal Lighthouse Networkの取り組み

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日立評論

Francisco BettiFrancisco Betti
Head of Shaping the Future of Advanced Manufacturing and Production
World Economic Forum
2015年5月,WEFに参画。国際開発の専門家として,WEFが推進中の17のグローバルイニシアティブの一つである「Shaping the Future of Advanced Manufacturing and Production」プラットフォームの責任者を務める。本プラットフォームを通じて,産学官民のグローバルリーダーたちは第四次産業革命が製造・供給システムにもたらす影響の予測を行っているほか,将来の生産をより生産的・持続的・包括的なものにするため,製造業についてのグローバルアジェンダを形成・推進し,新たなパートナーシップを生み出している。WEFへの加入前は,スイス・ジュネーブのプライスウォーターハウスクーパース社に勤務し,主に国際企業のコンサルティングのプロジェクトマネジメントに従事した。

日立など主要企業のグローバルコミュニティは,第四次産業革命の技術を広く展開し,経営と事業の両面で大きなインパクトを生み出してきました。デジタル化の歩みは,工場などの施設のトランスフォーメーションに始まり,バリューチェーン全体へと展開し,製造業以外のさまざまな部門へと広がりを見せています。

2018年以降,69社にのぼる企業が,専門家による第三者委員会からDX(デジタルトランスフォーメーション)のフロントランナーとして認定されています。これらの企業は,第四次産業革命に関する技術導入の拡大に成功し,「Lighthouse:灯台」と呼ばれる先進工場,すなわち,WEF(World Economic Forum:世界経済フォーラム)のGlobal Lighthouse Networkの一員として認定されました。いずれの企業も,工場,バリューチェーン,ビジネスモデルの転換においてリーダーシップを発揮しています。さらには共同研究にも乗り出しており,連携して共同プロジェクトに取り組むことで知見を広げ,新たなパートナーシップを育んでいます。

Lighthouseには,さらに自社の影響力を強めフットプリントを拡大する機会が主に三つあります。

第一に,2025年までにカーボンニュートラルな製造を実現し,持続的な生産システムの構築に取り組むことです。

世界のエネルギー消費量の54%,地球全体のCO2排出量の22%を占めるのは製造業です。産業界のリーダーの間には,この現状を変えなければならないという認識はあるものの,必要な投資額をすべて見込んだビジネスケースをきちんと示したうえで,環境負荷削減のアクションプランを策定することは容易ではありません。しかし,Lighthouseの中にはすでに環境面で先行している企業もあります。最近では技術面でのイノベーションを新興のビジネスモデルと組み合わせた新しい製造の形が登場しており,企業には,カーボンニュートラルな製造エコシステムを構築しながら競争力や成長力を増強する好機が訪れています。

第二に,中小企業を含めた生産ネットワーク全体に技術導入を拡大することです。

これは,バリューチェーン全体のレジリエンスを高めることにつながります。中小企業も含めたバリューチェーンと生産システムの全体を変革することによって,製造業は第四次産業革命の恩恵を十分に享受することができます。そこで, Lighthouseは責任あるリーダーシップを発揮し,あらゆる規模のサプライヤを含めた生産ネットワーク全体に第四次産業革命の技術が普及するよう,積極的に支援する必要があります。これにより,業界全体としての業績が向上し,技術への投資対効果が高まるだけでなく,知見が平等に行き渡ることでイノベーションが加速し,さらには自然災害やサイバー攻撃などの危機に直面しても混乱を回避することができます。

第三に,能力育成や生涯学習への投資と,法令,政策,産業振興戦略の向上支援です。

製造業の未来に向けた労働力の最適化には,産学官民が連携して取り組む必要があります。そのためには,教育システムの見直しや,リスキリング(再訓練)・スキルアップのための大規模な取り組みへの投資,継続的に適応力を高める生涯学習に適した学習環境の構築などが必要となります。これによって労働者の流動性が増し,企業はLighthouseにおいても重要な課題であったスキルギャップの解消を実現するでしょう。

さらに政府も,技術の普及や導入を目的とする新たな戦略,イニシアティブ,プログラムなどの整備を通じて企業のこうした変化を支援・推進するうえで積極的に役割を果たすことができます。すでに複数の国で,官民連携プラットフォームへの投資により,製造業における第四次産業革命の認知度向上,新たなユースケースの開発支援,研究機関と企業の協働支援といった取り組みが行われています。

WEFは,2020年1月,日立製作所大みか事業所(茨城県日立市)を Lighthouseに認定しました。同事業所は独自のユースケースの選定により,品質を保ったうえで主力製品のリードタイムを50%短縮するなど大きな成果を挙げています。導入されている主なソリューションには,デジタル化による作業効率,設備稼働率の向上,制御用IoT(Internet of Things)システム,顧客システムのデジタルツイン,エネルギー管理システムなどがあり,幅広い産業用IoT技術と,エンジニアリング,生産,メンテナンスなどの業務データ分析が活用されています。

Lighthouseは,技術の活用によって生産性を向上させるだけでなく,サステナビリティや中小企業支援,労働力の最適化などの面でも,より持続的で包括的な生産システムの構築に貢献することができます。日立製作所大みか事業所が,今後もDXの歩みを進め,さらに広範な環境目標,社会目標に貢献することを期待しています。