日立評論

中国におけるCOVID-19対策とタッチレスエレベーター呼びソリューション

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日立評論

ハイライト

2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症は,その後急速に感染を拡大した。エレベーターは,人々がビルの中を昇降するためになくてはならない設備の一つであるが,狭く密閉された空間に多くの人が出入りするため,操作ボタンを介しての接触感染など,利用に際してリスクが大きく,住民が安心して外出し,エレベーターを利用できる環境の整備が急務となっていた。

これに対し,日立はチームワークと豊富な経験に基づき,音声などの生体認証,スマートフォン,QRコードなど,さまざまな方法でエレベーターを利用できるソリューションを打ち出した。また,エレベーターとビルのIoTシステムが連携可能なインタフェースを提供することで,ウイルス感染のリスクを効果的に低減する。中国国内において,こうしたソリューションを提案した企業は日立が初であり,使用シーンに合わせて選択可能な豊富なオプションも含めて,高い評価を受けている。

本稿では,中国で昇降機事業を展開する日立電梯(中国)有限公司の取り組みとソリューションを紹介する。

目次

執筆者紹介

林 新建Lin Xinjian

  • 日立楼宇技術(広州)有限公司 ビル市場部 所属
  • 現在,昇降機ソリューションの計画業務に従事

1. はじめに

図1|新型コロナウイルス感染症の発生初期のエレベーターにおける感染対策図1|新型コロナウイルス感染症の発生初期のエレベーターにおける感染対策木材による足踏み式操作(左)と,使い捨ての楊枝や手袋を用いた操作(右上・右下)の例を示す。いずれも手を介したウイルス感染を防ぐことを目的としているが,美観を損ねる,資源の浪費といった点で問題があった。また,使い捨ての楊枝や手袋を用いるケースでは,それ自体にウイルスが付着する可能性もあり,効果的とは言えなかった。

2019年12月に確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界で感染拡大を続け,2020年2月にはWHO(World Health Organization)が同感染症の危険性の評価を最高レベルの「非常に高い」に引き上げ,同年3月には「パンデミック」と認定した。感染症予防の専門家によると,COVID-19の感染経路は主にエアロゾル感染と接触感染があるとされている。このうち接触感染とは,病原体保有者から生じる飛沫が物の表面に付着し,そこに触れた他者の手指が汚染され,その手で口や鼻,目などの粘膜に触れて感染する場合のことを言う。

エレベーターはマンションなどの集合住宅における移動の主な手段であるが,空間が狭く,密閉され,人の出入りも多いため,操作盤,特に行先階登録のボタンなどの機器表面にウイルスが付着しやすい。エレベーターにおけるHMI(Human Machine Interface)操作では,エレベーターのボタンを直接指で触る必要があり,前述した接触感染の原因となり得る。

COVID-19のパンデミックへの具体的な対策が進まない中,中華人民共和国においても,エレベーターを利用する人々の不安は高まった。感染拡大の初期には使い捨ての楊枝やティッシュペーパー,足踏み式の操作器具によって間接的にエレベーターのボタンを押すという対策が取られたが,それでも感染のリスクはゼロではない。これらの対策では人々の不安を根本的に払拭することはできず,また,ボタンを押すのに使用した道具を使い捨てることは,環境保全の面でも資源の浪費につながり,好ましくない (図1参照)。

これに対し,日立はエレベーター利用者の不安を払拭し,人々のQoL(Quality of Life)の向上をめざすべく,タッチレスエレベーター呼びソリューションを提案している。

2. 感染防止に向けたソリューション

日立は,COVID-19の拡大に伴い高まった,エレベーターの利用に対する社会的な不安を解消するべく,これまでに培った技術と経験を生かし,エレベーターの操作を通じた接触感染のリスクを低減するための安全で衛生的,かつ効果的で,環境に配慮した革新的なアプローチで取り組んでいる。具体的には,立地や構造などがさまざまなビルに対して,日立の技術とテンセント社のクラウドプラットフォームを活用し,ビッグデータやIoT(Internet of Things),AI(Artificial Intelligence)認証といった技術を用いて公衆衛生へのニーズに応え,多様な製品とソリューションを開発・提供している。ここでは,その具体的な事例を紹介する。

  1. 商業ビルや集合住宅など建物の用途に合わせたカスタムメイドの対応
    スマートフォンやQRコード※),音声などの生体認証,IC(Integrated Circuit)カードなどを活用したさまざまなエレベーター呼びソリューションをクラウドを介して提供するとともに,ビル全体のIoTシステムにエレベーターのインタフェースを持たせることで,エレベーターとビルのエントランスゲートやカメラ付きインターホン,ビッグデータクラウドとの相互接続を可能にしている(表1図2参照)。こうした多角的なソリューションを中国国内で提供したのは日立が初めてであり,提供するオプションの数も国内一となっている。
    特に音声認証のソリューション開発においては,異なる年齢層,性別,場所から多くの音声サンプルを収集している。中国国内で初めてとなる,音声(ウェークアップなし)によってエレベーターを呼ぶハンズフリーなエレベーター呼びシステムは,中国の多様な方言にも対応可能である。また,将来的なグローバル市場への進出に向けて,英語,日本語など異なる言語への対応についても研究を進めている。
  2. ロボットによる輸配送業務とエレベーターの連携
    COVID-19の感染対策の一つに,輸配送業務におけるロボットの活用がある。ロボットが人に代わって輸配送業務を行うことで,人が外出して感染する可能性を大幅に低減できる。しかし,ロボットがエレベーターに乗る際には,エレベーターとの相互連携が必要となるため,日立はロボットとエレベーターを連動させるスマートソリューションを開発した。このエレベーター連動インタフェースによって,ロボットは自主的にエレベーターを「使用」し,ビル内において無人でスマートに配送を行い,宅配便や出前などを各階の顧客に届けられる。
    日立は既に複数のロボットメーカーと協議を行い,ロボットとエレベーターの連動インタフェースのカスタム開発を行っており,エレベーター業界で初となるサービスロボットの垂直移動を実現している。

表1|さまざまなニーズに応える日立のソリューション表1|さまざまなニーズに応える日立のソリューション日立エレベーターは顧客とビルのニーズに応じて,ハンズフリーのソリューションを提供する。

図2|音声認証によるエレベーター呼び(左)とQRコードによる行先階登録(右)のイメージ図2|音声認証によるエレベーター呼び(左)とQRコードによる行先階登録(右)のイメージ音声およびQRコードを活用することで,接触感染のリスクを低減する。音声識別によって完全なハンズフリーを実現し,スマートフォンでQRコードを読み取るだけで,エレベーターの呼びボタンを押さなくても行先階を登録できる。

※)
QRコードは,株式会社デンソーウェーブの登録商標である。

3. ソリューションの導入拡大

COVID-19の感染が拡大する中,日立は顧客の緊急の要望に応えるべく,感染予防のためのソリューションの開発・導入を進めている。これに際しては,チームワークを発揮し,感染予防という共通の目標の達成に向けて,無償で導入をサポートしている。これらのソリューションを初めて導入した広州・新福港のプロジェクトでは,開発から導入・引き渡しまでを1週間で完遂し,顧客から高い評価を受けた。日立はチームワークと中国市場における豊富な経験に基づき,顧客の課題に真摯に向き合い,ソリューションの拡販を進めている(表2参照)。

表2|状況に応じたソリューション導入・拡販の施策表2|状況に応じたソリューション導入・拡販の施策日立電梯(中国)は,既設・新設といった市場ごとにエレベーターの販促施策を実施している。コロナ禍の現状を考慮し,オンラインとオフラインの両面で拡販を進めている。

4. おわりに

COVID-19の爆発的流行は人々の生活習慣,公共空間での行動に多大な変化をもたらした。人々が感染の不安を抱える中,日立は社会のニーズに応じて,グループ各社の技術を結集し,人々のQoLの改善,都市のレジリエンスの向上に取り組んでいる。

日立電梯(中国)のソリューションは,早期に社会のニーズに対応し,エレベーターにおける感染防止に向けた具体的な施策を提供したことで,広く顧客に普及し,エレベーター内の感染対策の好例となった。今後も社会イノベーションを通じて,パンデミックの収束と活力ある社会の実現に貢献していく。

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