近年,新型コロナウイルス感染症をはじめとして,環境の変化などに起因する社会課題が数多く顕在化しており,昇降機に対する市場ニーズにも影響を及ぼしている。
日立昇降機製品・サービスの開発コンセプトである「HUMAN FRIENDLY」を具現化した「アーバンエースHF(エイチエフ)」を2021年4月に発売した。世界的なプロダクトデザイナーである深澤直人氏監修によるシンプルな新デザインと,「かご内クリーン運転」や「非接触登録装置」などの最新の感染症リスク軽減ソリューション,ビルオーナー・管理者向けダッシュボード「BUILLINK(ビルリンク)」をはじめとするLumadaのソリューションの適用などによって,新たなエレベーター利用体験を実現する。
エレベーターの利用者は,無意識下において,「スムーズで安全な移動」,「利用時の快適性」などの期待や生理的な欲求を抱えている。日立は,こうした人間の潜在的な欲求に着目し,世界的に活躍している深澤直人氏が代表を務めるNAOTO FUKASAWA DESIGN LTD.と協業し,開発コンセプトである「HUMAN FRIENDLY for Hitachi Elevators/Escalators」を2015年に創出した。
また,2019年末からの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大を契機に,社会のあり方や人々の生活様式が変容し,新常態(ニューノーマル)を見据えた社会課題が生まれている。ビル分野においても,感染リスクの低減に向けて,エレベーターなどの共用設備に手を触れないかたちでの移動や,ソーシャルディスタンシングといった新たな対応が求められている1)。
こうした社会の変容を受け,日立は開発コンセプト「HUMAN FRIENDLY」の具現化を行うとともに,ニューノーマル時代のスタンダードとなる安全・安心・快適を提供する標準型エレベーターの新モデル「アーバンエースHF」を開発した。
本稿では,本製品のデザインと新機能について紹介する。
「アーバンエースHF」は,「HUMAN FRIENDLY」を具現化する新たなデザイン,先進の機能と多様な連携ソリューションによる感染症リスク軽減,災害に対するレジリエンス向上,ビル管理業務における働き方改革の推進など,ニューノーマル時代のニーズに応えながら人・ビル・社会に新たな価値を提供する。
日本を代表するプロダクトデザイナーである深澤直人氏監修の下,統一感のある色調と凹凸の少ないフラットな乗りかご内空間,高い視認性を確保したボタンなど,シンプルな中に機能美を追求したデザインとした(図1参照)。側板,戸,天枠,操作盤の色調をすべて統一し,従来にないシンプルな内装の「CLEAN」と,木目柄とシルバー色の組み合わせで落ち着きと開放感のある空間を実現した「CLASSIC」の2系統の推奨デザインを用意した(図2参照)。
乗りかご内の空気の浄化や,乗り場や乗りかご内のソーシャルディスタンシング,ボタンに手を触れないかたちでのエレベーター利用など,新型コロナウイルスの感染拡大を契機とした,ニューノーマル時代の安全・安心・快適のニーズに対応する最新の感染症リスク軽減機能を用意した。主なソリューションは以下のとおりである。
本サービスは,日立ビルシステムと保全契約を結び,遠隔監視を行うエレベーターを対象とし,保全契約に含まれるサービスとして提供する。
気候変動や,新型コロナウイルスの感染拡大などを背景とした,災害に対するレジリエンス向上や,働き方改革のニーズに対応する機能とソリューションをラインアップした。主なソリューションは以下のとおりである。
本稿では,新型コロナウイルスの感染拡大を受けて,さまざまな感染症リスク軽減機能をラインアップした「アーバンエースHF」について紹介した。
近年,新型コロナウイルス以外にも,環境の変化などに起因する社会課題が数多く顕在化しており,昇降機に対する市場ニーズにも影響を及ぼしている。
例えば,日本各地で発生している豪雨による冠水被害を受けて,エレベーター巻上機・制御盤の設置位置を現状の最下階よりも上階にしたいというニーズが高まっている。このような背景から,2021年9月より「アーバンエースHF」を対象に,巻上機・制御盤の設置高さのかさ上げ対応をオプション化する計画である。
競争が激化する中,こうした市場ニーズの変化を迅速に捉え,マーケットインの製品・サービスをタイムリーに市場へ提供していけるかどうかが,より重要になりつつある。
日立は,各支社との双方向のコミュニケーションを通じて,市場動向や顧客の声,製品に関する要望などを随時収集・分析し,関連部門と連携しながら顧客に選ばれる製品・サービスを今後も提供していく。