日立評論

サステナブルな未来のモビリティを実現する社会イノベーション

CASEで変貌するクルマ社会を展望する

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COVER STORY:CONCEPT

サステナブルな未来のモビリティを実現する社会イノベーション

CASEで変貌するクルマ社会を展望する

ハイライト

深刻化する気候変動への対策として多くの国と地域が2050年カーボンニュートラルの実現をめざし,産業界ではエネルギーシフトと電動化が加速している。モビリティ,特にクルマではその流れを受けた脱ガソリン車に加え,デジタル技術の発展を背景としたCASE(Connected:コネクテッド,Autonomous:自動運転,Shared & Services:シェアリング&サービス,Electric:電動化)の潮流が広がり,大きな変革期を迎えている。

人々の生活や産業の発展に貢献してきたモビリティは,サステナブルな社会の構築という新たな課題にどう応えていくのか。モビリティ・クルマ社会の未来像と,その実現のために求められる技術とは。次世代モビリティ研究の泰斗である東京大学の須田義大教授を迎え,日立グループモビリティ分野のキーパーソンと意見を交わす。

目次

カーボンニュートラルと安全への関心の高まり

須田 義大 須田 義大
東京大学生産技術研究所 次世代モビリティ研究センター教授/東京大学モビリティ・イノベーション連携機構 機構長
1982年東京大学工学部機械工学科卒業,東京大学大学院修士課程博士課程修了(工学博士)。法政大学工学部機械工学科助教授,カナダクイーンズ大学客員助教授を経て,2000年東京大学生産技術研究所教授。2007年より同千葉実験所所長,2010年より同次世代モビリティ研究センター(ITSセンター)長。2018年より東京大学モビリティ・イノベーション連携研究機構長。車両制御工学,ITS(高度道路交通システム)等を専門とし,国内外の学協会の理事・評議員,国際会議の議長,国土交通省の審議会委員など政府委員を務める。

上桶 亨 上桶 亨
日立Astemo株式会社 代表取締役エグゼクティブヴァイスプレジデント 兼 パワートレイン&セーフティシステム事業部長
1984年日立製作所入社,1999年日立オートモティブプロダクツ(アメリカ)INC出向,2004年同社オートモティブシステムグループ営業統括本部,2009年日立オートモティブシステムズ株式会社営業本部副本部長,2013年同社理事,日立オートモティブシステムズアメリカズ社社長,2016年同社常務執行役員 営業統括本部長,2018年同社代表取締役副社長執行役員,2019年同社 エグゼクティブヴァイスプレジデント兼パワートレイン&セーフティシステム事業部長を経て,2021年より現職。

渡邉地球規模での気候変動を抑制するため,2020年,日本政府は2050年にカーボンニュートラルの実現をめざすことを宣言しました。SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の達成をめざす機運も高まり,サステナブルな社会の一翼を担うクルマのあり方への関心も高まっています。CASEと呼ばれる新たな変革の潮流も起き,各領域での技術革新も進んでいます。次世代モビリティを研究されてきた須田先生は,こうした現在の動向をどのようにご覧になっていますか。

須田CASEが話題になり始めたのは数年前からですが,カーボンニュートラルという大きな目標が出てきたことで,急速にElectric(電動化)への関心が高まっていますね。またConnected,Autonomous,Shared & Servicesは,自動車が商品というよりもサービスとして提供されるものになっていく,いわゆるMaaS(Mobility as a Service)の動きを加速させると見られています。

カーボンニュートラルと並んで重要性を増しているのが「安全」というキーワードでしょう。自動車の性能向上や法令遵守の取り組みなどによって交通事故の死者数は減少の一途を辿り,2020年にはついに3,000人を割り込みました。私は現在,国土交通省 自動車局交通政策審議会の「技術安全ワーキンググループ」の委員長を務めておりますが,この流れをさらに加速するため,事故予防技術の搭載により2035年頃までに乗用車(新車)の責任による死亡事故ゼロをめざすという目標を掲げています。かなり高い目標ですが,技術と制度の両面から本気で取り組むには,それぐらい意欲的な数字が必要であろうと思います。

事故や渋滞を減らし交通を円滑化することは,エネルギーの浪費を抑えてカーボンニュートラルに貢献することにもつながります。これからは,自動車単体だけではなく移動全体にかかわるエネルギー効率を考えることが重要です。

アフターコロナの社会では,モビリティの需要や,求められる質が大きく変化していく可能性があります。それは特に自動車業界にとって逆風となるかもしれませんが,うまく変革の波に乗ることができれば未来の展望も開けるのではないでしょうか。

上桶われわれのようなビジネスの最前線でも変革の時代の到来を日々実感しています。ここ半年ほどの間に各国,あるいは各カーメーカーからEV(Electric Vehicle)導入に関するさまざまな目標値が発表され,それに伴ってEV関連製品の問い合わせも急増しています。加えて,須田先生がおっしゃるような交通事故の削減につながる安全・安心技術,乗り心地の向上,移動の自由の確保などにつながる製品やソリューションへの関心が高まっています。

相田環境負荷の低減と交通事故ゼロは自動車業界の長年の課題であり,CASEの潮流によってその可能性が見えてきたことは大きな進歩ですね。カーボンニュートラルにつながる電動化や,安全運転支援システムの進化は,政策的な動きとともに,バッテリー,パワーエレクトロニクス,制御などの技術の革新が大きな要因となって加速しています。それらの領域への投資が拡大したことで開発競争も激化していますが,われわれ日立Astemoは日立グループとしての総合力を発揮して革新をリードしていきたいと考えています。

渡邉日立グループの研究開発部門では,モビリティを取り巻く動向についてどう捉えていますか。

森田日立は2009年から社会イノベーション事業を推進しています。これは,デジタル技術を活用することで社会インフラを革新し,お客様や社会が向き合う課題の解決をめざす事業ですが,ここ1,2年で多くの課題が顕在化し,解決への期待も高まっていると感じます。特にカーボンニュートラルについては,2021年4月現在,125か国と1地域が,2050年までに実現することを表明していますが,達成には大きな変革が必要です。そのため,今の事業を強化していくというフォアキャストの考え方だけでなく,2050年のあるべき世界の姿を前提としたバックキャストの発想で研究開発の長期戦略を立てています。

自動車においてはEVが主流となり,大型商用車の燃料電池化などの水素利用も進むと予想しています。さらに自動運転技術が高度化してモビリティのあり方が変わるとともに,IT企業などの異業種プレイヤーの参入も加速するでしょう。その中でオープンイノベーションをリードして,デジタル技術を取り入れた次世代のモビリティ開発を支援していくことがわれわれの目標です。

図1│日立Astemoの経営ビジョン 図1│日立Astemoの経営ビジョン

安全・安心,低環境負荷で自由に移動できる社会へ

相田 圭一 相田 圭一
日立Astemo株式会社 取締役エグゼクティブヴァイスプレジデント 兼 CTO 兼 CISO 兼 技術開発統括本部長
1986年本田技研工業株式会社入社。2015年株式会社本田技術研究所執行役員 統合制御開発担当(自動運転,コネクテッドプラットフォーム開発),2018年同社常務執行役員 パワートレイン戦略統括,2019年株式会社ケーヒン代表取締役 取締役社長を経て,2021年より現職。

渡邉環境,安全・安心などの重要性が高まり,まさに変革期にあるクルマ社会ですが,須田先生はその未来像をどのようにお考えでしょうか。

須田2050年カーボンニュートラルの達成は見届けられるかどうかわかりませんが,少なくとも安全・安心については,やはり誰もが安全に,安心して,行きたいところへ行きたいときに,少ない環境負荷で自由に移動できる社会を実現していきたいですね。そうなると公共交通が必要なくなると思われるかもしれませんが,社会のルールを学ぶためにも公共交通という場は必要であり,将来みんなが自由でパーソナルな移動手段を手に入れると,逆に社会性を身につける教育の場としての公共モビリティという存在が求められるようになるかもしれません。

上桶安全・安心で自由な移動を実現することは,社会全体のサステナビリティを高め,また冒頭でおっしゃっていたモビリティの円滑化にもつながりますね。それには自動車業界全体で取り組む必要がありますが,われわれサプライヤとしては,クルマが外界をうまく認識し,外界と適切にコミュニケーションをとるための技術など,必要な技術を開発,提供することで貢献していきます。

また,もう少し近い未来の話をすると,カーボンニュートラルに向けて電動化製品を提供していくだけでなく,製造プロセスと製品のライフサイクルにおける脱炭素も求められます。今年のIR説明会(Hitachi Investor Day 2021)では,複数の投資家から当社のカーボンニュートラルに向けた具体的な取り組みについて質問を受けました。われわれは,工場では2030年までに生産ラインでのCO2排出量ゼロ,製品では2030年までに製品の使用により発生するCO2を50%削減するという目標を立てて取り組んでいますが,カーボンニュートラルが企業価値,投資判断を左右する時代になっていることを意識して,その流れに対応していく考えです。

相田カーボンニュートラルは気候変動の抑制のために行うもので,本来,世界の人々にとっての共通課題であるはずですが,国家レベルの政策テーマという先入観もあり,実際に自動車を購入するエンドユーザーにはあまり意識されていないのが現状だと思います。やはり環境意識に頼るだけでなく,エンドユーザーが便利でお得だと感じるものが提供できなければ,EVの普及は難しいのではないでしょうか。われわれサプライヤはEVの価値を高める製品やシステムを提供していきますが,今後はEVを家庭の電源に利用するV2H(Vehicle to Home)や,電力系統安定化のバッファとして利用する V2G(Vehicle to Grid)のように,エネルギーとの連携で価値を提供していくことも重要になると思います。

自動運転や運転支援についても,交通事故回避だけでなく,レベルアップによって運転をシステムに任せてセカンダリータスクを可能にすることもエンドユーザーにとっての価値になります。そのために自動運転レベル3,さらにはレベル4の技術についてもしっかり取り組んでいきます。

技術開発を牽引する物流の最適化

森田 歩 森田 歩
日立製作所 研究開発グループ テクノロジーイノベーション統括本部 統括本部長
1995年東京大学大学院工学系研究科電気工学専攻博士課程修了後,日立製作所入社。電力・電機開発研究所,エネルギー・環境システム研究所,日立研究所において送配電機器・システムの研究開発に従事。2018年より,研究開発グループ テクノロジーイノベーション統括本部 統括本部長として,社会インフラ分野の研究開発を牽引。博士(工学)。
電気学会・IEEE・CIGRE会員。

渡邉 恵子 渡邉 恵子
[司会]
日立Astemo株式会社 技術開発統括本部 技術企画部 部長

渡邉モビリティの未来を考えたとき,物流の最適化も課題と言われていますね。

須田ええ,モビリティというと人の動きのほうに注目が集まりがちですが,物の動きも重要です。コロナ禍でも物流は減らないどころか増えており,その効率化はサステナブルなモビリティに向けて欠かせない要素です。物流には動脈(生産物の輸送)と静脈(廃棄物などの輸送)があり,物は人間のようには自分で動きませんから機械化・自動化には技術的な制約も多くあります。また物流に関わるセクターは多岐にわたりエコシステムも複雑なため,統一的に議論できる場がないことが課題です。

さらに言えば,物流単体で見るのではなく,人と物の流れをうまくマージするというような考え方も必要でしょう。旅行や買い物などのとき,荷物だけをすぐにきちんと目的の場所まで運んでくれるようなサービスがあれば,手ぶらで身軽になれるので移動の選択肢も広がりますよね。

森田物流のような商用のフィールドは,自動運転や充電インフラも含めたEV技術などの発展を牽引していくと思われます。EV化が進むと充電管理と運行管理を併せて考える必要が出てきますし,さまざまな研究開発が進むでしょう。

またEVの普及では,環境性と経済性の両立という課題も解決しなければなりません。例えば,2050年に電力需要量の50%を再生可能エネルギーで賄おうとすると,500 GW hくらいの蓄電システムが必要になると試算しており,8,000万台の自動車のうち,約半数がバッテリーを積んでいるとして,さらに,その中の20%以上が系統に接続されて同時に充放電するようなシステムが必要になると予想されます。こうした課題を克服するには,社会全体で協力してエネルギー利用を最適化する世界を構築する必要があります。ただ,数字で見るとハードルは高いのですが,それだけ日立にとってもビジネスチャンスが大きいと捉えてチャレンジしていくことが大切だと思います。

上桶EVに関しては,先日EUが2035年にハイブリッド車も含めたガソリン・ディーゼル車の販売を禁止するという方針を打ち出しました。これが立法化されるかどうかは不透明ですが,われわれとしてはこうした動きにしっかり対応していかなければなりません。一方で,環境負荷の観点からEVが本当に最適な選択肢なのか疑問視する意見もあり,日本として議論をリードしていくことも大切ではないかと思います。

須田EVにしても自動運転にしても,技術を社会実装していくためには制度設計が不可欠ですけれど,エンジニアの立場から言うと,今後は決められた制度の中で仕事をするというだけでなく,自分たちが仕事しやすいような制度になるよう働きかけることにも力を入れていかなければならないと思います。自分たちの強みと,ユーザーが本当に望んでいるものを両輪とした技術開発が求められるでしょう。

CASEへの注力で次世代モビリティの実現に貢献

渡邉では,モビリティの未来像に向けて,日立グループではどのように取り組んでいくのかをご紹介ください。

上桶日立グループは2021中期経営計画の中で,社会イノベーション事業を通じて社会価値,環境価値,経済価値を向上していくという方針を打ち出しています。これをモビリティ事業に落とし込むと,まず社会価値とは,先ほどから話題にのぼっているAD(Autonomous Driving:自動運転),それからADAS(Advanced Driver Assistance Systems:先進運転支援システム)に関連するシステムやコンポーネントの提供により,安全性・快適性・QoL(Quality of Life)の向上などに貢献することです。交通事故や渋滞の削減は社会に大きな価値をもたらします。

環境価値は,先進電動パワートレインシステムユニットなどの高効率な電動化製品によって,CO2排出量の低減に貢献することですね。日立Astemoは現時点で電動車用モータで世界1位※),インバータで世界3位※)のシェアを占めていますが,工場の新設などで供給力をさらに高め,2025年にはインバータも世界1位をめざしていきます。

全体的な方針は,デジタル社会の到来という大きな流れの中で,自動化・電動化を基本としてビッグデータでつなぐ先進的なモビリティソリューションの提供をめざしていくことですね。具体的な数字では,2025年頃までにxEVに対して研究開発費も含めて約3,000憶円を投資するなど,主にCASE関連技術を拡充していきます。

相田先進モビリティソリューションについて技術的な観点で言いますと,AD/ADASに関しては,ステレオカメラやレーダーなどを組み合わせたセンサーフュージョンによる高度な認知判断技術をコアに,自動運転のレベルに合わせた拡張性の高いコンポーネントを開発し,カーメーカーさんがAD/ADAS技術を導入しやすくする取り組みを進めています。

EV用のモータ,インバータに関しては日立グループの強み技術であり,今後もしっかり強化していくとともに,ギアボックスも含めた高効率でコンパクトなドライブユニット「e-Axle」を提供することで,航続距離の延長もしくはバッテリー容量の削減,また設計の自由度を向上させパッケージングの魅力を高めることに貢献していきます。

またシャシーの領域は自動運転技術の構成要素としても重要であり,ブレーキ,ステアリング,サスペンションそれぞれのコンポーネントを個別に進化させるだけでなく,その上にあるADASやパワートレインと連携,協調した統合車両挙動制御システムで,より安心で快適な乗り心地を提供していきます。

これからのクルマに不可欠なコネクテッドカー技術については,日立グループのデジタルイノベーションの中核であるLumadaを活用して進化させています。自動運転やMaaSに必要な機能を備えた車載ユニットに加え,組み込みソフトウェアの無線によるアップデートを行うOTA(Over The Air)技術を開発し,世界初のレベル3自動運転を実現した本田技研工業株式会社の新型レジェンドに採用されました。これは差分更新の効率や高いセキュリティ性能などが認められた結果です。このほかにも,Lumadaによる製品とシステムの拡充,深化などに取り組み,サプライヤの立場から次世代モビリティの実現に貢献していきます。

図2│持続可能な社会の構築に貢献する先進的なモビリティソリューションの提供 図2│持続可能な社会の構築に貢献する先進的なモビリティソリューションの提供

※)
2021年7月現在,日立Astemo株式会社調べ。

高まるソフトウェアの存在感

渡邉研究開発グループとしてはいかがですか。

森田日立の社会イノベーション事業は,OT(Operational Technology)とITとプロダクトを掛け合わせて社会課題を解決していく事業であるとも言えるのですが,モビリティの分野でも,まずモータやインバータなどのコンポーネントにおいて世界ナンバーワンのプロダクトを開発していくこと,そしてOTとしてそれらを実装して動かすAD/ADAS,さらにITであるコネクテッド技術を掛け合わせて,モビリティに新しい価値を創造し,事業を成長させていくということを研究開発の基本的な方針としています。

ここ数年,日立グループはABB社(2021年10月より日立エナジー社に社名変更)のパワーグリッド部門やGlobalLogic社などの買収によって外部の優れたリソースを取り入れることに力を入れてきました。日立Astemoもそうですが,ここからは,そうした新しい仲間と力を合わせて注力分野を飛躍的に成長させていかなければなりません。研究開発グループとしても,それぞれの領域での成長に貢献できるよう,戦略的に取り組んでいきます。

図3│2050年に向けた日立のビジョン 「Digital Mobility」 図3│2050年に向けた日立のビジョン 「Digital Mobility」

上桶GlobalLogic社とLumadaのコラボレーションにはわれわれも期待しています。日立Astemoでも2020年にドイツの自動車用ソフトウェアの専門企業であるゼネオス社を仲間に加え,ソフトウェアの強化に力を入れているところです。

OT×IT×プロダクトによる価値創造については,われわれは基本的にプロダクト,ハードウェアを売っていく会社なのですけれど,その中に占めるソフトウェアの割合がどんどん高まるという構造変化が起きています。特に自動運転のシステムを支える「認知」,「判断」,「操作」の機能ではソフトウェアが大きな役割を担い,最近ではSDV(Software Defined Vehicle)という概念も登場しています。自動運転の機能向上のためには,自動車の挙動や外界情報などのビッグデータを蓄積し,AI(Artificial Intelligence)を活用して分析,フィードバックする技術も不可欠となっており,その点でも研究開発グループとの連携を深めていきたいと考えています。

モビリティと関連要素を組み合わせて価値を創出

渡邉ここまでお聞きになって日立にどのようなことを期待されますか。

須田私は自動車だけでなく鉄道分野の研究も手がけていますから,日立グループとはさまざまな領域でお付き合いがありますが,これだけ多くのメニューを持ち,統合的なモビリティプラットフォームが提案できる企業は世界でもほとんどないと思います。複数の強みを組み合わせることであらゆるものを提供できますし,モビリティの世界でリーダーシップをとれるのではないでしょうか。

例えば,自動車ではOBD(On Board Diagnostics:車載故障診断装置)を手がけておられますよね。他方,鉄道や産業機器ではIoT(Internet of Things)を活用した故障予兆診断技術を提供しておられますから,それらを組み合わせると自動車でも予兆診断サービスのようなことが可能になるかもしれません。MaaSの時代にはOTやITの知見が重要になりますし,そこで集めたデータには大きな価値があり,上桶さんがおっしゃるように,それらを生かすことで自動車の大きな進化が可能になると期待されます。

森田データの重要性についてはおっしゃるとおりです。LumadaはもともとIlluminate+Data,つまりお客様のデータに光を当てて価値を生み出そうという発想で構築されたものですから,モビリティ分野でもLumadaによるビッグデータ活用を通じ,お客様の業務プロセスの改善や製品そのものの進化などの価値創造に貢献したいと考えています。

須田自動車とは,乗ること自体を楽しむという側面はあるものの,広く見ればあくまでも移動のための手段だとも言えます。一方で,コロナ禍の中でも依然として移動の需要がなくなることはなく,また安全で快適な移動というものは国土,地域,生活や産業の持続可能な発展を支える重要な要素でもあります。だからこそ,例えば自動車とエネルギー,自動車と都市計画,自動車とライフスタイルなどのように,ほかの関連する要素と組み合わせたトータルでのコスト評価,ビジネスモデルや価値の創造ということを,これからの時代は特に考える必要があるでしょう。そうした意味でも,幅広い事業分野を手がける日立グループには期待しています。

渡邉モビリティが豊かな社会の基盤であるということを再確認し,社会全体のサステナビリティとともにモビリティ自体のサステナビリティにも貢献してまいります。本日はありがとうございました。