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原子力

エネルギー

1. 人工知能を用いた配管,空調ダクト,ケーブルトレイの自動設計システム

今日,再生可能エネルギーの低コスト化に伴い,原子力発電のさらなる競争力向上が求められている。ABWR(Advanced Boiling Water Reactor)プラント1基当たり約100 kmにも及ぶ配管をはじめ,その他の長物設備(空調ダクト,ケーブルトレイ)のAI(Artificial Intelligence)自動設計システムを開発し,高速でのルート計画および相互の配置調整を支援する。本システムの活用により,工程短縮や物量低減を行い,プラント建設の抜本的なコスト低減をめざす。本システムは,遺伝的アルゴリズムによるルート探索プログラムと深層学習を組み合わせたハイブリッド方式となっており,既設プラントの3D-CAD(Three Dimensions Computer-aided Design)データを学習させることで,これまでの設計ノウハウを生かした長物設備の設計が可能となる。

また,本システムの特徴として,熱膨張,振動や従前の設計プロセスでは困難であった流体現象(乱流,旋回流など)を考慮したうえでの長物ルート計画が可能である。後述の「[3]配管内流体解析を用いた計測精度評価技術適用による設計合理化」の記事を例にとると,本技術にて解析した入力条件(流体条件・ルート形状)および出力結果(旋回強度)を本システムに学習させることで,旋回流を起因とした流量計測不具合の発生を抑制した配管ルート計画が可能となる。

(日立GEニュークリア・エナジー株式会社)

[01]自動設計システムによる配管ルート計画結果[01]自動設計システムによる配管ルート計画結果

2. 工事のデジタル化による事業拡大への取り組み

近年,施工現場の安全・品質向上や生産性向上,さらには熟練技術者減少に伴う伝承問題などの解決において,デジタル技術の活用に期待が寄せられている。

株式会社日立プラントコンストラクションでは,発電所の定期点検工事の工期短縮への取り組みをLumadaユースケースに登録し,現場状況の見える化(IT)と熟練者知見(OT:Operational Technology)の融合により,クリティカル工程を短縮する対策(工法,手順,治工具など)を提案・開発することで,顧客価値の高い工事を提供してきた。工事分野で顧客協創を推進するためには,工事の計画内容や進捗状況を顧客と共有する基盤が必要である。エンジニアリングから工事,竣工後の保守,定検までを,現実とデジタル情報を連動させたデジタルツインで見える化し,これらを顧客と共有することで高効率な設計・工事・最適運転を実現する。コアとなるソリューションとして,現場状況を高速・高精度で把握するレーザー点群計測技術,点群データと3Dモデルの組み合わせによる施工計画シミュレーション,現場状況を顧客と共に監視できる工事可視化ネットワーク,設備管理に向けた技術伝承など,さまざまなデジタル化に取り組み,顧客協創を推進している。

(株式会社日立プラントコンストラクション)

[02]定期点検工事の工程可視化と工期短縮技術(LumadaUC-01382)[02]定期点検工事の工程可視化と工期短縮技術(LumadaUC-01382)

3. 配管内流体解析を用いた計測精度評価技術適用による設計合理化

配管内の流量特性が流量計に与える影響を設計段階で合理的に評価するために,配管系の3D-CADデータから自動で三次元流体解析用のメッシュを生成し,部分的に適切に領域を区切って連続的に三次元流体解析を行うConnected-3DSim技術を用いて,流量計指示値に影響を与える配管内流れの旋回強度を可視化する技術を開発した。

さらに,詳細な三次元流体解析を多用すると解析に時間がかかり,設計段階でプラントすべての流量計を評価することが困難となるおそれがあるため,配管系統の主要な構成部品であるエルボ,弁に着目して感度解析を実施することにより,立体エルボなど主要な配管構成に対して旋回強度予測モデルを構築し,3D-CADデータから自動で旋回強度を簡易計算する系統スクリーニング技術を構築した。

今後,新規プラント設計や既設プラントへの流量計追設において,本技術を用いて事前に設置配管系の流量指示値への影響を評価することにより,現地試験段階での手戻り作業などの排除が可能となる。

(日立GEニュークリア・エナジー株式会社)

[03]配管内流体解析を用いた計測精度評価技術[03]配管内流体解析を用いた計測精度評価技術

4. 原子力技術伝承システムの構築と技術伝承活動の推進

原子力技術の次世代への伝承は大きな課題であり,ナレッジマネジメント(KM:Knowledge Management)による技術伝承活動※1)を実施してきた。これまでの主な活動は,(1)保有技術をリスト化したナレッジマップの作成,(2)効果的な伝承方法をまとめた伝承カタログの作成,(3)フォーラムの開催によるKM活動の活性化である。

ナレッジマップの作成では,設計部門を中心に知識資産の棚卸しで1万6,000の伝承項目を洗い出した。各伝承項目に対して,技術を保有するエキスパート,それを受け継ぐネキスパート(Next+Expertの造語),伝承優先度・期限および伝承内容・方法を明確化し,それらを基に技術伝承システム(KNOTS※2):Knowledge Transfer System)を構築した。システム化により,全部署の保有技術・伝承状況が一元管理され,個人単位での技術保有数や伝承に必要な時間も見える化されることで,技術喪失リスクの回避を含めた技術伝承の組織的な管理が可能となった。

今後,KNOTSと連携した力量管理や教育計画の策定,新規技術開発分野へのKNOTSの活用検討を進めるとともに,KM活動の定着化で従業員自らが自発的に伝承活動を継続する組織の構築をめざす。

(日立GEニュークリア・エナジー株式会社)

[04]技術伝承システム(KNOTS)概要[04]技術伝承システム(KNOTS)概要

※1)
八木理,外:次世代技術をつなぐ原子力分野でのナレッジマネジメント活動,日立評論,102,2,281〜286(2020.3)
※2)
結び目,絆,集団の意
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