日立評論

産業・流通

インダストリー

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1. 品質のバトンで安心・安全な再生医療に貢献する全工程トレーサビリティの実現

患者自身やドナーから採取した細胞などを培養・加工して患者に投与する再生医療等製品では,製品の取り間違いや,輸送時の温度逸脱の発生,スケジュール調整(患者の容体変化や培養期間などに起因する変更)などの課題がある。そのため,全バリューチェーンにわたる厳格な個体識別と緻密な情報トレースによる品質の担保,ステークホルダー間の確実な情報連携が求められる。

日立はこれらの課題を解決するため,再生医療等製品バリューチェーン統合管理プラットフォーム「Hitachi Value Chain Traceability service for Regenerative Medicine」を構築し,サービス提供を開始している。本サービスは,再生医療等製品を取り巻く各ステークホルダーが共通的に利用し,バリューチェーン全体での品質情報を統合管理するための基盤である。

今後,本サービスをデジタルイノベーションを加速する日立のLumadaソリューションの一つとして医療・医薬品業界向けに展開していくとともに,流通において厳格な情報管理が求められるスペシャリティ医薬品への適用拡大や海外展開を行う予定である。

本サービス基盤が業界標準として広く利用されることをめざし,再生医療の普及・進展に貢献していく。

[01]再生医療等製品バリューチェーン統合管理プラットフォームの概要[01]再生医療等製品バリューチェーン統合管理プラットフォームの概要

2. 輸配送効率化と安全運行支援ソリューション

物流業界では配送の効率化やドライバーの安全管理が喫緊の課題となっている。SISP(Shipping Information Sharing-Platform:配送情報シェアリングプラットフォーム)は日立の提供するサプライチェーンの輸送連携基盤として集荷から納品までをシームレスにつなぐデータプラットフォームである。荷主や運送会社が個別に保有する商流や物流情報をネットワーク化することで即時共有を可能とし,求貨求車,情報の電子化(ペーパーレス),配送状況のリアルタイム連携など,企業間の垣根を超えたシェアリングにより輸配送最適化と作業効率化を実現する。

SSCV-Safety on Hitachi Digital Solution for Logisticsはドライバーの生体・運転データをAI(Artificial Intelligence)で分析し,安全運行管理をトータルサポートする,日立製作所,株式会社日立物流,三菱HCキャピタル株式会社の3社協業のSaaS(Software as a Service)型サービスである。運行前後および運行中のドライバーの生体データ(体温,血中酸素濃度,血圧,自律神経)や,ドライブレコーダーにより取得する車間距離,加速度などをクラウドに蓄積し,AIで分析してリアルタイムでのドライバー通知や運行後の振り返りにより「事故ゼロ」をサポートする。

[02-1]SISP(配送情報シェアリングプラットフォーム)の概要[02-1]SISP(配送情報シェアリングプラットフォーム)の概要

[02-2]SSCV-Safety on Hitachi Digital Solution for Logistics[02-2]SSCV-Safety on Hitachi Digital Solution for Logistics

3. 生産者と生活者の想いをつなぐHitachi Digital Solution for Retail

Hitachi Digital Solution for Retailは,生産者から生活者までデータをつなぎ,共有できるプラットフォームを実現することにより,商品が必要な人に,必要な時,必要な分だけ自律的に供給されるリテールをめざすサービスである。

本サービスは,正確に需要を捉え,適正在庫数をコントロールし,サプライチェーン上のムリ,ムダ,ムラをなくし,さらには,生活者のニーズを察し,満足度を高めるマーケティングを実現する。

これにより,生活者の欲しい商品を欲しい時に,欲しい分だけを供給でき,廃棄ロス削減にもつながり,リテールが生産者と生活者の想いをつなぐ要となる。

Hitachi Digital Solution for Retailは,顧客データを預かる共通基盤を有し,搭載エンジンを活用することで,「ナレッジ蓄積・データ分析」を肩代わりし,リテールのさまざまな業務に適合するサービスを用意している。

[03]Hitachi Digital Solution for Retailサービスラインアップ[03]Hitachi Digital Solution for Retailサービスラインアップ

4. 電子帳簿保存法対応ソリューション(帳票基盤Paplesの活用)

近年,テレワークの推進やコスト削減を目的として,企業の帳票類のペーパーレス化が進んでいる。また,2021年度の電子帳簿保存法の改正により,一部の要件が緩和されるため,ペーパーレス化が加速することが想定される。ペーパーレス化にあたり導入する電子帳票基盤には,電子帳簿保存法の要件を満たすことに加え,「いかに現行システムに影響を与えることなく電子帳票化できるか」と,帳簿・書類・スキャナ文書・電子商取引の電子帳票保存法区分を「いかにシンプルに構成できるか」がカギとなってくる。

これに対するソリューションとして,日鉄日立システムエンジニアリング株式会社のPaplesを活用した電子帳票基盤ソリューションを提供する。Paplesは,JIIMA(Japan Image and Information Management Association)の電子帳簿ソフト法的要件認証を受けており,電子帳票を「作る・取り込む」,「保存・管理する」,「参照・活用する」ことをワンパッケージで実現することができる。また,帳票データを取り込むためのさまざまなIF(Interface)形式に対応しており,既存のシステムに手を加えることなく帳票を電子化することができ,効率的な電子帳簿保存法対応が可能となる。

[04]Paplesを活用した電子帳票基盤ソリューションの概要[04]Paplesを活用した電子帳票基盤ソリューションの概要

5. プラント操業自動化を実現する情報構造化一元管理プラットフォーム(SIMT)

製造業の現場では,作業者や管理者がシステムから情報を収集し,自身の経験と合わせ日々の業務を推進している。これまでは,業務シーンに応じてさまざまな既設システムに散在するファイル・データにアクセスする必要があり,効率的な業務を阻害していた。また,作業員個々の経験やナレッジの違いにより業務レベルにばらつきが生じていた。そこで,業務ノウハウをデジタル化し,技術伝承・業務の高位平準化を実現する情報構造化一元管理技術プラットフォーム「SIMT(Structured Identifier Management Technology)」を開発した。

SIMTは構造化IDと関係リンク技術を利用して必要な情報をデジタルで一元管理することにより,ユーザーのスキルに合わせて必要なタイミングでプッシュ型にて提示する。これにより,むだな情報探索の時間が削減され,業務の効率化に貢献できる。またベテラン作業員に対しても適切な情報を提示するため,より高度な判断を支援できる。小規模から導入を開始し,利用範囲を徐々に拡大することで,これまでの業務ナレッジを生かして情報の共有化を推進可能である。

[05]情報構造化一元管理プラットフォーム(SIMT)の概要[05]情報構造化一元管理プラットフォーム(SIMT)の概要

6. 「EMilia」の機能拡充/電力の需給調整市場に対応するデマンドレスポンス機能

[06]EMiliaのデマンドレスポンス機能の概念図[06]EMiliaのデマンドレスポンス機能の概念図

カーボンニュートラル社会実現に向け,再生可能エネルギーの主力電源化が必要となってきている。しかし,再生可能エネルギーは気象条件により発電量が変動するという欠点がある。そこで,需要家が保有する蓄電池や発電設備,冷凍設備などのエネルギーリソースを遠隔・統合制御して,変動の調整を行うことが期待されている。2021年4月には,変動の調整に用いる電力を取り引きする需給調整市場が開設された。

日立はこのたび,需要家向けに多数の納入実績があるLumadaソリューション「EMilia」に,需給調整市場向け機能として,需要家の保有するエネルギーリソースを自動で統合制御するデマンドレスポンス機能を拡充した。

EMiliaのデマンドレスポンス機能の特徴は以下の3点である。

  1. 追加コストを考慮した調整力予測機能
  2. 多様なエネルギーリソースへの対応
  3. 調整力発揮未達リスクのマネジメント機能

7. 4Mデータを活用し顧客課題の解決に導く「FactRiSM」サクセスストーリー

昨今,製造業分野ではスマート工場化に対する関心やニーズが高まっている。その実現には,経営・製造両面での全体最適化による課題解決が求められるが,スマート工場の定義はさまざまで,事業者自身も真の課題定義ができていないケースが多い。日立は顧客協創方法論「NEXPERIENCE」や簡易分析サービスを活用した対処すべき課題の特定,原因の見える化,課題解決策実施までのスマート工場化の提案・実行まで導く成功体験の実現支援を「FactRiSM」サクセスストーリーとして提案している。

「FactRiSM」サクセスストーリーでは,製造実行システムパッケージ「FactRiSM」に蓄積された実績データに,「4M(Machine,Human,Method,Material)データ解析」により従来は数値化の難しかった作業者の行動データを加え,今まで見えなかった現場の課題と対策方法を提案している。さらに,洗い出した課題・改善施策を「FactRiSM」で具体的な製造作業に落とし込み,より確実な製造実行を実現する。

以上のように,4Mデータを起点に現場の課題・改善施策を導き,実行まで一気通貫で行い,課題解決のサイクル高速化を支援していく。

[07]「FactRiSM」サクセスストーリーのイメージ[07]「FactRiSM」サクセスストーリーのイメージ

8. 鉄鋼プラント向け遠隔試運転環境の確立

コロナ禍における渡航制限もあり,従来,海外現地で行っていた鉄鋼プラントの試運転調整を,リモート環境を活用して遠隔実施するニーズが高まっている。このためには,現地との通信セキュリティを保証したうえで,現地さながらの臨場感ある調整環境の構築が必要である。そこで,以下を特徴とする鉄鋼プラント向け遠隔試運転環境を確立した。

  1. 現地制御システムと遠隔端末との間で,2要素認証VPN(Virtual Private Network:仮想専用ネットワーク)とVDI(Virtual Desktop Infrastructure:仮想デスクトップ基盤)によるセキュアなリモート環境を構築した。
  2. 制御用HMI(Human Machine Interface)の各種画面やITV(Industrial Television)映像などを遠隔端末にリアルタイムで表示し現地と共有することで,リモートコミュニケーションによる臨場感のある操業状況の把握を実現した。
  3. プロセスデータと映像データの同期再生,時刻マーカー操作による映像データの頭出し,蓄積データから操業画面を再現するプレイバックバーチャルシミュレータなどの多彩な解析機能により,圧延トラブルや品質不良の早期原因特定を実現した。

すでに複数の海外鉄鋼プラントで,開発環境を適用した遠隔試運転調整を進めており,リモート調整のみで試運転を完遂したプラントもある。今後は,遠隔試運転効率化ツールの開発を進め,調整期間の短縮を実現していく。

[08]リモート環境による現地調整のシステム構成例[08]リモート環境による現地調整のシステム構成例

9. レトロフィットサービスによるトルコBorcelik社納め主機モータドライブ装置制御回路の更新

鉄鋼プラント用主機モータドライブ装置(以下,「同装置」と記す。)向けレトロフィットサービスを,トルコのBorcelik Celik Sanayii Ticaret A.S.社(以下,「Borcelik社」と記す。)納めの同装置に対して実施し,2021年3月に施工完了した。

昨今,電子部品の改廃サイクルが短期化しており,同装置における制御基板の安定供給を阻害する一因となっている。このため,2003年に納入し17年稼働していたBorcelik社納めの同装置も継続使用において高いリスクがあった。そこで,同装置の設計思想であるセルコンセプトを生かし,モータ制御セル(制御基板を含む制御回路)を最新の制御基板から成るセルへと改装(レトロフィット)する手法を保守サービスの一環として提案するに至った。本手法は同装置の全面更新と同等の効果を安価かつ短工期で得られる。

今後は本手法をパワー主回路セルに応用し,同装置の保守性回復サービスとしてメニュー拡充を行うとともに,世界各国の顧客へと本サービスを提供し,鉄鋼プラントの安定稼働へさらなる貢献をめざす。

[09]鉄鋼プラント用主機モータドライブ装置におけるレトロフィット手法の概要[09]鉄鋼プラント用主機モータドライブ装置におけるレトロフィット手法の概要

10. ディープラーニング形状制御システム汎用パッケージ化

[10]DL形状制御システム概要[10]DL形状制御システム概要

圧延した鋼板の波打ちを制御する形状制御において,DL(ディープラーニング)を用いた自動形状制御システムを提供している。今回,DLにて構築する制御モデルの制御性能評価機能の開発や学習機能の改良を行った。さらに,これらを含むDL形状制御システムの機能を専用PC上に集約させた汎用パッケージを開発した。

制御性能評価機能は,圧延実績データを基に事前に実機適用時の制御モデル制御性能を評価する機能である。これまでDL形状制御システムの適用対象でなかった圧延設備に対しても実機適用の可否判断を支援できるようになった。また学習機能では,制御モデルの入出力や構造を圧延設備に応じて変更可能に拡張しており,柔軟に設備要求へ対応した制御モデル構築を実現する。加えて,本パッケージでは制御演算を専用PCで行う。これにより,圧延実績データを受信し操作出力を送信する仕組みとなり,圧延制御システムの構成に依存せず導入可能である。

本パッケージは,日立の圧延制御システム導入実績がない圧延設備に導入し,その効果を実証済みである。今後は,幅広い圧延設備への適用を進めていく。

11. 航空機産業向けナットプレート組立と設置作業の自動化システム

[11]SmartAttach自動ナットプレートインストールシステム[11]SmartAttach自動ナットプレートインストールシステム

航空機の製造では1機に約2万5,000個のナットプレートが使用され,これらは手作業で組立・設置されている。JRオートメーション社が特許出願中のSmartAttach自動ナットプレートインストールシステムは,作業で必要とされるアライメント,穴あけ,潤滑,カウンターイン,リベット操作を自動化することで顧客の製造を革新する。

本システムは,モジュラー設計により従来比80%のフットプリントで生産レイアウトの柔軟性を高める。穴あけ,リベットなどのツールを迅速に交換可能で,さらに既製品およびカスタマイズ可能なツーリングオプションが利用可能である。

また,SmartAttachは,Lumada Manufacturing Insights:日立AIおよびデータ駆動型IoTソリューションと連携することで,以下の機能を含み,顧客の生産を最適化するソリューションを提供する。

  1. プロセス情報:サイクル時間とパート間時間
  2. マシンの正常性と主要KPI(Key Performance Indicator)
  3. 機械の異常検出と予測メンテナンス

Lumada Manufacturing Insightsのソリューションは,SCADA(Supervisory Control and Data Acquisition)やMES(Manufacturing Execution System)と接続することで,さらなる機能拡張が可能である。

(JRオートメーション社)

12. 生産計画ソリューション

[12]生産計画最適化ソリューション[12]生産計画最適化ソリューション

消費者ニーズや製造業を取り巻く環境の変化スピードが増している中,製造業では柔軟な生産スケジューリング(生産計画)が求められている。生産計画においては,業務の属人化による引き継ぎリスクやスケジューリングの専門性が高く柔軟性を欠く,といった課題を抱えており,課題解決策として生産スケジューラ導入の必要性が高まっている。

本ソリューションは,生産管理・設備保全に関するソリューションと生産スケジューラを組み合わせることで,効率的かつ柔軟な生産計画の実現を支援するものである。

生産スケジューラ(Asprova)とMESや設備保全システム(SmartFAM)を連携させることにより,各システムからの実績や設備情報の適正値が加わり,精度の高い計画が実現できる。これにより,製造現場での突発的なトラブルが発生した場合にも,迅速に生産計画の見直しシミュレーションが可能となり,専任担当者に頼っていた属人化の排除につながるメリットが生まれ,業務の効率化に貢献する。

(株式会社日立産業制御ソリューションズ)

13. Safety & Securityソリューション

IoT機器のように,ネットワークを使ったコネクテッド機能を持つ製品開発では,意図機能を脅かす脅威が製品の外から発生することを考慮した,「SafetyとSecurity設計」を両立できる設計手法が必要となる。SafetyとSecurity設計の両立にあたっては,設計観点の違いから生じる要求の干渉や設計漏れ,それに伴う手戻りが発生しやすい。そのため,統一されたシステムの設計情報を使ってトレードオフ分析を行い,反復的に設計する手法が必要となってくる。その解決策としてMBSE(Model-based Systems Engineering)を適用することで,統一されたシステムの設計情報による分析や影響の可視化ができるようになり,効率的な反復設計が可能となる。

設計の効率化にあたっては,CI/CD(Continuous Integration/Continuous Delivery)のツール群を使った開発プロセスを構築し,QCD(Quality,Cost,Delivery)活動の自動化および品質・プロセスの見える化ができる。CI/CDにNISC(National center of Incident readiness and Strategy for Cybersecurity)が提唱しているセキュリティ・バイ・デザインの考え方を取り入れることで,DevSecOps(シフト・レフト)を実現できる。

MBSEとCI/CDを使ったDevSecOpsを組み合わせることで,SafetyとSecurity設計の両立が可能となる。また,運用段階(シフト・ライト)におけるインシデント対応においても,意図機能に対する影響を考慮することも可能となり,合理的,継続的なシステム開発・運用が実現できる。

[13-1]MBSEでのSafetyとSecurityの設計方法イメージ[13-1]MBSEでのSafetyとSecurityの設計方法イメージ

[13-2]CI/CDを活用したDevSecOpsイメージ[13-2]CI/CDを活用したDevSecOpsイメージ

14. VRを活用した再生医療施設向け設計支援ツール

[14]VR設計支援ツールの使用イメージ[14]VR設計支援ツールの使用イメージ

再生医療施設(CPF:Cell Processing Facility)のEPC(Engineering, Procurement and Construction)において,施設建設の経験が少ない顧客の場合には,部屋のレイアウトやサイズ変更,機器配置見直しなどの出戻り作業が多く発生し,設計工数の増大を招いている。そこで,没入感が高く,空間の広がりを認識しやすいVR(Virtual Reality)技術でCPF内の設備レイアウトや機器配置を再現し,インタラクティブに微調整を可能とする設計支援ツールを作成した。

本設計支援ツールは,CAD(Computer-aided Design)などで作成された平面レイアウトを取り込み,壁や窓,ドア,パスボックスなどの建築および建築設備を配置するとともに,各種の装置,什器などを自由に配置することができ,これをVRで体感しながら,作業空間確保や装置間の干渉防止,作業動線の干渉回避などを考慮した調整が可能である。調整作業の様子は,外部モニタに映し出すことができ,複数人での共有が可能である。調整後の配置はスクリーンショットや寸法測定機能を用いて記録し,CAD図面に反映する。これにより迅速な図面承認や顧客満足度の向上の効果が期待できる。

(株式会社日立プラントサービス)

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