日立評論

オートモティブシステム

ページの本文へ

Hitachi

日立評論

1. 次世代ADAS ECUの開発

[01]次世代ADAS ECU外観[01]次世代ADAS ECU外観

従来のADAS ECU(Advanced Driver Assistance Systems Electronic Control Unit)に対して,さらに処理性能を高めた次世代ADAS ECUを開発した。本ECUでは,新規マルチコアCPU(Central Processing Unit)を採用するとともに,新たな通信方式としてEthernet通信を適用し,より高速かつ大容量なデータ処理が可能となっている。また,ソフトウェアの機能としては,FOTA(Firmware over the Air)機能およびCAN(Controller Area Network)/診断セキュリティ機能などが実装されており,新たな運転支援技術にも対応する。

今後,FOTAによるソフト更新やセキュリティ技術などを活用し,安全で快適なクルマ社会の実現に貢献していく。

(日立Astemo株式会社)

(生産開始時期:2020年6月)

2. モータ・インバータ・制御一体の駆動ユニットの開発

[02]モータユニット(上),インバータユニット(下)[02]モータユニット(上),インバータユニット(下)

年々厳しさを増す環境規制に対応するため,車両の電動化が加速しており,モータ・インバータ・制御一体のシステム製品として,BEV(Battery Electric Vehicle)用の駆動ユニットを開発・量産化した。

モータには,トルクリプル低減技術として開発したHR(Harmonic Reduction)巻線・RR(Ripple Reduction)ロータ技術を適用し,スキューレスで低騒音化を実現している。また,高出力・高回転化に対応するため磁石のV字配置を採用するとともに,ロータコアのリブ構造の最適化を図っている。

インバータには,直接水冷型両面冷却パワーモジュールを採用することにより,小型・軽量化および高出力化を実現している。また制御の面では,車両スリップ時の過電圧・過電流保護制御によるインバータ保護を強化した。加えて,制振制御/トルクリプル低減制御により,低速時の運転性を改善している。

今後も,環境保全や安全性・快適性の向上に寄与する先進的なモビリティソリューションの提供を通じて,「環境価値」,「社会価値」,「経済価値」の三つの価値を引き上げ,持続可能な社会の実現とともに,顧客の企業価値の向上に貢献していく。

(日立Astemo株式会社)

3. MFW+RTM製法 CFRPプロペラシャフト

CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)プロペラシャフトの新たな構造・製法を開発し,大幅な軽量化とコストダウンを実現した。

従来のFW(Filament Winding)製法では,繊維を1束ずつ巻きつけていたため,FWの往復による繊維の交差発生(クリンプ)による強度低下を招き,多くの製造時間がかかっていた。

今回の新製法であるMFW(Multi-thread Filament Winding)では,カーボン繊維を交差なく積層させることが可能になり,カーボン繊維の性能を最大限引き出す積層(ノンクリンプ)を適用した。また,引張強度と弾性個々の特性を重視した2種類[PAN(Polyacrylonitrile)系とピッチ系]の繊維を最適量設定することにより,材料の使用量を削減し,大幅な軽量化を達成した。さらに,多給糸とすることで,従来のFWに対してサイクルタイムを大幅に短縮しコストを抑制した。

加えて,従来硬化炉で数時間をかけて硬化させていた樹脂を,RTM(Resin Transfer Molding)製法+即硬化型樹脂の採用により,サイクルタイムを数分程度まで短縮し,ハイサイクル化による製造コストの抑制を可能にした。また,この製法によりTUBE両端金属部品を,従来の高精度なセレーション圧入管理を撤廃し,射出成型時に一体成型とすることにより,締結部の信頼性の向上につなげることができた。

(日立Astemo株式会社)

[03]MFW+RTM製法 CFRPプロペラシャフト[03]MFW+RTM製法 CFRPプロペラシャフト

4. 安全性と性能を向上した新世代 Dual Pinion Assist EPS

[04]SUBARU LEVORG向けDual Pinion Assist EPS[04]SUBARU LEVORG向けDual Pinion Assist EPS

近年,急速にニーズの高まっているAD(Autonomous Driving)/ADASに対し,EPS(Electric Power Steering:電動パワーステアリング)の安全性向上対応として,センシングから出力までの冗長構造を有するDual Pinion Assist EPSの開発を完了し,量産を開始した。車両が有するAD/ADAS機能のレベルに応じ,機能とコストの観点からシステムの選択が可能である。また,機械系部品のフリクション最適化および高応答を実現可能とする新制御の採用により,思い通りの車両コントロールを可能にする滑らかさと高いリニアリティ特性を実現した。また,従来システム比でコスト・重量10%低減を達成している。

今後,安全性向上技術開発,軽量化,コストダウン,ステアリングの性能進化に向けて,CAE(Computer-aided Engineering)/MBD(Model Base Development)を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速による高効率な開発で顧客の期待に応えていく。

(日立Astemo株式会社)

(スバルLEVORG向け量産開始:2020年11月,ホンダCIVIC向け量産開始:2021年4月)

5. 減衰力制御バルブ内蔵型セミアクティブダンパ

自動車の快適性向上のニーズに応えるため,車両の運動状態に応じて適時最適な減衰力に制御できるセミアクティブダンパの需要が高まっている。そのような中,上級車からトラック系やSUV(Sport Utility Vehicle)車への採用拡大に向け,制御バルブをダンパ内部に格納し,飛石・水没などの耐環境性に優れた,内蔵型セミアクティブダンパを開発した。

内蔵型にすることで,体積を約20%低減,重量を約30%軽量化し,車両搭載性を向上させた。また,ダンパの「伸び」側と「縮み」側の減衰力を独立してチューニング可能な構造とすることで,優れた操縦性と快適な乗り心地の両立を実現した。2021年4月より生産を開始し,2021年6月には日立Astemoの技術力が評価され,トヨタ自動車株式会社より「技術の部」にて表彰された。

(日立Astemo株式会社)

[05]内蔵型セミアクティブダンパ構造(左)とトヨタ自動車株式会社より授与された「技術の部」表彰(右)[05]内蔵型セミアクティブダンパ構造(左)とトヨタ自動車株式会社より授与された「技術の部」表彰(右)

6. BMW Motorrad M 1000 RR向けフロントキャリパー

BMW Motorrad 社初の「Mシリーズ」M 1000 RR向けに,高速走行時のブレーキ性能を安定化するフロントキャリパーを開発した。

高速走行での過度の発熱により引き起こされるブレーキ効力変化を抑えるために,キャリパーボディの冷却性能向上を図った。キャリパーボディ内部のブレーキ液容量の最適化やブレーキフルードラインの最適設計により,キャリパーボディの放熱性能を向上させるとともに,パッドからの熱伝達やキャリパー周りの対流を考慮した量産初のスリットピストンを採用することで,ピストンの冷却性能を向上させた。これらにより,高速走行時のブレーキ効力安定化を実現した。

(日立Astemo株式会社)

[06]BMW Motorrad社製M 1000 RR(左),フロントキャリパー3Dモデル(右)[06]BMW Motorrad社製M 1000 RR(左),フロントキャリパー3Dモデル(右)

7. 二輪車用車高調整機構HEIGHTFLEXの量産化

[07]HEIGHTFLEX リヤクッション[07]HEIGHTFLEX リヤクッション

車両が停車する瞬間に車高を低下させて足つき性を改善し,走行中は車高を上げることで乗り心地や悪路走破性を改善するサスペンションシステムとしてEERA(Electronically Equipped Ride Adjustment) HEIGHTFLEXの量産を開始した。車体の上昇にはセルフポンピング機構を開発し,サスペンションが熱に換えて捨てている路面の凸凹によって車体が揺れるエネルギーを用いてポンプを駆動し,一つのソレノイドバルブで車高アップ,キープ,ダウンを切り替え可能としている。これにより,車体側に補器類を必要とせず,従来のサスペンションユニットとほぼ同等の大きさでこの機能を実現した。加えてサスペンションのストロークを検出するセンサーを用いて,積載や二人乗りなどによって荷重が変化しても走行中の車高を最適に保つことが可能である。

(日立Astemo株式会社)

8. 外界情報を活用した予測に基づく省エネルギー運転支援技術

地球温暖化防止の観点から省エネルギー化の技術が求められており,自動車のパワートレインの特性に応じてむだな加減速を抑制する機能が重要となっている。本開発では,高度運転支援の先行車追従機能を活用し,エネルギー消費を考慮してむだな加減速を抑制する速度制御機能を開発した。

この速度制御機能では,走行状況を先読みする予測が重要な要素であり,先行車の速度・加速度や地図から取得する道路情報などから先行車の速度・加速度を予測する。そして,予測結果に基づき自車のエネルギー消費を抑制する速度計画を生成して省エネルギー化を実現する。速度・加速度の実績データから確率的に加速度発生分布をモデル化し,速度・加速度を予測する技術を適用した。本機能をシミュレーションにて評価した結果,市街地を想定した走行シーンにて約4%の省エネルギー改善効果を確認した。

(日立Astemo株式会社)

[08]外界情報による予測に基づいた省エネルギー運転支援システムの概要[08]外界情報による予測に基づいた省エネルギー運転支援システムの概要

9. Deep Neural Networkの車載適用に向けた演算量削減技術

自動運転技術の進展に伴い,今後は一般道などの複雑な環境条件への適用や高速道路でのLevel3など,高度な自動運転の実現が求められている。自動運転ではDNN(Deep Neural Network)を用いた高精度な周辺認識が必要となるが,一般にDNNは演算量が多い傾向にある。こうした課題に対して,自動運転ECUに搭載可能な程度にDNNの演算量を削減する技術の開発に取り組んでいる。

DNNの演算量を削減するためにはDNNの構成要素であるニューロンを削減するのが一つの手法であるが,選択するニューロンによっては削減により認識精度が大きく劣化する場合がある。そこで各ニューロンが認識精度へ与える影響度を解析し,これを層単位で集約して層単位での影響度を算出している。これにより認識精度への影響度が小さい層では多くのニューロンを削減し,認識精度への影響度が大きい層ではニューロンをあまり削減しないように調整する。

本技術の適用により,一例として従来は削減するニューロンを決定するのに20日程度を要していたのに対し,30分程度で可能となることを確認した。今後も検討を進め,低負荷・低電力でのDNN処理を実現し,早期実用化に取り組む。

(日立Astemo株式会社)

[09]DNNの演算量削減から自動運転ECU実装までの処理フロー[09]DNNの演算量削減から自動運転ECU実装までの処理フロー

Adobe Readerのダウンロード
PDF形式のファイルをご覧になるには、Adobe Systems Incorporated (アドビシステムズ社)のAdobe® Reader®が必要です。