きれいな水とクリーンな環境を届ける
中津 英司
日立製作所 執行役常務
水・環境ビジネスユニットCEO
水・環境ビジネスユニットは発足以来,「きれいな水とクリーンな環境を届ける」というビジョンのもと,さまざまなユーティリティ事業を展開してまいりました。しかし,COVID-19によるパンデミックは,私たちを取り巻くビジネス環境に大きく影響し,人々や社会の価値観をも変えてしまいました。特に,デジタル技術で社会や企業を変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)がグローバルで加速しています。このように激変する市場環境下では,お客様の課題・ニーズの変化に合わせたプロダクト・OT(Operational Technology)・IT全体にわたる課題解決力がますます重要となってきています。
水・環境ビジネスユニットでは,「環境・クリーン化技術」のOTドメインナレッジを起点に,産業,公共分野のお客様やパートナー企業との協創を通じて,私たちの強みである「プロセスエンジニアリング」と「デジタル」を組み合わせ,つなげていくことで創出する価値を広く提供してまいります。
「きれいな水」を提供するための水事業DX化
近年,水分野においても持続的に安心・安全な水供給を実現するためにICT(Information and Communication Technology)が注目されています。
水・環境ビジネスユニットでは,長年培ってきた経験とノウハウにITを融合し,デジタルソリューション展開を強化しています。
例えば,上下水道事業者における運用・保全業務の可視化や省力化・効率化,熟練者のノウハウ継承などを支援するクラウドサービス[O&M(Operation and Maintenance)支援デジタルソリューション]を展開しており,AI(Artificial Intelligence)を活用した設備診断,水質予測,運転支援など,近年増加している局地的大雨に対するソリューションも提供しています。
さらに私たちは上下水道関連情報だけでなく,他の社会インフラ分野(エネルギー,道路,河川,防災など)とのデータ連携をすることでユーティリティサービスを一括提供し,地域コミュニティのインフラ構築から持続可能な社会の実現に向けて貢献してまいります。
「クリーンな環境」を提供する取り組み
日立は,環境長期目標として,「日立環境イノベーション2050」を策定し,脱炭素社会,高度循環社会,自然共生社会の実現をめざしています。
水・環境ビジネスユニットでは,近年の環境問題を背景に,再生可能エネルギーや水素エネルギーなどを活用し,カーボンニュートラルに向けた取り組みを加速しています。例えば,パートナー企業と連携し,再生可能エネルギーの余剰電力を使って水素をつくり,従来の燃料と混焼させるハイブリッドな発電機を開発しました。宮城県富谷市では,みやぎ生活協同組合(仙台市),丸紅株式会社などと連携し,廃食油と水素を混ぜて燃料とするディーゼルエンジン発電機の実証を行っています。
また,福島県浪江町では,民生・産業向けに水素を活用したサプライチェーンを構築するとともに,先進デジタル技術で電力需給調整を行う実証事業にも参画しています。CO2を排出しない水素を活用した工場誘致など,地域産業の活性化に加え,カーボンニュートラル社会の実現にも貢献してまいります。
持続可能な社会の実現をめざして
持続可能な社会への転換を実現させるためには,お客様,パートナー企業以外にも,関連するベンダー,金融機関,グリーン認証機関ほか,多様なステークホルダーとの協創が不可欠です。
私たちは,これらの関連する各ステークホルダー間で必要な情報・データをつなげることで,例えばサステナブル証明を価値に変換し,流通させる資源循環の枠組み作りにも積極的に取り組んでいます。このように,さまざまな分野でデジタルを活用したトータルシームレスソリューションを展開することにより,「際(きわ)」の課題を解決し,新たなエコシステムを形成・促進していくことで,社会全体のサプライチェーンの最適化に加え,環境価値を創出して持続可能な社会を支えるネットポジティブなエクセレントカンパニーをめざしてまいります。