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社会システム

デジタルシステム&サービス

1. 遠隔監視/制御を活用したコールドチェーンの業務改善

日立のIoT(Internet of Things)データ活用サービスHitachi Global Data Integration(以下,「本サービス」と記す。)では,Webブラウザから遠隔制御する機能の提供を開始した。昨今,業務効率化やサービスの価値向上,社会課題への対応を目的として,インターネットを活用した遠隔でのデータ活用機会が増加し,さまざまな分野で遠隔監視/制御が求められている。今回は物流業界のコールドチェーンにおける遠隔監視/制御の事例について紹介する。

コールドチェーンでは,冷凍機の設定温度変更,温度管理や温度記録が求められる。しかし,運転中のドライバーが,環境変化に合わせて冷凍機の設定変更や記録を行うことは難しく,輸配送中の品質管理やドライバーの業務負荷軽減,安全確保が課題になっていた。この課題に対し,本サービスでは,監視センターからWebブラウザ上で遠隔監視/制御や操作記録を行い,集中管理することが可能となった。

今後は,本サービスの遠隔監視/制御や操作履歴管理の適用業務の拡張により,顧客の課題解決,ビジネス拡大への貢献をめざす。

[01]遠隔監視/制御の事例(Hitachi Global Data Integration Pro for コールドチェーン)[01]遠隔監視/制御の事例(Hitachi Global Data Integration Pro for コールドチェーン)

2. 社会インフラ保守の高度化と環境負荷軽減に向けた取り組み

人々の生活を支える社会インフラは,安定した正常稼働を求められる。しかし,設備の老朽化や熟練保守員の不足・高齢化が社会課題になっていることに加え,環境負荷軽減に関する要望も高まってきている。

これらの課題へのアプローチとして,漏水検知サービス(独自開発の超高感度振動センサーを用いて漏水を自動検知する)や地中可視化サービス[レーダー探査画像をAI(Artificial Intelligence)解析して地中埋設管情報を可視化する]などのソリューションを提供し,サービスレベルとコストを両立可能な社会インフラ保守の実現をめざしている。既に実フィールドでのデータ収集・分析を通して顧客業務へ貢献してきた。また,サービスを通じた環境負荷の軽減効果に期待しており,2022年度は環境負荷軽減量(CO2排出,廃棄物の削減など)の可視化に取り組んだ。

今後も日立グループ全体で社会インフラの維持管理,国土強じん化(大規模災害への備え),環境負荷軽減への貢献など,社会インフラDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進をめざす。

[02]社会インフラ保守サービスのコンセプト[02]社会インフラ保守サービスのコンセプト

3. 自治体・スタートアップとの協創を通じたEBPMビジネスプラットフォーム

政府は適切な介護予防により年間3.2兆円の介護給付費を抑制可能と推計しており,生涯QoL(Quality of Life)向上と財政適性化の両面で,良質な予防サービスの社会的意義は大きい。行政が事業資源を有効活用しつつ市民に広くサービスを提供していくためには,民間企業の貢献が期待される。しかし,予防の費用対効果を把握できないことが,民間サービス導入と適正な市場価格形成の障壁となっている。予防の受益者成果を分け合うことでサービス普及促進を加速する,新たな仕組みの社会実装が急務である。

そこで日立は,東京都が実施する「令和4年度東京都次世代ウェルネスソリューション構築支援事業 連携プロジェクト」にてEBPM(Evidence-based Policy Making)ビジネスプラットフォームの創成に着手している。

本プロジェクトでは,日立のセキュアなパーソナルデータ利活用基盤と介護・健康・医療のビッグデータAI分析技術を活用したEBPMビジネスプラットフォームを新たに創成し,八王子市や府中市における介護予防事業のアウトカム(結果)評価の実証などに取り組む。エビデンスに基づく自治体のPay for Success(PFS)型介護予防事業の推進に貢献することで,都民のQoL向上に寄与する介護予防サービスの実現をめざしていく。

[03]最終的に創出をめざす事業の全体像[03]最終的に創出をめざす事業の全体像

4. 公共・民間の窓口サービスを利用可能な汎用デジタル窓口

近年,少子高齢化による働き手不足などの影響で,自治体や民間の窓口・有人店舗の集約化が進み,対面でのサービス提供が縮小し,スマートフォンを中心としたデジタル化が推進されている。一方,年齢・地域などによるデジタルディバイド(情報格差),オンライン申請の利用率低迷,窓口対応業務の逼迫などの解消に向けて,誰もが簡単に利用できるデジタルサービスの提供が求められている。

このような課題へのアプローチとして,地域の出張所や公民館,銀行や駅,移動車両など生活圏の身近な場所に利用ブースを設置し,遠隔地からでもオンラインで自治体や民間企業の窓口サービスを横断的に利用可能な各種機能を開発した。臨場感のある大型ディスプレイとデジタルに不慣れな高齢者などにも直観的な操作ができるUI(User Interface),UX(User Experience)で「誰もが身近な場所で,有人窓口と同等のサービスを受けられる新しいサービス提供の形」をめざしている。

今後は,誰一人取り残されないデジタル社会をめざし,官民が連携した地域の新しいサービスインフラとして,本サービスをさまざまな業種へ拡大するとともに,地域課題の解決と住民のQoL向上に貢献していく。

[04]汎用デジタル窓口[04]汎用デジタル窓口

5. 無線通信高信頼化ミドルウェアNX Dlink/RED

日立は,ミッションクリティカルIoTを実現する共生進化アーキテクチャのコンセプトを取り込んだ通信ミドルウェアNX Dlink/RED(Reliable Enhanced Multipath Distribution)を開発した。

NX Dlink/REDの最大の特長は,既存のアプリケーションを変更することなく,複数のネットワーク経路を多重化・冗長化することで,一つの経路で障害が発生したとしても,瞬時に別系統のデータを選択して通信ダウンタイムを極小化できることである。これに加え,暗号化による通信経路の保護もサポートし,ミッションクリティカルIoTに欠かせない通信の信頼性とセキュリティを提供する。

NX Dlink/REDは,特にフレーム欠損や輻輳,盗聴リスクなど,信頼性に難のある無線通信に効果的であり,生産現場におけるローカル5G(Fifth Generation)や無線LAN(Local Area Network)を用いた現場機器間通信,鉄道車両などの移動体に対する公衆網適用といった,無線通信の利用ニーズがあるサイトにおける通信の高信頼化サービスをめざす。本製品を軸に,無線技術の活用幅を広げ,レジリエントな社会システムに寄与していく。

[05]NX Dlink/REDの適用イメージ[05]NX Dlink/REDの適用イメージ

6. 社会インフラの保守効率を向上する故障探求ノウハウのデジタル化

修理リコメンデーションサービス(部品選定型)は,過去の故障・修理履歴データを機械学習し,故障状況に応じてAIエンジンが適切な交換部品を推奨する。

このサービスを銀行ATM(Automated Teller Machine)の保守業務に適用し,交換部品選定時間を短縮する効果が実証されている。ただし,履歴データ蓄積が十分ではない事案も多く,新たな選定アプローチでの対応が求められていた。

これに対し,修理リコメンデーションサービス(故障探求型)は,保守に関するノウハウをデジタル化し,故障・修理履歴データ蓄積が不十分な事案にも対応する。主な特長は以下のとおりである。

  1. 保守マニュアルや設計仕様書,ベテラン保守員からの聞き取りなどによって得られた故障探求ノウハウをAIエンジン構築支援技術によってモデル化する。
  2. 故障発生時には,日立独自のアルゴリズムによって生成された順に問診に回答していくことにより,効率的に故障原因を推定する。
  3. 現場運用に適応した故障探求実現のため,問診順序の固定や優先する問診の設定が可能である。

これにより原因推定までの時間短縮,保守員のスキルレベル底上げといった効果が期待できる。

現在,故障探求型の修理リコメンデーションサービスを粒子線治療装置の故障探求に適用するPoC(Proof of Concept)を行っている。社会インフラを支える複雑で重要な機器の保守業務を支援するサービスとして部品選定型と併せ,適用拡大を図っていく。

[06]修理リコメンデーションサービス(故障探求型)の概要[06]修理リコメンデーションサービス(故障探求型)の概要

7. GXで成長可能な脱炭素を協創する大みかグリーンネットワーク

[07]大みかグリーンネットワークの概要[07]大みかグリーンネットワークの概要

日立は2030年度までにオフィスや事業所の,2050年度までにバリューチェーン全体でのカーボンニュートラル達成を目標として掲げている。この環境目標は日立だけでなく,地域やサプライチェーン全体のカーボンニュートラルを実現するという社会課題でもある。日立製作所大みか事業所はこの課題に正面から取り組むべく,2022年度より「大みかグリーンネットワーク」の取り組みを開始した。

これまでの生産改革・工場DXで培ってきた現場ナレッジやデジタル技術,制御技術を駆使し,大みか事業所をハブとして,CO2排出量の算定・可視化や生産工程での削減,再生可能エネルギーの有効活用といった環境経営GX(グリーントランスフォーメーション)に関わる実証を行っている。ここで磨き上げた大みかGXモデル,地域エネルギーマネジメント基盤,環境トラステッドデジタル基盤を,サプライヤ企業,金融機関などの多様な社外ステークホルダーへ展開していく。そしてカーボンニュートラル達成に向け,地域発の社会インフラエコシステムを形成し,発展させることで,持続的な成長が可能な脱炭素社会の協創に取り組んでいく。

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