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鉄道システム

グリーンエナジー&モビリティ

1. 東日本旅客鉄道株式会社水素 ハイブリッド電車(FV-E991系)

サステナブルな社会の実現に向けて,脱炭素化の取り組みが世界的に加速している。

こうした中,東日本旅客鉄道株式会社は,「エネルギーの多様化」をめざしており,その一環として燃料電池を活用した水素ハイブリッド電車FV-E991系(HYBARI:HYdrogen-HYBrid Advanced Rail vehicle for Innovation)を開発した。

日立は,FV-E991系の主回路※1)システム開発を受注し,電力変換装置※2)・主回路蓄電池・主電動機の製作および燃料電池システムを含めたハイブリッドシステムの取りまとめを通じて,プロジェクト推進に貢献した。FV-E991系の主回路システムは,車両の駆動制御・主回路蓄電池の充放電制御,燃料電池システム出力制御と多岐にわたる。プロジェクト全体を取りまとめる東日本旅客鉄道,燃料電池メーカーであるトヨタ自動車株式会社と協創し,車両への実装および本線での走行を果たした。

2022年3月より南武線(川崎〜登戸),鶴見線および南武線尻手支線において車両性能評価などの実証試験を実施しており,東日本旅客鉄道と共に水素ハイブリッド電車実用化に向けた取り組みを継続する。

※1)
車両の駆動に関わる回路
※2)
駆動用のインバータ・補助電源および制御機器を含む装置

[01]水素ハイブリッド電車(FV-E991系)の外観と燃料電池ハイブリッド駆動システムの仕組み[01]水素ハイブリッド電車(FV-E991系)の外観と燃料電池ハイブリッド駆動システムの仕組み

2. 臺灣鉄路管理局納め 新型都市間特急車両 EMU3000

TRA(Taiwan Railways Administration, Ministry of Transport and Communications:臺灣鉄路管理局)は,「全体調達および車両交換の計画(2015〜2024年)」を定め,鉄道の輸送力向上,老朽車両の更新を目的とした新造車両の大型調達・増備を進めている。

本プロジェクトは,都市間特急車両600両(1編成当たり12両,全50編成)の一括調達として,台湾鉄道史上最大規模の調達プロジェクトである。設計には,デジタル技術を応用したフル3D設計を導入し,設計工程から製造工程へのシームレスな連携を構築するとともに,デザイン開発においても3Dモデルを活用した立体模型やVR(Virtual Reality)を活用し,顧客との合意形成を促進した。また,従来の8両編成の都市間特急電車と比較して,本車両は12両編成と長大化することで輸送力を増強するだけでなく,TRA史上初となる商務車(ビジネスクラス)が1両設置されるなど,新たなコンセプトが採用されている。

2021年7月に第一編成が台湾に納入された後,試運転期間を経て,2021年12月29日に第一編成の営業運転が開始され,台湾全土を走る都市間特急電車として日々運用されている。

[02]新型都市間特急車両EMU3000の外観[02]新型都市間特急車両EMU3000の外観

3. マルチモード列車Masaccio

[03]Masaccio[03]Masaccio

Masaccio(マサッチョ)は,イタリアの地域交通を支える新しい平屋構造のマルチモード列車車両である。同国の鉄道運営会社であるTrenitaliaとの枠組み契約では,220人乗り3両編成と300人乗り4両編成の2種類で最大135編成の運用を想定している。

Masaccioの開発における主要目標の一つは,持続可能性である。車体にリサイクル効率の高い材料を用いるだけでなく,電力消費量を最適化するとともに電化路線のない都市部での騒音や公害を低減する四つの運転モードを備えている。また,Masaccioはマルチモード鉄道車両であり,架線区間では電車として走行する一方,ディーゼルエンジンでの走行も可能で,ディーゼルエンジンをスタート/ストップする機能を有する。これにより,街中ではバッテリーのみで走行して燃料消費を抑えることができる。

同車両に適用されたエネルギー管理技術は,日本とイタリアに拠点を置く日立レールの共同エンジニアリングチームによって開発された。

4. HFMT LumadaとIoTrain

HFMT(Hitachi Fleet Management Tool:日立車両管理ツール)は,英国,日本,イタリアのパートナー企業と日立ヴァンタラが共同で開発した世界初の統合ソリューションであり,Lumadaデジタルプラットフォームの一つである。IoT(Internet of Things)と状態保守手法によって運行中の旅客用列車を支援する高度な路線遠隔機能を提供し,車両の保守と資産の信頼性向上のための効果的かつ効率的な方法を実現する日立レールの戦略的デジタル資産監視プラットフォームであり,2019年から英国でサービスを開始している。

主な機能は以下のとおりである。

  1. 列車の運行制御機能
    全車両のヘッドラインおよびマップビュー,電力使用量監視,乗客数計測,遠隔指令,座席予約および時刻表のデータ提供,運転士のサポート
  2. 列車保守機能
    車両・機器の状態に基づく事故・故障検出,高度な信号ビューア,マップ,システム・機器の状態や使用状況に応じたオーバーホール,信頼性レポート,予兆保守
  3. 資産管理機能
    インフラの追跡監視,監視カメラ,インフラアラート,パンタグラフ・架線・車両に関する信頼性レポート

これらのすべての機能を統合することで,信頼性,可用性,安全性に優れた車両を提供するとともに,保守を最適化する。

また,この統合プラットフォームでサポートされるHFMT,BaaS(Battery as a Service),MaaS(Maintenance as a Service)のビジネスモデルを活用することで,市場には大きな変化が生まれる。なお,SaaS(Software as a Service)はPerpetuumのプラットフォームを介して既に実装されている。

現在,英国では257編成の鉄道車両がHFMTを活用しており,今後は追加納入に伴い,さらに100編成以上の車両で活用される計画である。

[04]先進的なIoTとビッグデータの組み合わせによる鉄道資産の効果的な保守サポート[04]先進的なIoTとビッグデータの組み合わせによる鉄道資産の効果的な保守サポート

5. Lumada Intelligent Mobility Management 「360Pass」

[05]Lumada Intelligent Mobility Management「360Pass」[05]Lumada Intelligent Mobility Management「360Pass」

2022年7月,日立レールはスマートモビリティの統合ソリューション「Lumada Intelligent Mobility Management」を用いた新サービス「360Pass」をリリースした。現在,イタリア・ジェノバで「GoGoGe」の名称で提供されている。

本サービスは,Bluetoothセンサーを使用するモバイルアプリにより都市内すべての公共交通機関がハンズフリーで利用でき,運賃は最安のものが適用される。そのほか,電気自動車のレンタルや駐車場料金の支払いなども可能である。また,乗客には次の停車駅の混雑予報などの移動状況に応じた情報を,交通事業者には乗客の移動に関する詳細なデータを提供することができる。

Lumada Intelligent Mobility Managementは360Passに加え,人流や車両の流れの制御やeモビリティソリューションを包含しており,持続可能な交通への転換を加速していく。

6. グローバル製品としてのETCS車上装置

日立は,2000年代初頭から欧州統一規格鉄道信号システムであるETCS(European Train Control System)市場に参入した。2013年に英国でのETCS車上装置認証を取得し,前年に受注した英国都市間高速鉄道向け製品の製作を開始した。

その後,英国以外に受注の場を広げ,2018年〜2020年にかけて豪州・ワラタ(Waratah)の既存車およびシドニー・グロース・トレイン(Sydney Growth Train)新車向けのETCS車上装置を開発し,119編成分の納入を完遂した。以来,グローバル製品となったETCS車上装置のシェアを拡大している。

豪州のクイーンズランド・レールでは,ブリスベン市内中心部の混雑解消のため,鉄道の新線建設とETCSレベル2導入による輸送力強化を進めている。日立は,2019年に新たに日立グループの一員となったHitachi Rail STS(以下,「HRSTS」と記す。)と共同で本プロジェクトに参画している。日立がETCS車上装置および運行管理システムの一部を,HRSTSがETCS地上装置を含めたスコープを担い,信号システム全体としてのシステムインテグレーションを実現し,現在,営業運転開始に向けた走行試験を実施している。

今後,ETCSと連携して動作するATO(Automatic Train Operation),ATO over ETCSの適用も計画されており,引き続き鉄道インフラの構築と発展に貢献していく。

[06]ETCS車上装置[06]ETCS車上装置

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