システムインテグレーションデジタルシステム&サービス
1. 融資取引のデジタルシフトを牽引する金融機関向け融資DX推進サービス
近年のデジタルシフトの加速により,金融機関の融資取引においてもデジタル化の関心が高まっている。2023年7月に日立がリリースした「金融機関向け融資DX推進サービス」は,金融機関とその直接的な取引先だけではなく,融資取引に関わるさまざまなステークホルダーの手続きのデジタル完結を実現するサービスである。保証協会付融資を含む事業性融資を法人向けに,住宅ローン・無担保ローンを個人向けに展開し,融資申込から実行後の管理まで優先度の高い業務よりスモールスタートを可能としており,金融機関はデジタル化戦略に応じた迅速な導入が可能となる。また本サービスはAPI(Application Programming Interface)連携基盤を有しており,民間金融サービスとの連携も順次拡大している。
本サービスは,さまざまな金融機関の評価を得ており,2024年11月の時点で13社の顧客の導入が決定している。今後も融資取引の業務機能の拡充を継続しつつ,他業務への展開も計画している。これにより金融取引へのDX(デジタルトランスフォーメーション)活用を拡大し,国内金融取引のデジタルシフトを牽引するサービスの実現に取り組む。
2. マイクロサービス基盤を活用したデジタルチャネルの拡大
デジタル化が加速する現代社会において,顧客のライフスタイルの変化に迅速に対応するためには,最新技術やDX推進によりリアルチャネルとデジタルチャネルをシームレスにつなげ,顧客の体験価値を向上させることが重要となりつつある。
こうした中,銀行業務を対象として,各チャネルを共通して利用できる共通アプリケーション基盤を構築した。本基盤には,GlobalLogicのマイクロサービスのフレームワークを取り込んだHitachi Microservices Platformを適用している。
この共通アプリケーション基盤の特長は,業務機能を細かく分割してマイクロサービス化し,操作性の改善や外部サービスとの連携といった機能拡張を柔軟に行うことができるシステム構成にある。またシステム間の機能重複を整理し,クラウド上に配備した独立性の高いマイクロサービスを共通で利用可能とすることで,利用効率および保守性を高めている。さらに,パブリッククラウド上でクラウドネイティブな仕組みを導入することにより,多様化する顧客ニーズの変化,体験価値の向上を短期間で実現する機動的なシステム開発を可能とし,業務改革に大きく貢献する。今後は,銀行業務以外への対応も視野にデジタルチャネルの利用拡大をめざす。
3. 組織と個人の成長を加速するプロ人財視える化・育成ソリューション
現代のビジネス環境は急速に多様化しており,企業の業績向上や競争力維持のためには,効果的な人財育成が重要となっている。三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社と日立が共同で開発した「プロ人財視える化・育成ソリューション」は,企業が求めるプロフェッショナル人財を効果的に育成するための画期的なソリューションである。
このソリューションは,従業員一人ひとりのスキルやキャリアを可視化し,業績目標などの数値評価を含めたプロフェッショナル人財像を明確にすることで,個別の育成プランを提供する。企業は,現場ニーズに即したスキルセットを基に,社員の育成目標を策定でき,部門ごとの求める人財像に対応した人財育成が可能となる。これにより,従業員の成長とモチベーション向上を促進し,企業全体の業績向上をめざす。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券は,営業部門に本ソリューションを導入し,営業能力の向上などを実現した。
企業が持続的な成長を達成するための重要な手段として,今後も幅広い業界で本ソリューションを展開していく。
4. 三菱HCキャピタルと日立の協働による生成AIの本格利用
日立製作所と三菱HCキャピタル株式会社は協働し,三菱HCキャピタルの約2,200名の従業員に対し,営業事務などの業務の生産性向上を目的に,生成AI(Artificial Intelligence)の本格利用を開始した。
このプロジェクトの背景には,生成AIの急速な進化とビジネス活用が拡大する中,業務適用の際にセキュリティやプライバシー,回答精度などの課題が存在していた。
日立は,生成AIのスペシャリストを集結したGenerative AIセンターが有するノウハウやユースケースなどのナレッジ提供,Azure* OpenAI Service※)を用いたセキュアな生成AI利用環境やガイドラインの作成により,これらの課題を解決した。
また,ユースケースの具体化や知識データベースの構築,システム連携を視野に入れた中長期的なロードマップを策定するなど,導入効果の創出に向けた計画・立案を共同で進めた。
- ※)
- Microsoft Azureのクラウドプラットフォーム上でOpenAIのAIが利用できるサービス。
5. 中堅・中小企業向けCO2排出量管理における常陽銀行と日立の協業
株式会社常陽銀行と日立は,地域社会の持続的成長に貢献するために,中堅・中小企業の脱炭素経営支援拡充に向けた協業を2024年6月に開始した。本協業により常陽銀行では,地域の中堅・中小企業向けCO2排出量算出・管理サービス「エコサポ*」の提供を2024年7月に開始した。
エコサポは,日立の環境情報管理サービス「EcoAssist-Enterprise」を活用した,中堅・中小企業向けのクラウドサービスである。ユーザー企業は専用のExcel*シートに情報を入力することで,CO2排出量を可視化し,排出量の推移,削減目標に対する達成状況の把握や削減計画の管理ができる。また,可視化された排出量データを基に,ユーザー企業の削減目標設定に加え,サプライチェーンにおけるCO2削減計画の策定,その実現に向けたソリューション提供まで一貫して支援することができる。
6. 業界横断で地下埋設インフラの維持管理に貢献する地中可視化サービス
地下埋設インフラの整備においては,管路の新設・更新の際,各事業者が個別に管理する図面を収集・統合して設計する手間・負担や,図面と実態との乖離による設計変更・工事中断,管路損傷事故などにより,計画的かつ効率的な業務推進が阻害されることが課題として挙げられる。
「地中可視化サービス」は,こうした課題解決に向け,より正確かつ直感的な埋設管路位置の把握を支援するサービスであり,地下埋設インフラ保有事業者を中心としたさまざまな業界の顧客に対し,提供を進めている[実証・サービス提供件数50件以上(2024年10月現在)]。
本サービスでは,地中レーダー探査装置を用いて埋設管路の位置を非破壊で探査し,探査データを解析することで,埋設管路情報をプラットフォームに一元集約する。Webブラウザ上で閲覧可能な二次元/三次元データによって正確な埋設状況や位置関係を直感的に把握できるため,管路の敷設位置などの設計精度の向上はもちろん,設計変更・工事中断,管路損傷事故などのリスクの低減にもつながる。
7. 仮想化システムによる鉄鋼プラント計算機システムの更新
システム仮想化の潮流は鉄鋼プラント向け制御システムにも拡大している。このニーズに応えるため,鉄鋼プラント向け仮想化制御システムを開発した。主な特長は以下のとおりである。
- 日立独自の自律分散アーキテクチャを踏襲することにより,更新前のシステムを変更することなく仮想化制御サーバの並行同期動作が可能となり,更新作業を簡略化し工期を短縮した。
- 既存システムはオンラインサーバとオフラインサーバの二重系で構成され,オフラインサーバは,解析サーバ,待機サーバのいずれかで運用されていたが,仮想化の多重化構成技術により併用可能とし,利便性と信頼性を両立した。
- サーバだけでなく端末も仮想化サーバ上に構築することで,シンクライアント利用を可能とし,仮想マシン上での CPU(Central Processing Unit),メモリ,ディスクなどのリソース配分を最適化した。またトラブル発生時にログを一元収集して総合的に解析できるようになり,保守性が向上した。
(初号機稼働開始予定:2025年1月)
8. 移動制約者への案内業務支援システム
公共交通機関においては,車いすや白杖などの補助具を必要とする利用者の移動需要が増加傾向にある。こうした中,係員間の連絡・引き継ぎ,乗降サポートの実績管理などの業務をスマートデバイスで完結するシステムをSaaS(Software as a Service)として2022年より提供開始した。本システムは鉄道8事業者に導入され,安全・安心に公共交通機関を利用するための環境整備,係員の業務効率化・心理的負荷低減に貢献している。2024年には「さらなる業務効率化」,「事業者連携によるサービス向上」,「利用者接点の強化」を図るべく,機能を追加した。
日本の交通網は複数事業者が高度に連携して輸送サービスを提供しているため,事業者単独の取り組みでの業務効率化は困難である。日立は,SaaS提供事業者としてのネットワークを生かし,相互直通運転連携・乗り換え連携機能を軸に,鉄道事業者に限らない「事業者連携によるサービス向上」を積極的に後押しすることで,利用者・事業者の双方にメリットのあるサービスを構築していく。