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ヘルスケア・分析装置コネクティブインダストリーズ

1. 粒子線治療システムのエンハンス事業の展開

[1]筑波大学の新陽子線治療施設(左)と既存陽子線治療施設(右)の完成予想イメージ[1]筑波大学の新陽子線治療施設(左)と既存陽子線治療施設(右)の完成予想イメージ

株式会社日立ハイテク ヘルスケア事業統括本部は,2024年4月に日立製作所の粒子線がん治療装置事業を承継した。以来,「誰もが安心・安全に暮らせる,笑顔あふれる社会へ」をビジョンに掲げ,「がんを恐れることのない社会」の実現をめざして事業を展開している。

近年,粒子線がん治療の分野では,システム製造や保守案件に加え,既存施設の機能改善・維持を目的としたエンハンス案件が急速に伸長している。この背景には,粒子線治療の普及に伴い,稼働後10~20年が経過した施設の機能改善や機能維持に対する顧客ニーズの増大がある。エンハンス事業の展開には顧客との長期的な信頼関係の構築が不可欠であり,個別の顧客事情に応じたきめ細かい地道な改善提案を通じて事業を推進している。

2001年に陽子線治療システムの稼働を開始した筑波大学では,増大する治療ニーズに対処すべく新たな施設を建設中であり,2025年に新システムへの切り替えを計画している。また,兵庫県,福井県,群馬大学,名古屋市立大学,北海道大学など国内の地方自治体や学術機関のほか,海外顧客からもエンハンス案件を受注している。

(株式会社日立ハイテク)

2. 臨床検査室の働き方改革をサポートする自動分析装置LABOSPECT 006 α

2024年4月から開始された「医師の働き方改革」推進に伴い,医療機関内でのタスク・シフト/シェアが進められている。臨床検査技師においても,今までの役割や業務範囲を越えて活躍の場を広げることが期待される。こうした背景から,生化学自動分析装置においては,検体量の微量化や検査の迅速化に加え,検査業務の効率化による業務負担の軽減が強く求められている。

これに対し,LABOSPECT 006 αは以下に示す代表的な三つの機能により,検査業務の時間短縮に貢献する。

  1. 朝の時間短縮
    従来,手動で毎日実施する必要があったブランクキャリブレーションを,装置立ち上げ時に自動で実行する。
  2. 消耗品管理の時間短縮
    装置の洗浄に必要なアルカリ洗剤の設置場所を増設し,洗剤がなくなった際に自動的に新しい洗剤ボトルへの切り替えを可能とし,洗剤不足による装置不稼働時間を低減する。
  3. メンテナンスの時間短縮
    サンプルプローブ自動洗浄機能を改良し,温めた洗剤を用いることで,従来は毎日実施する必要があったプローブ拭き取り清掃を週1回に削減する。

今後も日立ハイテクは,検査室の声を基にアイディアと技術で新機能を開発し,検査室の新しい働き方を支えていく。

(株式会社日立ハイテク)

(販売開始時期:2024年8月)

[2]自動分析装置LABOSPECT 006 α[2]自動分析装置LABOSPECT 006 α

3. ゲノムマップによるヒトゲノム構造変異(SV)の解析

近年の急速なDNA(Deoxyribonucleic Acid)シーケンサの進化に伴い,ヒトの遺伝子やゲノムを解析する能力が大幅に向上した。それでもなお,精神疾患やがんなどにおいてはDNA配列情報と疾患の関連性を見いだすことが困難な状況にある。その理由は,DNAシーケンサが一度に読めるDNA配列を短く調整しなければならないという点にある。

NGS(Next Generation Sequencing)と呼ばれる次世代シーケンサは最大で数百塩基のDNA配列を,ロングリード型のDNAシーケンサでは2万塩基程度を読むことが可能であるが,ヒトの染色体中では50塩基~百万塩基以上の欠損,挿入,転移,逆位などの大きな構造多型(SV:Structural Variation)が起きていることが近年判明し,それらが疾患の原因となった事例も発見されている。しかし,SVの大きさに対しDNAシーケンサが読めるDNAの長さが圧倒的に短いため,SVの存在を検出することが困難であり,疾患とDNA配列の関連性を見いだせない原因となっている。

これに対し,日立ハイテクが持つゲノムマップ解析技術は,5万塩基~500万塩基の長さのDNA断片に出現するある特定のパターンの位置を,DNAの断片1本1本をバーコード状に記録する技術である。長いDNA断片を読むことで,既存技術では困難であった十万塩基以上のSVも検出が可能となり,疾患の特定や治療方法の確立に大きく貢献すると期待される。

(株式会社日立ハイテク)

[3]Nabsys OhmXシステムと日立ハイテクのHCEによるゲノムマップ技術を利用したヒト染色体構造多型(SV)解析ソリューション[3]Nabsys OhmXシステムと日立ハイテクのHCEによるゲノムマップ技術を利用したヒト染色体構造多型(SV)解析ソリューション

4. FDA21 CFR Part 11支援ソフト「ASDAMS」

FDA 21CFR Part11(以下,「Part11」と記す。)は,FDA(Food and Drug Administration:米国食品医薬品局)が制定した医薬品,医療機器,食品などを対象とした電子記録と電子署名に関する規則である。Part11は,米国や欧州などの規制当局からガイドラインが発行されているデータインテグリティの構成要素の一つであり,医薬食品業界ではPart11への対応が必須となりつつある。

株式会社日立ハイテクサイエンスのASDAMSは,分析装置ソフトのPart11対応支援を目的としたデータ管理プラットフォームである。ASDAMSは,Part11対応に必要なユーザー管理・認証,電子記録の改ざん・消失防止機能,アクセス制限,監査証跡機能を有しており,API(Application Programming Interface)を介して提供している。このAPIを組み込むことでASDAMSの規制対応機能を使用することができるほか,ASDAMSに登録するデータには分析装置独自のファイルフォーマットをそのまま使用できるため,分析装置ソフトウェアのPart11対応の開発工数を低減することが可能である。

既にHPLC(High Performance Liquid Chromatography)用ソフトウェアChromAssist,分光光度計用ソフトウェアUV Solution Plusとの接続を実現しており,今後も医薬品分野に向けた製品のPart11対応に貢献していく。

(株式会社日立ハイテクサイエンス)

[4]FDA21 CFR Part 11支援ソフト「ASDAMS」のホーム画面[4]FDA21 CFR Part 11支援ソフト「ASDAMS」のホーム画面

5. 熱分析装置向け偏光顕微観察技術

[5]Real View偏光顕微観察オプション[5]Real View偏光顕微観察オプション

熱分析装置は,各種材料の研究開発,品質管理などで熱物性を評価するために幅広い分野で利用されている。日立ハイテクサイエンスは従来,測定中の試料状態をカメラによって「見える化」する試料観察技術を開発することで,より詳細な分析を可能にしてきた。

この試料観察技術の発展型として新規開発した熱分析装置向け偏光顕微観察オプションでは,カメラ解像度の向上と偏光観察への対応を実現している。熱分析装置と組み合わせることで試料を温度変化させながら高解像度の偏光画像を得て,ミクロな結晶状態の変化を捉えることができる。これにより,試料の結晶配向の基礎的研究,高分子フィルムの微小欠陥の解析,極薄多層フィルムの各層の物性評価など,従来の装置では難しかったミクロな領域の熱分析が可能となる。

今後はさらにアプリケーションを拡充し,幅広い産業分野の顧客に向けて,先端材料の研究開発から品質管理までを支える分析装置として提供していく。

(株式会社日立ハイテクサイエンス)

6. 高分解能ショットキーSEM SU3800SE/SU3900SEシリーズ

[6]高分解能ショットキーSEM SU3800SE/SU3900SEシリーズ[6]高分解能ショットキーSEM SU3800SE/SU3900SEシリーズ

SEM(Scanning Electron Microscope:走査電子顕微鏡)は物質表面の微細構造を観察する装置として,ナノテクノロジーやバイオテクノロジーなど,あらゆる産業分野で研究開発から製造・品質管理まで幅広く利用されている。中でも,より高倍率での観察が可能な高分解能ショットキー走査電子顕微鏡(FE-SEM:Field Emission SEM)を活用した,微小粒子の観察や微小異物の観察・元素分析などのニーズが高まっている。

近年では,各種材料の高機能化や高性能化を図るための微細構造の制御,品質向上のための異物・不良検査などにもSEMが活用されており,大量のデータ取得の効率化や広域観察時の視野探しの簡便化など,操作性のさらなる向上と検査作業の省力化が求められている。

SU3800SE/SU3900SEシリーズは光学系の自動調整機能を搭載しており,ユーザーの操作負荷を低減可能である。また,オプション機能「EM Flow Creator」を用いることで,連続画像取得などの操作の自動化サポートが可能となり,ユーザーは作成したレシピを実行することでそれぞれの目的に応じた自動観察が可能になる。

(株式会社日立ハイテク)