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レポート

企業価値を向上させる攻めの人事戦略をサポート

従業員視点でEXを高める人事総合ソリューション「リシテア」

ハイライト

少子高齢化に伴う労働人口の減少,長時間労働などが社会問題となる中で,2019年4月より働き方改革関連法が順次施行されるなど,誰もが自身の働き方を柔軟に選択できる社会への移行が始まっている。コロナ禍によるリモートワークの浸透,ダイバーシティに対する意識の高まりなどを受けて働き方の多様化が進む一方,従業員のエンゲージメントの低さや早期離職の増加といった新たな課題も浮上し,企業活動における人事部門の重要性が高まっている。

株式会社日立ソリューションズでは,社内の人事制度改革に力を入れるとともに,働き方をめぐる新たな潮流を受け,長年の実績を有する人事総合ソリューション「リシテア」シリーズにおいて新サービスの提供を開始した。そのベースとなった人事部門の取り組みや新サービスの特徴と展開について,同社のキーパーソンに聞いた。

目次

変化する働き方と人事部門の課題

働き方や労働環境をめぐる変化が加速する中で,株式会社日立ソリューションズでは従業員が働きやすい環境づくりに力を入れ,HR(Human Resource)テックによる人事業務の高度化,効率化にいち早く取り組んできた。自社の改革だけでなく顧客企業の人事改革を支援する業務にも携わる人事総務本部シニアHRテックスペシャリストの小山真一は,近年の人事・人財戦略の課題は経営戦略との連動を意識することにあると指摘する。

「企業を取り巻く環境が厳しさを増す昨今では,人事施策においても経営への貢献がより問われるようになっています。現在,日立ソリューションズはサステナブル経営への変革を進めており,お客さまをはじめとするステークホルダーとの社会価値の協創に力を入れています。そのためには,社内外での人的ネットワークの拡大,従業員の意欲やアイデアを引き出す柔軟な組織づくりが重要です。そこで,経営としてめざす姿を意識しながら,それらを後押しするためのボトムアップによる人事施策を推進しています。」

「働きやすさ」と「働きがい」を高める

小山 真一 小山 真一
株式会社日立ソリューションズ
人事総務本部 シニアHRテックスペシャリスト

日立ソリューションズは,2016年以降「働き方改革」の名の下に各種の人事施策を統合し,残業時間削減,罹病率低下などを目的とした取り組みを遂行してきた。その後,新常態/新型コロナウイルスの感染拡大を経て従業員がある程度自由に働き方を選択できる制度が整いつつあるものの,社内のアンケート調査によれば「働きやすさ」が向上した一方,若年層を中心に「働きがい」が高まっていないことも明らかとなった。そこで2022年4月からは,多様な人財一人ひとりが働きがいや成長の実感につながるEX(Employee Experience)※1)の向上をテーマに取り組みを行った。具体的には,自発的なチャレンジやキャリアを自ら選択できるような支援だ。例えば,会社が独立を支援する「スタートアップ創出制度」や若年層が自らの意思でジョブを選択できる「ジョブマッチング制度」など,さまざまなことに取り組んできた。

「当社の人事部門には,何かアイデアがあればまず実行してみてから考えようという気風があります。計画段階で検討しすぎて実行できなくなるよりは,やってみて従業員の声を聞き,課題や効果を把握して,見込みのある施策は継続し,ないものはやめる。このサイクルを迅速に回すことでノウハウを蓄積してきました。社外向けに開発したシステムやソリューションでも,施策に合致したものがあれば積極的に社内で使い,課題などを事業部にフィードバックする動きも盛んです。」(小山)

※1)
従業員が企業や組織の中で体験する経験価値を意味する概念。従業員の満足度や健康状態,育成状況や所有スキルなど,会社組織の中で従業員が関わるあらゆる経験を指す。

EXとCX,従業員エンゲージメントの関係

小倉 文寿 小倉 文寿
株式会社日立ソリューションズ
スマートライフソリューション事業部 スマートワークソリューション本部 HRソリューション開発部 部長

従業員エンゲージメントは,仕事に対する熱意や職場への愛着など,「働きがい」につながる重要な要素であり,主体性を持って熱心に仕事に打ち込む従業員が多いかどうかを示す指標である。スマートライフソリューション事業部 スマートワークソリューション本部HRソリューション開発部部長の小倉文寿は,EXの向上は従業員エンゲージメントの向上につながり,サステナブル経営,生産性や利益の面にもポジティブな影響を及ぼすものであると指摘する。

「この会社で働いていてよかったというポジティブな感情があると,自社の製品やサービスをお客さまにアピールしたり,提供したりする際のパフォーマンスが高まることは学術的にも証明されています。経営戦略論などでは,EX向上がCX(Customer Experience)向上につながると言われますが,私たち自身もそのことを実感しています。」

米国ギャラップ社が2023年6月に発表した「グローバル職場環境調査2023」によると,従業員エンゲージメントの高い従業員の割合が日本では5%(2022年)にとどまり,調査対象145か国のうちイタリアとともに最下位となっている。こうした中,日立ソリューションズは2022年の調査において日立グループ内でトップの従業員エンゲージメントの高さを記録しており,同社の取り組みが注目を集めている。

人事総合ソリューション「リシテア」

平山 純 平山 純
株式会社日立ソリューションズ
スマートライフソリューション事業部 スマートワークソリューション本部
HRソリューション開発部 グループマネージャ

従業員の体験価値向上に取り組む日立ソリューションズは,顧客企業の人事関連業務をトータルサポートする人事総合ソリューション「リシテア」を1994年から提供してきた。以来,累計1,630社を超える(2023年3月末現在)企業で導入されてきた同ソリューションについて,スマートライフソリューション事業部 スマートワークソリューション本部 HRソリューション開発部グループマネージャの平山純は次のように語る。

「リシテアは,勤怠管理を自動化したいというお客さまの要望を受けて開発したシステムから始まりました。当初は競合他社と比較されて苦戦をしていましたが,その後,Webシステム化した際に,プロジェクトごとの作業実績時間を記録できる仕組みなどの提供を開始し,大企業への導入実績を増やしていきました。」

勤怠管理から始まって,人事・給与を合わせて,企業の基盤を支えるサービスとなったリシテアは,その後も「人」にフォーカスしたサービスを次々と加えていく。

例えば,複数の企業が合併して現在の日立ソリューションズになる過程で従業員一人ひとりのキャリアやスキルが把握しづらくなった際には,人事データを一元化・可視化して配置や育成に役立てる社内システムをつくりました。いわばタレントマネジメントシステムの先駆けのようなものでしたが,うまく機能したのでリシテアシリーズに加えました。人事システムにおいても,初めのうちは給与計算が正確にできさえすればよかったのが,近年では経営戦略と連動した攻めの人事を支援することが求められており,人事関連業務に幅広く貢献するべくサービスを拡充しています。」(平山)

リシテアは現在,13のサービスをラインアップしており,このうち「リシテア/従業員エンゲージメント」,「リシテア/女性活躍支援サービス」,「リシテア/人財マッチング」の三つのサービスは,サステナブル経営やEX向上といった企業の課題解決や持続的な成長に向けて,多様な人財が活躍できる環境を整え,従業員の活性化を支援することを目的として2022年から提供を開始した新サービスである(図1参照)。

図1│人事総合ソリューション「リシテア」サービス一覧図1│人事総合ソリューション「リシテア」サービス一覧

セルフマネジメントを支援する「リシテア/従業員エンゲージメント」

図2│「リシテア/従業員エンゲージメント」が提供する仕組み図2│「リシテア/従業員エンゲージメント」が提供する仕組み

従業員エンゲージメントは,組織,業績にプラスの影響を及ぼす要素として注目されているものの,向上のための施策については手探りの状態にある企業が少なくない。これに対し,日立ソリューションズは座談会の場を設けてリシテアユーザー企業からのヒアリングを行い,課題の特定を試みた。

「座談会を通じて得られた知見の一つが,従業員エンゲージメントの向上施策は会社が主導・管理する従来型のトップダウンのマネジメントでは続かないということでした。継続的にエンゲージメント向上を図るためには,従業員が自ら課題を見つけ,工夫し,実践・改善するというサイクルを回すセルフマネジメントの仕組みが必要でした。そこで,ワーク・エンゲイジメント分野の第一人者である慶應義塾大学総合政策学部の島津明人教授と共同研究を実施し,そのためのサービスを開発しました。」(平山)

「リシテア/従業員エンゲージメント」では,従業員一人ひとりが業務に関する課題を洗い出し,改善に向けた実行計画を立てて実践し,チームが達成度を評価する。個人の取り組みを公開し,励ましあったり,賞賛しあったりすることによって取り組みを継続する効果をねらっている(図2参照)。

健康サポートで活躍を後押しする「リシテア/女性活躍支援サービス」

村井 睦子 村井 睦子
株式会社日立ソリューションズ
スマートライフソリューション事業部 スマートワークソリューション本部 HRソリューション開発部 グループマネージャ

管理職の女性比率向上をはじめ,女性が働きやすい職場環境づくりも企業サステナビリティを高めるうえで欠かせない要素だ。「リシテア/女性活躍支援サービス」は,女性を健康面から支援することで活躍を後押しする。開発のきっかけは,米国において日立ソリューションズの調査チームがまとめた2020年のレポートだったという。

「レポートでは,米国でのフェムケア※2)やフェムテック※3)への関心の高さ,企業における具体的な女性従業員のサポート策などについて報告されていました。日本でも今後その分野のニーズが高まることは予想されたため,われわれも何かサービスを提供しようと検討を重ねる中で,社内でのトライアルとして医療機関が提供している女性向けの健康相談サービスを従業員に利用してもらうことにしたのです。自分の身体について不安なことを看護師・助産師に相談できるというシンプルなサービスでしたが,利用者アンケートの結果がとても好評で,ならば事業化しようということになりました。」(小倉)

提供するサービスは現在のところ健康相談がメインだが,今後は女性特有の身体の問題とそれに対処することの重要性について,女性だけでなく男性にも理解を深めてもらうためのラーニングコンテンツなどを提供していき,最終的には女性のキャリア支援なども含めた文字通り女性の活躍を支援するサービスに拡張していく計画である。 「女性特有の課題について男性管理職の理解が進めば,部下や同僚の女性はより働きやすくなるはずです。女性のパフォーマンスが上がることは組織全体にとってもプラスになると期待されています。」(小倉)

また,スマートライフソリューション事業部 スマートワークソリューション本部HRソリューション開発部グループマネージャの村井睦子は,女性としてこのサービスに期待を寄せる。

「私たち女性自身も,これまでは自分の身体について学ぶ機会が少なかったのが実情ですし,個人差が大きい身体の問題については,女性同士でもなかなか話しづらい面があります。『リシテア/女性活躍支援サービス』では,病院を受診すべきかどうか分からない段階でも,専門知識のある看護師・助産師さんなどにじっくり相談ができるので,心理的安全性や自分の身体に対するリテラシーの向上にもつながるのではないでしょうか。」

※2)
Feminine(女性の)とケア(Care)をかけあわせた造語。女性の健康や身体をケアし,QoL(Quality of Life)を向上する製品やサービスの総称。
※3)
Female(女性)とTechnology(テクノロジー)をかけあわせた造語。女性の健康にかかわる問題を最新技術で解決に導く製品やサービスの総称。

退職率の低下に寄与する「リシテア/人財マッチング」

図3│「リシテア/人財マッチング」サービスのイメージ図3│「リシテア/人財マッチング」サービスのイメージ

「リシテア/人財マッチング」(図3参照)は,2020年に開始した日立ソリューションズの人事制度,「プロフェッショナルエルダー制度」をきっかけに生まれた。この制度は,60歳の定年後,年度ごとに雇用契約・更新を行いながら65歳まで雇用を継続でき,在籍していた部署に残るか,職務経歴やスキルなどを公開して各職場からのスカウトを受けるか,定年後の従業員を対象とした社内求人に応募するかを選べるというもので,これを実現するにあたって開発されたシステムがリシテアの人財マッチングの基礎となった。以降,日立ソリューションズではこのシステムを活用し,社内FAや社内公募のほか,新卒入社3年目の従業員全員が所属部門での業務を継続するか,社内求人に応募するかを選択する「若年層ジョブマッチング制度」などの制度を打ち出している。

「やりたいこと,得意なことを生かした仕事に従事できる環境づくりは,働きやすさや働きがいを高めるうえで不可欠な要素です。ジョブ型雇用が注目されている中で,従業員と仕事のマッチングを企業内で最適化する仕組みが必要とされているのではないかと考え,このシステムの社外提供を開始しました。」(平山)

膨大な人事データから個人の経験やスキルを抽出・整理し,セキュリティを確保しつつ社内求人や業務とマッチングさせ,さらには選考状況を確認して異動の手続きを実施するなど,仲介業務は煩雑で人事部門の負荷が大きい。一連の流れをシステム化することによって,人事部門の負担を増やさずマッチング制度を導入できるメリットは大きいと言える。

「その他の施策との相乗効果もあると思いますが,人財マッチング制度の結果として,退職率は着実に低下しています。特に若年層のマッチング制度は,単に人財の流動性を高めるというだけでなく,自分がこの会社で何をしたいのかを真剣に考える機会になり,仕事に対する意識を高めることにもつながると考えています。」(小山)

「社内FA制度などがあると,マネージャは自部門の魅力を高める方策を真剣に考えるようになります。また,ある程度人の出入りがあった方が,組織が活性化されて好循環が生まれ,企業全体としての足腰も強くなるのではないでしょうか。」(小倉)

実際にジョブマッチング制度を利用した従業員からは,「若年層ジョブマッチング制度でやりたいことを見つけてチャレンジできた」,「転職という選択肢もあったが,社内FA制度で希望の部署とマッチングできたのでとどまることにした」といったポジティブな声が聞かれたという。

「仕事は実際に経験してみないと分からないことも多くあります。ある仕事が合わなくても,別の分野の仕事を社内で見つけられるということが,従業員エンゲージメントの向上や離職率の低下に寄与すると考えています。」(村井)

制度改革も含めた提案で企業価値向上の基礎を支える

これらの新サービスは企業からの関心も高く,導入に向けた動きも進んでいる。例えば人財マッチングは,顧客企業の社内だけでなくグループ会社なども含めた企業グループ内でのマッチングシステムでの活用に向けて,機能拡充を図っている。一方,離職率の低下といった数字で効果が見える人財マッチングに対し,女性活躍支援や従業員エンゲージメントは,導入効果を明確に示しづらいことが課題となっている。

「とはいえ,どちらも組織活性化に必要であるということは多くの企業の方々が理解されています。働きやすさには数字に表せない要素もありますので,『どうすれば従業員と企業の成長を支援できるのか』をお客さまと一緒に考える姿勢が大切であると考えています。」(小倉)

「リシテアの新サービスは,それまで業務や制度としてなかったものを新たに提案することになりますので,ITツールを導入すればそれで解決するものではありません。日立ソリューションズとしては,自社の人事制度や運用ノウハウの知見も生かして,お客さまの人事制度,場合によっては風土の変革も含めて提案し,お客さまに価値を感じていただけるように努力していきます。」(村井)

勤怠管理に関する顧客からの要望を出発点に,リシテアは人事分野の高度化に貢献してきた。その強みは,現場の声や顧客の課題に向き合う機能やサービスと,きめ細やかな提案・対応にある。

「リシテアシリーズには長年の実績があるため,お客さまへのヒアリングを通じて現在直面している課題や検討中の施策について伺い,製品のブラッシュアップや新規開発に反映しています。また,パッケージ標準機能ではお客さまのご要件とマッチしない場合でも,アドオンやカスタマイズでの対応だけではなく,これまでの知見やノウハウを生かしてお客さまの制度設計や運用方法の変更を提案することで,効率が改善したという評価をいただいているケースもあります。」(村井)

また,製品機能の面では,柔軟な運用による環境変化への強さもリシテアの特徴だ。テレワークやフレックスタイム,時短勤務など働き方が多様化する中,新たな勤務制度を導入したり,就業規則や人事制度を変更したりしても,製品自体は変えずにパラメータの変更のみで柔軟に対応することができる。

「人事・給与・就業管理などの人事基盤,タレントマネジメントなどの人財戦略,さらにEXなどの従業員のウェルビーイングという三つの領域で,企業における人をトータルに支えていくことがリシテアの目標です。人事データの活用によって,すべての従業員が生き生きと働くこと,ひいては自分の人生を豊かにすることに貢献できるソリューションをめざしています。」(小倉)

従業員一人ひとりの多様性に寄り添い,価値を最大限に引き出すことは,企業価値向上の基礎となる。日立ソリューションズは,人事総合ソリューション「リシテア」の原点を守りつつ,新たな価値を加えながら,企業と社会の活性化に貢献していく。


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