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特集「デジタルで価値を高めるスマートビルソリューション」(1)中小規模ビル向けビルIoTソリューション「BuilMirai」の開発

執筆者

吉田 ちづるYoshida Chizuru

  • 株式会社日立ビルシステム 日本事業統括本部 デジタル開発本部 スマートサービス開発プロジェクト 所属

鈴木 吉実Suzuki Yoshimi

  • 株式会社日立ビルシステム 日本事業統括本部 マーケティング本部 イノベーション企画部 所属

宮澤 賢Miyazawa Satoshi

  • 株式会社日立ビルシステム 日本事業統括本部 技術本部 フィールドサービス技術部 所属

池谷 武蔵Ikeya Musashi

  • 株式会社日立ビルシステム 日本事業統括本部 事業企画本部 事業企画部 所属

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吉田 ちづるYoshida Chizuru

  • 株式会社日立ビルシステム 日本事業統括本部 デジタル開発本部 スマートサービス開発プロジェクト 所属
  • 現在,スマートビルソリューションの開発に従事

鈴木 吉実Suzuki Yoshimi

  • 株式会社日立ビルシステム 日本事業統括本部 マーケティング本部 イノベーション企画部 所属
  • 現在,ビルソリューションのマーケティング企画に従事

宮澤 賢Miyazawa Satoshi

  • 株式会社日立ビルシステム 日本事業統括本部 技術本部 フィールドサービス技術部 所属
  • 現在,ビルソリューションのサービス技術開発に従事

池谷 武蔵Ikeya Musashi

  • 株式会社日立ビルシステム 日本事業統括本部 事業企画本部 事業企画部 所属
  • 現在,ビルソリューションの事業企画に従事

ハイライト

近年,エネルギー・原材料価格の上昇や地球温暖化に伴う気候変動,人件費高騰・人手不足,生活スタイルや働き方の多様化などが進展する中で,ビル分野においては,環境に配慮したエネルギーや設備の効率的利用,ビル管理の効率化・高度化,ビル利用者の快適性向上への関心が高まっている。本特集では,デジタルを活用した先進的なスマートビルソリューションに焦点を当て,日立グループにおける快適なビル空間提供の取り組みと今後の方向性を紹介する。

特集第1回となる本稿では,日立がこれまで大規模ビル向けに開発・提供してきたビルIoTソリューション「BuilMirai(ビルミライ)」の中小規模ビル向けモデルについて述べる。

1. はじめに

大規模再開発案件において,ビル管理の効率化・高度化や,エネルギーおよび設備の効率的利用を実現するため,専用のスマートビルシステムを構築する動きが広がりつつある。しかし,日本のビル棟数の大多数を占める中小規模ビルにおいては,導入コストをはじめとする予算面の制約や,中小規模ビルに適したソリューションが体系的に整備されていないことなどから,スマートビルシステムの導入が進みにくい状況がある。

日立はこれまで,スマートビルの基盤となるビルIoT(Internet of Things)ソリューション「BuilMirai」を大規模ビル向けに販売しており,「BLUE FRONT SHIBAURA(芝浦プロジェクト)」1)をはじめとするフラッグシップ案件に採用されている。これに加えて,今回,新たに中小規模ビルの効率的な管理や利便性向上のニーズに応えるべく,「BuilMirai」の中小規模ビル向けモデルを開発した2)

2. 中小規模ビル向け「BuilMirai」の概要

中小規模ビル向け「BuilMirai」の第一弾では,マンションなどのセキュリティ解除を遠隔で行えるスマートセキュリティ,複数拠点の防犯カメラ映像を遠隔で確認できるスマートモニタリング,ポンプや受水槽などのビル設備を一括で遠隔監視できるスマートビル管理をパッケージ化してサービス提供し,ビル管理者の管理効率やビル利用者の利便性・快適性を向上し,建物の資産価値向上に貢献する(図1参照)。

本ソリューションの特長は,以下のとおりである。

  1. スマートフォンの活用による高い利便性の実現
    すべてのソリューションがスマートフォンに対応しているため,マンションの居住者やビル管理者は時間や場所を選ぶことなく容易にサービスを利用できる。
  2. サブスクリプションモデルによる投資負担の軽減
    ユーザー側が必要なメニューのみを選択してサブスクリプション(月額サービス)契約することが可能であり,ユーザーの投資負担を軽減できる。

図1|中小規模ビル向け「BuilMirai」の概要図1|中小規模ビル向け「BuilMirai」の概要※)Bluetoothは,Bluetooth SIG, Inc.の登録商標である。スマートフォンを主軸に「スマートセキュリティ」,「スマートモニタリング」,「スマート管理」をパッケージ化してサービスを提供する。

2.1 スマートセキュリティ

スマートセキュリティは,スマートフォンを用いてマンションなどのエントランスやエレベーターのセキュリティを解除することができるスマホ認証と,一時的に来訪者や指定業者などのゲストのセキュリティを解除するワンタイム認証を実現する。

スマホ認証では,例えば,マンションのエントランスでスマートフォンのBLE(Bluetooth※) Low Energy)リーダーを用いて自動ドアを開けると同時に,エレベーターのセキュリティ解除とエントランス階への呼び寄せを実行でき,便利で安全性の高いセキュリティを実現する(図2参照)。また,帰宅(通過)を同居する家族などの居住者に通知することができ,安全・安心にも貢献する。

ワンタイム認証では,来訪者をスマートフォンで事前登録しておくことで,ゲストや指定業者・宅配業者のスムーズな入館や,「置き配」対応を可能にする(図3参照)。

※)
Bluetoothは,Bluetooth SIG, Inc.の登録商標である。

図2|スマートセキュリティのサービス例(スマホ認証)図2|スマートセキュリティのサービス例(スマホ認証)注:略語説明 BLE(Bluetooth Low Energy)
※)Bluetooth対応の非接触型IC(Integrated Circuit)カードリーダー。
スマートフォンのBLE通信を用いて,エントランスのセキュリティやエレベーターのセキュリティを解除することができる。これにより,便利で安全性の高いセキュリティを実現する。

図3|スマートセキュリティのサービス例(ワンタイム認証)図3|スマートセキュリティのサービス例(ワンタイム認証)管理者がスマートフォンで来訪予定の指定業者を事前登録し,招待メールを送信する。指定業者は訪問時にエントランスで解錠用サイトからドアを解錠できる。管理者は通知を受けて入館を確認する。

2.2 スマートモニタリング

図4|スマートモニタリングのサービス例図4|スマートモニタリングのサービス例映像をクラウド管理しているため,スマートフォンを使って遠隔地からの映像再生・ダウンロードが可能である。

スマートモニタリングでは,防犯カメラなどの映像をクラウドで管理することで,スマートフォンやPCを通じて,いつでもどこからでも映像を再生・ダウンロードすることができる(図4参照)。これにより,災害時やトラブル発生時に,ビル管理者が現地に行かなくても状況をリアルタイムで確認できる。

また,スマートセキュリティと組み合わせることで,入館履歴から入館者の映像を確認したり,エントランスのカメラ映像を見ながら来訪者を確認してドアをリモート解錠したりすることも可能になる。

2.3 スマート管理

図5|スマート管理のサービス例図5|スマート管理のサービス例設備異常が検知されると,日立ビルシステムの管制センターに発報される。これを管理者に通知することで,設備異常の早期把握や一次対応ができる。

スマート管理は,ポンプや受水槽などのビル設備の異常をスマートフォンへ自動配信する。そのため,スマートフォンやPCを介して設備の状況をいつでも,どこからでも確認できる(図5参照)。これにより,遠隔でのビル管理や,複数ビルの統合管理による管理効率化を支援し,現場の人手不足という課題の解決に貢献する。

また,現地出動契約を行っている場合,ビル設備異常時には,最寄りの事業拠点(全国約300か所)から技術者を派遣し,緊急出動・一次対応を行うことも可能である。

3. おわりに

本稿では,中小規模ビルの効率的な管理や利便性向上に貢献する「BuilMirai」のサービス内容について紹介した。今後,継続的にソリューションメニューの拡充・強化を進めていくとともに,米国の日立グループ企業であるGlobalLogicと共同で,「BuilMirai」のグローバルスタンダードモデルの開発を推進し,スマートビルソリューションのグローバル展開を加速していく。