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エネルギーソリューション

電力・エネルギー

1.バーチャルパワープラント

太陽光発電や蓄電池など分散型エネルギー源の配電系統への普及は,系統にさまざまな課題を生じさせつつある。バーチャルパワープラント(VPP:Virtual Power Plant)は,ICT(Information Communication Technology)を用いた集中監視・制御により,これらの分散型エネルギー源をあたかも一つの従来型電源のように制御・活用する技術である。

日立は,米国ハワイ州で電気自動車を,英国マンチェスターでヒートポンプをそれぞれ需要家側に分散するエネルギー源とし,これを統合して系統運用に活用するVPPの実証運用を実施中である※)。これらのシステムは,ハワイ州では再生可能エネルギーの出力変動に応じて系統を安定化させる手段の一つとして,マンチェスターでは電力取引市場での取引対象として検討されている。
日本でも2017年にネガワット取引市場創設が予定されており,今年度から経済産業省による「バーチャルパワープラント構築実証事業」が進められている。

※)
経済産業省およびNEDO(New Energy and Industrial Technology Development Organization:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)からの委託による実証事業。

1.バーチャルパワープラント

2.複数マイクログリッド運用管理ソリューション

電力系統に連系しつつ,分散電源の最大活用を図るマイクログリッドにおいては,熱や電力の需給バランス最適化とともに運用コストの最小化が重要である。また,分散電源が既存の系統に与える影響が顕在化しつつある中,持続的なマイクログリッド運用には,電力系統やその他のマイクログリッドとの親和性が必要である。

複数マイクログリッド運用管理ソリューションは,複数のマイクログリッドを統合的に管理運用することで,各マイクログリッド間でのエネルギーの融通を可能とし,複数マイクログリッド全体の運用コストを低減する。

さらにはポジワット・ネガワットの創出と電力系統の安定化に寄与することで,マイクログリッドの価値を最大化することが可能である。また,通信プロトコルに国際標準規格を適用することで,ユーティリティー側のシステムや他のマイクログリッドシステムとの通信を容易にし,スケーラビリティを確保する。

これまで日立が培った高信頼な電力制御技術とIoT(Internet of Things)を活用し,持続的な費用の最小化とエネルギーの安定供給を実現する。

2.複数マイクログリッドの運用イメージ

3.蓄電ソリューション

3.伊豆大島に設置された新型鉛蓄電池設備

太陽光発電などの自然変動電源の大量導入によって,電力系統の安定化という問題がクローズアップされている。日立は,問題解決につながるソリューションの実現のため,安全かつ低コストな蓄電システムとして,鉛蓄電池とリチウムイオンキャパシタを組み合わせたハイブリッド型の蓄電システムの開発・実用化に取り組んでいる。開発のねらいは,発電機慣性体による調整力からAFC(Automatic Frequency Control:自動周波数制御)までの制御範囲をカバーすることである。日立はNEDOの助成のもと,新神戸電機株式会社(現 日立化成株式会社)と共同開発を推し進め,1.5 MWハイブリッド蓄電システムを完成させた。

2015年より始まった伊豆大島での実証は,現在,東京電力パワーグリッド株式会社との共同研究というフェーズに入っている。制御技術の有効性や既設発電所の運転への影響評価を検証し,今後は島嶼(しょ)部のマイクログリッドの電力安定化に貢献するため,2018年の実用化を目標として研究に取り組んでいく。

4.電力広域的運営推進機関システムの運用開始

4.電力広域的運営推進機関システム運用センター

電力広域的運営推進機関は2015年4月に設立された新しい組織であり,電源の広域的な活用に必要な送配電網の整備を進めるとともに,各電気事業者における需給状況の監視や,需給状況が悪化した電気事業者への他の電気事業者による電気の供給指示などを行う。電力広域的運営推進機関システムは,一般電気事業者・新電力・発電事業者および一般社団法人日本卸電力取引所と連携して,需給状況および系統の監視,予備力の管理,連系線の利用管理,広域周波数の調整,系統情報公表などを行うシステムであり,2016年4月に運用を開始した。

システムの主な特長は,以下のとおりである。

  1. 本拠点とバックアップ拠点には,地理的に数百キロメートル分離した3重系のホットスタンバイ方式を採用
  2. 電力系統設備を表現するモデルに,国際標準化の一つであるIEC 61970-301(Common Information Model:CIM)を採用することにより,さまざまなシステムとの連携やパッケージ製品との親和性を強化し,システムの高拡張性を実現
  3. 人間中心設計による画面設計で,広範囲に配置される電力設備の位置や所属エリアの視認性を向上したHMI(Human Machine Interface)を実現
  4. 各種セキュリティガイドラインに準じたセキュリティ対策により不正侵入を防止

日立は,今後も電力システム改革の進展に応じたソリューションを提供していく。

5.関西電力紀北変換所
監視制御システムリプレース

南部系統変更工事によって紀北変換所に500 kV引出設備が増設されることに伴い,監視制御システムを更新した。

監視制御サーバ,オンライン情報サーバ,操作卓サーバ,システム監視サーバおよびメンテナンスサーバなどの上位系システムを更新し,下位系システムのCPU(Central Processing Unit)制御端局および端局装置は流用して,端局装置の一部をRS(Remote Station)へ移行した。

主な特長は,以下のとおりである。

  1. 現行システムのうち,今後供給が不可能となる構成機器について新型への更新を行った。
  2. 現行システムから流用する機器と新型機器が同居可能なシステム構成とした。
  3. 関西電力株式会社の制御系標準である給電制御所および電気所サーバのアーキテクチャを採用することにより,維持・保守性の向上を図った。

(運用開始時期:2016年4月)

5.紀北変換所 監視制御システムの構成

6.北陸電力和泉変電所
無効電力補償装置STATCOMの運用開始

6.和泉STATCOMの仕様(上)と機器外観(下)

和泉変電所においては,近傍にある揚水発電所の揚水運転開始時に発生する電圧変動への対策が課題であった。この電圧変動対策としてSTATCOM(Static Synchronous Compensator)を設置し,実運用を開始した。

従来,揚水発電所の揚水運転時における和泉変電所6.6kV母線電圧変動は,起動時に最大10%,並列前に5%程度発生していたが,STATCOMの設置により,これを系統連系規定で定める電圧変動基準(±2%)以内に抑制することが可能となった。

当初のSTATCOM容量は,変換用変圧器の故障による長期間の揚水運転制約を避けるため,常時必要な5.5 MVA×2ユニットに,故障時に必要となる予備ユニット5.5 MVA×1ユニットを加えた16.5 MVA(5.5 MVA×3ユニット)で計画していた。今回,154 kV/6.9 kV変圧器のタップ制御と組み合わせたタップ協調制御の考案により,必要容量を11 MVA(5.5 MVA×2ユニット)にスリム化し,1ユニットが故障した場合に残りの1ユニットで5.5 MVA(5.5 MVA×1ユニット)運転する場合でも,電圧変動を基準の±2%以内に抑えることを可能とした。

(運用開始時期:2015年10月)

7.関西電力
500 kV PCM電流差動搬送保護リレー装置

7.Veuxbusシリーズ適用500kV PCM電流差動保護リレー装置の外観

500 kV系統用のPCM(Pulse Code Modulation)電流差動保護リレー装置は,従来,主盤と補助盤の2面構成であったが,最新のデジタルリレーユニット「Veuxbusシリーズ」を適用し,主検出・事故検出リレー用の入力変換器を共用化して盤面数を削減することによって,1面構成のスリムな設備を実現した。

主な特長は,以下のとおりである。

  1. 主検出リレーと事故検出リレー用の入力変換器を共用化した。
  2. 高度な脱調検出機能により,2ビット伝送での脱調検出,スリップ周波数の早い脱調現象への対応,高い区間判定能力を実現した。
  3. 最新版の電力用規格B-402(ディジタル保護継電器および保護継電装置)に配慮したJEC-2501(保護継電器の電磁両立性試験)に記載のイミュニティ規定に対応した。

この装置は関西電力株式会社の形式試験を受査後,現地へ納入され,運用に向けて準備中である。今後もVeuxbusシリーズを適用し,高信頼で多様なニーズに応えた製品の開発を進めていく。

(納入時期:2016年7月)

8.受変電設備を核とした需要家向けエネルギーソリューション

電力自由化,ガス自由化などエネルギー面で社会情勢が大きく変化しつつある現在,多くの需要家にとっては,エネルギーの効率的な使用や設備の運用は重要な課題となっている。また,これまで設備運用を担ってきたエキスパートの退職による労働力の減少や,企業内の技術・ノウハウ継承の断絶など,需要家にとっては安定した設備の維持管理および設備更新計画などの負担が一層大きくなっている。このような背景において,需要家の電源設備の中心であった受変電設備のあり方も変わりつつある。日立はこれまで数多くの分野に受変電設備,自家用発電設備,監視制御装置などを納入しており,今後は再生エネルギー,UPS(Uninterruptible Power System),蓄電設備,熱などを含めた需要家向けの総合的なエネルギーシステムのソリューションや,OT(Operational Technology)とITを組み合わせた設備の予兆診断およびエネルギーマネジメントなどの付加価値を高めたソリューションビジネスを,需要家と協創し展開していく。

8.受変電設備を核とした需要家向けエネルギーソリューション

9.標準ユニットを適用した受電変電所構内用リレー装置

需要家の特高構内配電設備などに使用されている保護リレーの多くは,アナログ形や静止形リレーである。これらの装置の中には,適用から既に30年が経過しているものもあり,更新時期を迎えている。更新に際しては,現在主流の機能集約型デジタルリレーを採用するが,各電気室ごとに警報項目などの個別仕様が多いため,デジタルリレー部を標準化し,ハード接続により個別仕様を吸収できる特高構内配電用保護リレーユニットを開発した。

主な特長は,以下のとおりである。

9.受電変電所構内用リレー標準ユニット

  1. 電源,CPU,入力変換器および入出力回路などを一つのユニット筐(きょう)体(幅349 mm×高さ267 mm×奥行き274.9 mm)に収納したオールインワン構成
  2. 特高構内配電設備に適用されている保護方式[送電線主保護(電流差動),送電線後備保護,変圧器保護,過負荷保護]を選択可能
  3. 外部警報出力には,電気室ごとに割付変更が可能な出力選択機能を装備

今後は,転送遮断機能などの機能拡充により,対応の幅を広げていく。

(適用開始時期:2016年2月)

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