日立評論

未来創造に向けたR&Dの取り組み

社会課題解決をめざすオープンイノベーションを推進

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未来創造に向けたR&Dの取り組み

社会課題解決をめざすオープンイノベーションを推進

鈴木 教洋
日立製作所 執行役常務 CTO 兼 研究開発グループ長

この1年間を振り返ってみますと,デジタル技術,AI(Artificial Intelligence)技術を活用した「デジタルトランスフォーメーション」が一気に加速しました。この変革は,EC(Electronic Commerce)企業を中心に,流通・小売業,製造業から始まり,街づくり,モビリティ,ヘルスケア,農業など,さまざまな分野で起きつつあります。一方,国連では「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中核として,「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」が2015年9月に採択されました。地球規模での課題解決が企業活動における事業の根幹になりつつあります。また,総合科学技術・イノベーション会議では,Society 5.0が策定され,2016年1月に閣議決定されました。社会課題解決と経済発展の両立をめざして,人間中心でQoL(Quality of Life)の高い豊かな社会「超スマート社会」を,世界に先駆けて日本が実現することを目的としています。

日立は,ITを活用した高度な社会インフラシステムを提供する「社会イノベーション事業」を展開しています。さらに,この社会イノベーション事業をデジタル技術で進化させ,IoT時代のイノベーションパートナーになることをめざしています。その実現に向けては,お客様やパートナーとの協創にて,課題やビジョンを共有して,ビジネスモデルをデザインし,検証・シミュレーションを通じて具現化し,新たな価値を創出していきます。そのためには,多くのステークホルダーのシステムがつながる,オープンでセキュアなプラットフォームが必要となります。そこで,2016年,日立はIoTプラットフォーム「Lumada」を立ち上げ,サービスを開始しました。現在,お客様との協創を通じ,ユースケースの拡大を図っています。

このような状況の中,研究開発グループでは,2015年度に研究開発体制を刷新しました。具体的には,「顧客協創」,「技術革新」,「基礎探索」を目的に,お客様と協創を進める「社会イノベーション協創センタ(Global Center for Social Innovation: CSI)」,技術革新を推進する「テクノロジーイノベーションセンタ(Center for Tech­nology Innovation: CTI)」,将来の社会課題解決に向けた研究開発を担う「基礎研究センタ(Center for Exploratory Research: CER)」の体制に移行しました。2016年度からは,事業サイドも,フロント,プラットフォーム,プロダクトの3層体制に移行し,研究開発グループの活動も事業サイドにアラインし,各地域のお客様の課題に協創と技術開発で応えています。研究開発グループでは,事業を牽引する役割を担うべく,「社会イノベーション事業創生」,「世界No.1技術基盤の確立」,「将来ビジョンの実現加速」を進めています。

「社会イノベーション事業創生」に向けては,顧客協創方法論を体系化したNEXPERIENCEをフル活用し,日立のIoTプラットフォームであるLumadaのユースケース創生を図っています。グローバル展開を加速するために,英国ロンドンに新オフィスをオープンし,東京,米国シリコンバレーに続いて,顧客協創スペースを備えた協創拠点を設立しました。さらに,2017年4月には,CSIの顧客協創をグローバルに束ねるInsights Laboratoryを新設しました。2016年5月に組織化したHitachi Insight Groupと連携し,Lumadaのグローバル展開を加速します。特に,AI/アナリティクスを共通基盤としたソリューションコアの開発,Lumadaユースケースのショーケース化を,海外200名体制で推進していきます。

顧客協創には,「世界No.1技術基盤の確立」が必要です。そこで,「エネルギー」,「機械」,「材料」,「制御」,「システム」,「生産」,「DT(デジタル技術)」,「エレクトロニクス」,「ヘルスケア」の9つの分野の技術基盤を強化し,日立のフロント,プラットフォーム,プロダクツのそれぞれの事業に貢献しています。また,2016年には,ロボットサービスの実用化をめざして,ヒューマノイドロボットEMIEW3の実証実験をお客様の施設にて実施することができました。AI分野においては,2015年に独自の人工知能技術で企業の経営課題解決を支援する「Hitachi AI Technology/業務改革サービス」を製品化したのに続き,働く人の幸福感向上に有効なアドバイスを自動作成する技術を開発し,日立グループの営業部門約600名を対象に試行を開始するなどの取り組みも進めています。今後は,デジタル技術を導入し,各技術基盤が融合した破壊的イノベーション技術を開発していきます。

「将来ビジョンの実現加速」に向けては,Society 5.0の実現をめざして,「情報科学」,「生命科学」,「物性科学」に取り組んでいます。具体的には,再生医療,超解像度電子顕微鏡,イジング計算機などのテーマを推進しています。Society 5.0実現に向けた産学連携の仕組みとして,2016年度には,「日立東大ラボ」,「日立京大ラボ」,「日立北大ラボ」を新たに設立し,大学のさまざまな領域の研究者の方々との議論を通じて,研究課題の設定から一緒に行うことを進めています。これらを通じ,政策提言・ビジョン発信を行い,協働・融合研究による新ビジネスを創出していきます。2017年度からは,再生医療の実用化をめざして,神戸医療産業都市に再生医療の研究開発拠点「日立神戸ラボ」も開設しました。このようにオープンイノベーションを加速することにより,Society 5.0の実現に貢献していきます。

最後になりますが,日立の研究開発部門は,1918年の「久原鉱業株式会社日立製作所試験課研究係」発足から数えて創設100年目を迎えました。不確実性が増してきている現在,世の中の変化点をとらえ,それに対応したイノベーションを創出することが,今まで以上に重要になっています。日本は,課題先進国であり,それらを解決する新たなソリューションを生み出すことが,グローバルな強みになっていくと考えています。これらは,IT(Information Technology)とOT(Operational Technology)を持つ日立が,まさしく力を発揮できる領域であり,研究開発グループは次の25年,50年,100年に向けた確かな歩みの礎を創っていきます。読者の皆様には,本号を通して,日立の新たな挑戦に向けた研究開発の最前線をご理解いただければ幸いです。

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