日立評論

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産業・流通

産業・流通・水

1.水素分野における実証事業推進の事例

水素は利用時にCO2を発生しないことから,環境負荷低減に寄与することが可能なエネルギーとして期待されている。そのため日立では,国家プロジェクトの実証事業を通じて,水素事業ビジネスモデル実証,コア技術開発および企業・自治体との連携構築を進めることで,2020年以降に立ち上がる水素市場に向けた準備をしている。

現在進行中の実証事業の内容は,以下のとおりである。

  1. 再生可能エネルギー電力の安定化をめざす,電力会社・再生可能エネルギー発電事業者などと連携した電力変動緩和ソリューション技術の構築
  2. 工場自家消費をターゲットとした,日立独自の水素混焼エンジン製品の開発
  3. 需要家熱電サービスに向けた,CO2フリー社会実現のための水素サプライチェーンの構築と実証

今後,これらの実証事業を通じて,水素エネルギー社会の実現に貢献するとともに,水素市場の拡大に合わせた事業を展開していく。

1.電力変動緩和ソリューション技術と水素混焼エンジンの開発(左),水素サプライチェーンの構築と実証(右)電力変動緩和ソリューション技術と水素混焼エンジンの開発(左),水素サプライチェーンの構築と実証(右)

2.加工・組立製造業向け統合MESパッケージ FactRiSM

2.スマートな製造現場を実現する統合MESパッケージスマートな製造現場を実現する統合MESパッケージ

加工・組立製造業においては,ニーズの多様化から多品種少量生産に伴う柔軟な生産への対応,時々刻々と変化する製造現場に対する設備や人への最適な作業指示の発行,高性能かつ重要な部品や製品の取り扱いにおける厳格な製造記録や品質管理,トレーサビリティの実現が求められる。これらの要求を実現するために,製造現場の事実(実データ)に基づき無駄のない最適なリズムで生産に貢献することをコンセプトとした統合MES(Manufacturing Execution System)パッケージ FactRiSMを開発した。

FactRiSMは,製造現場の4M(Man, Machine, Material, Method)データ活用による生産状況や進捗をリアルタイムに把握可能な見える化機能,イベントドリブンな止まらない高速製造指示機能,ISO(International Organization for Standardi­zation)22400に準拠したKPI(Key Performance Indicator)モニタ機能,およびIoT(Internet of Things)ソリューション連携機能など生産最適化技術の標準実装により,顧客の製造現場の全体最適化を実現する。

3.製造現場4Mデータを活用した経営・製造ダッシュボード

3.製造ダッシュボード画面(上)と経営ダッシュボード画面(下)の例製造ダッシュボード画面(上)と経営ダッシュボード画面(下)の例

近年,製造業では,市場環境の急速な変化にグローバル規模で即応するため,迅速に経営や製造現場の課題を把握し,解決するための経営・生産管理システムが求められている。こうしたニーズに応えるため,経営情報から製造現場の状況まで,さまざまなKPIを一元的に見える化する経営・製造ダッシュボードを開発した。

このシステムは,経営者層,工場管理者層,ライン監督者層などの職務階層ごとに,経営改善や生産性向上への意思決定に有効な各種KPIを時系列順にグラフで表示し,状況把握から課題抽出,評価分析,改善までのサイクルの迅速化を図るものである。さらに,海外を含む各工場の4Mデータを統合し,ビッグデータ解析技術を活用した不良発生の原因分析を行い,得られた改善施策を製造現場にフィードバックすることで,グローバルでの製品品質向上に貢献する。

株式会社ダイセルとの協創プロジェクトでは,これまで収集してきた4Mデータを最大限活用したライン監督者層向けの製造ダッシュボードの運用を2017年10月から開始した。今後,経営者層向け経営ダッシュボード運用に向けて,さらにシステムをブラッシュアップしていく。

4.電力自己託送を活用したエネルギーバランス全体最適化

4.自己託送におけるEMSの役割自己託送におけるEMSの役割

熱・電気を大量に消費する工場を複数保有する製造業においては,生産品目や生産数量の変動に追従してエネルギーバランスの全体最適化を図る手段として,電力自己託送の活用に期待が高まっている。

日立は,計画値同時同量制度に従って自己託送の自動運用が可能な多拠点統合型EMS(Energy Manage­ment System)を製品化した。このシステムを活用することで,自己託送事業者は,需給データのオンライン取得,30分単位の託送供給計画の立案,電力広域的運営推進機関(OCCTO:Organization for Cross-regional Coordination of Transmission Operators, JAPAN)への計画提出,計画と実績を一致させるコージェネレーション設備の自動運転ができる。

熱需要の多い飲料充填工場を有するある企業では,2017年6月より,工場内に大型コージェネレーション設備を導入し,EMSを活用して余剰電力を別の工場へ自己託送供給している。これにより,企業全体のエネルギーコストの大幅な削減,環境負荷の低減を実現している。

5.Σ-Factoryソリューション

近年,スマート工場が注目されている。スマート工場とは,センサーや設備を含めた工場内の機器をインターネットに接続し,品質・状態などの情報の見える化,因果関係の明確化を実現し,設備どうし (M2M:Machine to Machine) あるいは設備と人が協調して動作する,製造現場と仮想世界の相互連携(CPS:Cyber-Physical System)による「自ら考えて生産・管理する工場」である。また,Industrie4.0を皮切りに,「第4次産業革命」に向けた世界的な動きが活性化しており,デジタルソリューションを用いた,新たな付加価値創出のステップアップが望まれている。こうした動きの中,製造業においては品質不良によるメガリコールなどのリスクが問題となっており,検査装置や人の目で検出できない品質異常に対し,IoTを活用して早期発見・対策することが重要な課題となっている。

日立の提供するΣ-Factory(シグマファクトリー)は,製造現場(Physical)をデータ発生のエンジンと捉え,現場データをΣ(総和)することによりデータの潜在力を引き出し,新たな価値の創出をめざすスマート工場ソリューションであり,以下の3点より構成される。

  1. 設備管理パッケージ(SmartFAM:Smart Factory Asset Management)が管理する設備稼働情報
  2. 製造設備データのデータ解析サービス
  3. 実行システム(設備予兆診断/品質兆候検知システム)の構築

Σ-Factoryの導入によって設備異常の予兆診断や品質不良の兆候検知が可能となる。異常や不良を早期に発見し対策を行うことで,不良品や設備異常の発生後に対処する場合と比べて製品の検査・廃棄・メガリコールなどで発生するロスコストの防止が期待できる。

以下,上述した3つの構成要素について述べる。

(1)SmartFAM
SmartFAMは,設備台帳を基に,保全の計画・実行故障の履歴などを一元的に管理し,保全業務の効率化を支援するWebシステムである。Σ-FactoryにおけるSmartFAMの役割は,設備保全管理および設備データの収集・蓄積である。設備稼働情報と生産管理情報を融合した統合製造情報データベース (コンテキスト情報)をベースとすることで,Σ-Factoryは品質不良と設備故障の兆候検知を実現し,製造現場データの情報価値を最大化する。
(2)データ解析サービス
オンライン予測診断を行うためには予測モデルの作成が不可欠であるが,Σ-Factoryにおけるデータ解析サービスでは,実行システム開発の前に兆候検知の可能性調査および予測モデルの作成を実施する。データ解析の結果を顧客へ報告し,妥当性を確認する。結果が妥当ではないと判断された場合には,新たな解析手法の提案や他のデータの提供依頼を行い,追加分析を繰り返すことで予測モデルを作成していく。
(3)設備予兆診断/品質兆候検知システム
作成した予測モデルを実行システムとして開発し,設備予兆診断/品質兆候検知システムを構築する。このシステムによって,まずSmartFAMが蓄積したデータを取得し,兆候検知に必要なデータに加工(データクレンジングおよび特徴量化)する。次にデータを予測モデルにかけて,品質不良・設備異常の兆候が検知された場合はアラームの発報や担当者への指示を行い,異常発生の予防によるコスト削減を実現する。

生産拠点は,生産性向上に欠かせないデータ生成源である。生産拠点のIoTデータを総合的に分析・評価することで,今後も新たな価値創出を支援していく。

(株式会社日立産業制御ソリューションズ)

5-1.Σ-Factoryソリューションの機能構成Σ-Factoryソリューションの機能構成

5-2.データ解析による予測モデルの作成と実行システムの関係データ解析による予測モデルの作成と実行システムの関係

6.俯瞰映像と画像センシングによる状況収集・可視化システム

「可視化からはじめるIoT」をコンセプトに,360度カメラの映像から取得した情報を活用し,現場の事象と,その事象が起こった理由を映像で確認できる状況収集・可視化システムVSIP(Multi-View Added Service for IoT Platform)を開発した。

VSIPは,複数の360度カメラから数秒ごとに収集・俯瞰(ふかん)合成した映像上に,現場で検知した異常値を表示するため,異常値を示しているモノ・人・場所を一目で理解することができる。また,異常値が発生した時間の状況をさまざまなアングルの映像で確認することもできる。VSIPを適用した自社のセル生産現場では,稼働率向上,生産性向上を実現した。

今後は,オープンデバイス,ディープラーニング,各種プラットフォームなどとVSIPを連携することにより,あらゆる角度で顧客の課題を可視化し,製造・物流現場の業務改善を通じて産業界の発展に貢献していく。

(株式会社日立産業制御ソリューションズ)

6.VSIPの概要VSIPの概要

7.自律型移動ロボットHiMoveRO

7.カワダロボティクス株式会社製の双腕型ロボットを搭載したHiMoveROカワダロボティクス株式会社製の双腕型ロボットを搭載したHiMoveRO

日本国内の製造現場では,近年の労働力不足により,自動化を望む声が多く上がっている。しかし,従来のロボットを用いた自動化手法では,ロボットを固定して使用する場合がほとんどであり,既存設備の改造やマテリアルハンドリング装置が別途必要となるなど導入のハードルが高いことから,自動化が進みにくい現実があった。

そこで,ロボットの足となり現場を走り回るHiMoveROを開発した。HiMoveROには日立製作所研究開発グループで開発された自律走行技術が搭載されており,ガイドなしで走行が可能なため,上部に各種ロボットを搭載することにより,工場・設備側の改造を最小限に抑えながら,ロボットによる自動化が実現できる。また,走り回って複数箇所で作業を行うことで,今まで自動化が難しかった間欠的な作業でも,ロボットの稼働率を最大限まで引き上げて使用することが可能となった。

(株式会社日立プラントメカニクス)

8.生産計画と連携した設備省エネナビゲーションサービス

グローバルビジネスにおける製造業のコスト競争において,工場運用コストの削減は大きな課題となっている。一方,工場の設備管理では,効率的な運用を支えてきた熟練技術者の引退によるスキルの空洞化が問題となっている。そこで,将来の負荷状態を予測する機能と,設備機器の特性を演算して最適な運転状態をシミュレーションする技術を活用し,将来の設備運転設定値をナビゲーションとして配信する「設備省エネナビゲーションサービス」の提供を開始している。

今回,過去の生産計画と負荷状態の相関データベースを活用し,生産計画情報の入力により将来負荷を予測する機能を追加することで,より精度の高い負荷状態の予測を実現した。この機能の拡張により,生産変動で将来負荷状態の予測が困難であった各種工場へのシステム適用が可能になる。また,将来の設備機器の省エネルギー運転が図れる運転設定値を配信することで,顧客の省エネルギー・省コストでの工場運用を支援できる。

(日立製作所,株式会社日立プラントサービス)

8.設備省エネナビゲーションサービスの概要設備省エネナビゲーションサービスの概要

9.ディープラーニングを活用した鉄鋼プラント向け制御技術

鋼板を製造する冷間圧延機において,鋼板の波打ち(形状)を補正する際,複雑な形状に対してはオペレータによる微調整が必須であり,操作負担および熟練度の差による製品品質のばらつきが大きな課題となっている。

今回,ディープラーニング※1)を用いて,熟練工の操作ノウハウを機械に学習させることで,鋼板の形状を最適に補正し,目標の形状を実現する制御技術を開発した。この技術は,さまざまな複雑形状が含まれた過去の膨大な操業の実績データを基に,操作と形状実績の関係性をニューラルネットワーク※2)に制御ルールとして学習させ,学習したニューラルネットワークを用いて自動で制御するものである。熟練工の操作ノウハウのデジタル化により,オペレータの操作負担を軽減し,膨大な蓄積データから機械が制御ルールを学習して制御することで,製品の品質向上を実現する。

この技術は北京首鋼株式会社遷安製鉄所において2017年8月中旬より実証実験を開始しており,2018年3月を目処に,製品化する予定である。

※1)
ニューラルネットワークの学習方法。中間層を増やすことで,従来と比較して複雑なモデルが表現可能となり,音声認識,画像認識などの分野で高い認識率を実現している。
※2)
人間の脳の神経回路の仕組みを模した数式モデル。構造は,入力層,中間層,出力層の3つから成る。

9.ディープラーニングを活用した鉄鋼プラント向け制御技術のコンセプトディープラーニングを活用した鉄鋼プラント向け制御技術のコンセプト

10.トルコ Tosyali Toyo Steel Co. Inc.冷間圧延2ラインの商用運転開始

10.操業中の運転室内の様子操業中の運転室内の様子

トルコ共和国のTosyali Toyo Steel Co. Inc.において,冷間圧延設備2ラインの試運転を2016年12月より実施し,PLTCM(Pickling & Tandem Cold Mill)は2017年3月,DCR(Double Cold Reduction)は2017年4月より商用運転を開始した。

日立は,高速演算可能なコントローラHISEC04/R900,高性能大容量IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)ドライブ装置,小容量IGBTドライブ装置,計算機制御装置,および制御盤・操作盤を両設備に納入し,制御システムを構築した。

この設備のPLTCMは,通常2台でコイルの払い出しを行うリールを1台に削減し,効率よく運用することで設備を縮小し,酸洗浄ラインと圧延機の間の巻き取りリールを使用した,圧延を行わない酸洗浄済みコイルの生産に対応している。DCRは2台の圧延機を用いた複数の操業パターンを備え,精緻で幅広い品質の調整が必要となるブリキ鋼板のニーズにも対応した。

今回,豊富な経験を生かし,これらの冷間圧延設備の試運転を並行して効率よく進めることで,短期間での安定運転を実現した。今後も世界市場での顧客ニーズに対応したシステムを展開していく。

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