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1. 世界最高速エレベーターの営業運転開始・ギネス世界記録®認定

[1]広州周大福金融中心(左)および世界最高速エレベーターの外観(右)[1]広州周大福金融中心(左)および世界最高速エレベーターの外観(右)

中国・広州市の超高層複合ビル「広州周大福金融中心」に納入した世界最高速エレベーター※1)が営業運転を開始した。広州周大福金融中心は地上530 mと世界有数の高さを誇る超高層複合ビルであり,オフィス,サービスアパートメント,ホテル,商業施設で構成されている。

2019年9月10日に93〜108階に入居するホテル「Rosewood Guangzhou(広州ローズウッドホテル)」が開業し,地上1階から95階のホテルロビーをつなぐ分速1,260 m(時速75.6 km)のエレベーター※2)が「世界最高速エレベーター」としてギネス世界記録に認定された(正式記録タイトル「Fastest lift(elevator)」)。このエレベーターには347 kW超高速大容量巻上機や2,200 kVA並列駆動制御盤など世界最高速を実現する駆動・制御技術のほか,安全性,快適性を追求した技術を投入し,2016年5月に走行実証を行い,この時点での世界最高速である分速1,200 mを達成した。

安全性を実現するための主な技術としては,耐熱性に優れた制動材を採用したブレーキ装置や,機能安全技術を採用した電子安全システムを開発し適用した。快適性を実現するための主な技術としては,かご内騒音を低減させるため,高速鉄道開発で培った数値流体解析技術を駆使して開発した「かごカプセル構造」の適用,ガイドレールのわずかな段差や曲がりから受けるかご内振動を低減させるため,複数の振動モードを抑制可能な「上下アクティブシステム」を開発し適用した。

さらに,技術を追求するため制御装置や安全装置に改良を加え, 2019年4月にエレベーターの公的認定機関である国家電梯質量監督検験中心(広東)から正式に分速1,260 mのエレベーターとして認証を受けたものである。

今後も世界最高速への挑戦で培われた技術やノウハウを生かし,さらなる安全・安心・快適なエレベーターを提供していく。

※1)
2019年9月時点,日立調べ。
※2)
広州周大福金融中心にて,利用状況によって運転速度を変更する場合がある。

2. ビルオーナー・管理者向けダッシュボード「BUILLINK」

エレベーターなどのビル設備の稼働状況や保全状況などの各種情報を,PCやスマートフォン上で確認できるビルオーナー・管理者向けダッシュボード「BUILLINK」の提供を開始した。

国内市場でエレベーターをはじめ18万台以上のビル設備の稼働データを遠隔でリアルタイムに収集・監視し,データ分析結果を基に高度な遠隔監視・保全サービスを提供してきたが,ビル設備の稼働状況や広域災害時の復旧状況などを直接把握したいというビルオーナーや管理者のニーズへの対応が課題となっていた。

そこで,顧客との信頼関係を強化すべく,IoT(Internet of Things)を活用したダッシュボード「BUILLINK」では,ビル設備の稼働状況をPCやスマートフォン上で確認可能とした。ビルオーナーや管理者からのニーズに対応するために,「見える,つながる,動かせる」をコンセプトとした,エレベーターの運行制御設定やかご内の情報表示変更など多様なメニューを提供するとともに,ペーパーレスによる業務効率化に貢献するサービスを提供する。これにより,顧客とのつながりを強化し,差別化や業務効率向上などを図る。

さらに,2020年度には国内向けのダッシュボード機能拡充を行うとともに,アジアを中心に順次グローバル展開を進めていく予定である。

(株式会社日立ビルシステム)

(サービス提供開始時期:2019年11月)

[2]スマートフォン向けBUILLINK画面(イメージ)[2]スマートフォン向けBUILLINK画面(イメージ)

3. 人流予測型エレベーター運行管理システム FI-700

[3]人流予測型エレベーター運行管理システムの概要[3]人流予測型エレベーター運行管理システムの概要

複数台のエレベーターの効率的な運行を実現する人流予測型エレベーター運行管理システム「FI-700」を開発した。

「FI-700」は,一人ひとりの無意識の行動に寄り添った,快適な移動環境を提供することをめざして開発した,次世代のエレベーター運行管理システムである。各時間における各階でのエレベーターの呼びの発生タイミングや,乗降者数をはじめとする過去の膨大な運行データをAI(Artificial Intelligence)で解析し,各階でのエレベーターの利用人数を予測することで,混雑が予想される階に集中的に配車するなど,効率的な運行を実現する。

また,朝の出社時間帯などに利用者が集中するエントランス階で自動的にエレベーターの呼びを登録する「自動登録運転」や,かご内カメラの映像から満員に近いと判断されるエレベーターは途中階で呼びが登録されても通過させる「満員時通過運転」など,ビルの利用者に快適な移動環境を提供する多様な運転モードを用意した。

さらに,ビル設備とのデータ連携機能により,監視カメラから得られる人数データを活用し,より快適なビル内移動を実現するなど,ビルの高付加価値化に貢献する。

今後,詳細仕様の開発を進め,2020年4月に国内外で販売を開始する予定である。

(株式会社日立ビルシステム)

4. 昇降機遠隔監視のアジア展開

[4]遠隔監視サービスおよび関連サービスの2020年度以降の提供イメージ[4]遠隔監視サービスおよび関連サービスの2020年度以降の提供イメージ

日本国内で30年以上にわたって蓄積した技術・ノウハウを基に,国内約18万台に提供してきたエレベーター遠隔監視・保全サービスのグローバル展開を本格的に開始した。シンガポール共和国で2019年10月より本サービスの提供を開始し,アジアを中心に順次グローバル展開を進めていく。

このサービスでは,日本の管制センターおよび各国に設置する管制端末により,エレベーターに設置した遠隔監視端末から稼働データを収集し,機器の稼働状態を監視するとともに,収集した稼働データの分析結果から,故障の予兆を捉え未然に防止する高度な遠隔監視・保全サービスを実現する。

万が一の故障発生時には,管制端末から現地の保全エンジニアに指示が送信され,エンジニアが即時出動して対応する。

さらに,2020年度中には,AIを活用した稼働データ解析で現地の保全エンジニアの故障復旧作業を支援するシステムを追加する。また,本サービスの契約者に対し,エレベーターの稼働状況や保全状況などの各種情報を,PCやスマートフォン上で確認できるダッシュボード「BUILLINK」を提供し,顧客の昇降機の稼働効率の向上や安全・安心・快適な移動の実現,顧客のビル管理業務の効率化への貢献をめざす。

(株式会社日立ビルシステム)

(サービス提供開始時期:2019年10月)

5. VR技術を活用したエンジニア教育システム

昇降機の保全に関わるエンジニア向けに, VR(Virtual Reality)技術を活用した体感型の教育システム(以下,「VR教育システム」と記す。)を開発し,2019年4月から正式運用を開始した。

株式会社日立ビルシステムと海外関連会社では,技術者に対する教育施設を複数所有しているが,受け入れ人員の増加への対応や,各地から教育に参加するために教育施設に集合する非効率性といった課題のほか,安全体感教育においては労働災害の恐ろしさを身をもって実感できる教育メニューの提供が求められていた。

今回運用を開始したコンテンツは,昇降路内への転落などの労働災害を疑似的に体感できるものや,エレベーターの保全作業の基本動作である「かご上への乗降方法」,最重要作業の一つである「ブレーキ分解整備作業」で,実機のない環境でも正しい作業手順を学習できることをねらいとしている。

今回開発したVR教育システムは国内の研修センターで運用を始めたが,今後コンテンツの拡充を図るとともに,VRツールの国内外拠点への配備,多言語化によるアジア各拠点への展開を推進し,グローバルでエンジニア教育の高度化,高効率化,教育機会の拡大を進めていく。

(株式会社日立ビルシステム)

[5]VR教育システムを使用した研修の様子[5]VR教育システムを使用した研修の様子

6. 顧客ニーズに合わせたリニューアル商品開発 Y_Select,G_Select

日本国内で,設置後20年以上が経過したエレベーターのリニューアル需要が高まる中,エレベーターの安全性・快適性・メンテナンス品質の向上を実現するリニューアルメニューを継続的に拡充しており,2018年9月に油圧式標準型エレベーターリニューアル「Y_Select(ワイセレクト)」を発売した。

本商品は,従来提供してきた油圧式標準型エレベーターの全撤去リニューアル,準撤去リニューアルの2種類のメニューに,低価格かつ短期間の工事でリニューアルを実施できる2種類のメニューを新たに開発・追加することでラインアップを強化し,Y_Selectとして体系化したものである。

ロープ式標準型エレベーターのリニューアルについては,Y_Select同様に顧客のニーズに応じてメニューを選択可能な「G_Select(ジーセレクト)」を2012年12月に発売した。ロープ式オーダー型エレベーターにおいては,制御盤や巻上機などの主要機器を入れ替える制御リニューアルを実施してきたが,重量や寸法の制約によって新しい巻上機を機械室に格納できず,リニューアルを断念するケースがあった。そこで,軽量かつ小型のギヤレス巻上機を新たに開発し,制御リニューアルの対象となるロープ式オーダー型エレベーターの範囲を拡大するとともに,G_Selectの新メニューとして追加し(G_Selectの対象をオーダー型エレベーターに拡大),2019年6月に本格提供を開始した。

(株式会社日立ビルシステム)

[6]油圧式標準型エレベーターリニューアル「Y_Select」各メニューの概要[6]油圧式標準型エレベーターリニューアル「Y_Select」各メニューの概要

7. JR御茶ノ水駅 エスカレーターの短工期工法

東日本旅客鉄道株式会社(以下,「JR東日本」と記す。)の御茶ノ水駅にエスカレーター4台を短期工法により設置した。

大型重機を使用するエスカレーター設置工法は,駅の地形環境やホームなどの狭さから作業が制限されるとともに,トラスを架設した後に,欄干・手すりの組み立てやトラスを覆う外装板取り付けなどの作業を行うために,従来の設置期間は架設から引き渡しまでに2〜3か月を必要としていた。

一方,JR東日本からの要望は,駅利用者の利便性を最優先に考えた「架設から引き渡しまで調整期間を含め7日間」であった。

この厳しい条件をクリアするために,事前に平場で総組み立てを行う「揚重架設後の組み立てゼロ化」と「2台接続による同時揚重」を発案した。また,特殊揚重ツールの設計・製作,揚重軌跡のシミュレーションによるコンコースからホームへの揚重ルートの確保など,JR東日本と共に数か月に及ぶ検討・思考を重ねた。その結果,一夜にして2台のエスカレーター同時架設に成功し,調整期間を含め7日間での引き渡しを実現した。

(株式会社日立ビルシステム)

(利用開始:2019年1月)

[7]エスカレーター 一体組品搬入(左),(中央),エスカレーター設置完了(右)[7]エスカレーター 一体組品搬入(左),(中央),エスカレーター設置完了(右)

8. 東京ミッドタウン日比谷向け 昇降機設備の納入

三井不動産株式会社が手掛けた大規模複合施設「東京ミッドタウン日比谷」にエレベーター52台,エスカレーター25台の合計77台を納入した。

事務所部のシャトル用エレベーターかご内は,主役であるオフィスワーカーが高揚感を得られる華やかな空間を演出するため,背面側板に日本を代表する和紙アーティストの堀木エリ子氏の作品をガラスで挟み,裏側から光を当てている。また,天井全面は鏡面仕上げにしており,和紙作品が天井に映り込み,万華鏡のように魅せている。

商業施設部は,劇場空間都市をコンセプトに中世イギリスの劇場を彷彿させる3層吹き抜けのアトリウムにエスカレーターを設置している。外装板を化粧シートで仕上げ,側面をブロンズ,底面をシャンパンシルバーとして色を使い分け,底面には幾何学模様の樹脂パネルを設置し間接照明で照らしている。また,落下物防止フェンスの支柱は,アンティーク品に見られるような経年変化を表現したエイジングブロンズ塗装を施しており,建物と調和し,大人の魅力にあふれた明るく華やかな空間を創出している。

[8]シャトルエレベーターかご内(左)とアトリウム設置エスカレーター(右)[8]シャトルエレベーターかご内(左)とアトリウム設置エスカレーター(右)

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