日立評論

技術革新 ライフ

研究開発

ページの本文へ

Hitachi

日立評論

1. 粒子線治療向け新型可変エネルギー加速器

がんの放射線治療の一種である粒子線治療では,患部の形状と体表からの深さに合わせ,加速器がイオンビームを適切なエネルギーまで加速して照射する。日立では,高精度・高線量率の照射が可能であり,病院に容易に設置できる小型・低コストを実現する新型加速器VEMICを開発中である。

従来型加速器では,加速器としてビームのエネルギーとON/OFF制御が容易なシンクロトロン,または超伝導電磁石の採用により小型化が容易なサイクロトロンが採用されている。

従来型加速器の長所を兼備するVEMICでは,超伝導電磁石が励起する磁場内を,偏心軌道に沿ってビームが加速される。各エネルギーのビームが共通して通過する軌道集約領域の外に取り出しチャネルを設けることで,任意エネルギーのビームを高周波キッカーにより取り出し可能としている。

現在,理想的な電磁場条件において加速原理が確認されており,今後はハードウェアの試作試験を実施したうえで製品適用をめざす。

[1]新型可変エネルギー加速器の構成[1]新型可変エネルギー加速器の構成

2. 直接水冷型両面冷却パワーモジュールを搭載した車載インバータ

[2]直接水冷型両面冷却パワーモジュール[2]直接水冷型両面冷却パワーモジュール

地球温暖化を防ぐためには,CO2排出量の少ないEV(Electric Vehicle)/PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)の普及が必要とされている。バッテリーを主動力とするEV/PHEVは,航続距離や車内空間の拡大が課題であり,これらを解決するため,モータやインバータなどの電動パワートレインの小型・高出力化が求められている。

日立は,インバータの中で大きな体積を占めるパワーモジュールやその冷却システムに対して,内蔵されるパワー半導体の両面をグリースを介さず冷却水で直接冷却する両面冷却パワーモジュールを開発し,2013年に量産を開始した。

今回新たに開発した直接水冷型両面冷却パワーモジュールは,パワー半導体の性能を最大限に発揮させるために,大電流配線の低インダクタンス化とパワー半導体の放熱性向上を行った。特に,低インダクタンス化はパワー半導体の両面に配置した放熱フィンに渦電流を誘導する回路形状と,複数の配線を並列に配置して周囲の磁束を打ち消すことで可能にしている。また,高い放熱性は絶縁層の熱抵抗を低減することで達成した。

本パワーモジュールを搭載したインバータは,出力パワー密度が従来比約1.6倍の54 kVA/Lまで高められ,アウディ社(Audi AG)初の量産電気自動車である「e-tron」に採用された。今後は機種展開を計画しており,EV/PHEVによる環境負荷低減に貢献していく。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)

3. 高信頼・高安全を実現する自動運転システム技術

日本をはじめとした多くの先進国では,労働力人口の減少や高齢者の移動困難などの社会課題が予測されており,産業機器や自動車の自動運転による課題解決が期待されている。自動運転の普及には,対象システムのさらなる安全性や信頼性が必要となる。その際,さまざまな環境変化に応じた制御システム機能の変更や更新,異常発生時の安全な対応が必要となる。

日立では,これまでIT分野で培ってきた機器制御技術の知見を生かし,ソフトウェアにより制御システムの機能を柔軟に変更可能なミドルウェア技術を開発した。本技術では,制御システムの自動運転中にセンサーからの入力情報や,制御演算の計算結果をバックアップ領域に保存する。制御システムの機能を変更する場合には,バックアップ情報を用いて入力情報の再生や計算値の修正を高速に実施する。これにより,信頼性や安全性の高い自動運転の実現が可能となる。

[3]制御システムソフトウェアの高速変更技術[3]制御システムソフトウェアの高速変更技術

4. 高信頼電動パワーステアリング向け冗長型モータコントローラ小型化技術

[4]ベルトドライブ式電動パワーステアリング[4]ベルトドライブ式電動パワーステアリング

自動車のステアリングシステムは,車線維持のためのハンドル操作などの運転支援機能を加えながら,より高度になる自動運転レベルに対応した高信頼化が要求されている。

今回,信頼性を高めるため二重化した冗長型のモータとコントローラを小型化する技術を開発し,ベルトドライブ式電動パワーステアリングに適用した。巻線を二重化したモータは,磁界解析を駆使した最適設計により磁石の減磁耐力を最大化する構造として,永久磁石使用量を低減した。また,コントローラは分割したパワーモジュールを分散配置することで冷却効率を高め,ヒートシンクレス構造に刷新した。これらの技術により,本来冗長化で純増するはずのサイズを従来に比べて20%小型化することに成功した。

今後は,さらなる信頼性を高めた自動運転レベル3以上に適用可能な小型モータ・コントローラにより,高度な顧客ニーズに対応していく。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)

(量産開始時期:2019年4月)

5. 冷蔵庫の熱流体制御技術

[5]温度帯切り替えを実現する熱流体制御システム[5]温度帯切り替えを実現する熱流体制御システム

近年,少子高齢化や共働きの増加などにより,生活環境の多様化が見られる。このような変化に合わせてニーズも多様化しており,ユーザーが使い方を選べるカスタマイズ機能として,下部の二つの引き出し(切替室)を冷凍・冷蔵・野菜の収納から選べる冷蔵庫を開発した。

本機能を実現する熱流体制御システムでは,冷蔵庫の背面側に設けた大風量ファンと二つのフラップを制御することで切替室への冷気風路を替えて,温度帯を切り替えている。冷凍時にはフラップを開き,冷却器からの冷気を引き出し容器内に直接入れて冷却させ,冷蔵(野菜)時には主にフラップを閉じて,冷気を直接送り込まずに切替室後方の断熱壁からの伝熱を活用して冷却させている。

今後,カスタマイズも含め,使用者の一人ひとりに寄り添い,生活の質を高めるような機能の開発をめざす。

6. 社外コラボレーションによる生活家電のデザイン

日立製作所研究開発グループ東京社会イノベーション協創センタは,日立グローバルライフソリューションズ株式会社と連携し,「Hitachi meets design PROJECT」と題したデザイン改革を推進している。この取り組みの特徴の一つが,社外デザイナーやエキスパートとのコラボレーションによるデザイン価値の創造である。

昨今のキッチンは,リビングに開かれたオープンなスタイルが主流となってきており,「見せるキッチン」としてインテリアデザインへの関心が高まっている。こうした潮流に応えるため,さまざまなこだわりを持つ使用者の嗜(し)好に合わせ,豊富なバリエーションのある冷蔵庫をデザインした。2019年12月に発売された冷蔵庫HWSタイプでは,インテリア家具や日用品に実績のあるACTUS社をパートナーとしてデザイン開発を行った。従来の家電品にはない落ち着いた印象の色彩や仕上げを持つ全7種の選択肢を用意している。

今後も,社会の変化を見据えながら人々の生活を彩り豊かにするデザインをめざし,デザイン改革を推進していく。

[6]冷蔵庫HWSタイプのバリエーション例[6]冷蔵庫HWSタイプのバリエーション例

Adobe Readerのダウンロード
PDF形式のファイルをご覧になるには、Adobe Systems Incorporated (アドビシステムズ社)のAdobe® Reader®が必要です。