ページの本文へ

Hitachi
お問い合わせお問い合わせ

エネルギー

グリーンエナジー&モビリティ

1. EV向けレジン封止小型IGBTパワーモジュール

[01]750 V/800 A IGBTモジュールMBB800VX7BS[01]750 V/800 A IGBTモジュールMBB800VX7BS

株式会社日立パワーデバイスは電動車の主機インバータ向けに,パッケージのフットプリントを当社従来比で29%減,重量を27%減とした新型IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)パワーモジュールを開発した。小型化しつつ6 in 1で定格750 V/最大800 Aの大容量を実現するため,低損失な日立独自のサイドゲート型IGBTチップを適用するとともに,ワイヤボンディングに代わり銅リードフレームを採用して定常熱抵抗を6〜9%,過渡熱抵抗を32〜37%削減した。また封止材にシリコーンゲルに代えてエポキシ系ハードレジンを採用して電動車に必要な耐振動性を高めている。

本製品は同一パッケージで750 V/600 Aのラインアップも計画しており,急伸するxEV(x Electric Vehicle)市場向けのインバータユニットやe-Axle向けに幅広い車種に対応し,高効率かつ小型のパワーモジュールとして電動車両の普及とサステナブルな社会の実現を加速する。

(株式会社日立パワーデバイス)

2. ドローンの自動飛行機能による風力発電設備タワー点検システム

日本国内には2000年代前半に建設した風力発電設備が多くあり,これらは耐久年数目安の約20年に近づいている。特にタワーは経年劣化による損傷で倒壊事故に直結するため,信頼性の高い点検が必要となる。

従来の風力発電設備におけるタワーの定期点検や月例点検は,望遠鏡やカメラを使った地上からの点検が主体であり,タワー全体の点検や,その記録は困難であった。また,異常が確認された際はクレーンやロープアクセスによる近接点検が必要なため点検時間やコスト面で課題があり,これらを踏まえタワー全体を詳細かつ効率的に点検する手法が求められている。

本開発では,ブレード点検システム開発で培ったドローンの自動飛行による高精度な飛行と撮影技術を応用することで,誰でも短時間に高品質な撮影データを取得できる点検システムを実現した。

今後は,開発したタワー点検システムとブレード点検システムを組み合わせ,ドローンを用いた風力発電設備の新たな点検サービスとして,点検機能の拡張と一括管理を可能にする機能の開発を推進し,関連システムのさらなる高度化をめざす。

[02]ドローンの自動飛行によるタワー点検[02]ドローンの自動飛行によるタワー点検

3. 発電量予測技術開発と発電計画の最適化による再エネアグリゲーション業務支援

日本政府は,2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて,再生可能エネルギー(以下,「再エネ」と記す。)を,電力市場の価格と連動した発電を促す自立した電源とするための段階的な措置として,販売価格が固定されたFIT(Feed-in Tariff)制度から電力市場に連動したFIP(Feed-in Premium)制度に移行した。

HSE株式会社は,保有する六つの発電所をFIP制度に移行し再エネアグリゲーション事業を2023年3月より開始した。これに対し,株式会社日立パワーソリューションズはこれまで培った技術やノウハウを活用したアグリゲーション業務支援サービスを提供している。

日立パワーソリューションズはこれまで風力発電設備の建設,稼働率保証を含めた長期包括保守契約による保守サービス,運用支援などに関する知見,ノウハウを培ってきた。これらに加え,これまで蓄積したデータおよびAI (Artificial Intelligence)技術を用いて気象条件に左右される再エネの高精度な発電量予測技術を開発することにより,その予測値と設備稼働状況などを反映した最適な発電計画作成を実現し,アグリゲーション業務支援を可能とした。

(株式会社日立パワーソリューションズ)

[03]再エネアグリゲーション事業スキーム[03]再エネアグリゲーション事業スキーム

4. 再エネの電力融通とデマンドレスポンスを組み合わせたエネルギーマネジメントシステム

日立製作所ならびに日立パワーソリューションズは,顧客のカーボンニュートラル推進への貢献を目的として,関東圏に広がる日立グループの約20か所の事業所をデジタルでつなぎ,複数拠点にまたがるエネルギー利用の全体最適化をめざす取り組みを開始した。各事業所が有する再エネとオフサイトの再エネを複数拠点にまたがって融通し,デマンドレスポンスなどの技術を組み合わせることにより,電力の需給バランスを調整する。

今回導入したのは,需要と供給がそれぞれ複数拠点の関係となる多拠点型のシステムである。これにより,多数の拠点を結びつけて余剰電力を効果的に利用し,再エネ電力を必要な場所に,必要な量を,必要なときに分配することで,経済性向上と脱炭素化を実現する。

本取り組みで順次,技術的・経済的効果が実証された機能を顧客へ提供するとともに,2025年3月には需要と供給両面から脱炭素化に貢献する多拠点エネルギーマネジメントシステムとしてモデル事例の確立をめざす。

また,設備関連データの一元化・可視化により保全業務効率化と運用計画最適化を実現するクラウドサービス「設備保全統合プラットフォーム」を2023年9月から提供開始し,アセットも含めて顧客のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を支援する。前述のエネルギーマネジメントシステムと連携を取りながら,エネルギーデータとファシリティデータをつなぎ,顧客のCO2削減と設備運用最適化を実現するサービスを提供していく。

(株式会社日立パワーソリューションズ)

[04]日立が導入する多拠点エネルギーマネジメントシステムのイメージ[04]日立が導入する多拠点エネルギーマネジメントシステムのイメージ

5. 保護・制御システムのフルデジタル変電所化への取り組み

現行の保護・制御システムは,現場機器から配電盤および配電盤間をやり取りする情報の数に相当する大量のメタルケーブルが接続されており,機器や設備更新時のケーブル撤去・敷設・接続に要する工事期間の長期化や,ケーブルピットの容量限界が配電盤更新時のネックとなる場合がある。

これに対し,今後導入する国際規格IEC(International Electrotechnical Commission) 61850を適用したフルデジタル変電所システムは,光デジタル通信の活用により,各装置間の多くの情報を1本の光ケーブルに集約して伝送することが可能となる。また,現行の監視操作盤・保護リレー盤の機能を統合ユニットに集約することにより,盤面数を大幅削減して省スペース化や工事の省力化を実現するとともに,現行製品よりもユニット数を削減することで,統合ユニットの二重化による保護・制御機能の二重化を容易とし,現行よりも高いシステム信頼度を確保して電力の安定供給が可能となる。

本システムは,2025年度以降,IEC 61850を適用したフルデジタル変電所システムとして,国内鉄道事業者に初めて導入される予定である。

[05]現行の保護・制御システムとフルデジタル変電所システムの構成比較[05]現行の保護・制御システムとフルデジタル変電所システムの構成比較

6. HSR方式を採用した送電線電流差動リレーの製品化

[06]電流差動リレー装置外観[06]電流差動リレー装置外観

安定的かつ高信頼な保護リレー装置のシステム構成においては,保護リレー専用の伝送フォーマットと電力専用の通信網が適用されている。

現在,情報通信技術の発展に伴い,低コストで構築可能な汎用ネットワークを保護リレーへ適用し,通信障害時のリカバリタイムをゼロとする冗長化通信技術の一つである並列冗長化通信技術PRP(Parallel Redundancy Protocol)方式を適用したIP(Internet Protocol)電流差動リレーを製品展開している。

今回PRP方式とは別方式であるHSR(High-availability Seamless Redundancy)方式を採用したIP電流差動リレーを開発製品化した。HSR方式では,L2SW(Layer 2 Switch)や光ケーブルの本数を削減でき,PRP方式に比べコスト的メリットがあること,L2SWのファームウェア,コンフィグ情報などの管理が不要となることから,保守面においてもメリットが期待できる。開発評価としては,電力用規格(B-402)に準拠した試験を実施し,すべての検証項目で良好な結果が得られた。

(初回装置納入:2023年3月)

7. 遠制プロトコルコンバータ(IEC 61850,FL-net)

[07]遠制プロトコルコンバータ(IEC 61850,FL-net)[07]遠制プロトコルコンバータ(IEC 61850,FL-net)

遠方監視制御装置(SUPERROL NS9/NS10シリーズ)において,デジタル変電所で適用される国際規格IEC 61850,発電所(水力)に適用されているJEMA(日本電機工業会)で標準化されたFL-netを追加サポートしたプロトコルコンバータを開発した。

これにより,制御所〜変電所/発電所間で従来から使用されている伝送プロトコルであるIP通信(PMCN:Protocol for Mission Critical Industrial Network Useなど),アナログモデム通信(CDT:Cyclic Digital data Transmission,HDLC:High level Data Link Control)を継続使用し,新たに変電所/発電所内のデジタル化によって,適用されるIEC 61850やFL-netをプロトコルコンバータ機能(異なる伝送プロトコルを相互に変換する機能)によって,接続可能としている。

本装置適用による効果として,制御ケーブルの削減効果,伝送情報詳細化による高度化,段階的なシステム移行性などが挙げられる。電力会社,鉄道会社などの社会インフラシステム分野で,長期間をかけて段階的にシステムを移行する遠隔監視制御システムなどでの活用が期待できる。

8. ケーブル劣化診断技術とサービス

[08]部分放電検出装置の概要[08]部分放電検出装置の概要

近年,高経年化が進む送・配電電力設備では,設備状態に応じて保守計画を管理する設備保全が求められている。特に地中埋設ケーブルは劣化状態の把握が困難であり,コスト低減を図る設備点検手法へのニーズが強い。

そこで,設備稼働を停止せずに計測ができる部分放電検出装置と,解析ソフトウェアを組み合わせたオンライン診断手法を開発した。解析ソフトウェアでは,電力設備の接地線から計測した部分放電信号を発生位相角Φ,電荷信号の大きさq,発生頻度nを示すΦ-q-nデータに加工し,データを画像特徴として捉える。これを機械学習させた判定データで解析することで,膨大な計測データの中から効率的に部分放電現象を抽出することを可能とした。さらにフィールド実証を行い,環境ノイズや設備稼働中機器から発生するさまざまなノイズに埋もれて正確な部分放電現象を捉えられない課題について,測定技術とデータ解析を組み合わせて解決した。他サイトの測定でも再現性のある測定技術により,データ解析と併せた新しい解決型の計測・診断サービスとして事業化を計画していく。

Adobe Readerのダウンロード
PDF形式のファイルをご覧になるには、Adobe Systems Incorporated (アドビシステムズ社)のAdobe® Reader®が必要です。