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1. 中部電力 イーサネット通信を適用した送電線保護装置

[1]送電線保護リレー装置外観

昨今の情報化社会の急速な進展に伴い,通信ネットワーク技術は高度化しており,特にイーサネット通信やIP(Internet Protocol)通信などの汎用通信技術は,高速・大容量通信を実現して広く普及している。

一方,送電線保護リレー装置であるPCM(Pulse Code Modulation)電流差動リレーは,各端子で取り込んだ電流データを,互いに伝送して差動電流演算を実施することにより区間内事故の有無を判定しているが,30年程度前に開発されて以降,電流データの伝送には電力会社専用の通信設備が適用されてきた。

従来はPDH(Plesiochronous Digital Hierarchy)通信方式を用いており,保護リレー装置には専用の通信制御基板を実装していた。今回,汎用のイーサネット通信設備であるL2(レイヤ2)スイッチを適用した送電線保護リレー装置を開発し,専用の通信基板を汎用のイーサネットインタフェースに置き換え可能とした。また,専用の通信設備も汎用のイーサネットとなり伝送路構成の自由度を高めることができるとともに,保護リレーシステム全体としてのコスト低減に寄与することができた。

さらに,今後再生可能エネルギー電源の連系増加が予想されるが,送電線保護リレー装置の保護区間内に連系されると,外部事故時に当該電源からの流出電流により送電線保護リレーの不要動作が懸念されるため,不要動作防止対策機能を新たに設けた。

本装置は抵抗接地系の送電線保護リレー装置として開発し,最大8端子まで対応可能な回線分離型の構成である。2020年7月より電気所に順次出荷し,2020年9月に初号機が運用開始された。

2. デジタルリレーVeuxbusシリーズ ワンボックスソリューション

主力製品であるVeuxbusシリーズは主に国内電力各社へ製品展開をしており,変電所の母線保護や変圧器保護,また送電線の保護など各保護装置へ適用している。一方で,一般事業者に広く普及するアナログ形リレーが30年以上経過し,更新時期を迎えているが,従来のVeuxbusシリーズで更新すると顧客ニーズに対してオーバースペックとなり,設置スペースやコスト面での課題があった。

このため,一般事業者向けに機能の集約を検討し,コンパクトで価格帯をマッチさせたVeuxbus新シリーズのワンボックスタイプを製品展開した。従来のVeuxbusシリーズは複数台のユニットで構成していたが,アナログ入力やデジタル入出力などのI/O(Input/Output)回路を一般事業者向けに絞り込み,また差電流保護で使用する伝送回路もCPU(Central Processing Unit)基板に集約するなどして1ユニット構成へとコンパクト化した。これにより,コストを低減でき競争力のある価格を実現したため,一般事業者のアナログ形リレーの更新需要に対してワンボックスタイプでの提案を推進していく。

[2]Veuxbus新シリーズ ワンボックスタイプ

3. 原子力向けデジタルリレー(RBシリーズ)の製品化

[3]原子力向けデジタル保護リレーREGRE-Bシリーズ

国内原子力発電所の所内電源盤にはすでに製造中止のアナログ形リレーが多く使用されており,これらの保守期限が迫っているため,デジタル形リレーへの更新が必須の状況となっている。代替となるデジタル形リレーにはレトロフィットに対応し,かつ従来のアナログ形と同等以上の信頼性が求められている。

これらの課題を解決するため,取り付け寸法に互換性を持たせ,リレー内部回路を二重化して信頼性を向上させた,単要素タイプのデジタル形リレーREGRE-Bシリーズ(RBシリーズ)を開発した。一般的な単要素タイプのデジタル形リレーは内部回路がシングル構成のため,アナログ形リレーより誤動作率が高くなることが予想されるが,RBシリーズでは演算回路や制御電源を二重化し,またトリップ出力回路を2ANDバイパス構成とすることで,誤動作率をアナログ形より低減できる見通しが得られた。また,これらの冗長化した回路を従来と同一サイズのケースに実装するため,使用部品の配置や回路構成を工夫して省サイズ化し,レトロフィット対応を実現した。

4. 中国 国家電網公司/UHVプロジェクト 蘇通1,100 kVガス絶縁送電線路(GIL)の納入

[4]蘇通UHV GIL(右側が山東日立製GIL)

中国では電力需要急増への対応のため,国家電網公司により,2009年のパイロット系統商用運転開始以降,1,100 kV(UHV:Ultra High Voltage)送電網が拡充されてきた。2019年9月には長江南北にあるUHV系統をガス絶縁送電線路(GIL:Gas-insulated Transmission Line)で結ぶ蘇通GILプロジェクトが完了し,送電を開始した。

UHV級では世界初の本プロジェクトには,日立製作所が出資する山東電工電気日立高圧開関有限公司(山東日立)が参画し,スイスのABB社パワーグリッド部門(現 日立ABBパワーグリッド社)および米国AZZ社と共同でGILを開発し,形式試験・長期信頼性試験を経て,GIL 2回線のうち1回線を納入した。GILは,長江南岸の蘇州と北岸の南通をつなぐトンネル内に据え付けされ,GIL長は5.7 kmである。図右側の3相分が山東日立製GILで,定格電流は8,000 Aである。本GILプロジェクトの運転開始により長江をまたぐ大容量送電を可能とし,上海を含む長江デルタ地域の電力安定供給に大きく寄与している。

5. よりクリーンで信頼性の高い電力を実現する組み込みHVDC

[5]スコットランド ケイスネス・マレーHVDC連系線

開発の進む再生可能エネルギー発電を統合するには,新たな送電インフラが必要となる。AC(Alternating Current)高架線ではなく,海中ケーブルと地下ケーブルを利用し,HVDC(High Voltage Direct Current:高圧直流送電)技術を用いた方式であれば,ネットワークを迅速に強化し,計画期間を短縮することができる。

この方式は,送電容量が十分であることに加え,HVDC電圧源コンバータ連系線を用いると,無効電力機能,電圧制御,ブラックスタート,アイランドモード動作によって有効なACシステムサポートが可能となる。スコットランドのケイスネス・マレーHVDC連系線はこれらの効果を実証している。現在はマルチターミナルHVDCシステムに拡張され,シェトランド諸島の風力発電所から本土までつながり,併せてシェトランドのグリッドの信頼性も向上している。

ケイスネス・マレーHVDC連系線は,五つのターミナルからなるHVDCシステムとして設計されている。設計検討では仮想制御システム(VMACH)と実制御ソフトウェアを使用することで,設計段階において性能検証が可能になった。これにより,システムのテストと試運転が迅速かつ効率的に行われ,信頼性の高い電力が消費者に供給されている。

(日立ABBパワーグリッド社)

6. エコ効率に優れた先駆的な高電圧スイッチギア技術

[6]高電圧ラボでの420kV受動素子の誘電タイプ試験

日立ABBパワーグリッド社は,環境負荷が低く信頼性の高い送電網の構築をめざす電力業界の温室効果ガス排出削減への取り組みを後押ししている。2010年以降導入している高電圧技術向けの六フッ化硫黄(SF6)代替ソリューションは,SF6と比較して地球温暖化係数をほぼ100%削減できる。

最初のSF6代替ソリューションとして,二酸化炭素と酸素(CO2/O2)の混合ガスを使用したライブタンク式の72.5 kV遮断器が2014年に採用されて以来,同器は世界100か所以上に設置された。SF6代替ガス(C5-FK混合ガス)を使用した世界初1の高エコロジー効率170 kV高電圧ガス絶縁開閉装置(GIS:Gas Insulated Switchgear)をスイスに設置し,CO2/O2混合ガスを使用した世界初1のライブタンク式145 kV遮断器も設置した。

またSF6フリーの高電圧機器への円滑な移行に対応しており,ドイツの送電事業者TransnetBW社がObermooweiler変電所でSF6代替ガスを使用した初の420 kV GISへ移行できるように次の二つのステップでTransnetBW社をサポートしている2

  1. SF6を大幅削減するSF6代替ガスをすべての受動部品に使用した(2021年運用開始予定)。
  2. スイッチング素子を含むすべての部品にSF6代替ガスを使用した(2026年運用開始予定)。

(日立ABBパワーグリッド社)

※1)
日立ABBパワーグリッド社調べ。
※2)
世界初のSF6フリー420 kV GISの仕様,プロジェクト計画,設計を担当。

7. 低慣性パワーグリッドにおけるエネルギー蓄積拡張型STATCOMの性能と柔軟性

同期ジェネレータの慣性は,回転運動エネルギーの形で短期的なエネルギー蓄積源となり,パワーグリッドの周波数を保護するために重要である。再生可能エネルギーの普及により,パワーグリッドに接続される同期ジェネレータの数は減りつつある。その埋め合わせとして,合成慣性応答サービスや高速周波数応答サービスなどが登場している。

これらのサービスに対応するには,パワーエレクトロニクスに基づく新ソリューションのエネルギー蓄積拡張型自励式無効電力補償装置(E-STATCOM:Energy Storage-enhanced Static Synchronous Compensator)を使用する。同期ジェネレータと比べて,E-STATCOMの合成慣性応答は物理的な設計に左右されない。250 MVAの同期ジェネレータと250 MVAのE-STATCOMを比較すると,E-STATCOMの応答は同期ジェネレータの20倍に相当する。再生可能エネルギー発電が主流となる将来のパワーグリッドでは,E-STATCOMがパワーグリッドを保護するための柔軟かつ効果的な手段となると考えられる。

(日立ABBパワーグリッド社)

[7]同期ジェネレータとE-STATCOMによる合成慣性の比較

8. デジタル変電所間のリアルタイム通信のパイロットテストを実施

[8]400 kV アルダフラスイッチングステーションプロジェクト

アラブ首長国連邦アブダビの400 kV アルダフラスイッチングステーションプロジェクトの一環として,TRANSCO(Abu Dhabi Transmission and Despatch Company)社に対し,これまでに前例のない「変電所から変電所へ」のデジタルソリューションを提供する。このプロジェクトには,完全なE2E(End to End)のデジタル変電所ソリューションを実現するために必要となる多くの革新的な技術および概念,多岐にわたる製品とソリューションを導入する。

また,このプロジェクトは,ミッションクリティカルなアプリケーションに新たに完全デジタル制御,保護,および通信機能を導入し,電力産業のデジタルトランスフォーメーションを可能にする広範なイノベーションの一部となっている。

プロジェクトは,デジタル化されたE2E保守の概念を実現するとともに,この地域で必要とされる独自のアプリケーションを導入する。このソリューションにより,TRANSCO社は,アプリケーションの性能と動作の正確性を保証し,サービスの可用性を比較するのと同時に,変電所ネットワークを分離することが可能になる。

(日立ABBパワーグリッド社)

9. DERの逆潮流による変圧器への影響と対応

世界各地で再生可能エネルギーの導入が進められており,その大半を占めているのが風力と太陽光である。これらのエネルギー源は性質上,きわめて予測が困難で,DER(Distributed Energy Resource:分散型エネルギー源)の発電ノードでのエネルギー貯蔵量も十分ではないため,系統への逆潮流が発生する。現在問題となっているのは,逆潮流によって生じる電圧上昇および電圧高調波のレベルが変圧器の仕様に記載されていないか,あるいは考慮されていないケースが多いことである。

変圧器は公称の設計値で動作しており,逆潮流のさまざまな力率条件において,励起電圧の上昇と磁心損失の著しい増加が見られる。これは相互接続された変圧器の寿命に影響を与え,設計および動作状況によっても異なるが,逆潮流の条件によって変圧器の寿命は最大で25%短くなる。

IEC(International Electrotechnical Commission)のガイドラインに従って,力率が1に近づくように制限することで,変圧器の寿命を維持できる。あるいは,システムの分析や調査に基づいてカスタマイズした変圧器の開発により,力率条件を制限しなくても寿命を維持することが可能になる。

(日立ABBパワーグリッド社)

[9]再生可能エネルギーの連系が現在の送電・配電系統にもたらす双方向潮流

10. 周波数および電力プロファイル規制のためのバッテリエネルギー貯蔵

[10]グランド・バハマ島のフリーポートにある9.5 MW/7.31 MWh BESS用地

バハマ国のグランド・バハマ島の主要な産業エネルギー需要は,電力負荷に急激な変化をもたらし,システム周波数に大きな影響を与える可能性がある。そのことを念頭に,現地の電力会社,グランドバハマパワーカンパニーは,60 Hzの送配電網周波数を維持する目的で規制予備力のためのシステム慣性を高めるべく,高い目標を掲げて事業を運営してきた。

9.5 MW/7.31 MWh BESS(Battery Energy Storage System:バッテリエネルギー貯蔵システム)は,送配電網に合成慣性を供給し,こうした産業による負荷変動に起因する周波数スイングの緩和を目的に設計および設置された。BESSは,レシプロエンジン発電機のより効率的な動作を実現して,オンラインスピニングリザーブの実行を減らすように設計されているため,運用コストを節約しながら,周波数調整も改善される。

BESSプロジェクトの試運転中に,グランド・バハマ島は大型ハリケーンに襲われ,インフラは甚大な被害を受けた。BESSはオンライン状態のままで,嵐が通り過ぎた後,数日から数週間で送配電網回復のサポートに回っている。関連研究で示されたこの準備段階の結果は,BESSが意図したとおりに動作して,グランド・バハマ島の送配電網周波数調整にプラスの影響をもたらしたことを示すものである。

(日立ABBパワーグリッド社)

11. 再生可能エネルギー増大に向けたエネルギー貯蔵システム

[11]ダリンプル ESCRI BESS

オーストラリアのNEM(National Electricity Market:全国電力市場)は,小規模および大規模の再生可能エネルギー発電の急速な普及と複数の石炭火力発電所の閉鎖により大きな変化を遂げてきた。南オーストラリア州では,州内の再生可能エネルギー発電のシェアが2009年の14%から2018年には51%に増加したが,その多くを風力発電が占めており,瞬間的な風力発電の供給が需要に対して140%を超えることもその変化を象徴している。一方で,再生可能エネルギーなどの非同期電源からの供給量の増加により,従来の同期発電システムで提供されていた系統安定性が低下する。

南オーストラリア州における再生可能エネルギー供給比率増大がもたらす課題に対処するため,NEMに設置された最初のエネルギー貯蔵システムBESSであるダリンプルESCRI(Energy Storage for Commercial Renewable Integration)により技術的および商業的な知見が得られた。BESSは,仮想慣性,過電流供給やシームレスな単独運転など,同期発電システムの挙動と性能を模擬することで系統安定性の強化を図ることが可能となる。

(日立ABBパワーグリッド社)

12. 分散型電源・エネルギー貯蔵システムの管理に貢献するマイクログリッド制御

[12]エイケン郡で提案しているマイクログリッド

米国サウスカロライナ州エイケン郡の商業用および産業用送配電網に関するマイクログリッドプロジェクトは,産業の現場およびオフィスにかかる負荷を考慮し,PV(Photovoltaics:太陽光発電)などのDER,BESSおよびディーゼルエンジンの組み合わせを包含している。

マイクログリッドプロジェクトの主な目的は,エネルギーレジリエンシー,ピークシェービング,コスト削減,再生可能エネルギーとNWA(Non-wire Alternatives:非従来型送配電ソリューション)との統合をマイクログリッドによって達成する手法を実証することである。

このプロジェクトの主要課題は,グリッドコードの拡充に伴う規制政策とそれに合わせて要求される保護要件への対応にある。マイクログリッドにおけるさらなるDERの増加は,変電所のホスティングキャパシティを超えるため,変電所のアップグレードまたはNWAが必要となる。マイクログリッドは,PV,BESS,ディーゼルなどの異なる分散型エネルギー源をインテリジェント制御システムで統合し,炭素放出量の効果的な削減,コストの低減,エネルギーレジリエンシーの向上を実現するエネルギーソリューションをどうすれば提供できるのか示すものである。

(日立ABBパワーグリッド社)

13. 送電能力の強化による再生可能エネルギーの統合サポート

[13]ライトバルブホール

今後数十年で,米国におけるカーボンフリーエネルギーの大半が,大規模な風力発電,太陽光発電,水力発電から生成されるようになることが予想される。米国内で再生可能エネルギーの発電に最適な場所の多くは,人口の少ないエリア,つまりオフショアにあり,既存の送電経路や消費者の中心地からは遠く離れている。

グリッドへの再生可能エネルギーの統合を進めるには,国内の送電インフラへの多額の投資が必要になる。最初に取るべき重要なステップは,再生可能エネルギーに適した遠隔地と主要なロードセンター間の相互接続容量を増やすことである。HVDC技術は,大量の電気を長距離にわたって送電でき,費用効率と持続可能性の高い手段で,有効な選択肢である。各地域のACベースの送電システムも,フレキシブル交流送電システム(FACTS:Flexible Alternating Current Transmission Systems)などの技術を用いた最新化のメリットを享受できる。FACTSを利用すれば,ACシステムの送電能力,安定性,制御性が向上する。これらの技術やその他の関連技術は,米国全土で再生可能エネルギー発電が幅広く採用されるための基礎を築き,経済・社会・健康上の長期的なメリットを生み出すことができる。

(日立ABBパワーグリッド社)

14. 9,000万人に持続可能なエネルギーを供給するマルチターミナルUHVDCシステム

[14]北東アーグラHVDC制御室

インド北東部には水力発電資源が豊富にあるが,ロードセンターからは数百〜数千キロメートルも離れている。この課題を解決するため,先駆的なマルチターミナルHVDC技術が,6,000 MWもの電力を1,775 km離れたアーグラ(タージマハルのある都市)まで送電することを可能にした。

北東アーグラプロジェクトには先進的な技術がいくつも使われている。この世界最長※)の800 kVマルチターミナルHVDC送電プロジェクトでは,12パルスコンバータターミナルを採用し,敷設用地面積の制限や最大8,000 MWのコンバータ容量にも対応して,800 kVの屋内DCホールを備えている。さらに,このようなプロジェクトでは世界初※)となる33%の連続過負荷機能を用いた設計になっており,接地電極は5,000 Aの直流連続電流用に設計されている。

また,システムは双極,単極(大地帰路/導体帰路),およびハイブリッドモードで動作するため,HVDCラインの複数のセクションや複数のコンバータが停止した場合でも柔軟に対処できる。この技術は,損失や送電コストの最小化,安定性の高い国内グリッドの維持,グリッドの強化,スマート化,環境保護性向上に貢献している。

(日立ABBパワーグリッド社)

※)
2020年10月現在,日立ABBパワーグリッド社調べ。

15. 送配電網のブラックアウトを防ぐ自動切替システム

[15]産業用電源システムへのATS適用例

米国エネルギー省は,2018年のスマートグリッドシステムレポートにおいて,再生可能エネルギー発電の変動性と断続性,変動する負荷パターンと変動予測の難しさ,膨大な数のエンドポイントを管理する必要性,送配電網に対するサイバー攻撃リスクの増大などを中心に,現在,送配電網が直面しているいくつかの課題を取り上げている。信頼性の高い電力の可用性は依然として重要であり,配電網の構築がインテリジェントネットワーク化するにつれて,DSO(Distribution System Operators:配電系統運用者)側では,異なるタスクを処理するためにスマートな監視および制御デバイスの必要性がますます高まっている。

そこで,RTU(Remote Terminal Units)向けに,主電源から二次配電網の代替エネルギーへの切り替えを自動的に実施するように設計されたATS(Automatic Transfer System:自動切替システム)を提供している。このソリューションは,作動中の電源の上流側の障害を認識すると,3秒で主電源を予備電源に切り替える。ATSは,関連する設備,特に周波数低下に敏感な設備を保護するインテリジェントグリッド分析に基づいて,スイッチギアに関係なく柔軟な後付けが可能で,現在および将来にわたる要件を満たすために最大限の柔軟性と可用性を提供する。

(日立ABBパワーグリッド社)

16. オマーンの電力網を守る耐量子暗号

[16]オマーンの送電ネットワーク

OETC(Oman Electricity Transmission Co.)社は,発電所からオマーン全土の配電負荷センターへ電気を送る主要な電力ネットワークを所有・運営している。OETC社では,運用のデジタル化を進めるとともに,帯域移行を促すインセンティブサービスの増加に合わせて,通信網の移行を実施することにした。しかし,新たに導入されるパケット交換技術によって,セキュリティ上の脅威に対して通信網の脆弱性が高まるおそれがあったため,移行にあたってはセキュリティが重要な要件となった。

この課題に対して,日立ABBパワーグリッド社の耐量子セキュリティソリューションであるFOX615ネットワークソリューションを導入することで,OETC社は一つの製品で求められる要件をクリアすることができた。このソリューションは,運用の複雑さを最小限に抑える一方で,移行によるリスクとサービスの停止を回避する。モジュラー設計を採用しているため,デバイスを拡張してそれぞれ固有の要件を持った複数のサービスを,共通のパケットインフラストラクチャ上で,保証性能を維持したままサポートすることができる。

このOETC社向けの新しい通信システムは,ミッションクリティカルなユーティリティネットワークのE2Eの暗号化に耐量子セキュリティカードを採用した世界初※)の事例の一つである。耐量子セキュリティソリューションは,光の物理的性質を利用して真にランダムな暗号鍵を生成し,リアルタイム性能でのセキュリティを保証する。

(日立ABBパワーグリッド社)

※)
日立ABBパワーグリッド社調べ。

17. ユーティリティ設備管理における故障予測の重要な役割

[17]設備管理に対するよりインテリジェントなリスクベースのアプローチを推進するAPMテクノロジー(イメージ)

装置の不具合が発生すると,影響が大きく費用がかかるとともに,オペレータが予測することも困難である。しかし,デジタル技術の活用により,コストを最小限に抑え,インテリジェントなメンテナンスによる設備ライフサイクルの管理が可能となる。

日立ABBパワーグリッド社が開発した新たなツールは,設備管理を従来の時間ベースのアプローチから,大幅に費用効率が高い状態ベースのアプローチへと移行を可能にする。しかしながら,リスクと保守の決定は,専門家の主観的な判断と規範的で柔軟性のない保守計画との組み合わせに依然として大きく依存しており,設備の将来の状態に関するデータ分析を組み入れることはほとんどない。装置の性能を予測するための信頼できる実証済みの方法がなければ,オペレータは自分のやり方を変更しなければならない。設備管理ツールに求めるものは,装置の技術的性能だけにフォーカスすることではなく,意思決定をサポートするための予測情報である。新たなAPM(Asset Performance Management:設備パフォーマンス管理)テクノロジーは,将来の結果を決定するために必要な洞察を与えるものである。

(日立ABBパワーグリッド社)

18. デジタルユーティリティの核心となる五つのインテリジェンス

[18]企業全体の洗練された将来像(イメージ)

世界中で進行しているデジタル革命は,通信方法,接続方法,さらにはデータとして期待される情報を新しい形に作り変えており,同時に,既存の構造を革新する。革新的な技術が,今までの流れを変えるような知見へとデータを変化させるデジタル産業時代を迎える中,ユーティリティがデジタル化するには,データの急増によってもたらされる課題を克服し,五つのインテリジェンスを生かすように視点を変える必要がある。五つのインテリジェンスは以下のとおりである。

  1. 全体論的視点:組織の包括的なビュー
  2. 状況インテリジェンス:事象に対する理解と対応
  3. タイムリーなインテリジェンス:情報の高速で正確な送信と解釈
  4. 実用的なインテリジェンス:より良い意思決定と決定的な行動を促進するように提供される情報
  5. 進化するインテリジェンス:洗練された企業の将来像を提供するための,状況に応じたタイムリーで実用的なインテリジェンス機能の継続的な改善

(日立ABBパワーグリッド社)

19. デジタル化と設備パフォーマンス管理の未来

[19]APMソリューション(イメージ)

古代中国の占い師たちは,高温に熱した金属製の火かき棒で骨に亀裂を入れ,亀裂の形で未来を予測し,国家の命運を分ける行動について助言した。原始的な形であったとしても,初期の文明にとって,占いの実践は大きな恩恵をもたらしていたこと,すなわち,不確実な状況に直面したときに,取るべき行動に共通の方向性を定めることで人々を組織化するという大きな成果があったと考えることができる。

大量の情報があふれるビッグデータの時代でも,共同作業と合意形成が依然として人々の予測の極めて重要な結果である。現代の分析は,予測精度の水準を引き上げてきたが,意思決定に伴うリスクと不確実性が排除されたわけではない。APMソリューションの多くは,データの収集,処理,表示といった技術的な細部に重点が置かれている。いずれも考慮すべき重要な事項ではあるが,ビッグデータ時代におけるAPMソリューションは,ビックデータの分析ソリューションに留まらず,効率的な共同作業のための戦略的ツールとなることをめざしている。

(日立ABBパワーグリッド社)

20. 分散送配電網のデジタルトランスフォーメーション

現代のユーティリティでは,多数のポイントまたはノード,主に風力や太陽光などの再生可能エネルギー源,BESSおよびマイクログリッドから電力が送配電網に流れるようにする分散型モデルの採用が増えている。こうしたモデルでは,多方向への予測が難しい電力の流れに対応する必要があるため,送配電網管理が複雑になる。

新たなデジタル技術を駆使することで,変電所のセンサー,スマートメータリングシステムおよびその他の接続デバイスからデータを収集し,有線および無線のブロードバンド通信ネットワーク経由で制御室に配信できる。その後,AI(Artificial Intelligence)を搭載したソフトウェアアプリケーションがデータを処理し,送配電網の詳細なビューをオペレータに提供して,迅速かつ正確な意思決定ができるようにする。

デジタル生産性向上ツールの適用とプロセスの自動化は,ユーティリティ企業の収益の即時で大幅な改善につながる。素早く提供され,しかも細部にまで配慮して考えられたデジタルアプローチを採用するユーティリティは,顧客体験を向上し,デジタルトランスフォーメーションが進むこの時代において,顧客の事業発展に寄与する。

(日立ABBパワーグリッド社)

[20]分散送配電網のデジタル化の道のり

21. 島嶼部をつなぐHVDC

[21]東清水プロジェクト

再生可能エネルギーの統合が進むと,ACグリッド間のさらなる相互接続により電力資源を用いた電力取引が可能になり,グリッドの信頼性を高めることができる。HVDC技術は,最大効率かつ最小損失での送電を可能にする。

このようなグリッドの移行には世界各国が乗り出している。日本の東清水プロジェクトは,東日本の50 Hz送電網と西日本の60 Hz送電網間の接続を強化するものである。この接続には,送電網システムの大幅強化と開発支援,および電力供給の信頼性向上が期待されている。東清水変電所の相互接続容量は300 MWから900 MWに増強されて,消費者に対する供給信頼度も向上する。

同様の応用例は欧州でも見られる。デンマークのクリーガーズフラック洋上風力発電所では,デンマークとドイツのグリッドを相互接続するとともに,風力発電の統合も行っている。また,新たに発表された英国シェトランド諸島における連系線では,シェトランド諸島と英国本土を相互接続し,風力発電の大規模統合を行う予定である。

(日立ABBパワーグリッド社)

22. 再生可能エネルギー統合の課題に対応するHVDC

再生可能エネルギーは,カーボンニュートラルなエネルギーシステムに移行するうえで重要な役割を担う。動的で柔軟性と安定性の高いグリッドを実現するためには,将来の送電・配電方法を変える必要がある。発電所は電力消費地域と離れた場所にあることが多いため,今後のニーズに合わせてグリッドをアップデートする必要がある。

日立ABBパワーグリッド社が世界で初めて※)開発したHVDCは,再生可能エネルギーの大規模統合に必要な柔軟性,制御性,障害回復性を備えている。また,電力ロスが少ないため大量送電に適しており,国や地域間での再生可能資源の取り引きも可能にする。

HVDC市場は,洋上風力発電の統合で成長してきた。次のステップは,英国とコンチネンタルシステム間などの接続ネットワークを構築して相互接続と洋上風力発電との接続を組み合わせ,マルチターミナルHVDCの導入用や,さらにはDCグリッド用に開設することである。また,ドイツのように送電回廊を用いて国内のシステム容量を増大させる必要がある場合にも,HVDCは重要な役割を果たす。

(日立ABBパワーグリッド社)

※)
日立ABBパワーグリッド社調べ。

[22]再生可能エネルギーの統合,国や地域間の非同期グリッドの相互接続,電力ロスの最小化で大規模送電を実現するHVDC

23. 迅速な災害復旧を可能にするモジュール型移動式変電所

[23]災害復旧用のモジュール型移動式変電所

自然災害などの大規模災害発生後の電力復旧の所要時間を大幅に短縮し,長期的な安定性と高い電力品質を実現する画期的なモジュール型移動式変電所を開発した。

この移動式変電所は,高度な機能統合によって組み込まれたハイブリッドスイッチギア,電力変圧器,制御室の各モジュールで構成される。モジュール単位で,独立サスペンションとリアステアリング軸を備えたトレーラーに搭載されるため,移送が簡単で,現場で扱いやすく,撤去も迅速に行えて環境への影響も最小限に抑えられる。

また,モジュール型移動式変電所は複数の電圧レベル(最大420 kV)と電力(最大500 MVA)に対応し,組み立て済み・工場テスト済みの状態で出荷されるため,従来の変電所と比べて設置から始動までの所要時間を平均の18か月からわずか数日にまで短縮できる。

この堅牢な移動式エネルギーソリューションは,設置面積が小さいため使用スペースが最小限で済み,設置のための工事はほぼ不要で,さまざまな気象条件や過酷な環境にも耐えられる(動作温度:-40℃〜+ 40℃)ため,まさにグリッドの災害復旧用に適したソリューションである。

(日立ABBパワーグリッド社)

24. 再生可能エネルギー向け高電圧スイッチギア

再生可能エネルギー需要の高まりを受け,洋上風力発電業界が風力タービンの単位電力増加に取り組んだ結果,最新モデルの最大出力は10〜12 MWに達している。これにより,33 kVから66 kVへの洋上送電網の切り替えによる損失の最小化と均等化発電原価(LcoE:Levelized Cost of Electricity)の削減が進められている。

そこで,ハイブリッドスイッチギアPASS(Plug and Switch System)をベースに,66 kV風力発電タワー向けの小型で堅牢なスイッチギアPASS M00を開発した。包括的な内蔵故障保護機能により,クラス最高の安全基準をオペレータに提供する。また,その高い耐振性,耐湿性,耐食性は極めて過酷な条件下での試験で実証されている。あらゆる種類の風力発電タワーに合わせて設置面積とアクセス性を調整できるモジュラー設計により,カスタマイズされた何種類もの単線結線図に対応できる。

(日立ABBパワーグリッド社)

[24]風力発電タワーPASS M00

25. 直流ガス絶縁開閉装置技術による洋上風力発電の課題への取り組み

北海での洋上風力発電は大規模な再生可能エネルギーの主要供給源となっており,欧州のクリーン電力において大きなシェアを占める。欧州連合(EU:European Union)は,メッシュ状送電網を使用して風力発電ファームを相互接続する際のメリットと課題を調査するため,「メッシュ状HVDC洋上送電網の進展(PROMOTioN : Progress on Meshed HVDC Offshore Transmission Networks)」プロジェクトを発足させた。

北海でのメッシュ状送電網による洋上風力発電エネルギーの送電課題に対応するため,世界初※)の高圧直流送電(HVDC)ガス絶縁開閉装置(GIS)を開発し,このEUプロジェクトの試験所に導入した。

2020年7月,320/350 kVのHVDC GISのプロトタイプ導入試験が成功裏に完了した。1年半連続で実施された試験により,HVDC GISテクノロジーが技術的に成熟しており,実際に運用できる実用性を備えていることが実証された。HVDC GISは洋上プラットフォームの総設置面積と総所有コストを削減する。320/350 kVという技術的マイルストーンを達成したHVDC GISにより,コスト効率の高いHVDC送電線の将来的な開発が可能になる。

(日立ABBパワーグリッド社)

※)
日立ABBパワーグリッド社調べ。

[25]設置されたHVDC GISプロトタイプ

26. 再生可能エネルギー統合に貢献する揚水発電所向けのデジタル発電機遮断器

再生可能エネルギー生成量が増加する中で,揚水発電所(PSPP:Pumped Storage Power Plant)は送電網の安定性維持に大きく貢献している。発電機遮断器(GCB:Generator Circuit Breaker)は,発電所設備を深刻な損傷から保護し,高コストとなるダウンタイムを削減するためにPSPPで使用される。通常運転中はGCBを使用して発電モードと揚水モードが頻繁に切り替えられるため,GCBには極めて高い信頼性と動作性が求められる。しかし,GCBを連続運転すると接点材料の腐食が進み,時間とともに効率が低下する。

このため,GCBを最大活用するには接点の腐食を正確に測定することが重要になる。画期的なGCB向けモニタリングソリューションGMS600-GTAは,腐食を高精度で測定することにより予知保全を実現する。GMS600-GTAを電流遮断用の制御スイッチングデバイスPWC600と組み合わせて使用すれば,約60%の総所有コスト削減やPSPPの効率的運用による送電網の強化など,大きな技術的・経済的メリットが得られる。

(日立ABBパワーグリッド社)

[26]20年間の稼働寿命における総所有コストの変化

27. スマートアイランドへのバッテリ蓄電システムの配備

[27]ポルト・サント島の景観

日立ABBパワーグリッド社は,ルノーグループと協力し,ポルトガル政府が欧州の南西端にあるポルト・サント島で立ち上げた「Sustainable Porto Santo」イニシアティブの一環として,EV(Electric Vehicle)バッテリを再利用して電気系統にクリーンエネルギーを統合する試みをサポートしている。

このイニシアティブの根幹にあるのはポルト・サント島における再生可能エネルギー生産量を増やすことだが,太陽光エネルギーおよび風力エネルギーには間欠性の問題がある。

これを解決するのが,ルノーグループが提供する使用済みEVバッテリと,日立ABBパワーグリッド社のバッテリ蓄電ソリューションとの統合である。この仕組みにより,ポルト・サント島の再生可能エネルギー源から生成された余剰エネルギーを貯蔵することが可能となる。その結果,電力需要が増えた際に,スマートな精密技術を用いて,バッテリに蓄えられた電力を電力網にフィードバックすることができる。

このバッテリ蓄電ソリューションは,ポルト・サント島のインテリジェントな電力エコシステムの一翼を担い,島の風力および太陽光の発電性能を有効利用できるようにする。

(日立ABBパワーグリッド社)

28. 変圧器のデジタル化を実現するTXpertエコシステム

世界の電力システムでは急速なデジタル化が進み,安全性,生産性,アクセシビリティ,持続性が向上しつつある。こうした背景を踏まえ,変圧器のデジタル化を容易にするための製品,ソフトウェア,サービス,ソリューションからなるプラットフォームであるTXpertエコシステムの提供を開始した。

TXpertは,特定のメーカーに依存しないオープンで拡張性の高いエコシステムである。ユニバーサルな視野に立ち,メーカーや適用方法を問わずあらゆる変圧器にデータ主導型のインテリジェンスを提供することができる。

TXpertハブは,TXpert対応変圧器の心臓部であり,厳しいサイバーセキュリティ基準に基づき,ローカルまたはクラウドベースでデータのモニタリング,診断,接続を担う。

TXpertエコシステムにはAPMソリューションが含まれる。これは,個別あるいは複数の変圧器,リモートサービス,高度なサービスに対応し,変圧器の運用・保守に関するスマートな意思決定が容易にできる。

TXpertエコシステムは,数千台に及ぶ変圧器の製造やサービスから得られた知見に基づくデータ主導型のインテリジェンスであり,コストとリスクの低減,運用の最適化,耐用年数の長期化,環境性能の向上をもたらし,数百万ドルのコスト節減と,柔軟性,効率性,レジリエンスの向上を実現することができる。

(日立ABBパワーグリッド社)

[28]TXpertエコシステム

29. 高出力風力タービン向け電力変圧器WindSTAR

WindSTARは,浮体式風力タービン向けに設計された変圧器で,浮体式洋上風力発電施設WindFloat AtlanticのMVOW(MHI Vestas Offshore Wind)社製8.4 MW風力タービン3基に設置されている。高さ190 mと浮体式施設に設置されたものとしては世界最大※)で,1万8,000軒を超える世帯に十分な電力を供給する高出力の風力タービンである。

2019年に運用を開始したWindFloat Atlanticは,ポルトガルのヴィアナ・ド・カステロの沖合20 km,水深100 mの海域にある。従来型の洋上風力タービンであれば海底に固定されるため,水深約40〜50 mの海域でしか利用できない。

WindSTARは,浮体式施設上での急激な動きに対応できるよう小型で強靭な設計となっており,着床式タービンを利用できない水深の深い海域に設置された洋上風力発電施設で活用されるものである。66 kVという電圧レベルは風力タービンの定格としては業界最高クラスであり,これにより伝送損失の大幅な低減と効率の向上を実現している。

(日立ABBパワーグリッド社)

※)
2020年10月現在,日立ABBパワーグリッド社調べ。

[29]66 kV変圧器WindSTAR

30. HVDC送電線Pacific Intertie

[30]当時世界最高出力のHVDC変換所変圧器

総延長1,360 kmのHVDC送電線Pacific Intertieは,50年にわたって,水力発電による電力を米国ロサンゼルス広域圏の300万世帯に送り続けてきた。このHVDCシステムは米国初※)の大規模HVDC送電線で,故ケネディ大統領のビジョンを実現したものである。

1970年,送電線の容量は1,440 MWで,高圧直流電流を用いることにより伝送損失を最小限に抑えていた。それ以降,数回の改修が行われ,容量は3,800 MWまで増加した。特に変圧器の設計に関する最新のイノベーションによって,1970年当時の変換所と同じ占有面積のままで増強を行うことができた。

これを実現したのが,パワフルで小型の変換所変圧器である。革新的な三巻線設計を採用することで,従来の変圧器の半分の台数での改修が可能となり,1コア当たりの出力の増強と,寸法を輸送制限の範囲内に収めた。

(日立ABBパワーグリッド社)

※)
日立ABBパワーグリッド社調べ。

31. データセンターの効率化を実現する過渡電圧保護付き変圧器

[31]データセンターのネットワーク管理(イメージ)

データセンターのネットワーク管理者は,電気系統全体に過電圧が生じて機器の損傷や故障を引き起こすことがあるため,電気配線ネットワークの交換には慎重になる。

RC(Resistance Capacitance)スナバ回路のような従来型の保護ソリューションの場合,必要なシステム調査にコストを要するうえに,ネットワークが複雑化してしまうという欠点がある。しかし,配電変圧器向けTVP(Transient Voltage Protection:過渡電圧保護)Technologyを利用することにより,設計を複雑化することなく交換リスクを低減できる。

TVP Technologyは,一体化した巻線バリスタにより,変圧器とその下流にあるすべての機器への過電圧を抑制する。維持管理が不要で,設計が複雑になることもなくあらゆる中電圧ネットワークに対応できる。配電変圧器向けTVP Technologyは,安全なネットワーク交換を実施するための理想的なソリューションだと言える。

(日立ABBパワーグリッド社)

32. Phoenixプロジェクトにおける世界初のハイブリッド同期コンデンサシステム

[32]H-SCシステムの単線間略図

英国の電力網では発電状況が変化しており,慣性,短絡レベル,電圧制御に関する課題が生じている。FACTSは,変化する電力システムのニーズに対応すべく選ばれた技術ソリューションの一部として,ますます重要な役割を担っている。静止型無効電力補償装置(STATCOM)やSVC(Static Var Compensator)などの動的な無効電力補償システムの採用率が世界的に上がっている一方で,同期コンデンサシステム(SCS:Synchronous Condenser System)は,慣性および短絡強化のニーズ増加により需要が増加している。

SCSとSTATCOM技術を組み合わせて世界初※)のハイブリッド同期コンデンサ(H-SC:Hybrid Synchronous Condenser)システムを形成することで,こうした課題を克服しようとする革新的なプロジェクト「Phoenix」に採用された。これらの相補的な技術の組み合わせは,現代の電力システムにおいて実行可能かつ有益であり,NIC(Network Innovation Competition)から資金提供を受けるPhoenixプロジェクトで,SP Energy Networks社の主導により開発と実証が進められている。

(日立ABBパワーグリッド社)

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日立ABBパワーグリッド社調べ。

33. 変圧器のリモートサービスをデジタル化で実現

電力系統ネットワークは幅広い地域をカバーしているが,その電力系統にとって欠かせない要素である変圧器・変電所は,遠く離れた場所に設置されていることがある。状態基準保全を採用すれば,作業員は現地への訪問を最小限で済ませられるため,メンテナンス費用を抑えることができる。さらに,新型コロナウイルス感染症の影響でデジタルリモートサービスの需要が高まっており,現地での顧客のサポート方法も様変わりしている。

こうした市場の要求に応え,顧客をサポートし,変圧器の性能を維持するためのモニタリングサービスを開発した。TXpertエコシステムの検出装置と監視装置によって変圧器の運用データを収集し,APMの診断ソフトウェアで分析を行うことにより,変圧器の状態を数値化し,メンテナンスの優先順位を付けることが可能になる。

診断情報を使用したリモートコンサルティングサービスを拡張現実ツールと組み合わせ,ハンズオンでの現地サービス試験や故障検出をサポートすることもできる。さらに,デジタルリモートサービスのポートフォリオを活用すれば,グローバルな専門家とローカルなサービスチームを結び付け,計画外のダウンタイムを回避することが可能になる。

(日立ABBパワーグリッド社)

[33]モバイルCoreSense M10を使用したリモートモニタリング(左),変圧器の状態をリアルタイムで表示するAPMの診断ダッシュボード(右)

34. 持続可能な次世代採鉱場の建設構想をサポート

日立ABBパワーグリッド社は,スウェーデンで採掘・鉱物生産事業を営む企業グループのLKAB社と提携し,同国北部にある同社の鉄鉱石採掘場で次世代の持続可能な採掘生産システムの開発と立ち上げを支援している。LKAB社が抱える課題の一つが,二酸化炭素を排出しない,デジタル化された自律型の新しい採掘システムの開発と導入である。それに加えて,現在の主要坑道の深さでは鉱物資源が採れなくなってきたため,新システムはさらに地下深くで稼働させなければならない。

LKAB社は採掘場の生産量を50%程度増やすことを計画しており,より扱いやすく,効率性と柔軟性が高く,安全で持続可能なエネルギー源を利用した,消費エネルギーの少ない電力システムを必要としている。両社のエキスパートによるシステムの検討はすでに完了しており,今後の採掘場のエネルギーシステムの設計と構成に対応するため,複数のシナリオを考慮した電力システムのデジタルモデルがこれまでに数百種類も開発・テストされている。日立ABBパワーグリッド社は,これらのテスト結果と結論から,このプロセスの早い段階で意思決定に必要なサポートとカスタムメイドのソリューションを提供している。

(日立ABBパワーグリッド社)

[34]スウェーデン北部にあるLKAB社の鉄鉱石採掘場

35. 新しいデジタルサービスソリューションRelCare

[35]RelCareソリューション(イメージ)

RelCareは,顧客の所有する重要な変電所設備の信頼性,持続可能性,収益性の向上に役立つメンテナンスパートナーシップソリューションである。最先端の設備管理ソフトウェアとサービスパートナーシップモデルを組み合わせることで,基幹システムのライフサイクル全般にわたる性能と収益性,システム保護を最適化した。

RelCareにより,使いやすい共有デジタルプラットフォームを利用して,リアルタイムでの設備の信頼性に関する透明性の高い,データに基づいた意思決定を迅速に行い,さらにメンテナンス作業のリモート評価も効率的に行うことができる。RelCareソリューションを利用すると現場訪問の回数を減らせるだけでなく,送電・配電設備から再生可能エネルギープラント,データセンター,各種産業,スマートモビリティ充電ステーション用の接続変電所に至るまで,あらゆる種類の変電所設備において現場の安全性強化とオペレータの生産性向上に役立つ。

RelCareは,動的なシステム信頼性と収益性モデリングに基づく効率的なメンテナンス,先進のメンテナンス管理システムと豊富な運用経験によるメンテナンス品質の向上,整合性の取れたSWMS(Safe Work Method Statement:安全作業方法ステートメント)に基づいて標準化されたメンテナンスの実施,変電所システムの主要な性能指標のリアルタイムモニタリングを可能にする。

(日立ABBパワーグリッド社)

36. 1.7 kVサイドゲートHiGT搭載 低損失SiCハイブリッドモジュール

[36]1.7 kV/1,000 A低損失 SiCハイブリッドパワーモジュール

株式会社日立パワーデバイスは,鉄道車両などで用いる電力変換器向けに次世代小型2in1パッケージを採用した1.7 kV/1,000 A低損失SiC(Silicon Carbide)ハイブリッドパワーモジュールを開発した。Siダイオードと比較して逆回復電流を大幅に低減できるSiCショットキーバリアダイオードをSi-IGBT (Insulated Gate Bipolar Transistor)と組み合わせてSiCハイブリッドパワーモジュールを構成する。

本モジュールは,一層の低損失化のためにゲート容量値を低減したサイドゲートHiGT(High-conductivity IGBT)構造をSi-IGBTに適用し,内部インダクタンスを10 nHに低減した小型パッケージの採用により,日立パワーデバイス従来のSiCハイブリッドモジュール製品比でスイッチング損失を50%低減した。本モジュールを搭載する電力変換器はスイッチング周波数を高周波化できることから,変換器システムのリアクトルなど受動部品の小型・軽量化に貢献できる。

(株式会社日立パワーデバイス)

37. オルタネータ用35 A/12 V 超低損失ダイオード

[37]超低損失ダイオード外観

日立パワーデバイスは,ガソリン,ディーゼルエンジン車に搭載されるオルタネータ(発電機)用に,整流時の電圧降下を従来比5分の1に低減した超低損失ダイオード(SLLD: Super Low Loss Diode)を開発した。

日立パワーデバイスの超低損失ダイオードは,整流用のMOSFET(Metal-oxide-semiconductor Field-effect Transistor),サージ保護用のZD(Zener Diode),オン/オフを制御する制御IC(Integrated Circuit),制御ICに電源を供給するコンデンサで構成される。三次元実装技術を駆使することで,これら4部品を使いながらも,製品の外形は従来のダイオードと同一とすることに成功した。これにより,顧客がオルタネータを組み立てるときに,既存の設備をそのまま使用することができるという大きなメリットになる。

この超低損失ダイオードを使用することで,オルタネータの発電効率は約6%向上し,1.2 g/kmのCO2削減効果が得られ※),地球環境保全に多大な貢献をすることができる。

(株式会社日立パワーデバイス)

※)
DENSO ニュースリリース

38. ポーランドにおける再生可能エネルギー導入拡大に向けたスマートグリッド実証システム

ポーランドの国営送電会社であるPolskie Sieci Elektroenergetyczne S.A.(PSE),ポーランド北西部の配電会社であるENERGA-OPERATOR S.A.(EOP),ポーランド北西部の発電会社であるEnerga OZE S.A.(EOZE)に対して,再生可能エネルギー導入拡大に向けたスマートグリッド実証システムの導入を完了し,運用を開始した。

主な特徴は以下のとおりである。

  • 常時,電力系統からのオンライン情報を基に演算を行い,系統事故が発生した場合の系統状況をシミュレーションしたうえで対策を立案する。また,実際の系統事故発生時には,事前のシミュレーション結果に基づいて,制御対象となる風力発電機などを自動制御することにより,送電線への過負荷を防止する。
  • 高出力のリチウムイオン電池と大容量の鉛蓄電池を組み合わせたハイブリッド蓄電システムを系統安定化システムと組み合わせて使用することにより,予備力の提供や送電線への過負荷解消への活用が可能である。
  • 本成果は,国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO:New Energy and Industrial Technology Development Organization)の委託業務から得られたものである。

    (運用開始時期:2020年9月)

    [38]実証システム全体構成図

    39. 非常用発電装置による電源ソリューション

    [39]非常用発電装置(PS-Nシリーズ)外観

    近年,頻発する台風や地震といった自然災害へのBCP(Business Continuity Plan)対策や防災計画の策定には,ライフライン維持のための確実な電源確保が課題である。この課題を解決する有効な手段が,非常用発電装置の導入である。株式会社日立パワーソリューションズは,顧客のニーズに合わせた製品をラインアップするとともに,導入計画から機種選定,設置後の保守サービスまで一貫した体制で提供している。

    また,定期点検,点検計画立案などの保守管理業務を代行し,顧客の管理負担を軽減する包括保守サービスを提供している。平常時に停止している非常用発電装置が停電時に確実に稼働するよう,遠隔操作で定期的に運転して稼働状態をモニタリングするほか,採取したデータと点検記録の解析により,故障や不具合の発生兆候を診断して予防保全につなげることで,設備の健全性を維持する。また,不具合を検出した場合は,全国のサービス拠点からサービスエンジニアが駆けつけて対応し,万一の停電時の電源確保を支援する。

    (株式会社日立パワーソリューションズ)

    40. ダム放流支援システム DioVISTA/Damの開発

    気候変動の影響で大雨が頻繁に降るようになり,水害を防止するために従来にないダム操作が求められている。例えば,台風の前にダムの水位を下げる事前放流,複数のダムを連携させるダム群連携操作などは,勘と経験で最適解を求めることが難しい。

    日立は,ダムの放流操作を支援する技術を開発し,ダム管理者向けのシステム「DioVISTA/Dam」として製品化を進めている。これにより,シミュレーションとAIを融合させてダム流入量予測を行うとともに,数理最適化手法「プログレッシブ動的計画法」を使い,事前放流や洪水時の放流計画を自動的に立案する。

    「DioVISTA/Dam」の画面には,放流計画の判断に必要な情報である,今後のダム流入量,放流計画案,ダム貯水状況,ダム下流の河川水位や浸水状況が表示される。また,放流計画は優先する目標ごとに立案することができる。図には,放流量が急激に変化しないようにしつつ,下流の河川流量をできるだけ小さくすることを目標にした場合の放流計画を示す。「DioVISTA/Dam」は,2021年度中の製品リリースを予定している。

    (株式会社日立パワーソリューションズ)

    [40]ダム放流支援システムDioVISTA/Dam 表示画面

    41. リアルタイム騒音監視システム

    近年,設備保守業務では部品の経年劣化による故障リスクの高まりに対して,ダウンタイムの発生や保守コストの増加が課題になっている。故障予兆の把握という面では,非接触センシングが可能であることから,音のデータを使う監視のニーズが高まっている。音は環境評価という側面も持ち,事業者は騒音レベルが敷地境界で規制基準値以下となるように管理することはもちろん,近隣住宅までの到達音を考慮したきめ細やかな対応が必要となる。

    こうした状況に対し,日立パワーソリューションズの提供する「リアルタイム騒音監視システム」は,工場や発電所の設備稼働による騒音を複数箇所で常時測定し,評価対象の騒音の大きさや周波数のトレンドを可視化する。さらに,収集したデータに機械学習を適用することで,設備異常の度合いを定量化し,正常稼働時の騒音と異常時の騒音を自動で識別する。これにより,設備異常の早期発見やきめ細やかな環境対策に貢献する。

    (株式会社日立パワーソリューションズ)

    [41]リアルタイム騒音監視システムの機器構成

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