日立評論

鉄道システム

モビリティ

ページの本文へ

Hitachi

日立評論

鉄道システム

モビリティ

1. JR九州 九州新幹線向け新みやまSP電力融通システム

列車回生電力の有効利用を目的として,九州旅客鉄道株式会社(以下,「JR九州」と記す。)の九州新幹線・新みやまき電区分所(SP:Sectioning Post)に電力融通装置(RPC:Railway Static Power Conditioner)を納入し,2019年11月から本運用した。

新幹線交流電化区間では,き電区分所のセクションにより切り離されているため,き電区分所の隣接するき電区間の相互間で回生電力の融通はできないが,RPCを置くことにより可能となる。システムは,RPCと隣接の変電所に設置する電力演算装置で構成され,RPCは電力演算装置から通信を介して送られてきた電力情報を基に,余剰回生電力を他方のき電区間の力行列車へ融通して有効利用する。RPCはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を適用した変換器により電力を変換し,最大電力5.3 MW(定格1.3 MW)を融通することができる。

[1]新みやまSP設置型RPCによる回生電力利用 [1]新みやまSP設置型RPCによる回生電力利用

2. 車側カメラ映像によるワンマン運転時の乗務員支援

現在,ワンマン運転化の際には乗務員の乗客乗降確認支援として,ホーム上にミラーやITV(Industrial Television)を設置している。しかし,ミラーやITVは地上に固定されており,列車の両数や停車位置の変更を行う場合には,地上設備側の制約を受けていた。

そこで車両側面に搭載したカメラ(車側カメラ:図左)映像を運転台に設置したモニタ(映像表示装置:図右)に映し出すことにより,運転席から乗客の乗降確認を可能とする車載カメラシステムを開発した。地上設備を必要としない車載型システムであることから,列車両数や停車位置の変更時に制約を受けず,比較的両数の多い列車にも適用が可能である。

また,車側カメラは薄型,耐振動性,防水性を備え,鉄道車両側面に取り付けることを考慮した形状であるとともに,日立の撮像技術により直射日光や夜間の影響を受けず,乗務員に対して安定した視認性を提供している。

将来的には画像処理やAI(Artificial Intelligence)を用いた車側映像によるホーム上の危険事象検知機能の検討についても視野に入れていく。

[2]車両側面に搭載した車側カメラ(左:先頭車 右:中間車)(左),運転台に設置したモニタ(映像表示装置,夜間の映像例)(右) [2]車両側面に搭載した車側カメラ(左:先頭車 右:中間車)(左),運転台に設置したモニタ(映像表示装置,夜間の映像例)(右)

3. JR九州 在来線電力管理システム・停送電自動化システム

電力遠制システム(CSC:Centralized Substation Control)と自動進路制御装置(PRC:Programmed Route Control)の機能改良およびシステム間連携による電力指令の業務効率化を目的として,JR九州の在来線電力遠制システムに停送電自動化機能を適用し,2020年3月に本運用を開始した。

従来,電力指令と輸送指令は,き電停止前にき電停止区間内に列車が在線していないことなどを互いに口頭で確認してき電を停止するため,ヒューマンエラーが発生しやすい環境であった。今回,CSCとPRCを連携し,運転取扱駅などへの停送電確認端末の設置により,列車の在線有無の確認,駅作業終了状況の確認,信号機自動制御抑止設定を自動で行えるようにした。また,変電所などの機器もスケジュールに従って自動で制御可能とすることで,き電停止・開始に関わる指令業務を全面的に効率化した。

[3]停送電自動化システムの概要 [3]停送電自動化システムの概要

4. JR東日本 E261系新型(直流)特急車両

東日本旅客鉄道株式会社(以下,「JR東日本」と記す。)は,伊豆エリアのブランディングを通じて地域と連携し,乗客に伊豆の「本物の魅力」を体験してもらうとともに,この魅力を世界に向けて発信するための新たな観光特急列車として,E261系新型(直流)特急車両「サフィール踊り子」を新造した。

日立はE261系プロジェクトにて車体(台車を含めて川崎重工業株式会社と分担製作),主回路,制御システムを受注し,JR東日本と協創して車両を製造した。

主回路としては,戦略製品であるフルSiC(Silicon Carbide)素子を搭載したVVVF(Variable Voltage Variable Frequency)インバータ装置をJR東日本向け営業車両に日立として初めて納入し,省エネルギー,CO2排出量削減の顧客ニーズに対応した。

制御システムとしては,イーサネット通信技術を用いた車両制御システムINTEROS(Integrated Train Communication Networks for Evolvable Railway Operation System)を実装した。汎用通信技術を活用することでリアルタイムでの車両状態の伝達が可能となり,IoT(Internet of Things),省エネルギー,CBM(Condition-based Maintenance),乗客向けサービス向上などにつながる機能拡張を実現した。

(営業運転開始: 2020年3月)

[4]JR東日本 E261系新型(直流)特急車両搭載電気品と外観 [4]JR東日本 E261系新型(直流)特急車両搭載電気品と外観

5. つくばエクスプレスTX-3000系新型(交直流)通勤車両

[5]TX-3000系車両と主変換装置 [5]TX-3000系車両と主変換装置

つくばエクスプレスを運営する首都圏新都市鉄道株式会社では,これまでTX-2000系で培った技術をさらに発展させて,乗客への充実した輸送サービスの提供と環境負荷低減を目的としたTX-3000系新型通勤車両を導入した。

車体は全車両に優先席・フリースペースを配置し,座面が高くて浅く腰掛ける形状で立ち座りしやすいユニバーサルデザインシートを採用するなど,車内の快適性を向上させている。また,フルSiC素子を用いた主変換装置・補助電源装置や,加減速を極力減らして省エネルギー運転を実現した自動列車運転装置(ATC/ATO:Automatic Train Control/Automatic Train Operation)を採用して省エネルギー効果の拡大を図った。

 日立は車体,主回路装置,補助電源装置,車両情報制御管理装置(Synaptra),ATC/ATO装置,液晶車内案内表示器などの主要機器を受注し,TX-3000系は2020年3月に営業投入された。

6. JR東海 N700S新幹線車両

[6]JR東海 N700S新幹線車両外観および先頭形状流体抵抗解析結果 [6]JR東海 N700S新幹線車両外観および先頭形状流体抵抗解析結果

東海旅客鉄道株式会社(以下,「JR東海」と記す。)は,N700系以来13年ぶりのフルモデルチェンジ車両となるN700S新幹線車両を導入した。本車両は,安全性・安定性を向上しつつ,さらなる省エネルギー化に向けた新技術を適用し,日立は車体,台車,駆動システム,保安装置の製作を担当した。

車体先頭形状は,走行抵抗および流体騒音の低減のためシミュレーションにより最適化したデュアルスプリームウィング形を採用した。台車は,車両ダイナミクス解析により乗り心地性能を向上した。また,高速鉄道の駆動システムでは世界初となる低損失・高耐熱であるSiC素子を採用した主変換装置を搭載した。これにより従来4極であった駆動モータの6極化が可能となり,同等の出力を確保しつつ小型軽量化を実現できた。

各機器の小型軽量化により床下機器の配置種別を8種類から4種類に削減したことで,編成両数やMT(Motor Trailer)比率(出力比率)を柔軟に構成できる「標準車両」を実現した。また,床下機器の最適化により生み出された床下スペースに,高速鉄道では世界初となるリチウムイオンバッテリによるバッテリ自走システムを搭載した。

環境性能としては先頭形状の最適化やSiC素子の採用などにより,N700A系から約6%の電力消費量削減を可能とし,省エネルギー化に貢献している。

(営業運転開始:2020年7月)

7. JR九州 YC1系ハイブリッド車両

JR九州では,在来線車両保有数約1,500両のうち経年40年を超える車両が多数在籍しており,気動車についても老朽化が進んでいる。老朽化した車両の置き換えを目的として,蓄電池を搭載したディーゼルハイブリッド車を採用し,「やさしくて力持ち」の頭文字を抜粋したYC1系と命名した。

YC1系はJR九州初のディーゼルハイブリッド車で,力行時はディーゼル機関・主発電機および蓄電池からの電力を用いて主電動機を駆動し,ブレーキ時には回生電力を蓄電池に蓄えるほか,エンジン始動時や駅停車中および駅発車時の機関アイドリングストップ時のエネルギー供給など,蓄電池のアシストで効率的な走行性能を実現するとともに,二酸化炭素排出量を減らすなど環境負荷の低減を図っている。日立は,ディーゼルハイブリッド車の核となる主回路制御システムと車両情報制御装置を受注し,YC1系は2020年3月に営業投入された。

[7]JR九州 YC1系ハイブリッド車両の外観(左),蓄電池(右上),主変換装置(右下) [7]JR九州 YC1系ハイブリッド車両の外観(左),蓄電池(右上),主変換装置(右下)

8. データを活用した保守事業

予防保全故障診断は,日立のLumadaソリューションの基本アプリケーションである。OS&M(Operation Service and Maintenance:運用・サービス・保守)部門では,鉄道車両部門および信号保安部門と連携し,メンテナンスに関する明確なデジタルアプローチを構築してきた。日立レール社のすべての事業分野で行われているこうした部門間の連携は,日常業務を最適化するだけでなく,今後,製品を設計・製造する際の情報源となり,品質の向上とコストの改善につながる。つまり,このプロセスを利用すれば,顧客との連携で利用状況データを最適化し,障害の原因究明が可能になる。これにより,繰り返し起こる故障の再発を防止して信頼性が向上することで,ライフサイクルコストが軽減される。

このようなプロセスを導入するには,OS&M部門が持つデータサイエンスのシステムドメインの強みと,ITおよびその知見を融合することが必要であった。今では,OS&M部門の各チームのエンジニアとスタッフが同じ設計チームに常駐するようになり,メンテナンス性や予測可能性の観点からプロジェクトの改善要求を挙げられるようになった。このような経験で得た教訓を継続的に生かせるプロセスは,「メンテナンスを考慮した設計」を強力に後押しする。

ビジネスニーズの特定 システムの分析

データサイエンスの適用 メンテナンス・システム・信頼性・収益の改善

こうしたアプローチの好例として,2019年に始まったTiresiaプロジェクト「インテリジェント資産管理システム(IAMS:Intelligent Asset Management System)」がある。Tiresiaはイタリアで,より広範な動的メンテナンス管理プログラムの一環として正式に顧客に導入された。IAMSは,大規模なデータを管理するために設計・開発された,日立レール社のデジタルプラットフォームである。

OS&M部門では,このテクノロジーとプロセスを用いてETR500,ETR1000,ETR700列車の車載信号システムから送られるデータを活用し,イタリアの高速鉄道設備の予防保全を行っている。データ処理エンジンにより,1日当たり100車両以上,800路線以上からデータを分析し,各データ集合に対して70を超えるルールに基づいて計算を行う。Tiresiaは,製造およびメンテナンス分野全体で最新のIAMSソリューションの一つであり,日立レール社のオペレータや保守技術者に一元的なユーザーインタフェースを提供し,リモートでのモニタリングと制御を実現している。OS&M部門では顧客と緊密に連携して,IAMSのアプリケーションの拡充と,イタリアおよびその他の地域のさらに多くの旅客列車(約2,000のシステム)へのデジタルメンテナンスの普及に取り組んでいる。

[8]能力曲線とOS&M事業の変化および発展 [8]能力曲線とOS&M事業の変化および発展

Adobe Readerのダウンロード
PDF形式のファイルをご覧になるには、Adobe Systems Incorporated (アドビシステムズ社)のAdobe® Reader®が必要です。