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1. 欧州初の日立陽子線がん治療システムがスペインのナバラ大学病院で稼働開始

[1]ナバラ大学病院 陽子線がん治療システム治療室 [1]ナバラ大学病院 陽子線がん治療システム治療室

スペイン王国マドリード州にあるナバラ大学病院(Clinica Universidad de Navarra)に陽子線がん治療システムが納入され,本システムによる治療が2020年4月17日から開始された。ナバラ大学病院は,日立として陽子線治療システムを欧州に初めて納入した病院となる。本病院はスペインのナバラ州およびマドリード州の2都市に設立された教育研究と臨床を一体化した民間総合病院であり,「2020年世界の優れた病院トップ501」に入り,世界トップクラスの医療機関として高く評価されている。

導入されたシステムは,治療室1室を有し,がんの形状に合わせて陽子線を照射できるスポットスキャニング技術,コーンビームCT(Computed Tomography)を搭載した360度回転ガントリ,および動体追跡システム2という最先端の技術を備えている。また,あらかじめ建設しておいた建屋部に,診療開始後にシステムを停止させることなく,さらに治療室を1室追加することが可能な拡張型システムとなっている。

※1)
World's Best Hospital: U.S. Newsweek誌が毎年公表している世界で最も優れた病院のランキング。
※2)
呼吸などで位置が変動する腫瘍に対してリアルタイムに位置を捉え,正確に陽子線を照射する技術。日本学術振興会の最先端研究開発支援プログラム(FIRST)により助成を受けて,北海道大学と日立製作所が共同開発したもの。

2. 筑波大学 大型伝導冷却方式超伝導磁石の納入

[2]大型伝導冷却方式超伝導磁石の完成姿(2台) [2]大型伝導冷却方式超伝導磁石の完成姿(2台)

NbTi(ニオブチタン)超伝導線材を使用した大型伝導冷却方式超伝導磁石を2台製作し,筑波大学プラズマ研究センターに納入した。この研究センターでは,核融合原型炉の先進的なプラズマ研究を進めており,本磁石はその基幹機器である。

この磁石は,液体ヘリウムなどの冷媒を必要としない極低温冷凍機1台による伝導冷却方式であり,定格運転時に磁石中心で1.5 Tの磁場を発生させることができる。また,小型冷凍機による伝導冷却磁石としては最大級(ボア径φ900 mm)であるため,磁石全体の均一冷却や超伝導喪失時の保護が課題であったが,熱伝導材の選定や励磁回路を工夫し,高い冷却特性と磁石の安定性を達成した。今後は,2020年度中に予定されている据付作業を経て,運用が開始される予定である。

今回の大型伝導冷却方式超伝導磁石で培った技術は,本件のような研究用途向けの超伝導磁石のみならず,医療用超伝導機器などにも適用できる技術であり,今後の技術発展が期待される。

3. 再生医療の産業化を加速する細胞製造ソリューション

[3]ベンチャー企業とのオープンイノベーション [3]ベンチャー企業とのオープンイノベーション

再生医療は新しい治療法として期待されており,2019年以降国内でCAR(Chimeric Antigen Receptor)-Tを含んだ四つの再生医療等製品が承認されるなど,再生・細胞治療の実用化が加速している。一方,再生医療の産業化には品質の高い細胞の安定供給などいまだ課題が残る。

大手製薬企業に販売実績のあるiPS(Induced Pluripotent Stem)細胞大量自動培養装置iACE2は,再生医療に用いる細胞の大量製造を可能にした。さらに,iACE2開発により得られた知見にベンチャー企業の最先端技術を組み合わせ,再生医療の課題解決を進めている。

iPS細胞の心筋分化培養技術に強みを持つ株式会社マイオリッジとの共同研究により,iACE2を用いて培養法に限定されない大量培養技術を開発した。また,AI(Artificial Intelligence)を活用した細胞分析・分離技術を有するシンクサイト株式会社と細胞分析・分離システムの実用化に向けて共同開発を開始した。シンクサイトの高速,高精度かつ安全な細胞分析・分離技術に,日立の再現性よく安定して稼働する装置の開発技術を組み合わせることで,細胞の安定的かつ低コストでの大量供給をめざす。

4. 臨床検査データの精度・品質確保に貢献する反応過程近似解析ツールMiRuDa

[4]反応過程近似解析ツールMiRuDaのシステム構成 [4]反応過程近似解析ツールMiRuDaのシステム構成

近年,臨床検査室の品質と能力に関するISO(International Organization for Standardization)15189の要求や医療法の改正に伴い,検体検査の精度・品質の確保が求められている。従来の精度管理手法では,一定間隔で濃度既知の試料を測定することで検査データの信頼性を確保していたものの,個々の患者検体の検査精度・品質を直接担保することは難しかった。

検体検査に使用する自動分析装置では,検体中の特定成分の濃度を,検体と試薬の10分間の化学反応の過程における吸光度の時系列変化(反応過程データ)から算出する。反応過程近似解析ツールMiRuDaは,自動分析装置LABOSPECT 008α/006で測定されるすべての反応過程データを,反応の完了直後にリアルタイムで曲線/直線近似し,近似式の各種係数の分布を詳細に解析する。これにより,通常とは異なる反応パターンを示すデータを乖離データとして判別することを可能とした。一方で通常の反応過程パターンを示すデータについては,その検査データの精度・品質を担保するツールとしての活用が期待できる。

MiRuDaは,検査室における検査データ承認作業の効率化,および個々の患者検体の測定データを直接活用した次世代の精度管理手法の実現に貢献する。

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