日立評論

フィジカルセキュリティのDX化が実現する安心・安全の高度化と持続可能な社会

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日立評論

ハイライト

映像分析技術の進展に伴い,フィジカルセキュリティソリューションは,インシデント検知やアラート発報だけでなく,インシデントの発生前後の状況を把握するなど,統合的な管理を可能にした。さらに,セキュリティ周辺分野を包含する形でソリューションは進化しつつある。日立は,映像データ検索やインシデントに対するフォレンジックといったインシデント統合管理を実現し,セキュリティで培われた検知分析技術を応用することで,街区や各種施設における安全確保や要支援者へのサポートといった,セキュリティという枠を越えた価値を創出している。

本稿では,映像技術をコアとする事例を中心に,日立が取り組むフィジカルセキュリティソリューションの事例について述べる。

目次

執筆者紹介

野末 大樹Nozue Daiki

野末 大樹

  • 日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット サービスプラットフォーム事業本部 セキュリティイノベーション本部 フィジカルセキュリティソリューション部 所属
  • 現在,映像系フィジカルセキュリティの企画,開発に従事
  • 日本物理学会会員

星埜 雅子Hoshino Masako

星埜 雅子

  • 日立製作所 社会ビジネスユニット 公共システム事業部 パブリックセーフティ推進本部 パブリックセーフティ第一部 所属
  • 現在,パブリックセーフティ向けソリューション事業推進に従事

大野 航Ono Wataru

大野 航

  • 日立製作所 ビルシステムビジネスユニット 日本事業統括本部 SIB推進本部 プラットフォーム開発部 所属
  • 現在,ビルIoTソリューションビジネスの事業化に従事

佐川 達人Sagawa Tatsuhito

佐川 達人

  • 日立製作所 産業・流通ビジネスユニット ソリューション&サービス事業部 産業製造ソリューション本部 産業画像ソリューション部 所属
  • 現在,一般産業各業界向けの画像ソリューションビジネスに従事

1. はじめに

映像分析技術に基づくフィジカルセキュリティ技術の進展は,単なるセキュリティインシデント監視から不審人物の追跡などフォレンジックを含めた統合的なセキュリティ管理を可能にした。また,セキュリティだけでなく,危険行動や危険エリアへの侵入検知といった安全監視や,要支援者サポートなどの安心・安全をトータルで提供する方向へと発展してきている。

日立は,映像分析技術の開発を通じて,従来のフィジカルセキュリティ分野はもちろんのこと,パブリックスペースやオフィスにおける安心・安全の実現のためのソリューションなど,新しい価値を提案している。最近ではアフターコロナを見据えたオフィスの多拠点化やダウンサイジングに伴って働き方も見直しを迫られているが,これを受けて顧客業務を支援する方向でも検討を行っている。

本稿では,こういった技術や社会背景を踏まえて,映像技術をコアとするフィジカルセキュリティソリューションについて,公共,ビル,産業分野における日立の取り組み事例を紹介する。

2. 公共分野における事例

公共エリアの安心・安全を守るため,現在,街中には大量のカメラやセンサーが設置される傾向にある。エリアの様子が分かる映像データを統合管理し,例えば,迷子やひとり歩き高齢者の捜索が必要となった際に映像解析技術を活用することで,警備業務における人物捜索・確保の効率化などが期待されている。

カメラやセンサーなどの各エッジデバイスから得られるデータを統合管理するソリューションであるHVS(Hitachi Visualization Suite)は,公共エリアの様子を監視するのに活用したり,インシデント発生の傾向分析結果をダッシュボード表示することで警備強化対象エリアを抽出したりすることができる。

また,AI(Artificial Intelligence)画像解析技術を用いた「高速人物発見・追跡ソリューション」は,膨大な映像データから特定条件に該当する外見の特徴を持つ人物を高速で絞り込み,時系列に沿って表示することで,目視確認するべき対象の映像を絞り込める。これにより,目撃情報を基に迷子やひとり歩き高齢者を発見するまでの時間と労力を削減し,警察や警備員の業務効率化に貢献できる。

さらに,これら二つのソリューションを連携することで該当者を発見した場所を地図表示できるため,対象者が最後に目撃された場所が把握しやすい(図1参照)。

将来的には,対象者発見後に警備員を現場に向かわせるワークフローも機能化するなどの拡張を見込んでいる。人口減少による労働力不足の中にあっても安心・安全を守るサービスが安定的に供給できるよう,これらのソリューションを役立てたいと考えている。

図1|高速人物発見・追跡ソリューションとHitachi Visualization Suite 図1|高速人物発見・追跡ソリューションとHitachi Visualization Suite カメラ映像を基に不審人物の追跡や,インシデントの統合管理を可能にする。

3. ビル分野における事例

オフィスビルにおいては,ニューノーマルで求められるビルの高付加価値化に向けて,より高度なビル管理や就業者向けサービス提供を実現するプラットフォームの開発が進んでおり,映像分析技術,セキュリティ技術との連携が期待されている。

3.1 インシデント情報の統合監視

日立のビルIoT(Internet of Things)ソリューションである「BuilMirai」は,オフィスビル内に設置された防犯カメラに映る不審者や放置荷物などの映像からAI画像解析技術を活用して得られるインシデント情報,さらにはビル設備のアラート情報などを,複数のビルにまたがって統合的に監視することができ,効率的で品質の高いビル運営を支える(図2参照)。

また,ニューノーマルにおける就業者の安心・安全確保のため,ソーシャルディスタンス検知やマスク検知などの新たな技術により今後のオフィス空間づくりを支える。

図2|アラートとカメラ映像の表示 図2|アラートとカメラ映像の表示 カメラ映像と映像から検知したインシデント情報や数をBuilMirai上で統合的に監視できる。

3.2 就業者向けスマートフォンアプリケーションと入退管理システムの連携

オフィスビルの入退館においては,時間や場所にとらわれない就業者の柔軟な働き方に合わせ,従来の発行元のビルのみで利用可能な入退館用カードキーに代わる入退館の実現が求められている。

オフィス生活に必要となる施設予約管理やオフィス情報の入手などをスマートフォンアプリケーションによって一元的に行う「BuilPass」とオフィスビルの入退管理システムを連携させ,入退館用カードキーの代わりにスマートフォンを用いて複数のビルをまたいだ入退館を実現することで,オフィスビル就業者の新たな働き方を支援する。

4. 産業分野における事例

製造業や物流業において製品の外観を目視で検査するケースがあるが,目視検査には,作業員ごとの検査精度のばらつきや,長時間の作業疲れによる判断力低下などの課題が存在する。また,企業の成長のため出荷量を拡大させる際は,増員の問題も顕在化してくる。これらの目視検査をAI画像解析で一部代替することにより,検査精度の向上,品質の均一化,作業者工数の軽減に寄与できる。

このようなAI画像解析技術をフィジカルセキュリティに応用することで,高い検査精度で安心・安全を担保しつつ,現状よりも少ない作業工数を実現する取り組みを進めている(図3参照)。

図3|産業分野における活用技術のフィジカルセキュリティへの応用例 図3|産業分野における活用技術のフィジカルセキュリティへの応用例 製品外観検査に用いられるAI技術を,X線による物体判定や重要施設などへの入退場時の所持品検査に活用できる。

一つ目の具体例として,特定エリアへの入場の際に実施されるX線検査装置を用いた危険物の持ち込み検査で,目視による危険物判別をAI画像解析により支援するソリューションがある。作業員の目視判別に加え,AI画像解析による危険物検知を組み合わせることで,限られた時間内での危険物検知が期待できる。

二つ目の具体例として,特定エリアへの入場の際に持ち込んだ物品を,退場の際に確実に持ち帰っているか照合する検査工程に事前学習が不要な画像解析を適用し,初見の物品に対しても物品増減の照合を可能にするとともに,AI画像解析で各物品の属性を判別するソリューションがある。撮影画像,検査物品個数,物品属性データなどを蓄積することで,エビデンスの検索性向上も実現し,安心・安全の担保と作業効率改善の両立が期待できる。

5. おわりに

これから迎えるアフターコロナにおいては,プラントや施設といった現場で人財が不足し,負担が増えることが予想される。したがって今後は顧客の業務そのものをサポートするなど,さらなる高度化が求められる。その実現に向けては,例えば顧客の業務シナリオをプラットフォーム上に組み込み,さらにはIoTデバイスからのデータやオープンデータなど映像以外のデータを取り込んで複合的分析を行う兆候解析などが有効と考える。検知結果や兆候解析結果に基づく現場へのフィードバック制御を行うことで,顧客業務支援が実現できる(図4参照)。そのためには,今後,分野横断で使える基盤の整備(水平統合)と,フロントからソリューションオーナーまで一体となった顧客価値創出(垂直統合)が重要である。

日立は今後,映像・IoTサービス向け基盤を構築し,これを用いた顧客との協創活動を通じてDX化の進展に貢献していく。

図4|映像・IoTサービス向け基盤 図4|映像・IoTサービス向け基盤 現場の人財不足,業務負担増に対して現場からの情報を拾い上げ,分析してフィードバックする基盤である。

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