1. 車内案内表示器における鉄道の自動運転に向けた展望
日立は2006年から自律分散型の車内案内表示器(以下,「本装置」と記す。)の開発を開始し,高い稼働率,ユーザーエクスペリエンスを考慮した案内表示,3面表示器による表現力の高い広告表示など,鉄道事業者のDX(デジタルトランスフォーメーション)実現に寄与してきた。
現在,人口減少社会を迎え,鉄道事業者においても運転士などの係員の確保・養成が困難になってきており,先頭車両に係員の乗務しない自動運転の導入が求められている。そうした中で,車両故障や列車火災の避難誘導,ダイヤ乱れ時の案内表示など,これまで係員が運転台の操作によって行ってきた指令員や乗客との連携を設備で担うことが課題である。
日立は,前述の課題解決の一つとして,本装置が持つICT(Information and Communication Technology)技術の活用をめざしている。車両故障や列車火災,体調不良の乗客確認など,車両内の異常を検知して指令員や駅務員へ通知し,指令員から車両内の避難誘導やダイヤ変更の案内表示など,自動運転における安全・サービス品質維持および指令員・乗務員の負荷軽減をめざしたシステムの開発を推進する。