日立評論

グリーンイノベーションの取り組みを支援する環境規制物質の簡易・迅速検査ソリューション

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ハイライト

テクノロジーの発展とともに環境問題は深刻化が進み,電気・電子機器類においても,部品に使用され,大量廃棄される物質の有害性への対応が求められている。代表的な取り組みの一つとして,欧州RoHS指令による特定有害物質の使用制限が始まった。特定有害物質の分析は,従来,分析業務を担っていなかった製造や品質保証の現場に大きな影響を与えた。製造現場では,部品に含まれる有害物質の分析プロセスが導入され,普段の業務と大きく異なる分析業務では,作業ミスや非効率性が課題となった。

日立は,分析対象が特定有害物質であることに着目し,従来の分析装置から専用検査装置として簡便性,作業性を追求した製品開発に取り組んでいる。

本稿では,グリーンイノベーションの取り組みを支援する環境規制物質の簡易・迅速検査ソリューションを紹介する。

目次

執筆者紹介

坂井 範昭Sakai Noriaki

坂井 範昭

  • 株式会社日立ハイテクサイエンス 分析開発設計本部 FS第一設計部 所属
  • 現在,蛍光X線分析装置の設計・開発業務に従事

辻川 葉奈Tsujikawa Hana

辻川 葉奈

  • 株式会社日立ハイテクサイエンス サービスソリューション本部 アプリケーション開発センタ 所属
  • 現在,蛍光X線分析装置のアプリケーション開発に従事

竹口 裕子Takeguchi Yuko

竹口 裕子

  • 株式会社日立ハイテクサイエンス サービスソリューション本部 アプリケーション開発センタ 所属
  • 現在,分光光度計,吸光光度計,フタル酸エステル類検査装置のアプリケーション開発に従事

篠原 圭一郎Shinohara Keiichiro

篠原 圭一郎

  • 株式会社日立ハイテクサイエンス 事業本部 事業戦略部 所属
  • 現在,蛍光X線分析装置の事業戦略および事業開発に従事

1. はじめに

表1|RoHS指令における各規制物質とその規制濃度表1|RoHS指令における各規制物質とその規制濃度欧州RoHS指令では,2006年から規制対象となった6物質(Cd,Pb,Hg,Cr6+,PBB,PBDE)に,2019年から4種類のフタル酸エステル類(DEHP,BBP,DBP,DIBP)が加えられた。

近年,テクノロジーの発展に伴って,電気・電子機器類が大量に生産される一方,その廃棄が大きな課題の一つとなっている。持続的な経済発展には,地球環境に配慮した製品づくりが極めて重要となる。欧州では2003年2月にRoHS(Restriction of the Use of Certain Hazardous Substances in Electrical Equipment)指令(Directive 2002/95/EC)が公布され,2006年7月より特定有害物質の使用制限に関する規制が始まった。また,2011年7月に大幅改正された改正版(Directive 2011/65/EU)が公布され,実質的施行が2013年1月より始まった。RoHS指令の改正(RoHS2)に伴い,2019年7月から4種類のフタル酸エステル類が規制対象として追加された。

各規制物質とその規制濃度を表1に示す。米国においても,有害な化学物質が人の健康または環境に影響を及ぼすリスクを回避することを目的として以前より有害物質規制法(TSCA:Toxic Substances Control Act)が制定されており,2021年1月の改正に伴い,新たに難分解性,生体蓄積性および毒性を有する化学物質[PBT(Persistent, Bioaccumulative and Toxic)物質]5物質の追加が発表された。

このように世界的に規制物質の追加が検討されている中で,製品の開発・製造・販売においては,環境に配慮した製品づくりが求められる。また,このような規制の動きに対応するための備えは,ビジネスの機会損失を回避するうえで重要である。

2. RoHS指令対象物質の検査ソリューション

株式会社日立ハイテクサイエンスは,種々の分析装置の開発・製造・販売を長年にわたり行っている。近年の規制物質の動向に対しては,分析装置開発で培った技術を応用した,特定有害物質の検査・分析装置を提供することで貢献している。RoHS1では精密分析であるICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析装置(ICP-OES:ICP Optical Emission Spectrometry)や六価クロムを特定するためのUV-Vis/NIR(Ultra Violet-Visible/Near Infrared Spectrophotometer:紫外可視近赤外分光光度計)などに加え,スクリーニング装置としてエネルギー分散型蛍光X線分析装置(ED-XRF:Energy Dispersive X-ray Fluorescence)を開発している。ED-XRFは測定準備に前処理が不要などの特長を有していることから広く使われるようになったが,分析業務未経験者も使用できるように使い勝手を追求したスクリーニング検査機を提案してきた。このコンセプトはRoHS2で追加されたフタル酸エステル類の検査装置(TD-MS:Thermal Desorption Mass Spectrometry)にも引き継がれている。

ここでは,広がりを見せる特定有害物質規制への備えとして,日立の迅速検査・分析技術を紹介する(図1参照)。

図1|RoHS指令対象物質分析用装置の外観図1|RoHS指令対象物質分析用装置の外観蛍光X線分析装置EA1400(左),分光光度計U-2900(中央),フタル酸エステル類スクリーニング検査装置HM1000A(右)の外観を示す。

2.1 RoHS1対象物質への対応

図2|試料と照射X線,試料観察カメラの概略図図2|試料と照射X線,試料観察カメラの概略図(a)X線斜方照射型,(b)X線垂直照射型それぞれの場合での測定箇所とX線照射位置について図示した。

図3|検出器の検出効率−エネルギー特性と黄銅の蛍光X線スペクトル図3|検出器の検出効率−エネルギー特性と黄銅の蛍光X線スペクトル(a)は従来型検出器と新型検出器の検出効率の比較,(b)は黄銅の蛍光X線スペクトルを示す。

図4|IEC62321-7-1「金属試料の無色および着色防食皮膜中の六価クロムの確認試験」に基づく分析手法(従来法)と新システムの分析手順図4|IEC62321-7-1「金属試料の無色および着色防食皮膜中の六価クロムの確認試験」に基づく分析手法(従来法)と新システムの分析手順試験片を熱水抽出し,発色操作した溶液の540 nmの吸光度から六価クロム濃度を算出する。

国際規格IEC62321-3-11)では,蛍光X線分光法による鉛,水銀,カドミウム,総クロム,総臭素のスクリーニング分析法が標準化されている。蛍光X線分析は,試料にX線を照射し,含有される元素から発生する特性X線を検出することで,その種類(定性)と量(定量)に関する情報を得る手法である。前処理の必要がなく,非破壊・非接触で分析を行えるため,簡便な検査手法として,製品の出荷検査や故障解析,材料の受け入れ検査などで幅広く用いられてきた2)。特に,試料に対してX線を下から照射する下方照射型の装置は,照射X線と試料の高さ調整を行う必要がなく,試料を設置するだけで測定を開始できるというメリットがあるため,環境規制物質の検査装置として一般的である。

一方,コネクタのように複雑な形状を持つ試料に対してはいくつかの懸念点がある。まず1点目は試料観察カメラで狙った位置と実際のX線照射位置とのずれである。

下方照射型の蛍光X線分析装置でコネクタを測定する際の,試料と照射X線,試料観察カメラの位置関係を図2に示す。X線を照射する角度により,試料に対して斜めに照射する斜方照射型[同図(a)参照]と,垂直に照射する垂直照射型[同図(b)参照]に大別される。

斜方照射型では,試料台の位置(a点)で照射X線とカメラの光軸が交わるように設計されている。そのため,湾曲したコネクタのように試料台から離れた位置に測定箇所があると,カメラの光軸は測定箇所(b点)に当たっているが,照射X線の光軸は測定箇所から外れた位置(c点)に当たるため,カメラで確認した位置と異なる箇所を検査することになる。このような場合は,湾曲部を平らに引き延ばす,あるいは余分な箇所を切断するなどして対応する必要があるため,前処理が必要なく非破壊で測定できるという蛍光X線分析装置のメリットを生かすことができない。

そこで,最新の蛍光X線分析装置EA1400では,図2(b)に示すような垂直照射型を採用した。さらに照射X線と試料観察カメラの光軸が同軸となる「試料同軸観察機構」とすることで,試料台から離れた位置(b’点)であっても,照射X線とカメラの光軸の狙った位置をずれなく測定することが可能である。

2点目の懸念点は検出器と測定箇所の距離による検出蛍光X線強度の低下である。下方照射型の装置では検出器も試料台より下にあるため,測定箇所が試料台から離れている場合,検出器と試料の距離も離れ,検出される蛍光X線強度が低下してしまう。この課題に対して,EA1400では高感度,高分解能な新型半導体検出器(シリコンドリフト検出器)を搭載することで,従来機より改善を図っている。半導体検出器はエネルギー分解能が高いという特長を有しているが,新型検出器は素子の厚みを倍にすることで検出分解能だけでなく検出感度の向上を実現した。これにより,測定箇所が試料台から離れていても,これまでより大きな蛍光X線強度を得られるようになった。

図3(a)は新型検出器の各エネルギーにおける検出効率を従来の検出器と比較したものである。広いエネルギー領域で検出効率が向上しており,特に高エネルギー帯では2倍近く向上していることが分かる。このように高エネルギー帯の感度が大幅に向上したことにより,カドミウムだけでなく,今後新たに規制対象となる可能性があるスズやアンチモンの測定にも効果を発揮することが期待される。同図(b)は,コネクタなどに使用されることが多い黄銅中のカドミウムを測定した蛍光X線スペクトルである。新型検出器を搭載したEA1400では従来機種の2倍以上の感度向上が確認できる。

以上のような改善を加えることで,複雑な形状を持つ試料であっても,蛍光X線分析装置による環境規制物質のスクリーニング分析を簡便に行うことが可能となっている。

蛍光X線分析のスクリーニングでクロムが検出された場合は,蛍光X線分析では価数を判別できないため,規制されている六価クロムであるかどうかを分光光度計により特定する必要がある。

IEC62321-7-1「金属試料の無色および着色防食皮膜中の六価クロムの確認試験」に基づく分析手法(従来法)と新システム(本手法)の手順を図4に示す。従来法では10検体当たりの全工程で所要時間が50分程度,作業拘束時間は30分程度となる。

前処理は煩雑で,発色試薬の調製も必要である。また,ホットプレートで加熱した沸騰水に試料を入れる場合,直接加熱部に触れる部分もあり,沸騰水中で抽出の状態に差が生じる。また試料の表面積が規定の50 cm2を満たす試料量では,一つの抽出容器に複数個の試料を入れるため,沸騰水に入れた時間差も誤差につながる。専門スキルが必要とされる分析になるが,規制開始から十数年以上が経過し,運用体制の見直しや分析技術者の世代交代・人手不足などにより,簡便かつ迅速で誤差の少ない分析手法が必要になってきた。これらの背景から今回紹介する新システムを開発するに至った。

本手法の手順では全工程で25分程度,作業拘束時間は10分程度と50%以上の省力化が期待される。

本手法では試料を専用メッシュに入れて沸騰水に浸すことにより,試料投入時間に差が生じにくく,また,直接試料が加熱部に触れないため均一に沸騰水温度での抽出が可能であり,抽出誤差が生じにくい3)。また,容器の設置場所による温度差を確認するため,ホットプレートと加熱ユニットで異なる場所に設置した容器中の沸騰水蒸発量を評価した。加熱前90 ℃の重量を計測した後にビーカーに時計皿をかぶせて沸騰させ,沸騰後に時計皿を外して10分加熱,その後にビーカーと沸騰水の全重量を計測し,減少量を算出した。ホットプレートの場合,減少量は場所によって大きく異なり,場所による相対的なばらつきを表す変動係数(CV:Coefficient of Variation)で53%の違いが見られた。

また,水の減少量は外側に設置したビーカーと中央に設置したビーカーで特に差異が大きかった。専用加熱ユニットでは,最大と最小の差も小さく,CVは4%程度であった(表2参照)。設置場所による蒸発量の違いはほとんどなく,加熱ムラが少ないことが分かった。本システムを使用することで,簡便に抽出の精度を確保することが可能である。専用加熱ユニットは個々の加熱抽出容器がガードされており,加熱している容器を転倒させる心配もなく,安全性にも寄与している。

分光光度計では専用ホルダーを使用することで,本手法においても良好な検量関係を確認した。専用容器は長光路となるため,感度もアップしている。円筒状の容器のため,0,90,180,270度の4方向で吸光度をそれぞれ測定して誤差を調査した結果,容器内の誤差は1〜3%程度であり,容器間の誤差についても同じく1〜3%程度であった。

本手法では(1)安定した抽出が可能,(2)溶液の移し替えが不要,(3)作業安全性が高い,(4)濃度算出が自動であるため,分析技術者の高い専門性がなくとも安定的に運用可能である。

表2|ホットプレートと専用加熱ユニットでの沸騰水蒸発量変化表2|ホットプレートと専用加熱ユニットでの沸騰水蒸発量変化各加熱方法において5か所に同じ容器を設置し,10分間で減少した沸騰水の重量を計測した。

2.2 RoHS2対象物質への対応

図5|装置外観および測定原理の概念図とフタル酸エステル類の質量スペクトル例図5|装置外観および測定原理の概念図とフタル酸エステル類の質量スペクトル例(a)に装置外観,(b)にサンプルパンとオートサンプラー,(c)に測定原理の概念図,(d)にフタル酸エステル類の質量スペクトル例を示す。

RoHS指令の改正により,規制物質として追加されたフタル酸エステル類(表1参照)は樹脂やゴムなどに柔軟性を持たせるために添加される可塑剤として使用される。特に電線被覆材,電気絶縁テープ,包装用フィルムなどの塩化ビニル製品に多く使用されており,各企業では,製品・部品などに含まれるフタル酸エステル類の含有状況の把握・管理への対応が必要となった。フタル酸エステル類は物理的な接触により移行する性質も知られており,従来以上に厳密な管理が求められる。

フタル酸エステル類を測定する場合,公定法としては溶媒抽出ガスクロマトグラフ質量分析法が用いられるが,有機溶媒による成分抽出が必要であり処理に時間がかかる,溶媒を多量に使用する複雑な装置のため専門知識が必要といった課題があった。熱分解ガスクロマトグラフ質量分析法では,試料の前処理は簡略化されるものの,1試料当たり30分程度の分析時間がかかることや,結果の解析に専門知識が必要という課題があり,生産現場での簡便な検査方法として用いるには困難がある。

フタル酸エステル類を迅速かつ簡便に検査できる装置として,加熱脱離質量分析計HM1000Aを開発した4)

図5(a)に装置外観を示す。装置は,試料からフタル酸エステル類を気化させる試料加熱部と,気化したフタル酸エステル類をイオン化するイオン化部,および,イオン化された成分を分析する質量分析部で構成される。また,オートサンプラーにより最大50個の試料を連続で自動測定することが可能である。

試料は適量(0.2 mg程度)に切り出し専用のサンプルパンにセットする[同図(b)参照]。同図(c)に測定原理の概念図を示す。測定を開始するとオートサンプラーがサンプルパンを一つずつ取り上げて試料加熱部に搬送し,加熱部内で加熱された試料からフタル酸エステル類が気化する。気化したフタル酸エステル類はイオン化部にてイオン化し,質量分析部にて質量分析する。イオン化方法は放電針に電圧を印加し発生するコロナ放電を利用したイオン化法[APCI(Atmospheric Pressure Chemical Ionization)法:大気圧化学イオン化法]であり,分子にプロトンを付加させてイオン化する。APCI法には分子内結合の開裂を指すフラグメント化を起こしにくいという特徴があるため,分子構造を壊すことなくイオン化でき,直接質量分析が可能である。

フタル酸エステル類であるフタル酸ジブチル(DBP),フタル酸ブチルベンジル(BBP),フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)1,000 mg/kgのHM1000Aによる質量スペクトルの一例を同図(d)に示す。それぞれプロトン付加したm/z279イオン(DBP),m/z313イオン(BBP),m/z391イオン(DEHP)が検出できていることが確認できる。

試料から気化したガスを成分分離せず質量分析計に直接導入することで,1試料当たり10分の迅速な検査を実現した。オートサンプラーにより標準物質を含む50個の試料を約8時間で連続自動測定できる。ユーザーはあらかじめ設定された測定レシピを実行するだけで連続測定を実施し,各試料のスクリーニング判定結果を得ることができるため,専門知識がなくてもフタル酸エステル類の有無を判定できる。

スクリーニング検査ではスループットの短縮が求められるが,短時間で測定できたとしても装置の検出能力が不足していると,多くの試料に対して合否が「判定不能」となる。この場合,装置使用者は「判定不能」となった試料を,改めて精密分析にかけ直して判定結果を確定しなければならない。すなわち,スクリーニング検査で判定できない試料の増加は,判定結果を得るまでの時間とコストの増加につながり,スクリーニング検査の意義を成さない。本装置ではRoHS指令におけるフタル酸エステル類の規制値1,000 mg/kgに対する十分な検出能力となる検出下限100 mg/kg以下を実現した。フタル酸エステル類の含有濃度を変えた試料のイオン強度プロファイルを図6に示す。測定試料は,ポリ塩化ビニル(PVC)溶液中にフタル酸エステル混合標準溶液を0 mg/kg,100 mg/kg,500 mg/kg滴下した後,室温で溶媒を飛ばし乾燥させたものである。グラフは横軸が測定開始からの時間,縦軸が各フタル酸エステル類のイオン強度を示す。各フタル酸エステル類いずれも100 mg/kg含有していれば,ピークとして明確に識別できることが分かる。

本装置はRoHS指令の規制対象である特定臭素系難燃剤のPBDE(Polybrominated Diphenyl Ether)の中でも特に混入リスクの高いDeca-BDE(Decabromodiphenyl Ether)の定性分析も可能である。蛍光X線分析装置でのスクリーニングで全臭素が検出された試料を本装置で測定することで,試料にDeca-BDEが含まれるかを識別する簡便な二次スクリーニング検査法として活用できる。

図6|フタル酸エステル類の各濃度におけるイオン強度プロファイル図6|フタル酸エステル類の各濃度におけるイオン強度プロファイルポリ塩化ビニル溶液中にフタル酸エステル混合標準溶液を0 mg/kg, 100 mg/kg, 500 mg/kg滴下し,乾燥させた試料の測定結果を示す。

2.3 ExTOPE

これまで説明したように環境規制物質の管理においては,検査対象成分に応じて分析装置を使い分ける必要がある。グローバルに複数の生産拠点を持つ企業では検査結果がそれぞれの拠点のそれぞれの分析装置に保存されており,検査結果にすぐにアクセスできず,運用・管理にも相応のコストがかかっている。多拠点の複数の装置から得られた検査結果を自動で吸い上げて一元管理する仕組みとして,日立ハイテクサイエンスではクラウドを利用したシステム「ExTOPE」により,管理の効率化支援にも取り組んでいる。

3. おわりに

2006年から施行された欧州RoHS指令以降,その特定有害物質の検査は15年以上が経過した今も続いている5)。この間にも特定有害物質の使用制限は広がり,検査現場での効率化はより一層追求されている。有害物質の使用制限は,従来の分析装置のあり方を変え,測定者のスキルや経験が測定結果に影響しないよう,前処理や測定の工程を平準化させる専用装置の開発につながった。そして,さまざまな製造拠点で実施中の有害物質に対する安定した検査業務を管理するため,ExTOPEの活用を進めて多拠点の装置状態や測定結果の一元管理を実現し,時間と場所に制限されない管理の効率化を進めている。各種製品の製品化にはコンプライアンス順守のために,使用部材への特定有害物質の含有調査とそのスピードが極めて重要となる。

日立ハイテクサイエンスは今後も引き続き,電気・電子機器類の製品に使用する部材の特定有害物質に対する非含有情報を,市場の望む形で迅速かつ簡便に提供できるソリューション構築を検討していく。

参考文献など

1)
IEC 62321-3-1 Ed. 1.0:2013(b)
2)
的場吉毅,外:電子部品の有害物質管理や食の安全,グリーンイノベーションを支えるX線技術,日立評論,95,9,610〜615(2013.9)
3)
佐々木直里,外:クロメート皮膜中の六価クロム測定法の再現性向上,東京都立産業技術研究センター研究報告,第7号(2012.9)
4)
北原武夫:フタル酸エステルのスクリーニングシステム構築,HITACHI SCIENTIFIC INSTRUMENT NEWS,Vol. 61,No. 1,pp. 5340〜5349(2018.3)
5)
日立グループ,RoHS指令対応の分析ガイドライン Ver. 4.0(2018.3)(PDF形式、2.0Mバイト)
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