ページの本文へ

Hitachi
お問い合わせお問い合わせ

エネルギー

グリーンエナジー&モビリティ

1. 省エネルギー・CO2削減に向けた発電設備の電気・熱バランスの最適化運用

非電気事業者であるA社およびそのグループ会社の四国地区におけるコージェネレーション発電設備(以下,「コージェネ設備」と記す。)の更新やEMS(Energy Management System)の導入など,CO2を大幅に削減する省エネルギーソリューションプロジェクトを遂行している。

本プロジェクトは,A社の四国地区にある工場の発電システムを,電力・熱の需要バランスを考慮した最適なガスエンジンコージェネ設備に更新するとともに,四国電力送配電株式会社が保有する送配電網を利用した自己託送※)と日立のEMSにより,コージェネレーション発電で発電した電力を,A社およびそのグループ会社の工場に最適な需給バランスで供給することで,さらなるCO2削減を図るものである。本システムは,2024年に稼働開始予定で,エネルギー利用効率の向上により,約3,000世帯の年間排出量に相当する年間約8,000 tのCO2排出量削減と,原油換算で年間3,500 kL分の省エネルギー化が見込まれるなど,脱炭素社会の実現に貢献する。

また,A社の四国地区における電力・熱の需要バランスの変化への対応や,CO2排出量削減に向けたエネルギー効率向上といったニーズに対応し,当該地域における各工場の電力・熱の需要量を踏まえて最適な構成として,5,500 kWのガスエンジン2台および廃熱ボイラー設備,温水回収設備からなる高効率のコージェネレーションシステムを納入する。さらに,各工場の稼働状況に合わせた最適な需給調整を実現するEMSも提供することで,A社のエネルギー利用効率向上を支援していく。

※)
送配電系統網を利用して,自家発電設備の電力を遠隔地の別拠点に供給する仕組み

[01]自己託送システムの概要[01]自己託送システムの概要

2. DX×GXのマイクログリッド型エネルギー供給サービス

顧客のカーボンニュートラル推進への貢献を目的として,再生可能エネルギー発電システムやガスコージェネレーションシステムなどのエネルギー供給設備に,Lumadaを活用したエネルギー&ファシリティマネジメントシステムを組み合わせたDX(デジタルトランスフォーメーション)×GX(グリーントランスフォーメーション)のマイクログリッド型エネルギー供給サービスを提供開始する。エネルギーやファイナンスの関連企業などとの異業種コンソーシアムを活用することで,顧客の目的に応じたエネルギー供給サービスを提案し,初期投資・設備保守・資産管理に関する負担も軽減する。

モデルケースとして,茨城県日立市の隣接する日立グループの四つの事業所に,2023年度後半に同サービスの導入を予定している。これらの四つの事業所で電力を利用するとともに,電力発生時の排熱を工場のクリーンルーム空調に活用することで,事業所ごとにエネルギー供給を受けるよりも効率的なエネルギー利用が可能となり,四つの事業所のCO2排出量が全体の約15%,年間約4,500 t※)削減される見込みである。

本サービスの導入は,2030年度までに自社の事業所・生産活動におけるカーボンニュートラルを実現するという目標の達成に向けた一歩と考える。

※)
日立製作所調べ(試算値)

[02]日立市の事業所に導入するマイクログリッド型エネルギー供給サービスのイメージ図[02]日立市の事業所に導入するマイクログリッド型エネルギー供給サービスのイメージ図

3. 台湾洋上ウィンドファーム5.2 MW風力発電システム

コンソーシアムパートナーであるベルギーのJan De Nul社と共同で,台灣電力股份有限公司から受注したTPC OFFSHORE WIND FARM - PHASE 1 DEMONSTRATION PROJECT (以下,「TPCプロジェクト」と記す。)の21基の5.2 MW風力発電システムHTW5.2-127の建設を完了し,2021年12月より全基の稼働を開始した。

TPCプロジェクトは日立製作所の風車部門としては初の海外プロジェクトかつ本格的な洋上風力案件であり,コロナ禍という厳しい状況も相まってさまざまな困難に直面した。こうした経験は,今後,国内でも導入が加速することが見込まれる洋上風力発電設備だけでなく,大型の陸上風力発電設備の建設や保守にも貢献するものと考えている。

TPCプロジェクトでは,5年間のO&M(Operation and Maintenance)も受注しており,現在も運転や保守,予防保全に関する技術的な知見を蓄積・データ化し続けている。ここで得られたデータをLumadaモデルに統合して活用することで,風力発電設備の安定稼働,国内の既設風車の長寿命化,稼働率向上に寄与することが期待される。

[03]台湾洋上に据え付けされた5.2 MW風力発電設備[03]台湾洋上に据え付けされた5.2 MW風力発電設備

4. ドローンとAIを用いた風力発電設備のブレードトータルサービス

脱炭素社会の実現に向けて,風力発電設備の導入拡大が進んでいる。その中でもブレード(翼)においては,運転による経年劣化のほか,落雷や台風などの自然環境や整備不良に由来する事故が多数発生しており,これらの事故を防ぐために2021年3月,日本風力発電協会が「風力発電設備ブレード点検および補修ガイドライン」を発行した。また同年4月には,経済産業省が「発電用風力設備の技術基準の解釈等の改正」を定めたことで,ブレードの安全基準が強化された。

以上のような背景から,安全性と安定稼働を確保するための信頼性の高いブレードの点検・補修が求められており,日立はドローンやAI(Artificial Intelligence)のデジタル・ロボティクス技術(IT)と保守に関する知見および補修技術(OT:Operational Technology)を組み合わせた「ブレードトータルサービス」を開発した。本サービスは,ブレードの点検から保守計画立案,補修までをワンストップで対応するサービスである。

点検時はクラウド上の専用アプリで設備ごとにドローンの飛行ルートを形成し,自動飛行によりブレード1本に対し5方向から漏れなく高精細な写真を撮影する。取得したデータはクラウドにアップロードすることで,発電所,号機,ブレードなどに基づいて自動的に分類され,AIにより損傷箇所を判別する。さらにデータを用いて最適な補修計画の立案および信頼性の高い補修を提供することで,点検品質向上や設備停止時間低減,補修後の耐久性向上による補修回数の低減などを実現しつつ,設備の安定稼働に貢献する。

(株式会社日立パワーソリューションズ)

(サービス提供開始:2022年4月)

[04]ブレードトータルサービスの提供項目とその効果[04]ブレードトータルサービスの提供項目とその効果

5. 半導体デバイスの検査精度・生産性を向上する超音波映像装置

[05]超音波映像装置FineSAT最新機種「FineSAT7」と半導体デバイス内部の検査画像[05]超音波映像装置FineSAT最新機種「FineSAT7」と半導体デバイス内部の検査画像

電子部品・デバイス市場では電子機器に用いる半導体デバイス・電子部品の小型化,高機能化が求められている。こうしたニーズに応えるため,高密度デバイス内部に潜む微細な欠陥の検出・解析技術の重要性が増している。

超音波映像装置FineSATは,被検体内部の欠陥を超音波により非破壊で検査する装置である。最新機種であるFineSAT7は,自社開発した新型アナログ・デジタル変換ボードを採用し,従来機比でサンプリング分解能を16倍,測定周期を2倍に改良し,検査画像の高精細化による欠陥検出性能を向上させた。さらに被検体を設置する測定水槽を大型化し,多層デバイスなど複雑形状の検査に用いられる透過法を用いた直径300 mmウェーハの一括測定を可能にし,作業効率を向上させた。また,常時波形収録が実現したことにより,今後は受信した超音波の複雑な波形データから有用な情報を抽出するソフトウェア機能を充実させ,被検体内部の高度解析を可能にしていく。

(株式会社日立パワーソリューションズ)

(発売開始時期:2022年10月)

6. ユーラス上勝神山ウインドファームの営業運転開始

[06]ブレード起立台車輸送作業の様子[06]ブレード起立台車輸送作業の様子

2022年7月,四国地方最大容量の風力発電所となるユーラス上勝神山風力株式会社のユーラス上勝神山ウインドファーム(3万4,500 kW)の運用が開始された。株式会社日立パワーソリューションズはENERCON社製の2,300 kWの風力発電設備15基を納入し,これにより一般家庭約2万世帯分相当の電力を供給することができ,年間3万1,000 tのCO2削減効果が見込まれる。

建設場所は徳島港から約40 km離れた標高1,000 mを超える山々が連なる地域であり,急峻・狭小なエリアで大型の風車部品を輸送しなければならなかった。こうした条件に対し,山間部の道路拡幅工事に加え,ブレードを傾斜させて輸送する特殊な起立台車車両を用いることで,従来は輸送が困難だった地域での建設を無事完了し,営業運転の開始に漕ぎつけた。また,本ウインドファームの15年間の包括保守サービス契約を締結しており,設備の高稼働率運転を実現するためのサポートを続けていく。

今後も,風車事業における事業計画から実施設計,建設工事,保守管理までライフサイクル全体でのフルサポート体制を提供し,再生可能エネルギーの安定供給を通じてゼロカーボン社会の実現に貢献していく。

(株式会社日立パワーソリューションズ)

Adobe Readerのダウンロード
PDF形式のファイルをご覧になるには、Adobe Systems Incorporated (アドビシステムズ社)のAdobe® Reader®が必要です。