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原子力

グリーンエナジー&モビリティ

1. プラント稼働率向上をめざした運転監視手法の開発

2021年10月に閣議決定された経済産業省の第6次エネルギー基本計画では,2030年度の国内電源構成における原子力発電の比率20〜22%という値が示された。この数値を達成するには,既設プラントの再稼働のみでなく,定期検査期間の短縮,長期サイクル運転などによる稼働率向上が重要となる。

こうしたニーズに応えるために,信頼性向上・高効率化を目的として,運転中のプラント性能を監視・診断するシステムHAPPS(Hitachi Advanced Plant Performance Diagnosis System:日立先進プラント性能監視診断システム)を開発している。データ統計分析による手法と異なり,本システムではプラント設計情報に基づくことで,運転中の設備劣化,計器異常の常時監視を可能とし,各種流量計のドリフト監視や常時閉止弁からの蒸気リーク検知,熱出力計算の高度化,長期サイクル運転に伴う計器校正周期の延伸,校正物量の低減,大容量負荷の補機動力適正化などさまざまな価値を提供して,原子力プラントの信頼性向上・高効率化に貢献する。

現在,再稼働後の高効率運転の支援のため,顧客協創を推進している。

(日立GEニュークリア・エナジー株式会社)

[01]HAPPSの発電プラントにおける活用イメージ[01]HAPPSの発電プラントにおける活用イメージ

2. カーボンニュートラルに貢献する革新的新型炉の開発

カーボンニュートラル実現とエネルギーの安定供給の社会的重要性が急速に高まる中,大型炉から小型炉まで多様な革新的新型炉の開発を進めている。

大型炉においては,既に建設実績のあるABWR(Advanced Boiling Water Reactor:改良型沸騰水型軽水炉)をベースに,福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた対策ならびに新たな安全技術を継続開発中であり,これらの安全メカニズムを実装した大型革新軽水炉HI-ABWR(High Innovative ABWR)の実現をめざしている。

並行して,米国のパートナー企業であるGE Hitachi Nuclear Energyや,海外アカデミアと連携して,高経済性小型軽水炉BWRX-300,準国産資源であるPuの活用を高速中性子により実現する軽水冷却高速炉RBWR(Resource-renewable BWR),金属燃料Na冷却高速炉PRISM(Power Reactor Innovative Small Module)を開発している。中でもBWRX-300は,新たな概念である隔離弁一体型原子炉と静的安全系を組み合わせた高い安全性を持ち,カナダでの早ければ2028年の初号機建設完了に向けて設計を進めている。

(日立GEニュークリア・エナジー株式会社)

[02]日立の革新的新型炉[02]日立の革新的新型炉

3. 原子力発電所廃止措置における放射性廃棄物削減への取り組み

発電を終えた原子力発電所を解体し放射性廃棄物を取り除く「廃止措置」は,日本にある原子力発電所60基(建設中含む)のうち,18基(1F除く)が決定済みであり,今後,大量に発生する放射性廃棄物の削減が求められている。

解体対象には,管理区域に設置されているタービン発電機のような大型機器があり,設置エリア内で搬出可能サイズまで切断しなければならない。しかし,ガスを用いた従来の火気切断では,溶断した際に機器表面の汚染が内部まで広がってしまう。そこで,解体対象の大きさ,形状,設置場所などさまざまな条件に対応し,かつ火気を使用しない機械式切断のバンドソーを開発し,機種展開・適用してきた。

また,排気筒のように汚染された表面を削ることで,削屑は汚染物としての扱いとなるが,残った部分は放射性廃棄物でないものになり,放射性廃棄物を大幅に削減可能とする新たな分離装置を開発・適用した。

今後も,無火気の機器切断工法/分離工法をコア技術として顧客協創を進めながら,社会価値の高い廃止措置事業に貢献していく。

(株式会社日立プラントコンストラクション)

[03]無火気機械式切断・分離装置[03]無火気機械式切断・分離装置

4. 工事現場の安全性を向上する災害検索ナビと安全行動支援

近年,建設業における熟練技術者の減少や経験の浅い作業者の増加傾向から,施工現場の安全を確保し,労働災害の発生を抑制することは喫緊かつ最優先で対処すべき事業課題となっている。

こうしたニーズを受けて現在,災害ゼロの実現をめざしたDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みを加速しており,自然言語処理AI(Artificial Intelligence)を活用して過去の災害事例を効率的に検索し,関連する災害リスクの要因と対策を効果的に提示可能な災害検索ナビシステムを開発した。これにより類似作業で発生した過去の災害事例を参考に,危険リスクの洗い出しやその対策を作業前に網羅的に検討することが可能となり,安全性の高い作業計画・手順選定につなげることができる。

さらに,現場内の危険エリアなどへの人の入域を検知し,注意喚起するAI物体検出技術を用いた安全行動支援システムを開発した。本システムでは,現場内の開口や高所などの危険な作業エリア,立入禁止エリアへの人の入域をカメラとエッジAI処理が可能な制御デバイスで検知し,アラートを発報することが可能である。

今後も電力プラントの施工現場,事業所に本システム群を活用し,さらに日立グループ各社へ展開することで,現場の本質的な安全の実現に貢献していく。

(株式会社日立プラントコンストラクション)

[04]災害検索ナビシステムの構成および入出力内容と特徴[04]災害検索ナビシステムの構成および入出力内容と特徴

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