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水・環境

コネクティブインダストリーズ

1. ひたちなか市水道事業所 上坪浄水場 更新事業工事

上坪浄水場は,水道供給能力が1日当たり3万8,100 m3であり,茨城県ひたちなか市全体の需要の70%を有している。1965年に供用開始され,老朽化と耐震性の対策のため,浄水場を新設する事業が行われた。

今回の新設に伴い,中央監視設備,受変電・自家発電設備,沈殿池設備,ろ過設備,薬注設備,配水ポンプ設備,排水処理設備,計装設備,遠方監視設備の各設備に対して,高圧盤,動力制御盤,補助継電器盤,現場盤,コントローラ盤,遠隔監視装置を約200面納入し,2022年2月より運用を開始した。主な特徴は以下のとおりである。

  1. 新浄水場では配水ポンプで市内に直接配水するため,瞬時停電時の再起動が速やかにできるように制御回路を構築し,配水圧力低下を最小限とした。
  2. コントローラおよび制御LAN(Local Area Network)を二重化することで,信頼性を向上させた。
  3. 機械設備盤との信号授受をFL-net通信にて行い,また補助継電器盤に入出力装置を実装することでケーブル本数を低減させ,省資源化を図った。

[01]上坪浄水場の全景と中央監視室[01]上坪浄水場の全景と中央監視室

2. 水道事業向け広域運転監視・制御システムの効率化に貢献する統合DXソリューション

国内の上下水道事業は,主に都道府県や市町村が事業運営を担っており,老朽化が進む設備の更新費用の増加が見込まれるとともに,同事業に携わる職員は減少傾向にある。運転監視や維持管理の業務は,この職員の経験やノウハウに依存している実態があり,大きな課題となっている。各施設のシステムの連携や一体的な事業運営を行う「広域化」を推進することは,事業運営の効率化を図り,経営基盤を強化すると期待されている。

こうした中,水道情報活用システム標準仕様に準拠することで,仕様の異なるシステム間のインタフェースの標準化などを図り,横断的にデータの利活用を可能とする統合的なDX(デジタルトランスフォーメーション)ソリューションとして,共通プラットフォームを開発した。本プラットフォームは,産業,環境,土木,防災といった他分野へも展開可能な構造としている。

日立は,顧客および他の事業者との協創により,広域化をはじめとするさまざま課題解決とレジリエントな社会インフラの実現に引き続き貢献していく。

[02]共通プラットフォームを活用する広域化[02]共通プラットフォームを活用する広域化

3. 広島県における浄水場9か所の広域運転監視・制御システム

[03]広島県の水道広域運転監視・制御システムの概念図[03]広島県の水道広域運転監視・制御システムの概念図

日立製作所と株式会社水みらい広島から構成される共同企業体は,広島県より水道広域運転監視システムの構築業務を受注した。本業務は,広島県内の瀬野川浄水場など県営の九つの浄水場を対象として,ベンダーや仕様が異なるシステム間でも横断的にデータを活用できるクラウド上の共通プラットフォームと,日立のLumadaを活用したアプリケーションなどを通じて一元的にすべての施設の運転状況の監視や操作を行うシステムの設計・構築を行うものである。

水総合プロバイダとして長年培ってきたプロダクト,OT(Operational Technology),ITの実績とLumadaソリューションを提供する日立と,広島県内の浄水場の施設管理や保守・メンテナンスで豊富な実績を持つ水みらい広島の技術・ノウハウを組み合わせ,広島県が進める水道事業DXに歩調を合わせて先進的なデジタル技術を導入していく。

本システムにより,水道事業の広域化を実現するとともに,職員の経験やノウハウに依存していた運転監視・維持管理の大幅な効率向上・省力化に貢献していく。

4. 栄養塩類制御・脱炭素に資する下水処理制御技術

昨今の脱炭素化社会への転換加速を受け,下水道における省エネルギーの重要性はさらに高まっている。また,下水処理場の新たな役割として,窒素やリンなどの栄養塩類の循環バランスを地域に応じて適切に保つことで,きれいで豊かな海の維持に寄与することが期待されている。同時に,脱炭素の観点からは沿岸海域の生態系によるCO2(ブルーカーボン)の固定化にもつながると考えられる。

これに対し,日立は下水処理場の運転を模擬して,栄養塩類などの処理水質や省エネルギー運転などを試算可能な下水水質シミュレータ,栄養塩類であるアンモニアを目標水質以下に維持しつつブロワ消費電力を低減する硝化制御技術を開発した。また,これらの技術に基づき,人が持つ下水処理の知見とAIを組み合わせたハイブリッドな運転支援システムの開発を進めている。

日立グループは,水環境分野での長年にわたる製品・システム・サービスなどの実績を踏まえ,持続的発展が可能な社会の構築に貢献する下水道事業を支えていく。

[04]栄養塩類制御・脱炭素に資する硝化制御技術[04]栄養塩類制御・脱炭素に資する硝化制御技術

5. CO2冷媒冷凍機を活用した脱炭素ソリューション

[05]脱炭素ソリューションの実現イメージ[05]脱炭素ソリューションの実現イメージ

2050年のカーボンニュートラル達成に向けて,温室効果ガスの削減が求められている。多くの冷凍機で使用されているフロン冷媒は温室効果が高く,一部を除いて将来的な削減が義務づけられている。CO2冷媒冷凍機は,フロン冷媒に比べて温室効果が小さく,20%以上の省エネルギー性能を有することから,環境配慮型のプロダクトとして注目されている。

株式会社日立プラントサービスは,日本熱源システム株式会社と大型冷凍・冷蔵設備事業に関する協業を開始した。日立プラントサービスのエンジニアリング技術と遠隔監視や予兆診断などのデジタル技術を日本熱源システムのCO2冷媒冷凍機と組み合わせることで,環境に配慮した一括のソリューションとして提供する。

今後も引き続き顧客の幅広いニーズに応えるとともに,社会・環境・経済価値の向上とカーボンニュートラル社会への貢献をめざしていく。

(株式会社日立プラントサービス)

6. 置換空調型クリーンルーム

近年,半導体の需要拡大とともにクリーンルームの建設・改修工事の需要が増加している。その中で,製造装置の性能向上やSDGs(Sustainable Development Goals),脱炭素化社会に向けた気運の高まりにより,高清浄度を要求しないクリーンルームにおいては低コストや省エネルギー性に重点を置いた提案が求められている。

これに対し,クリーンルームの局所清浄化によって省エネルギー化が図れることから,クリーンルーム室内下部の作業域を空調対象域とする置換空調方式に着目した。クリーンルーム床のフットプリントを大きくする目的で,空調機をクリーンルーム上部に設置し,下部作業域に向けて冷気を給気し,作業域を空調・除塵する下吹出型置換空調方式を構築した。一般的なフィルタユニット方式のモデルケースと比較して,置換空調方式は循環風量を低減することでイニシャルコストで50%,ランニングコストで44%費用を低減できる見通しを得た。現在,実案件への適用に向けて活動中である。

[06]置換空調型クリーンルーム[06]置換空調型クリーンルーム

7. 持続可能な社会への転換を実現するプラットフォームの開発

脱炭素や資源循環への対応など持続可能な社会への転換には,業種を越えたステークホルダー間の協力・連携が必要である。そこで,これらのステークホルダーをつなぐプラットフォームを構想し,実現に着手している。本活動は,エコシステムやルール形成のビジョンレイヤ,情報や価値を流通させるデジタルレイヤ,物理的な装置やソリューションを提供するフィジカルレイヤの3層から構成される。

デジタルレイヤの機能の一つとして,サプライチェーンにおける資源の循環を可視化し,事業者と認証機関をつなぐサステナブル認証アプリケーションを開発した。

事業者は資源の取引情報などの環境関連情報を登録し,本アプリケーションを通じて事業のサステナブル認証を申請する。これらの情報は信頼性・秘匿性が担保され,認証機関に届けられる。認証機関は,これらの情報を審査するほか,必要に応じて現地・現物調査を行ったうえで認証結果をアプリケーションに登録し,デジタル製品パスポート(DPP:Digital Product Passport)が発行され,結果が申請者に伝達される。

本プラットフォームにより,事業者は欧州のエコデザイン規則などに簡易に対応でき,持続可能な社会への転換の促進が期待できる。

[07]サステナブル認証アプリケーション[07]サステナブル認証アプリケーション

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