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オートモティブシステム

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1. 360度ステレオビジョン

一般道における自動運転を実現するため,車両の全周囲を3Dセンシングできるマルチカメラによる360度ステレオビジョンのプロトタイプを開発した。

従来のステレオビジョンは同画角で平行する2個のカメラで構成された一体型の構造であった。新たに開発した技術では,異画角,非平行の単眼カメラを組み合わせたステレオビジョンであり,車両周囲に配置した複数のカメラを用いて全周囲の3Dセンシングを可能とした。カメラの配置に自由度を持たせることで既存のカメラを利用することができ,システムコストを抑えつつ,ステレオビジョンが持つ高精度で高分解能な3Dセンシングを実現した。例えば,自車の隣接車線を走行する並走車両や,渋滞時に後方の車列をすり抜けてくる二輪車,交差点右左折時の歩行者や自転車などの対象物までの距離を正確に計測し,衝突を回避するといったアプリケーションに適用することで一般道での自動運転の実現をめざす。

(日立Astemo株式会社)

[01]360度ステレオビジョン[01]360度ステレオビジョン

2. 自動車パワートレインシステム向けニューラルネットワーク制御技術

自動車に対する環境規制強化を受けてパワートレイン制御システムが複雑化し,適合(制御パラメータのチューニング)工数が大規模化している。適合効率化に向けて,モデルベース手法や実験計測の自動化が進展しているが,制御ソフトそのものに適合要素の少ない,もしくは適合自動化が可能な制御アルゴリズムを採用することが有効である。

そこで,数理モデルの一つであるNN(ニューラルネットワーク)を活用したパワートレイン制御およびソフトウェア実装技術を開発した。同技術は,定常・過渡,多入力多出力などの対象に応じた各種NN制御ライブラリと学習ツールで構成される。加減速など多様な条件で取得された実験データを教師データとして,機械学習によりNNパラメータを適合する。次世代マイコンに搭載される並列処理機能を活用し,NN構造に応じて最適化された実装ソフトで高速演算を実現する。

今後は,同技術を活用し,エンジン排出ガス低減や電動パワートレインの熱管理に,NN制御アプリケーションを適用していく。

(日立Astemo株式会社)

[02]適合効率化と高速演算を実現する二ューラルネットワーク制御実装技術[02]適合効率化と高速演算を実現する二ューラルネットワーク制御実装技術

3. 電動パワーステアリングの減速機構部樹脂ギアへのバイオプラスチック材料適用開発

[03]デュアルピニオン式電動パワーステアリング[03]デュアルピニオン式電動パワーステアリング

バリューチェーン全体を通じたカーボンニュートラル達成に向け,バイオマスプラスチックを使用した樹脂ギアを開発し,デュアルピニオン式電動パワーステアリングのウォームホイールに世界初採用※)した。

従来の100%化石資源由来の原料をベースとしたポリアミド66材料に変わり,植物由来の原料によるバイオマス素材ポリアミド410を採用することで,カーボンフットプリント(ライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2換算したもの)を71%,樹脂1 kg当たり4.6 kgのCO2を削減した。また,耐久性や耐油性などの部品要求特性を満たし,かつ当材料の高靭性な特性を生かした製品設計により,樹脂ギアとしての強度を30%向上した。その結果,ウォームホイールを含めた減速機構の小型化および軽量化を達成した。

今後もさまざまなサステナブルな製品の提供を通じて,2050年のカーボンニュートラル社会の実現に貢献していく。

(日立Astemo株式会社)

※)
日立Astemo株式会社調べ

4. EV/PHEV向け直接水冷型両面冷却パワーモジュールによる小型高出力インバータ

脱炭素化に向けて急速に進む自動車の電動化において,駆動システムの小型軽量化は継続的に追求されている。そうした状況の中,発熱の大きいパワー半導体素子が集積されるPM(パワーモジュール)の熱抵抗低減のため,放熱グリースの廃止と半導体片面を冷却する構造から,半導体両面を冷却する構造に変更した直接両面冷却型PMをEV(Electric Vehicle)およびPHEV(Plug-in Hybrid EV)向けに開発し,第三世代インバータを2013年に製品化した。

さらに,第四世代PMで-15%の小型化と400 V対応に加え,800 V対応PMをラインアップし,2019年より800 V対応第四世代インバータを製品化した。この800 V対応第四世代インバータでは,PMの並列駆動技術を開発し,絶縁設計の見直しおよび部品の高耐圧化などを行い,当社比2.7倍のパワー密度94 kVA/L (最大定格/容積)の小型高出力化を達成した。

これらが評価され,2022年度「第68回大河内記念賞」を受賞した。今後も電動化車両の進化ならびにカーボンニュートラル社会の実現に貢献していく。

(日立Astemo株式会社)

[04]第四世代インバータ[04]第四世代インバータ

5. 高精度MBD技術を活用した高い商品性を有するDual Pinion Assist EPS

EPS(Electric Power Steering:電動パワーステアリング)のサプライヤとして,設計初期の検討精度を向上することで自社の開発効率向上を図り,さらに顧客の効率的な車両開発の実現に貢献することをめざして,高精度MBD(Model Based Development)技術を完成させた。本技術の特長は以下のとおりである。

  1. 1D制御+3D機構モデルによるEPSフルシステムでのCAE(Computer-aided Engineering)解析の実現
    実機検証を行うことなく最適な仕様設計が可能な環境を構築し,システムの性能評価や異音の評価をCAE上で検証可能とした。
  2. 1D制御+1D機構モデルと自動最適パラメータチューニングロジック構築によるオートチューニングの実現
    操舵フィールを決定づける電流制御マップセッティング作業の自動化で,作業時間を約80%削減し,初期マップ設定の精度向上と合わせて納期を大幅に短縮した。これらの技術は,2021年以降量産中のEPSから順次適用を開始している。

今後,CAE活用領域を順次拡大し,試作評価期間を短縮して資源の有効活用に貢献していく。

(日立Astemo株式会社)

[05]電動パワーステアリングの機構モデル+制御モデル[05]電動パワーステアリングの機構モデル+制御モデル

6. 周波数応答式可変ダンパー(SFRD,2.5世代)

SFRD(Sensitive Frequency Response Damper)は,路面状況に応じてオイル流路を変化させ,減衰力を機械的に可変させることで,操縦安定性を犠牲にすることなく乗り心地を向上させられる製品である。近年,車両の電動化/自動化の急激な拡大により乗り心地や静粛性への要求が高まる一方で,車両開発費が増大する自動車産業界の中で,サスペンション製品においても,従来製品の原価低減が求められている。そのような中,価格競争力と性能の優れた高付加価値商品であり,電子制御・コンベンショナルの中間に位置するメカ式減衰力可変ピストン構造を持つ製品を開発した。

本開発においては,構成部品締結方案を従来のねじ締結からかしめ締結に変更し,ねじ加工の廃止・部品材料の変更を行うことで,大幅な原価低減に加え,小型・軽量化を実現した。また,商品性能は下げることなく現行同等を維持したことで,性能とコストを高い次元で両立させた,競争力・商品力のある高付加価値商品を実現した。

(日立Astemo株式会社)

(量産開始時期:2022年度)

[06]周波数応答式可変ダンパー(SFRD,2.5世代)[06]周波数応答式可変ダンパー(SFRD,2.5世代)

7. 250 cc並列4気筒エンジン用電子制御スロットルボディ

アクセルとエンジン出力をコントロールするスロットルを切り離し,制御自由度を向上させる電子制御スロットルボディ(ドライブバイワイヤ)が普及しつつある。

そうした中,世界初※)の250 cc並列4気筒エンジン用電子制御スロットルボディを量産開始した。

スーパースポーツモデルKawasaki Ninja ZX-25Rに採用され,スロットルの制御モード切り替えを可能にすることで走る楽しさの向上に貢献している。

対象車両は,電子制御スロットルボディのスロットル駆動モータ不通電故障時でも,機械的にスロットルを一定開度保持する機構を備えており,これにより故障時でも一定の速度で退避走行を可能にしている。駆動モータと開度保持機構をスロットルボディのセンターに配置する構造を採用し,複数部品で構成していた開度保持機構の機能を集約し,部品点数削減によるレイアウトのコンパクト化を実現した。

スロットルボディ全体をコンパクト化したことが,車体のスリム化に貢献している。

(日立Astemo株式会社)

※)
日立Astemo株式会社調べ

[07]Kawasaki Ninja ZX-25R[07]Kawasaki Ninja ZX-25R

8. サイドバイサイドビークル用サスペンションの開発と量産化

サイドバイサイドビークル(多用途オフロード車両)のサスペンションを開発し,米国で生産を開始した。

当カテゴリはCOVID-19の影響から屋外でのレジャー用途として北米で市場が拡大しており,OEM(Original Equipment Manufacturer)各社も本格参入を始め,近年揃って新機種を発表している。

そこで,対ダスト性能などオフロード走行に特化したモトクロス用サスペンション技術を応用し,ピストンサイズの最適化を行った。また,より高度な摩耗対策やダスト対策,ボトムタフネス向上をめざして位置依存機構を適用するなど,レースユースからレジャーユースまでの幅広い走行帯域における走破性や強度・耐久性の両立を実現している。この結果,多機種の受注を獲得し,顧客から好評を得ている。

(日立Astemo株式会社)

[08]サイドバイサイドビークル用リアクッション[08]サイドバイサイドビークル用リアクッション

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