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原子力

グリーンエナジー&モビリティ

1. 遠隔化・自動化施工に向けた3Dデジタルツインシステムの開発と事業展開

近年の建設業界では,デジタル技術を活用した施工による生産性向上が求められている。こうした施工のDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みの中で,現場作業の効率化が期待される遠隔作業に着目した。これまでの遠隔作業では,各種開発装置に複数のネットワークカメラを取り付けて,その映像を確認して遠隔操作を行っていた。しかし,熟練したスキルと経験などを必要とする課題があった。

そこで,遠隔操作のスキルレス化を目的に,現場内装置の挙動や位置を直感的に把握できる3D(Three Dimensions)デジタルツインシステムを開発した。本システムは汎用性が高く,対象とする遠隔装置の各所にセンサーを取り付けて,ネットワークを介して仮想空間上で遠隔装置の挙動や位置情報をリアルタイムに連動して把握できるため,遠隔作業の安全性の確保が期待できる。

今後,本システムを重機に組み込んで安全な遠隔解体作業に貢献していく。また,将来的には多種多様なロボットに応用して遠隔による保守点検サービスの適用につなげていきたい。

(株式会社日立プラントコンストラクション)

[01]3Dデジタルツインシステムの概要[01]3Dデジタルツインシステムの概要

2. 革新軽水炉 Highly Innovative ABWRの実現に向けた取り組み

福島第一原子力発電所事故(以下,「福島第一事故」と記す。)以降,国内既設プラントに対して,事故の教訓を反映した新規制基準に則り,安全裕度をさらに向上する設備導入などを実施してきた。また,豊富な実績を有するABWR(Advanced Boiling Water Reactor)に,福島第一事故の教訓を設計段階から合理的にビルトインした英国向けABWR(以下,「UK ABWR」と記す。)を設計し,2017年に原子炉型式認可(Generic Design Assessment)を取得し,国際的な安全規制に適合する国際標準プラントとして認められている。

現在は,この国際標準設計ABWRをベースに新たな安全メカニズムを組み込んだ革新軽水炉として,Highly Innovative ABWR(以下,「HI-ABWR」と記す。)の実現に向け取り組んでいる。HI-ABWRは,自然災害・テロ・内部ハザードへの耐性強化による安全機能の防護,静的安全設備による自然力を利用した事故進展抑制,万一の重大事故を想定して外部環境への影響を大幅に抑制する革新的安全性を備え,さらにカーボンニュートラルに貢献するべく,BWR(Boiling Water Reactor)特有の柔軟で高性能な運転性能の実現をめざしている。

(日立GEニュークリア・エナジー株式会社)

[02]革新軽水炉 Highly Innovative ABWRの概要[02]革新軽水炉 Highly Innovative ABWRの概要

3. 中部電力浜岡原子力発電所とのHAPPSを用いた系統監視手法の開発

[03]HAPPSの系統監視のイメージ図[03]HAPPSの系統監視のイメージ図

原子力プラントの稼働率向上・信頼性向上を目的として,運転中のプラント性能を監視・診断するシステム[HAPPS(Hitachi Advanced Plant Performance Diagnosis System):日立先進プラント性能監視診断システム]を開発している。本システムではプラント設計情報に基づき,運転中の設備劣化,計器異常の常時監視を可能とし,各種流量計のドリフト監視や常時閉止弁からの蒸気リーク検知,熱出力計算の高度化,長期サイクル運転に伴う計器校正周期の延伸,校正物量の低減,大容量負荷の補機動力適正化などさまざまな価値を提供して,原子力プラントの稼働率向上・信頼性向上へ貢献する。

中部電力株式会社浜岡原子力発電所とのHAPPSを用いた協創活動では,原子力プラントの運転支援のため,各機器へ冷却水を供給する補機冷却水系においてプラント停止時,試運転時および稼働後の系統機能・機器状態監視を真値に近い値で実現すべく評価を進めており,各機器へ既定温度で冷却水を供給する機能や熱交換器の伝熱性能の監視による系統健全性を評価している。

(日立GEニュークリア・エナジー株式会社)

4. 福島第一原子力発電所1号機 原子炉格納容器内部詳細調査への取り組み

[04]水中ROV(6種類)の概要[04]水中ROV(6種類)の概要

本件は,経済産業省の補助事業および国際廃炉研究開発機構の自主事業により調査技術の開発・現場実証を実行したもので,燃料デブリ取り出し工法の検討などに資する多種の情報取得を目的として1号機原子炉格納容器[PCV(Primary Containment Vessel)]内部の詳細目視調査,中性子・γ線の計測,堆積物の厚さ計測・3Dマッピング作業・サンプリング採取を実現した。PCV内は高放射線環境かつ水位約2 mのため,遠隔操作型水中遊泳調査装置[水中ROV(Remotely Operated Vehicle)]と各種センサーを開発し,目的別に6種類の水中ROVを準備した。

開発した調査技術とPCV内への水中ROVの投入/遊泳/回収作業は,工場に構築した実規模モックアップ設備で検証し,現地作業に万全を期すようトレーニングを実施した。調査により,ペデスタル外での燃料デブリや堆積物の評価に資する情報や,ペデスタル内の既設機器の状態などの情報を取得し,計画していた内容を2023年3月に完了した。得られた情報は,今後の廃炉作業の検討や事故進展評価などに活用していく。

(日立GEニュークリア・エナジー株式会社)

5. 金属キャスクのスケールモデル落下試験による市場優位性確保

原子力発電所の使用済み燃料は,使用済燃料プールの湿式貯蔵に加え,金属キャスクによる乾式貯蔵も開始されつつある。日立GEニュークリア・エナジー株式会社はHDP-69B型輸送貯蔵兼用金属キャスクを開発し,他社に先駆けて実運用が開始され,市場優位を獲得している。

近年,金属キャスクの想定落下事象において,傾斜姿勢で落下した時の衝撃力が大きいことが明らかとなり,安全上の懸案とされている。これを受け,スケールモデルを用いた傾斜落下試験を実施し,緩衝体の圧潰を含めた複雑な金属キャスクの挙動を把握し,今後の新設計にも一般適用できる独自の評価手法を開発した。

乾式貯蔵に関する規則が改正されたことにより,建屋・地盤の高耐震化を不要とする,緩衝体付きの金属キャスクによる発電所内の乾式貯蔵が今後の新たな市場となる。日立GEニュークリア・エナジー独自の手法は,この新たな市場に向けた貯蔵用緩衝体設計にも適用できるものであり,乾式貯蔵市場での優位性の維持を図る。

(日立GEニュークリア・エナジー株式会社)

[05]HDP-69B型スケールモデル傾斜落下実証試験状況(床面衝突時)[05]HDP-69B型スケールモデル傾斜落下実証試験状況(床面衝突時)

6. シビアアクシデント対応型電気ペネモジュールの開発

[06]シビアアクシデント対応型電気ペネモジュール外観[06]シビアアクシデント対応型電気ペネモジュール外観

東日本大震災においては,福島第一原子力発電所のシビアアクシデント(以下,「SA」と記す。)により原子炉格納容器(PCV)内温度・圧力が設計条件を超えて上昇したため,PCVバウンダリー機能が喪失している。そこで,高放射線および高温蒸気により電気特性が劣化し,原子炉運転に必要なパラメータの温度計測などができない状況となった事象を受け,SA時でもPCVバウンダリー機能や電気特性が確保できるSA 対応型電気ペネモジュールを株式会社プロテリアルと共同で開発した。

SA時のPCVバウンダリー喪失および電気特性低下の要因として,バウンダリー部に使用している有機材が放射線や熱に堪えられなかったことがあるため,放射線劣化のない無機材または金属を使用したMI(Mineral Insulated)電気ペネモジュールを開発した。また,MI電気ペネモジュールは導体数が16本と少ないため,導体数が現行電気ペネモジュールと同数(118本)で,SA時にシール性能や電気特性が高い高耐熱材を使用した高耐熱電気ペネモジュールも開発した(納入開始時期:2023年6月)。

実機環境を模擬した製品認定試験により,MI電気ペネモジュールおよび高耐熱電気ペネモジュールは,SA 時に十分なバウンダリー機能,電気特性が確保できることを他社に先駆けて確認しており,他社OEM(Original Equipment Manufacturing)プラントを含めた市場展開を今後進める。

(日立GEニュークリア・エナジー株式会社)

7. 高経済性小型炉BWRX-300の早期実用化に向けた取り組み

カーボンニュートラル社会の実現に向けて原子力発電の価値が再評価されているが,自由化された電力市場では発電コストとともに,建設費の抑制による投資リスクの低減も求められる。このような背景の中,小型炉が世界的に注目されており,米国の姉妹会社GE Hitachi Nuclear Energy社と電気出力300 MWの小型炉BWRX-300を共同で開発している。BWRX-300は先進的な「隔離弁一体型原子炉」概念の採用により,冷却材喪失事故の影響を徹底的に緩和することで,安全性を高めつつ,プラントシステムの簡素化を実現した。プラントシステムの簡素化は,機器点数削減による信頼性の向上や運転・保守費の低減,そして廃炉時の廃棄物量低減にもつながる。カナダ・オンタリオ州の州営電力会社Ontario Power Generation社の炉型に選定され,カナダでの建設許可申請を開始し,2028年の建設完了を計画している。その後は,米国,欧州,将来的には国内への導入をめざす。

日立GEニュークリア・エナジーは,これまでに培った技術と経験を生かし,キー技術の実証試験や,主要機器の設計などでBWRX-300の早期実用化に協力していく。

(日立GEニュークリア・エナジー株式会社)

[07]高経済性小型炉BWRX-300の概要[07]高経済性小型炉BWRX-300の概要

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