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鉄道システム

グリーンエナジー&モビリティ

1. 東武鉄道株式会社 新型特急スペーシア X

[01]新型特急スペーシア Xのエクステリアデザイン[01]新型特急スペーシア Xのエクステリアデザイン

100系スペーシアの後継車両にふさわしいフラグシップ車両により,沿線の観光需要や価値を向上させ,鉄道の新たな価値を提供すべく,新型特急スペーシア Xを東武鉄道株式会社へ納入し,2023年7月に初号車の運行を開始した。

高意匠かつ多品種少量生産が求められる国内特急車市場において,車両のプラットフォーム化を推進し,3D(Three Dimensions)設計により多車種設計のリードタイム短縮を実現して,難易度の高い車両を効率的に製作した。

車両製作にあたっては価値変化(環境への配慮,旅への価値観の多様化など)を踏まえたサービス/デザインのあり方から,「アップデート」と「コネクト」をコンセプトとし,最新技術[3D設計適用およびDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組み]により,高品質な仕上がりでコンセプトデザインの具現化を実現した。さらに省エネルギー主回路システムの採用など,車両製作〜運用〜車両廃棄までトータルで環境負荷低減に寄与する技術を活用し,環境負荷低減に貢献できる車両製作を実現した。本車両は2023年度グッドデザイン賞を受賞し,今後さらに2編成を製作予定である。

2. 大阪市高速電気軌道株式会社 400系車両・電気品

[02]Osaka Metro 400系車両[02]Osaka Metro 400系車両

Osaka Metro 400系車両は大阪・関西万博のアクセス路線にふさわしい車両をめざして開発され,現在中央線を運行している20系車両を更新する形で導入される車両である。

車体設計は3D CAD(3D Computer-aided Design)を活用して設計し,そのデータを生かした運転台のVR(Virtual Reality)により,製品製作前に乗務員による運転室機器扱いの確認を行い,運転のしやすさに配慮した機器配置とした。主回路装置には,ハイブリッドSiC(Silicon Carbide)素子を採用し省エネルギーに寄与した。SIV(Static Inverter)装置は編成内の補助電源出力を同期して並列運転を可能とすることで,離線時に配慮した。また素子はフルSiC素子を適用し,冷却性能を向上させ,小型化と高速スイッチング化を実現している。車上遠隔装置には車両情報制御装置Synaptraを導入し,各ユニット間を100 Mbpsの高速Ethernet伝送としている。

400系では,無線で車上データを地上送信可能な装置を搭載し,車両データを車両保全に役立てることを検討している。また,防犯カメラ画像をSynaptraの乗務員表示機にリアルタイムで表示させる機能を実装するなど新たな取り組みを行っている。

3. 北海道旅客鉄道株式会社 737系通勤形交流電車

[03]737系通勤形交流電車の外観[03]737系通勤形交流電車の外観

北海道旅客鉄道株式会社は老朽化したキハ143形気動車などの置替用として,通勤形電車では初めてワンマン運転に対応した737系通勤形交流電車を開発した。日立は車体・台車・主変換装置・主電動機の車両の主要装置を受注しプロジェクトに貢献した。エクステリアデザインは,地域の移動手段として通学や通勤時にやさしさが感じられ,親しみやすく若々しいイメージとして,外装色に「さくらいろ」が採用された。座席は北海道内に咲く色とりどりの花をイメージしたドットをちりばめたインテリアデザインとし,室内照明および前照灯にLED(Light-emitting Diode)を採用し消費電力を低減している。

主変換装置には,ハイブリッドSiCモジュールの採用により小型,軽量化した交流電車向けプラットフォームを適用した。回生ブレーキ制御システムと省エネルギー制御技術の採用,さらには乗車率や運行状況の現地調査から最適な機器性能を設定し,従来車からの消費電力低減を実現した。本主変換装置プラットフォームは,今後の新型車両に随時展開を予定している。

2022年12月から2023年5月に全13編成を納入し,2023年5月より室蘭線(苫小牧〜室蘭間)で営業運転を開始した。

4. 沖縄都市モノレール(ゆいレール)3両化車両導入

沖縄都市モノレールは,沖縄県内唯一の軌道系交通機関として2003年8月に那覇空港駅から首里駅までの約13 kmが開業した。その後,2019年10月に首里駅からてだこ浦西駅までの4 kmが開業したことにより総延長17 kmの路線となっており,日立製作所は車両や運行管理などモノレールの主要設備の納入により運営に貢献してきた。沖縄都市モノレールは開業以降,県内や観光客から定時性や安全性などが高く評価され,交通渋滞の緩和,観光および産業の振興,地域の活性化に大きく寄与している。

さらなる利便性向上を目的とした輸送力増強計画として,今までの2両編成車両に加えて3両編成車両4編成の導入が決まり,全4編成の製作を日立製作所が担当し,開業20周年にあたる2023年8月に2編成が営業運転を開始した。3両編成車両は保守性に配慮し2両編成車両をベースとしたうえで,多言語車内表示器,大型荷物置き場,防犯カメラ,避難昇降シュータなどサービスや安全面での機能強化を図っている。2023年度末に残り2編成の納入を予定している。

[04]沖縄都市モノレール(ゆいレール)3両編成の外観と内観[04]沖縄都市モノレール(ゆいレール)3両編成の外観と内観

5. 米国初の完全自動運転都市鉄道輸送システム スカイライン

[05]イースト・カポレイ駅とスカイラインの空撮写真[05]イースト・カポレイ駅とスカイラインの空撮写真

日立レール社は米国初の完全自動運転都市輸送システム「スカイライン」を同国に納入し,2023年6月30日にハワイ州ホノルルにおいて旅客サービスを開始した。日立レール・ホノルルJV (Joint Venture)は,ホノルル高速鉄道輸送機構(Honolulu Authority for Rapid Transportation)との契約の一環として,システムの導入,保守,車両の納入を担当した。

スカイラインには,手動運転に代わるより安全で効率的な自動運転に向け,日立のさまざまな先端技術が採用されている。無人運転技術の導入は,定時性の向上,省エネルギー化,乗客の安全性の向上など,さらに先進的な鉄道輸送を実現する。

ホノルルは,米国の中規模都市の中でも最大の交通渋滞問題を抱えている。スカイラインシステムは高架鉄道であるため,信頼性の高い交通手段で利用者の移動時間を短縮できる。また交通渋滞を緩和し,毎日何千台分ものガソリン車の使用を日々抑制することで,大気汚染やCO2排出量を低減し,島のデリケートな環境の保全に寄与する。ホノルルのスカイラインはオアフ島の交通に革命を起こし,地域社会の将来のモビリティと生活の質の基盤となる,長寿命で環境に配慮したインフラを実現する。

(日立レール・ホノルルJV)

6. 九州旅客鉄道株式会社 AIを活用した運転整理自動化技術の実証実験

[06]輸送指令員の運転整理傾向を学習したAIの運転整理結果(鹿児島本線の例)[06]輸送指令員の運転整理傾向を学習したAIの運転整理結果(鹿児島本線の例)

近年,利便性向上に伴うダイヤの多様化や異常気象などへの対応により,ダイヤ乱れの回復を行う運転整理業務は,より複雑化している。

そこで日立は,複雑化する運転整理業務の支援・自動化のため,これまで長年培ってきた鉄道運行管理用AI(Artificial Intelligence)に,新たに機械学習AIを組み合わせたハイブリッド型運行管理AIを開発した。

このハイブリッド型運行管理AIに九州旅客鉄道株式会社(以下,「JR九州」と記す。)の所有する運転整理に関する知見やノウハウなどを組み合わせ,AIを用いた運転整理業務の自動化をめざした有効性検証を,JR九州と日立の共同プロジェクトとして実施中である。

この共同プロジェクトにおいて輸送指令員の運転整理傾向を学習し,運転整理案を提案可能であることを確認した。今後,大雨などの広範囲にわたる支障事象や線区を跨いで走行する列車に対する運転整理や車両運用整理との連携など,類似の事象に対して想定と合致する提案ができるか引き続き検証を行う。

また,AIが輸送指令員に運転整理案を出力する一方向の流れだけでなく,AIが問い合わせる技術を取り込んでいくことにより,人とAIのさらなる協調をめざす。

7. Online Monitoring System

OLM(Online Monitoring System)は,鉄道の車両や沿線の機器のデータを収集・蓄積・分析・可視化することで,鉄道事業者・メーカーに新たな価値を提供できるシステムである。取得できるデータを分析する「データドリブン」では顧客に価値を与えることは難しく,顧客との協創がPoC(Proof of Concept)で終わることが多い。日立は,「デマンドドリブン」と「データドリブン」により成長のサイクルを回すことで,鉄道運行業務や保守業務の効率化を段階的・継続的に実現することを可能としている。

業務の効率化には,業務プロセスを理解して改善対象を明確にし,改善に必要なデータを抽出する必要がある。日立は,鉄道事業者へのヒアリングで課題選定を行い,社内設計者がデータ抽出を行ったうえでOLMを構築する。OLMで収集したデータは,鉄道分野に精通しているデータサイエンティストが分析・解析・検証することで価値ある情報に変換される。例えば,車両位置や車両機器状態から障害時の復旧,運行情報とコンプレッサー・空調データなどから保守,運行情報とランカーブと消費電力データから省エネルギー,運行情報と乗車率からダイヤや編成車両数などの経営指標のデータが得られる。この変換手法をOLMに追加することで業務の効率化を,さらに他システムと連携することで最適化や自動化を可能としている。

OLMは,2024年よりサービス提供を開始し,鉄道事業の業務の効率化に貢献していく。

[07]Online Monitoring Systemによる成長のサイクル[07]Online Monitoring Systemによる成長のサイクル

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