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1. 安全で生産性の高い職場のためのスマート作業着ソリューション

日立は,DFKI(Deutsche Forschungszentrum für Künstliche Intelligenz:ドイツ人工知能研究センタ),DFKIのスピンオフ企業であるsci-track社,スマートアパレル企業の株式会社Xenomaと共同で,衣服に,IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測ユニット)センサーを縫い込んだスマート作業着を使用したモーショントラッキングおよび人間工学的評価技術を開発した。

インフラが設置されていない環境で作業者の動きや作業をデジタル化するには,作業者の身体にセンサーを装着する必要があるが,これにより心理的抵抗感やロジスティクス上の問題が生じる可能性が懸念される。そこで,Xenoma社の布状電子回路基板技術を活用し,さまざまな業界で普段着用されている標準的な作業着にシームレスにセンサーを統合した。

また,DFKIとsci-track社との戦略的コラボレーションにより,日立は衣服特有のたわみが原因で生じる不一致を補正する先進的なAI(Artificial Intelligence)技術を開発し,正確かつ非侵襲的で着用者にストレスのないモーショントラッキング技術を実現した。この画期的なソリューションを製品化したことで,パラダイムシフトを加速し,工場,メンテナンス施設,物流業務に至るまでの産業界全体に採用が広がることを期待している。

(日立ヨーロッパ社)

[01]スマート作業着ソリューション[01]スマート作業着ソリューション

2. IoT/AIによる鉄道産業向け単独作業労働者安全ソリューション

鉄道インフラの保守に携わる単独作業労働者の安全性を高めるため,ウェアラブル端末で動作するAIで事故を検知し,位置情報と併せてアラートを送るシステムを開発した。

鉄道輸送の運行を維持するには,大規模な鉄道網全体にわたって保守作業を毎日行う専用の作業員が必要であり,その中には特殊な作業に特化した単独作業労働者も含まれる。厳格な安全手順が確立していることから,作業環境において安全事故が発生することは多くないが,それでも無事故達成には至っていない。

日立の欧州R&D(Research and Development)センタは,フランスのRail Open Labのイノベーションの枠組みの中で,日立レールSTSおよびSNCF Réseau社と共同で,この課題を解決するAIソリューションを開発した。

この単独作業労働者安全ソリューションは複数のハードウェアと事故検知機能を持つソフトウェアを組み合わせて構成しており,作業員は軽量で直感的に使用できるスマートデバイスを装着する。スマートデバイスには,不活動を検知する機能と,高速な自動検知手法であるHAR(Human Activity Recognition)AIモデルを組み込んでいる。

これらの最先端技術を搭載したこのスマートデバイスは,単独作業労働者の事故を自動的に検出し,位置情報を含むアラートを救急サービスに送信する。作業者が手動でアラートを送信することもできる。

(日立ヨーロッパ社)

[02]事故の段階とウェアラブルデバイスによる事故検知・アラート技術[02]事故の段階とウェアラブルデバイスによる事故検知・アラート技術

3. 配電網運用のためのソーラーインバータアグリゲーションプラットフォーム

近年,ビハインドザメーター型のDER(Distributed Generation Resources)の導入が加速している。しかし,配電系統へのDERの大規模な統合は,(1)DERの状況認識の不足,(2)保守的な相互接続ルール,(3)協調制御されていないインバータ間で生じる不安定な相互作用などの要因によって限定的である。

日立は,エンドツーエンドの太陽光エネルギー最適化プラットフォームであるE-Platform※)を通じてこれらの課題の解決に取り組んでいる。E-Platformでは,配電系統の運用と制御にデータドリブンのアプローチを利用している。このプラットフォームはクラウドを通じてインバータから収集したデータを分析・可視化して,制御アクションをインバータに返送する。中央集中型プラットフォームからリアルタイムでインバータを協調制御することで,非協調的な独立制御の問題が軽減され,容量上限と電力系統のレジリエンスが向上する。E-Platformは,系統運用者が各管轄領域における太陽光発電統合の分散度に応じて状況を認識する能力を高める。また,DERの相互接続とカーボンニュートラルグリッドの運用を加速させることに役立つ。

(日立アメリカ社)

※)
E-Platformは米国エネルギー省の支援を受けている(補助金番号:DE-EE0008773)。またアリゾナ州立大学の協力に感謝の意を表する。

[03]E-Platformのアーキテクチャ[03]E-Platformのアーキテクチャ

4. 製造業における運用ガイドを実現する4Mソリューション

今日の製造業は,需要の不確実性,サプライチェーンの混乱,製品のカスタマイズ,ライフサイクル管理などの問題が多く,環境の変化は激しくなる一方である。特に米国の企業は,労働者の高齢化,人手不足,スキル不足などの問題にも直面している。これらの要因はすべて,手作業を伴う製造工程に大きな影響を与えている。例えば,自動車の一般組立工程では,ダウンタイム,むだ,電力の使い過ぎなど非効率性の原因となる可能性があり,安全性の懸念も生じる。

これらの課題に対処し,スマートかつレジリエントで持続可能な未来の製造業を実現するため,日本および米国の日立の研究者は,人が行う作業,詳細なタスクの識別と追跡,プロセス品質モニタリング,人間工学,安全分析などをデジタル化する多様なハードウェアおよびソフトウェアソリューションモジュールの開発に取り組んでいる。グローブセンサー,位置追跡,高度な分析を用いた4M(huMan, Machine, Material, Method)ソリューションは,北米の複数の顧客の工場でデモを実施済みで,現在は工場でのパイロット運用に移る計画を進めている。

(日立アメリカ社)

[04]未来の製造業のための4Mと人手作業のデジタル化[04]未来の製造業のための4Mと人手作業のデジタル化

5. AIを活用した保守ガイドソリューション

産業界の顧客は,人手不足の中でいかに持続可能なオペレーションを維持するかに直面している。保守業務においては,未熟な作業員が事後保守と予防保守のダウンタイムをいかに短くできるかが課題になっている。機械が故障すると,作業員は故障現象を特定し,その原因,対策,交換部品を決定する。熟練作業員は自分の知識を用いて対処できるが,未熟な作業員にはデジタル的なサポートが必要である。このような作業におけるOT(Operational Technology)の知識は,故障現象,原因,対策などを階層的に構造化した故障木となる。そのため,OTの知識とデジタル技術を融合させ,熟練度に関係なく運用が可能な保守ソリューションを開発した。

このソリューションには二つの特長がある。一つはAR(Augmented Reality)を使用したデータ収集,もう一つはAIを使用した保守診断である。スマートフォンアプリでARを使用したデータ収集では,故障現象を故障木にひも付けて特定できる。さらに,生成AIをベースとするAIを使用した保守診断により,作業員はAIと対話しながら,原因,対策,交換部品を特定できる。この技術を基に,持続可能な保守運用に向けて顧客の課題解決を図っていく。

(日立アメリカ社)

[05]AIを活用した保守ガイドソリューションのコンセプト[05]AIを活用した保守ガイドソリューションのコンセプト

6. SBOMを活用した脆弱性管理技術

米国では,SBOM(Software Bill of Materials),および関連するCSAF(Common Security Advisory Framework)/VEX(Vulnerability Exploitability Exchange)などの機械可読形式の仕様が標準化され,エネルギー,医療,製造などの業界で義務化が進められている。こうした背景を踏まえ,サプライヤ側と利用者側のセキュリティ運用を支援する2種類の技術を開発した。

サプライヤ向けには,CSAF/VEXといったサイバーセキュリティアドバイザリの自動作成をサポートし,脆弱性,影響を受ける製品,緩和策,是正策の統合・管理を可能にする脆弱性管理プラットフォームを開発した。サプライヤはこのプラットフォームを利用することで,多くの脆弱性に対応するコストを削減できる。一方,利用者向けには,SBOM,CSAF,システムの振る舞いなどの関連情報を結び付けることができる影響分析プラットフォームを開発した。利用者はこのプラットフォームを利用することで,開示された脆弱性が自身のシステムに与える影響を容易に把握できるようになるため,対応の優先順位の明確化やシステム内のリスクの見落とし防止が可能となる。これらの技術を活用して米国内の規制にいち早く準拠することにより,米国での新たなセキュリティサービスの立ち上げをめざす。

(日立アメリカ社)

[06]サプライヤおよび利用者向けセキュリティ管理プラットフォーム[06]サプライヤおよび利用者向けセキュリティ管理プラットフォーム

7. EV活用防災ソリューション

台風など自然災害の激甚化により,電力供給の長期断絶が増加している。そこで,普及が拡大するEV(Electric Vehicle:電気自動車)を「動く蓄電池」と捉え,平時は再生可能エネルギー含む電力を蓄え,災害時は地域レジリエンス向上に資するEV活用防災ソリューションを開発している。

本ソリューションでは,地域のカーディーラーを含む民間事業者や市民が所有するEVと,避難所を含む施設をシステムに登録し,最適な組み合わせを事前に計画する。地域で送電が途絶えたときには,事前計画を基にEV派遣・運行計画を立案し,ダウンタイムの軽減を行う。

本格的な展開に先立ち,2022年度には自治体主導での防災訓練にEV実車と共に本ソリューションをコンセプト展示し,市民との対話を通してサービス受容性を確認した。来場者の73%から災害時のEV貸出に対して好意的な応答が得られた。

今後,災害時と平時を横断する地域エネルギーマネジメント機能を提供するべく,機能拡充していく。

[07]EV活用防災ソリューションの全体像[07]EV活用防災ソリューションの全体像

8. 地域の移動リソース最適化を目的とした交通事業者のモビリティデータ利活用事業の創出と福岡エリアでの実証

生活インフラである地域交通の維持や環境負荷低減,地域経済の活性化などさまざまな課題解決のため,地域の交通事業者が保有するモビリティデータに付加価値を付けて提供し,地域全体最適の視点で各事業主体の業務改善を先導するMaaS(Mobility as a Service)コーディネータ事業の創出をめざしている。

事業の成立には,業務サイクルが中長期スパンの交通・行政と,比較的短くキャッシュフローの良い商業などの異業種・複数事業主体が参画するエコシステムの形成が必要不可欠である。これにより,例えば交通事業者間でのリソース調整や交通・商業施設・観光施設が連携した企画券による移動需要喚起など,モビリティデータを起点として価値を循環させ,地域データ基盤として運用される形態を実現する。2022年度より経済産業省の実証事業にて福岡エリアを対象に事業の有効性検証を開始した。2023年度からは公営交通や行政も加わる形で取り組みを拡充しており,福岡をモデルケースとして今後,社会実装と他都市展開をめざしていく。

[08]MaaSコーディネータ事業の概要[08]MaaSコーディネータ事業の概要

9. CRMを活用したB2B向け営業フロー

B2B(Business to Business)企業におけるCRM(Customer Relationship Management)の活用は,これまでは主に既存顧客管理や営業管理として行われてきた。しかし,近年の営業人財の不足,顧客側のオンラインでの情報収集の浸透により,顧客獲得の営業フローにおいてもCRMの活用に取り組む企業が増加している。

株式会社日立産機システムでは,イベント来訪者など過去に接点のあった顧客情報を格納したCRMデータを保有している。今回,このデータを活用して見込み顧客向けにインサイドセールスを実施することで案件化確率の改善をめざした。実施したフローは,見込み顧客に対してメール送付による興味喚起,企業情報による営業対応優先度の設定,アウトバウンドコールによる顧客へのヒアリング実施により,見込み顧客を絞り込み,抽出された企業に対して対面営業を行った。 この一連のフローにより,営業担当は顧客に接する前に,顧客の課題や興味関心の度合を把握でき,さらに優先度の高い顧客に絞って働きかけを行っていることから,営業活動の効率化につながった。

今後もCRMデータの活用を拡大し,顧客と日立の双方にとって,効率的・効果的な営業活動,エンゲージメント強化につなげていく。

(株式会社日立産機システム)

[09]優先度の高い顧客の抽出から営業対応までのフロー[09]優先度の高い顧客の抽出から営業対応までのフロー

10. 地域資源循環をテーマとしたデザインリサーチメソッド

気候変動,格差拡大などの地球規模の問題を背景に,グローバル化した大量生産・大量消費型社会の代替案として生産・消費をリ・ローカライズする地域循環型社会が着目されている。日立製作所と武蔵野美術大学の共同研究の一環として,高度な循環社会が形成されていた江戸時代,またその痕跡が残る昭和初期の地域(滋賀県長浜市を選定)の暮らしの調査に基づき,当時の地域循環社会の成り立ちの仮説を提示した。物質循環はその背景にある地域の文化的・社会的な振る舞いと深く関係しており,循環型社会は両者の相互作用として成り立っている,という仮説である。

この仮説を参照し,未来の循環型社会実現に向けた社会デザインに取り組んでいる。2022年11月,国分寺市にて持参したペットボトルキャップからボタンを制作する市民参加型プラスチック循環実証「キャップノソノゴ」を実施し手応えと気づきを得た。この知見に基づき,現在は社会実装に向けて,地域との対話およびプロトタイピングを推進している。

[10]市民参加型プラスチック循環実証「キャップノソノゴ」[10]市民参加型プラスチック循環実証「キャップノソノゴ」

11. 分析装置のデータを活用した医用ソリューションサービスプラットフォームの開発

株式会社日立ハイテクは,顧客の分析装置データを活用し,検査業務の効率化ソリューションの提供と,検査現場の実態に即したサービス・プロダクト開発をめざした「オンラインシステムLABOSPECT PlaNet」の提供を開始した。

ソリューション創生のプロセスとして,国内外の医療機関ヒアリングでのニーズ把握によるフォアキャストのアプローチと,装置データ活用による検査業務の変化を捉えたバックキャストのアプローチの両面から提供価値の仮説を検討する。その仮説を基に,試行・検証を行いながら,必要機能とインタフェースデザインの開発・改良を繰り返し,ソリューションの立ち上げを推進していく。本システム上に,まずは装置ユーザーである検査技師のルーチンの分析準備,管理業務を支援する情報を伝えるソリューションを実装する。

今後も,顧客向けソリューションの進化・拡充に加え,社内外のステークホルダーに向けたソリューション展開により,装置データの利活用による価値提供範囲を継続的に広げていく。

[11]オンラインシステムLABOSPECT PlaNetのソリューション創生プロセス[11]オンラインシステムLABOSPECT PlaNetのソリューション創生プロセス

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