日立製作所
執行役社長兼CEO
平素より日立グループへ格別のご高配を賜り,厚く御礼申し上げます。「2024年 日立技術の展望」の発行にあたりご挨拶申し上げます。まず,令和6年能登半島地震で被災された方々に心からお見舞い申し上げます。各地域の方々の安全と一日も早い復興を心よりお祈りしています。
近年,急速なデジタル化の進展や,複雑化したグローバルな政治・経済情勢により,ビジネスを取り巻く環境は日々変化しています。また,資源や電力の価格高騰および物価高は,コロナ禍を経て人やモノが活発に移動する従来の姿を取り戻しつつある社会や人々の生活にも大きな影響を及ぼしています。一方で,気候変動や人口動態変化などの直面している社会課題を見つめ直すことで,新しい可能性を見いだし,持続可能な社会の実現に向けた取り組みを一層進める必要があると考えています。
こうした中,2022年度より取り組んでいる3カ年の「2024中期経営計画」は折り返し地点を過ぎました。日立はこの中期経営計画の中で,データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現し,人々の幸せを支えることを目標に掲げています。「社会イノベーション事業」をシングルパーパスとし,日立の三つの事業が一つになり,それに賛同する企業やパートナーをエコシステムの一員として迎えるとともに,健全な地球環境維持への貢献やその先にある経済成長を見据え,さまざまなお客さまとの協創をグローバルに進めてまいりました。
日立がめざす社会イノベーションは,世界中の人々が望む「良いこと」,すなわち「Good」を実現しようというPowering Goodの意志に根差すものです。健康寿命を延ばし,人々の生き生きとした暮らしを支えるバイオテクノロジー,大量の文献から役に立つ情報を効果的に得ることができる生成AI(Artificial Intelligence),物理現象への理解を一段と深めつつ,より短期間で新たな科学的知見を獲得できる量子コンピュータなど,それを実現するためのキーテクノロジーが既に実用化されつつあります。今後も「グリーン」,「デジタル」,「コネクティブ」という社会と産業を変革する三つの潮流を変革のドライバーとして,IT,OT(Operational Technology),プロダクトを組み合わせたソリューションで,お客さまのイノベーションを支えてまいります。
2024年は日立製作所の創業者である小平浪平の生誕150周年にあたります。『日立評論』は,創業から間もない1918年に日本初の企業による工業技術誌として,開発技術を公表して誌上を対話と議論のための場にするという思いとともに創刊されました。以来,「和」,「誠」,「開拓者精神」という日立創業の精神を受け継ぎながら,研究者や開発者自身が自らの言葉で発信することで,さまざまな成果を社会へ還元することに努めてきました。今後も,「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」という企業理念の下,社会イノベーションの進化に向けて新たな挑戦を続ける日立グループの「今」を伝えていきます。「2024年 日立技術の展望」でも,技術成果や協創事例など,日立の最新のトピックスをご紹介しています。One Hitachiで世界中のお客さまにイノベーションを届け,成長を続ける日立グループにご期待ください。